ITコラム

人はいつからでも挑戦できる。ピンチをチャンスに変えるなら今だ。

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佐藤 裕美
筆者:佐藤 裕美
日本IBM 社会貢献CSRマネージャー
アカウント担当営業として入社以来、金融業のお客様を担当。2021年末からCSRマネージャーとしてIBM globalイニシアチブであるIBM SkillsBuildの日本におけるプロモーションを担当している。

 


パンデミックがもたらしたもの、DXの急速な促進による就労要件の変化

パンデミックは、私たちに何をもたらしたのでしょうか。飲食業界やホテル業界、旅行業界など、多くの業界が影響を受けました。子供たちの運動会や修学旅行は、延期になったり縮小されました。そして、班になって楽しくおしゃべりしながら食べる給食の形は、永遠に失われたかのように思えました。

ネガティブな面は、枚挙にいとまがありません。では、ポジティブな面はどうでしょうか。

日本での普及には10年はかかると言われていたDX(デジタル・トランスフォーメーション)が、パンデミックを契機に大幅に進んだことは間違いないでしょう。

DXが進んだ結果、リモートワークの制度や仕組みが飛躍的に整い、遠隔地からコミュニケーションを取ることや、仕事をすることが当たり前になりました。書類の電子化は進み、データはクラウドに保存され、ワークフローが整備されました。決裁や承認の判子をもらうために紙や契約書を携えて、走り回る必要が無くなりました。

パンデミックを契機に促進したDXは、働き方において上述したような急速な変化をもたらすとともに、デジタルを用いた変革を「実装できる」人材のニーズを急激に拡大させています。

経済産業省のDXレポートで「2025年の崖」という言葉が出てきて久しいですが、DXの必要性が大幅に加速した現在、日進月歩で進化するテクノロジーを活用し、企業や組織の戦略に反映するスキルを持つ人材の争奪戦が始まっています。

ところで、DXに必要な人材とは、どのような人でしょうか?また、DXは就労条件に、どのような変化をもたらしたのでしょうか?

当初、DXはIT部門の課題というイメージを持たれやすい側面がありました。しかし、DXの本質は紛れもなく経営の課題であることを、既に多くの経営者が理解しています。既存業務の効率化によるコストの削減という引き算の考え方ではなく、より戦略的に業務の在り方を見直し、付加価値を創造していくことが今後の生き残りには不可欠なのです。そして、そのための人材を養成することもDXの一部なのです。

したがって、コア業務や顧客により近い立場にある多様な働き手が、DXの実装における主体となる必要があります。これまでの技術にこだわることなく、新しいアイデアを新しい方法で、すぐに実装できる身軽さを身につけた人、そのような人が求められています。そして、そのためには、新しい方法を常に学び続けることができる、持続的な学習意欲を持つ人でなければなりません。つまり、持続的に自分を「リスキリング」できる人こそが、DX時代に必要とされる人材と言えるでしょう。

学歴から学習履歴へ

社会で必要とされる人材像の変化に対応し、大きく変容を遂げているのは大学も同様です。オンライン授業の普及により、海外に行くことなくリモートで海外の大学の講義が受けられるようになり、大学間での単位互換制度の整備も進みつつあります。このことは、ある1つの大学を卒業したという卒業証書の重要性より、その人物がどのような学習履歴を持ち、何を学んできたのかが重要になっていることを意味しています。

このような変化を踏まえ、日本IBMは、2022年度から採用における大卒要件を撤廃し、よりスキルを重視した採用を強化しました。各事業部・職種で必要とされるスキルや人材像を明示し、学士・修士号の有無に関わらず、より広い候補からマッチする人材の採用に取り組んでいます。

学習履歴重視の人材採用の流れは、今後、業界や業種を問わず加速していく可能性があります。同時に、求職側は学習履歴を証明する方法が必要となり、求人側は候補者の学習履歴を確認する方法が必要となることを意味します。

スキルを証明するデジタルバッジ

ところで、現在の自分が持っているスキルは、どのようすれば証明できるのでしょうか。

自分が習得しているスキルの証明を可能とするのが、「デジタルバッジ」または「オープンバッジ」と呼ばれるものです。

デジタルバッジとは、世界共通の技術標準規格に準拠した形で、資格主催団体や教育機関、IT企業などから発行される、オンラインで流通するスキルの証明書です。デジタルバッジの取得者は、自身のSNSや履歴書にそれを貼ることで、習得しているスキルをアピールできます。

経済産業省のホームページでは、デジタル時代の人材に関する検討会の内容が公開されており、デジタルバッジを活用した能力・スキルの見える化についての資料(※) が掲載されています。

※資料PDF:第4回 デジタル時代の人材政策に関する検討会 デジタル人材に関する本日の論点(出典元 経済産業省ウェブサイト)

個人のスキルやケイパビリティーを示すデジタルバッジの普及は、採用側の企業、就職希望者の双方にとって大きなメリットがあり、今後さまざまな働き方や雇用スタイルが出てくる中で、ますます重要性を増していくでしょう。

リスキリングで未来を築く、IBM SkillsBuildとは?

IBMは、IBM SkillsBuildという名称の社会貢献プログラムを、社会人向けに無償提供しています。

このIBM SkillsBuildは、これまでの学歴や経歴、人生経験にかかわらず、よりよい就労への道を拓くために必要となるビジネス・スキル、ITの基礎知識から専門知識まで、現在、社会で需要が高いスキルの習得を支援するオンライン学習プラットフォームです。

今回のパンデミックで経済的に影響を受けた方、スキルアップして憧れの仕事に就きたい方、結婚や出産を機に仕事を辞めてしまったけれど、スキルを身につけてまた就職したい方など、より良い就労を目指す全ての求職者の皆さまにご利用いただけます。

IBM SkillsBuildは、自治体や非営利団体と協力して、DX関連業務に必要なエントリー・レベルのスキルを習得できる様々なコースを提供するとともに、データ・アナリスト、サイバーセキュリティーの専門家、プロジェクト・マネージャー、顧客サービス担当者など、幅広い職種別の専門コースも提供しています。

また、IBM SkillsBuildでは、オンラインコースの受講とテストを終了した受講者に、各種のデジタルバッジを発行しています。受講者は、デジタルバッジにより、よりきめ細かく自身のスキルをアピールできるようになります。


IBM SkillsBuildで取得できるデジタルバッジ

挑戦はいつからでも遅くない

私たち人類にとってパンデミックは、間違いなくピンチでした。しかし、ピンチはチャンスであるはずです。ピンチをチャンスとして生かし、より豊かに成長していく姿を、私たち大人は子供たちに見せなければなりません。

IBMは、2030年までに世界全体で3,000万人のスキル習得支援を表明しています。その取り組みの1つがIBM SkillsBuildです。ピンチをチャンスと捉え、より良い就労を目指したいと思っている方々が、IBM SkillsBuildで必要なスキルを身につけて、自分の憧れの仕事に就いて欲しいと願っています。

人生は一度きり。そして、スキル習得の場としてIBM SkillsBuildを選択すれば、無償のオンライン学習プラットフォームなので、いつからでも始められます。そう、挑戦はいつからでも遅くはないのです。

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