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DX時代に活躍する「優れた開発者になるために」できること
2021年8月26日
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DXの実現には優れた人材が不可欠
デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが加速している中、ビジネスを取り巻く環境やテクノロジーの目まぐるしい変化に適応できる人材が求められています。そんな中、単にITスキルやデジタル技術を持つだけでなく、さまざまな変革プロセスを通しお客様に新たな価値を提供できる優れた開発者が必要です。
では「優れた開発者」には、どのような要素や資質が必要なのでしょうか。すぐに思い浮かぶのは、高度なプログラミング・スキルや、先進的な開発ソリューションのノウハウなどが挙げられると思います。アジャイル型などの開発プロセスに精通していることや、各種のデジタル技術を活用する能力も必要とも言えます。
しかし、それだけでは、DXの進化に伴い複雑化するお客様の要件を満たし、多様な意見や価値を受け入れながら、システムの変革を推進していくことができる、とは断言できないのではないでしょうか。
IBMには、社外への公開が可能な「オープンバッジ制度」という認定制度があります。このオープンバッチの1つである Super Developer Japan に選抜された人は特別な開発者であり、DX時代に活躍できる優れた開発者の証でもあります。(本制度については、後段で詳しく解説)
このバッチを取得し、卓越したプログラム開発者として活躍する日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社(以下IJDS)の佐藤 哲也、勝俣 均、染谷 泰之の3名にインタビューし、DX時代に活躍できる優れた開発者となるためのヒントを聞きました。
これからの時代に必要な開発者の要素とは
佐藤 哲也、勝俣 均、染谷 泰之の3名とも、「高度なプログラミング・スキルや先進的な開発ソリューションの技術力があるだけでは、優れた開発者には到底なれない」と述べました。加えて必要となる要素は、以下の3つになります。
✔︎ 人の話を理解する力、文章力
✔︎ 学び、探究し続ける姿勢
✔︎ 情報発信力
いわゆる開発スキルとは異なり、人としてのあり方や、ビジネス・パーソンとして持つべきコア・スキルが重要だという点が興味深いところです。DX時代であっても、普遍的に求められるスキルは変わっていないとも言えます。以下に、それぞれについて詳しくご説明します。
1:人の話を理解する力、文章力
お客様に本当に必要とされるシステムの構築による、より価値の高いデジタル変革の推進は、お客様との対話の中で、「真のニーズは何か」「実現する上での問題点はどこにあるのか」を、私たちIT技術者が正確に理解するところから始まります。
またDXの推進という観点では、プロダクト・マネージャー、デザイナー、データ・サイエンティスト、クラウド・アーキテクト、セキュリティー・アーキテクトといった多様な役割のメンバーと協業していくケースが増えています。
佐藤 哲也は「卓越した技術力を活かしたサービスをお客様に提供するためには、同様のコミュニケーション力が必要となります。相手の話を深く正確に理解し、また自分の考えを論理的でわかりやすい言葉で相手に伝えることが、優れた開発者になる上で重要な要素である」と述べています。
2:新しい技術と多様性を受け入れ、探究し続ける姿勢
変化の激しいテクノロジーの世界の中では、最新の技術情報を学び、探究することはとても重要です。優れた開発者は、いつでもベスト・プラクティスでプログラムを書くために、自分のやり方に固執せず「世の中にはもっと良いやり方があるのではないか?」「他の言語で書いたらどうなるか?」といった可能性を求めて、情報収集することが必要です。
新しいテクノロジーの種類は多岐に渡り、同じ解にたどり着くまでの考え方やアプローチが多様化する中で、これという情報を見つけて収集する(インプットする)だけでなく、それを活用してプログラミングを試すこと(アウトプットする)を反復することが、より早く、確実に、幅広い技術に精通することにつながります。
勝俣 均は「新たなテクノロジーや多様なやり方を受け入れて、そこから自身で新しい価値を作り出していく原動力となるのは、常により良いものを作りたいという技術者としての本質的な探究心」と語りました。
3:情報発信力
「能力を持っていることと、それを他者に認知してもらうことは別もの」と、染谷 泰之は述べました。自分の持っている技術や知見を対外的に発信することで、自分の認知度が高まります。その結果、より価値ある仕事を得ることができ、社会に貢献できる機会に恵まれることにつながります。
