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ヘルスケア事例 Profility社:クラウド・ベースの分析で患者と介護提供者の急性期後ケアを支援
2019年10月25日
カテゴリー ITコラム
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手術を終えて退院した患者のその後の回復期間や再入院のリスクには、急性期後のケアが大きな影響を及ぼします。Profility社は、IBM Cloudテクノロジーで高度なアルゴリズムを実行し、患者にとって最善の結果をもたらし、かつ、利用者やサービス提供者にとって最低額で提供できる可能性が高い、急性期後ケア施設を提案します。
Business Challenge
顧客が急性期後ケアの意思決定を手際よく行えるようにするために、Profility社が必要としていたプラットフォームは、複雑な患者データを管理でき、同時にHIPAAプライバシー・ルールおよびセキュリティー・ルールへ準拠していることでした。
Transformation
Profility社は、IBM Cloudantを利用して高度なセキュリティーを持つ専用のIBM Cloud環境に半構造化データであるカルテを保存し、強力な予測モデルにより適切なケア・パスを提案します。
- 患者にとっての利点
自宅に近い施設で高品質な治療を受けられる可能性が高くなります - サービス提供者にとっての利点
入院日数を短縮し、再入院リスクを低下させるような急性期後ケアを計画する手助けとなります - 費用負担者にとっての利点
得られた情報から、急性期後ケアの費用やリスクをより正確に評価することができます
Business challenge story
平均という名の呪縛
多くの国の医療システムが、高齢化する国民に適切かつ実現可能な治療を提供するという課題に直面しています。高齢者になると、通院頻度が上がり、継続的な服薬が増え、手術を必要とする可能性が高くなり、その後の回復にも長い期間が必要になると考えられます。その結果、社会における高齢者の比率が高くなるにつれて、医療費も大幅に上昇すると考えられます。
医療費を押し上げる最大の要因は、急性期後ケアが、特に高齢者に対して不十分であることです。手術に成功した後、患者が比較的早期に退院する場合がありますが、適切な急性期後ケア施設で必要な治療が得られないと、回復が遅れたり、さらには再入院につながったりすることがあります。入退院を繰り返すと、患者や家族にとって身体的にも、精神的にも、感情面でも負担が大きいだけでなく、費用負担者やサービス提供者が負担する医療費も膨れ上がります。
Profility社は、個人に応じたケア・プラン作成が専門であり、まさにこの問題を解決するために設立されました。当社の創業者が、検索エンジン広告で使用されるアルゴリズムと同じアルゴリズムを医療分野にも応用できることを見出したのです。
「今、急性期後ケア・プランの成否は運任せになってしまっています。というのも、平均的な患者に最もよく当てはまるという前提に基づいて作成されているからです。しかし、平均的な患者など実際には存在しません。状況は人それぞれなのです。当社のアプローチでは、患者ごとに固有のプロファイルを作成した上で、同様の特徴を持つ患者の治療履歴を分析します。こうすることで、各個人に対するさまざまなケア・パスから期待される成果について、パーソナライズされた予測が可能になります。」(研究開発 副社長 Ohad Barzilay氏)
Profility社はInterRAIとの協力を開始しました。InterRAIは、高品質なデータを収集して解釈することでエビデンスに基づいた臨床方針を策定することに注力する、研究機関および実務機関のネットワークです。Profility社は、InterRAIのデータ・セットを用いて予測モデルを学習させることでアルゴリズムを調整し、急性期後ケアに関する非常に精度の高い提案を提示できるようになりました。
「次の段階は、当社のアルゴリズムをシステムに組み込んで、医療提供者が患者の評価に使用できるようにすることでした。しかし、このソリューションを市場に投入するには、技術的にも法規制上も難しい課題を解決しなければなりませんでした。特に、データのプライバシーやセキュリティーの面でHIPAAなどの法令に準拠していることを容易に証明できるソリューションを設計する必要がありました。」(研究開発 副社長 Ohad Barzilay氏)
