テクノロジー・リーダーシップ

IBM WatsonによってPMも技術者になろう

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著者:林 克郎
IBM エグゼクティブ・プロジェクト・マネジャー
ワトソン事業部 事業企画推進部長

皆さん、こんにちは。

日本IBMのWatson事業部で事業企画推進を担当している林です。
IBMのコグニティブ・ビジネスを牽引するIBM Watsonは、自然言語を理解し、自ら学習し、得た知識の中から根拠と共に答えを返すという特長を持ちます。さらには人間の性格や語調を分析したり、音声や画像を認識したりもします。私はこのWatsonを日本の市場においてどのように広げていくかの施策立案や、事業運営を行なっています。

一方、私はプロジェクトマネジメントを専門としており、日本IBMのテクニカル・コミュニティであるTEC-J (Technical Experts Council of Japan)のメンバーとしても活動しています。そこで今回はプロジェクト・マネジャー(以下、PM)がどのようにWatsonと関わるかについてお話したいと思います。

プロジェクト・マネジャーの役割

プロジェクトマネジメント協会(PMI)が発行するプロジェクトマネジメント体系ガイド(PMBOK®ガイド)では、プロジェクトは独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務であると定義しています。またPMは、プロジェクト目標を達成することに責任を持つチームをリードするために、母体組織が任命する人物であると書かれています。PMはスコープ、品質、スケジュール、予算、資源、リスクなどの制約条件のバランスを取りながら、プロジェクトを成功に導く責任を負います。

プロジェクトマネジメントを行う上で、PMは様々なツールを利用します。スケジュール管理や課題管理などを行うためで、それらのツールを総称してプロジェクトマネジメント情報システムと呼びます。このプロジェクトマネジメント情報システムに、市販のソフトウエアを使われる方もいらっしゃるでしょうし、内製のソフトウエアを使われる方もいらっしゃるでしょう。現在のプロジェクトマネジメント情報システムは技術が進歩し、とても有用な機能を備えています。

ところで、PMの皆さんは、これらのプロジェクトマネジメント情報システムから本当に必要な情報を得られていますでしょうか?

プロジェクト・マネジャーが必要な情報

例えば表計算ソフトを使ってスケジュールを管理したり、コストを見積もったりする方も多いと思います。表計算ソフトからはプロジェクトの完了予定時期や完了予定コストが算出されるでしょう。もし、スケジュールの遅延やコストがオーバーする可能性がある場合、PMが必要なのは、「1週間遅れる」とか「1 万円不足する」とかの情報でしょうか? 確かにそれらの情報も大切です。でも、PMが本当に必要なのは、

「どうすればスケジュールの遅延やコストオーバーを防げるか」

という情報だと思います。

多くの場合、これらの情報は過去の教訓から得ることができます。完了したプロジェクトから得られた教訓や情報は組織の知識ベースに蓄えられており、PMはその中から有用な情報を探すことになりますが、効率良く必要な情報にたどり着けなかったり、見つからなかったりします。

この課題をWatsonは解くことができます。

非構造化データを扱うIBM Watson

Watsonが扱うデータは、自然言語や音声、画像などの非構造化データです。PMが持つ知識はこの非構造化データが多く、PMはWatsonを活用することでその業務効率を大幅に改善できる可能性があります。

例えば、Watsonに過去の教訓を覚えさせておくことで、PMが現在直面している課題をWatsonに質問すると、Watsonが最適な解決策を提示するという利用方法があります。これまでもPMは過去の教訓を調べて類似の事例を探していましたが、これは検索の域を出ていません。Watsonであれば、PMが本当に欲しい情報を得ることができます。

IBMは現在を「学習するシステムの時代——コンピューティングの第三世代」と呼び「集計機の時代——第一世代」と「プログラム可能なシステムの時代——第二世代」を経て、新しいコグニティブ・システムの時代に入ったと位置付けています。Watsonは構築するためにプログラミングのスキルを必要とせず、簡単なユーザーインターフェースから誰でも作ることができます。

技術者としてのプロジェクト・マネジャー

Watsonに覚えさせるデータを持っているのはPMです。そのWatsonを利用するのもPMです。どんな情報が欲しいか分かっているのもPMです。そして「学習するシステムの時代」の今は、PMがWatsonを作ることができます。

Watsonはプロフェショナルを支援するツールです。人間が覚えきれない膨大なデータを覚え、最適な回答を根拠と共に返します。過去のプロジェクトで蓄えられた教訓をWatsonに覚えさせておくことで「スケジュールが遅延しそうな時の対応策は?」と質問すると「xxプロジェクトでは、xxという対応をすることでスケジュールの遅延を防げました」と回答してくれます。Watsonは複数の回答を返すことも可能ですので、PMは最適な対応策を選ぶこともできます。

PMの皆さん。
技術者としてWatsonを自分で構築し、ご自身の業務効率を上げてみませんか?

参考リンク

Watson APIs サービスカタログ

「学習済みWatson」が拓くコグニティブ・ビジネスへの近道

 

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