逆に言えば、どれだけ高い能力を持っていても、誰からも認知されなければ、やりがいのある仕事やお客様や社会に貢献する機会も少なくなってしまう、ということです。数年前までは、開発者が情報発信する機会は、社内外セミナーでの技術発表や勉強会の主催などが一般的でした。
しかし、デジタル化が進む現代においては、Webコンテンツ、SNSや各種のデジタル・プラットフォームでのさまざまな形式での情報発信が可能になっています。皆さんも、最新のテクノロジー情報や専門家の知見をインターネットやSNSで手軽に見聞きした経験があるのではないでしょうか。
実際に、染谷 泰之は、プログラマーのための技術情報共有サービス・サイト「Qiita(@y-some)」で、自身の専門分野であるiOS開発のTipsやノウハウを多数公開しています。また、家族のために作成した自作のiPhoneアプリを無料提供するなど、技術で人や社会の役に立てるような活動を長く続けています。
IBMグループ内でもナレッジをシェアするためのデジタル、非デジタル・チャンネルが数多くあり、誰もが自由に技術情報の投稿や情報の検索が行えます。有益な情報を共有し合うことで技術者の輪が広がり、チームや組織を超えたつながりが生まれています。
優れた開発者をめざす皆さんへ
テクノロジーの世界は常に進化を続けているため、スピード感を持って最新のテクノロジーを習得していく必要があります。新しいテクノロジーを学ぶことや、これまで知らなかった技術を身につけるにあたり、苦労を伴うことも多いでしょう。ただ、優れた開発者になるためには、上で紹介した3つの要素のほかに、好奇心や技術を楽しむような心持ちも大切です。
IBMグループでは、社員のスキルを証明し可視化するために、IBMオープンバッジ制度(社外公開可)を取り入れています。社員の職務の種類や担当業界ごとに必要なスキルとレベルを定義し、認定条件を満たすとバッジが付与される、というしくみです。
このIBMオープンバッジの1つに、「Super Developer Japan」という認定があります。この認定は最新のテクノロジーに関する卓越した技能と経験、そして「Developerマインド」(前述の好奇心を持って技術を楽しむような心持ち) を持つ開発者のみが合格できる、最も難易度が高い認定の1つです。日本IBMグループ内でもまだ十数名しか認定されていませんが、今回インタビューしたIJDS佐藤 哲也、勝俣 均、染谷 泰之の3名とも、この認定を受けた特別な開発者です。
スキルを可視化するしくみは、社員の認知度を社内外で高め、組織や会社の垣根を超えた技術者同士のネットワークの広がりに繋がっています。お客様に対しても社員の専門性や知見を客観的に示す証となるため、ビジネスの獲得という面でも役立ちます。このような社内外に公開できる認定制度を利用し、ネットワークを広げることをお勧めします。
インタビューして筆者が気づいた3名の共通点は、好奇心に溢れ、新しい技術を学ぶことや、テクノロジーの進化を心から楽しんでいる、ということです。また、1つの言語でプログラミング・スキルをしっかり身につけてさえいれば、「軸は一緒、どんな新技術も必ず習得できる」という揺るぎない自信とともに、新しいプログラム言語や開発環境に取り組んでいる点も共通していました。
このような考え方は、レガシーな時代から現在に至るまで変わらない不文律かもしれません。開発者として活躍されている方やこれから開発者をめざす皆さんは、ぜひ自信を持って新しい技術の習得にチャレンジしてください。
テクノロジーの進化が加速し次々に新しい技術が登場する現代において、開発者のゴールは新しい技術を習得することだけではありません。習得した最新・最良の技術を使って何を成し遂げるべきか、お客様に何をお届けできるか、社会にどう貢献していくのかを、ひとりひとりが考え行動することも、開発者が目指すべき姿です。そして、その実践には、本記事で紹介した「人の話を理解する力・文章力」「学び探究し続ける姿勢」「情報発信力」などの普遍的なスキルが土台となります。このようなスキルを一朝一夕で身につけることは容易ではありませんが、優れた開発者に成長する過程における「大いなる楽しみ」と捉えて取り組んでください。
日本アイ・ビー・エム デジタルサービス株式会社
経営企画 ラーニング&ナレッジ担当。入社以来、製造系のお客様のシステム開発にシニアITスペシャリストとして従事。2021年より社内のラーニング担当者として、DX人材の育成やIBMの「学び続ける文化」の醸成をめざして活動中。
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