量子コンピューター

量子ボリュームの新展開

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IBM量子グループ、量子ボリューム32を備えた6台の新しいシステム

2020年のはじめに量子ボリューム32を達成してから 6か月が経ちますが、IBMは現在、量子ボリューム32の域に達した8台の量子コンピューティングシステムをIBM Q Networkのお客様へ展開しています。これらのうち6台は完全に新しいシステムで、3台の27量子ビットのFalcon(ファルコン)プロセッサーと4台の5量子ビットのCanary(カナリア)プロセッサーがあります。

ハードウェア設計の改善と新しい「ターゲットロータリー(target rotary)」パルシング技術により、量子ボリューム32のシステムの迅速な展開が可能になりました。ターゲットロータリーは、スペクテーター・エラー(spectator errors)を軽減させながら、2量子ビットの量子もつれ操作の忠実度を高めます。現在、IBMは22台のシステムをクライアントおよびユーザーに提供しており、いろいろな世代のシステムを用いて量子研究および開発のあらゆる側面が追求されています。

より大きく、より良い量子システムの構築を続けており、Falcon r4(パリ、モントリオール、トロント)、Canary r3(アテネ、ボゴタ、ローマ、サンティアゴ)、Penguin r3(ヨハネスブルグ)の設計による8台の量子システムが量子ボリューム32を達成しています。


 
より多くの量子ビットをもつ量子システムが開発されるにつれて、完全に汎用性のあるパフォーマンスベンチマークは、手に負えない問題になっています。デバイスの全体的なパフォーマンスは、忠実度の高さや量子ビットゲートを必要としていることはわかっています。しかし、システムの計算能力は、量子ビットの数、それらの接続性、隣接する量子ビット間の意図しない相互作用など、他のパラメーターによっても決まります。

これに対処するには、量子ボリュームなど包括的な性能評価指標を考える必要があります。ハードウェアから独立した性能評価指標は、量子ビットの数、接続性、ゲートエラー、測定のエラーなどを考慮して定義されるものです。コヒーレンス時間の増加や機器のクロストークの減少といった基盤となる物理ハードウェアに対する素材の改良、および、回路コンパイラの効率に対するソフトウェアの改良は、いずれも量子ボリュームの目に見える進歩につながります。

*IBM Quantumには、現在量子ボリューム32を実現する8台のシステムが含まれています。

スペクテーター・エラー(Spectator Errors)の削減

これらの新しくより強力なシステムは、ハードウェア設計と新しい制御シーケンスによってエラー上限値を下げることにより、スペクテーター・エラーを減らすための最新の取り組みを反映しています。

「スペクテーター」エラーは、量子ボリュームに対する、もう1つの重要な制限と言えます。ゲートに組み込まれていない隣接量子ビットは、ゲートが単独で実行された場合に無作為にシステムパフォーマンスを損ねる可能性があります。このパフォーマンスの低下の要因は、ゲート中のスペクテーター量子ビットとの不要な量子もつれや古典的なクロストークの形をとることがあります。

現在、IBMではスペクテーター・エラーを検出して軽減するための手法を研究しています。最近のarXivリリース、「Reducing unitary and spectator errors in cross resonance with optimized rotary echoes」において、「ターゲットロータリー」パルシング – 交差共鳴ゲート中のターゲット量子ビットに共鳴する補正パルス – がゲートエラーを修正することを示しました。このゲートエラーは、標準的なエコーシーケンスによって構成される交差共鳴ゲートに起因するものであり、ターゲットロータリーパルシングを用いることで、同時にターゲット量子ビットとそのスペクテーターの間の望ましくない相互作用を低減することができます。

これにより、今日のIBM Quantumシステムのパフォーマンスが向上するだけでなく、この論文で紹介している新しいモデルは、次世代のデバイスやさらなる研究に影響を与える内容を反映しています。実際の商用アプリケーションで量子アドバンテージを提供するために、量子ボリュームは依然として大幅に改善する必要がありますが、無視される傾向にあるエラーを対処するターゲットロータリーパルシングなどの手法により、ゴールに近づくことができます。

この記事のその他の寄稿者:IBM Research、Isaac Lauer、Easwar Magesan、Emily Pritchett、およびNeereja Sundaresan

※この記事は米国時間2020年7月10日に掲載したブログ(英語)の抄訳です。

IBM Fellow and Vice President, Quantum Computing

Doug McClureManager of Quantum System Deployment, IBM Q

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