量子コンピューター

量子プログラミング・コンテスト「IBM Quantum Challenge Fall 2022」開催および結果報告

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コンテストの結果のご報告

11月11日から11月18日まで、IBM Quantum Challenge Fall 2022が開催され、世界96カ国からの参加者がチャレンジし、多くの参加者がQiskit RuntimeQiskit primitive プログラムに初めて触れる中、1600人以上のアクティブな参加者が少なくとも1回ソリューションを提出し、594人が4つのLabの演習課題をすべてクリアしました。参加者はQiskit Runtimeを使って2つの専用7量子ビット量子プロセッサーで44億回以上の量子回路の実行を行いました。

ファイナル・チャレンジでは、これまでのIBM Quantum Challengeと同様に、最も効率の良い量子回路の構築を競い合いました。具体的には、シクロプロペニリデンの反応エネルギーの計算において、最も良いスコアを得るための計算アプローチを考案するという問題です。最終的なスコアは、こちらでご覧いただけます。

参加された皆様、またメンターとして協力いただいた皆様、ありがとうございました。
これからも、私たちと一緒にぜひ量子の旅を続けてください。


IBM Quantum Challenge Fall 2022が、11月11日(金)午後11時から11月18日(金)午後11時まで開催されます。

IBM Quantumが近年発表した2つの先進的なアプリケーション・ツール(Qiskit RuntimePrimitives)に焦点が当てられる予定です。今年のFall Challengeの参加者は、4段階の難易度に分かれた特別なミッションを通じて、量子コンピューターの最も有望なアプリケーションを探求し、8日間の学習を楽しむことができます。最終ミッションでは、他の参加者とハイスコアを競い合います。

私たちと一緒に、広大な星間雲を通り抜け、宇宙の果てまで探検してみませんか?謎の電波を解読し、巨大ブラックホールの重力から逃れる ー そのためには、4つの気の遠くなるような量子コンピューターの課題を解決する必要があります。

量子コンピューティングの技術は急速に進歩していますが、スケーラブルで真に耐障害性のある量子システムの実現までには、まだもう少し道のりがあります。IBM Quantumの研究者と開発者は、今日の小中規模でノイズありの量子コンピューターからでも有用な結果を得ることを可能にするツールやサービスの構築に懸命に取り組んできました。IBM Quantum Challenge Fall 2022 では、星座の中で最も明るい星のいくつかを、ユーザーの皆様により近くで見ていただくために、宇宙への旅を用意しました。

Qiskit Runtimeで宇宙を旅しよう

この秋のチャレンジでは、あなたは地球初の超光速宇宙船の船長として、一生に一度の大役を担います。人類を宇宙探査の新時代へと導くのがあなたの仕事です。その過程で、遠く離れた美しい世界や驚くべき宇宙現象など、素晴らしい発見に遭遇することでしょう。しかし、この長く困難な旅を乗り切るためには、IBM Quantum の Qiskit Runtime サービスと、それが可能にする新しいPrimitivesのプログラミング・モデルの助けが必要です。

Qiskit Runtimeは、量子プログラムを高速に実行するためのツールとして、2021年の春に初めて発表されました。クラウド対応の量子コンピューターは、そのわずか5年前の2016年に登場し、量子コンピューターがこれまで以上に広く利用できるようになりました。しかし、初期のユーザーは、量子ハードウェアと古典ハードウェアの物理的な距離が遠いことや、繰り返し実行するプログラムの実行のために他のユーザーと待ち行列を作らなければならないことで、パフォーマンスの低下や長い待ち時間に悩まされてきました。Qiskit Runtimeは、この2つの問題に対応しています。ユーザーがQiskit Runtimeにジョブを送ると、量子ハードウェアに物理的に近い実行に最適な環境にジョブが到着し、一つのブロックとして実行されるため、反復処理を必要とする量子アルゴリズムの実行速度が大幅に改善されるのです。

最初の導入から1年後、IBM Quantumの開発者は、Primitivesを追加してQiskit Runtimeをさらに強力なものにしました。Qiskit RuntimeのPrimitivesは、基本的な量子コンピューティングのタスク(エラー緩和の実行や、量子回路の出力における観測値の期待値計算など)を抽象化した、シンプルであらかじめ定義されたプログラムです。Primitivesは、量子ハードウェアからより関連性の高い情報を効率的に抽出するための出発点となり、量子コンピューターの基本的な処理に未経験の方でも、より簡単に利用できるよう管理された体験を提供するものです。

Challengeを完了するには、これらのPrimitivesを構築し、Qiskit Runtime環境を活用して、星間分子の反応エネルギーを計算したり、宇宙船の最適なルートを探したりする必要があります。その過程で、Qiskit RuntimeとPrimitivesの内部動作に精通し、機械学習、最適化、化学という3つの主要な量子コンピューター・アプリケーションの課題で、その知識を活用します。

Challengeの内容

Lab 1:Qiskit RuntimeとPrimitives

最初の演習チャレンジであるLab1では、基本的な量子回路を使った簡単な演習を解きながら、Qiskit Runtimeを利用して走らせるアプリケーションのなかでもよく使われる機能をAPI化したPrimitivesを使う方法を学びます。Qiskit Runtimeに全く慣れていない方でも、この演習で次の課題に進むための素養を身につけることができます。挑戦の前にQiskit Runtimeについてもっと学びたい方は、Qiskit Runtimeドキュメントのこれらのチュートリアルをチェックしてみてください。

