プロジェクトマネジメント

プロジェクト・マネージャーに問われる「挑戦力」

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黒田 恭司

著者:黒田 恭司

Partner, Global Business Services, Complex Program Management Initiative Leader

ここ数年は、プロジェクトを取り巻く環境が急速に変化していることを実感するとともに、それをリードすべきプロジェクト・マネージャー(以下PM)に求められる対応も大きく変化してきています。チャレンジングな環境においてPMに意識してほしいと私が感じていることについて、お話します。

プロジェクト・マネージャーが学ぶべきことの増加と変化

クラウド、ビックデータ、AI、IoTなどを始めとしたテクノロジーの急速な変化はもとより、業界の垣根を超えた破壊的なイノベーションにより、企業は次の成長領域を探し続けなければ生き残っていけない時代が到来しています。様々な試行錯誤やチャレンジを繰り返す中、これまでにも増して最新のテクノロジーを含むITの活用(IT人材の活用)は、必要不可欠である以上に、クリティカルなものとなっています。

その結果、取り扱うプロジェクトの特性も変化してきました。これまでの日本独特のカスタムSIからパッケージソフトウェアベースに、1社独占の大規模プロジェクトからマルチベンダープロジェクトに、長期のウォーターフォール開発から短期のアジャイル開発の領域が増加、最新のAI、オートメーション技術を活用したプロジェクトが増加し、プロジェクトの進め方はもとよりテストに関する考え方やそのやり方も変化する一方、セキュリティーへの脅威が一層増し、IT人材に求められるスキルやケイパビリティも大きく変化しています。

PM知識体系であるPMBOKのプロセス数増加の図

このような様々な変化へ追随するため、PMが学ぶべきことは増え続け、変化してきました。それはPMIが発行するPM知識体系であるPMBOKのプロセス数が増えるとともに、ページ数も増加していることを見れば一目瞭然です。

加えてプログラムマネジメント、ポートフォリオマネジメント、アジャイルメソッドに関する知識体系が増加、様々な実務ガイドが発行され、デザインシンキングのプロジェクト・マネジメントへの活用など、様々な試行と研究が行われています。そして複雑化するステークホルダーマネジメントは、これまで以上にその重要性を増しています。

当然ながらリスクマネジメントの観点においても、新たに目を向けるべきリスクが増え、PMは各エリアのプロフェッショナル(コンサルタントやITスペシャリスト、 アーキテクト、データアナリスト、デザイナー等)やステークホルダーとタイムリーかつ的確にコミュニケーションをとって、プロジェクトを健全に運営していくことを求められています。

このような環境は、PMにとって、非常にチャレンジングな環境であるとともに、大きな成長の機会であると捉え、これまで弊社のPMコミュニティーの中でも様々なイニシアチブやタスクを推進し、PMのベーシックスキルはもとより新たな領域へのチャレンジを促進してきました。

挑戦することを諦めない「タフなプロジェクト・マネージャー」を増やしたい

失敗を恐れるあまり新しいことに挑戦をしなかったり、困難なシチュエーションを避けていては、この環境変化の中で生き残ることは難しいでしょう。リーダーとして考えていることは、失敗を恐れてチャレンジさせないのではなく、失敗からいかに立ち上がれるかを見せていく(まず自分たちがコケても何度でも立ち上がって挑戦していく姿を実際に見せる)ことで、後進の人たちに『失敗からどう立ち直るのかが大事なんだ』ということに気づいてもらい、自分で立ち上がり方を考えてもらうことが大事だということです。

黒田 恭司周りからは賛同されにくい状況においても、それがプロジェクトにとってベストであると判断すれば、敢えて困難なシチュエーションに飛び込み、それをリードする、そんなことは当然ながら簡単ではありませんが、そういうタフなPMを増やして行きたい。そのためにもPMコミュニティーでは、「ストレッチアサイン」(現在の能力では少し困難であると思われるプロジェクトにアサインすること)とメンタリングをセットで推進してきました。

プロジェクトの成功率というのは意外にも低いことは様々な統計から知られています。プロジェクトは有機的であり、唯一無二のものであり、完全に同じものは一つとして存在しません。そしてPMには様々な期待やプレッシャーが押し寄せます。そういう意味では、簡単であるわけがないのです。

「自分ができることしかやらない人は、決して失敗することはない。失敗をしていないというのは、自分の能力を超える課題に挑戦していないことの証拠でもある。」そう自分にも言い聞かせながら、誰よりも率先して、失敗を恐れず、プロのPMとして何かを少しでも良い方向に変えていきたいと思います。

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