Lab 2:量子機械学習

Lab 2では、量子機械学習(Quantum Machine Learning, QML)の基本を学んで、船長の航海日誌を解読し、任務に関する隠れた手がかりを発掘する必要があります。従来の機械学習は、データマイニングやアルゴリズム技術を用いて、データセットから意味のある洞察や予測を行うものです。QMLは、量子力学的特性を利用して、純粋に古典的な手法より学習が改善される可能性があります。Qiskit Machine Learningモジュールを使用すると、量子カーネル、量子ニューラルネットワーク、およびその他の機械学習モデルを迅速にプロトタイプ化することが容易になります。このパートでは、データエンコーディングと古典的な機械学習メソッドについて学び、量子カーネルを探求して、独自の量子分類器を構築します。

Lab 3: 量子最適化

Lab 3は、量子最適化の魅力的な世界を探求しながら、あなたのナビゲーションスキルを試します。数理最適化技術は、製造業や物流、エンジニアリングなど、世界経済のほぼすべての分野で役立っています。しかし、多くの有名で価値のある最適化問題(注)は、古典的な計算では扱いにくいものです。Lab 3では、Qiskit Optimizationモジュールの最適化アルゴリズムを使って、宇宙の清掃を行います。危険なスペースデブリを除去するための最も燃料効率のよいルートを見つけ出し、あなたの宇宙船を厄介な状況から脱出させます。

(注)最大カット問題と巡回セールスマン問題についてのチュートリアル

Lab 4:量子化学

今回のChallengeは、量子化学シミュレーションの演習で締めくくられます。ここでは、地球上では見たこともないような奇妙な星間分子を発見することができます。化学者は何十年もの間、古典的な計算を利用して分子の構造をモデル化し、シミュレーションしてきました。しかし、本質的に量子的な系を古典シミュレーションで行うと計算コストが非常に高くなります。また、古典コンピューターでは、大まかな近似に頼らなければ大規模な分子系をシミュレーションすることはできませんが、量子コンピューターはこれらの系をより正確に、効率的にシミュレーションできる可能性を秘めています。この最後のLabでは、Qiskit Natureモジュールを使って謎の分子の重要な特性を計算し、宇宙雲を発見するための重要な情報を取得して、あなたは故郷に帰ります。

エラー抑制とエラー緩和

上記のアプリケーションをマスターすることに加えて、量子コンピューティングに不可欠な2つの技術、エラー抑制とエラー緩和についても学びます。現代の量子ハードウェアは、ノイズやエラーの影響を非常に受けやすく、不正確な出力や予期せぬ出力が生成されシステム・パフォーマンスが制限されます。これらの制限を回避する方法の1つは、エラー緩和・抑制技術を適用することであり、さまざまな手法により、ハードウェアのエラーによる性能低下を最小限に抑えます。このFall Challengeでは、新進気鋭のエラー緩和、エラー抑制技術を紹介します。

自分だけの宇宙船の船長になろう

さて、あなたは船長として、この特別な旅にでかける準備ができていますか?ちょっと待ってください。宇宙船の名前は決まっていますか?単に「宇宙船」と呼ぶわけにはいきません。それはかなり退屈でしょう!

今年の IBM Quantum Fall Challenge の参加者として楽しみたいという方は、あなたの宇宙船に素敵な名前を付けて、ハッシュタグ #IBMQuantumChallenge を付けて Twitter で共有してください。また、Qiskit Slackワークスペースの#challenge-fall-2022 チャネルで私たちと共有することもできます。

Qiskit Slackにはこちらから参加できます:https://ibm.co/joinqiskitslack

Fall Challengeは、量子コンピューティングの世界への最初の旅になるのでしょうか?ご心配はありません。以下のリソースが、あなたの旅立ちをお手伝いします。

  • Qiskitテキストブック:この充実したオンライン・リソースは、一般的な入門トピックからQMLのようなより専門的で高度なトピックまで、幅広く学習することができます。
  • Qiskit Runtimeとは何ですか?:Qiskit Mediumのこのブログは、Qiskit Runtimeとは何か、そしてそれがなぜ重要であるかについての概要をお伝えしています。
  • 量子機械学習コース:QMLはLab2の主要トピックなので、この自習コースが役に立つかもしれません。Qiskitテキストブックに似ていますが、インタラクティブなクイズなどの便利なボーナス機能が含まれています。
  • QAOA を利用して、組合せ最適化問題を解く:Qiskitテキストブックの数理最適化を中心とした章です(Lab3のトピックです)。
  • VQEを利用した分子シミュレーション:Qiskitテキストブックの量子化学を中心とした章(Lab4のトピックです)。

IBM Quantum Fall Challenge 2022に興味を持たれた方は、今年後半に発表されるIBM Open Science Prizeに参加するのも楽しいかもしれません。近々発表されるIBM Open Science Prizeのニュースにもご注目ください。では、宇宙でお会いしましょう!


本記事は「Get ready for the IBM Quantum Challenge Fall 2022」を抄訳したものです。

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