“患者にとって最善のケア・パスを評価するために、カルテを保存して分析する必要があります。IBM Cloudantが理想的なソリューションだと分かりました。”
Profility社 研究開発 副社長 Ohad Barzilay
Transformation story
製品開発の加速
「主な問題は、顧客から届いた要求データをどのように処理するかでした。患者にとって最善のケア・パスを評価するには、カルテを保存して分析する必要があります。これらの記録は、さまざまな半構造化形式で入ってくる上に、データは機密を保持しなければならない。柔軟性が高く、セキュリティーが極めて強固なデータベースが必要でした。そしてIBM Cloudantが理想的なソリューションだと分かりました。」(Ohad Barzilay 氏談)
IBM Cloudantはフルマネージドの NoSQLドキュメント・ストアであり、IBM Cloudでもオンプレミスでも動作します。データのプライバシーとセキュリティーの要件を満たすために、Profility社は、IBM Cloud上の専用基盤で Cloudantを実行することに決定しました。この方法であれば、物理的にも論理的にも、他のいずれのシステムからも独立した環境で患者データを保持できます。Cloudantは、複数のサーバーのクラスター全体にわたってデータを分散することで、水平スケーラビリティーと耐障害性を確保しています。また、スキーマレス設計であるため、さまざまな形式のカルテを取り込めます。厳格にリレーショナル構造に正規化する必要はありません。
ソリューションのバックエンド基盤として、Profility社はIBM WebSphere Application Serverを使用しています。オープンソースであるOpen LibertyとIBMのテクノロジーを組み合わせることで、Javaアプリケーションの開発とデプロイが容易になり、スリムなランタイムにより、占有メモリーが抑えられて起動が高速になるため、少ないリソースで済みます。このJavaアプリケーションは、フロントエンドの Webポータル(Microsoft .NET で作成)のほか、ビッグデータとのマッチング用のコア・エンジン(C++ で作成)と統合します。
顧客は、Webポータルにログインして対象のカルテをアップロードするか、顧客のシステムにソリューションを直接統合することができます。Profility社のソリューションは、新規に要求を受信すると、関連するデータとメタデータをCloudantに保存した後、独自のアルゴリズムを使用して、その患者の情報を、過去の患者の医療履歴を蓄積した大規模なデータ・セットと比較します。類似事例とその結果を精査することで、その患者に最適な急性期後ケア施設の種類や、効果的と考えられる治療計画の詳細を提案できます。
また、施設滞在中の変化を追跡し、改善状況に応じてリアルタイムで提案を更新することで、ケア提供者の意思決定を支援できます。さらに、このことがケア・パスに対する質の高いデータ・ソースとなり、今後さらに予測精度を向上できます。
“HIPAA要件を満たす十分なセキュリティーを備えたシステムを構築するのは容易ではありません。こんなに早く立ち上げられたのも、IBMのサポートがあったからです。”
Profility社 研究開発 副社長 Ohad Barzilay
Result story
急性期後ケアの静かなる革命
IBMの支援を受けて、Profility社は、プロトタイプの作成からIBM Cloudでの本番稼働までを、わずか数週間で達成できました。非常に短い期間で顧客との関係を構築し、価値を届けられるようになったわけです。
「HIPAA要件を満たす十分なセキュリティーを備えたシステムを構築するのは容易ではありません。IBM Cloud への移行に費やした時間の多くは、セキュリティー標準の組み込みと検証でした。しかし、IBM の上級アーキテクトの助言があったおかげで本当にスムーズに進みました。こんなに早く立ち上げられたのも、IBM のサポートがあったからです。」(Ohad Barzilay氏談)
医療や保険業界の顧客がProfility社のソリューションを使用し始めて数カ月たちますが、将来につながりそうな成果が得られています。同社は、このソリューションによって医療従事者が短時間で急性期後ケア・プランを作成でき、病院も患者が早期に退院でき、適切な施設に移動できると確信しています。また、より適切な治療を提供し、患者の自宅から近く、質の高いケア施設を提案することで、平均入院日数の短縮や再入院率の低下を顧客にも示すことができるだろうとProfility社は予想しています。
「最善の急性期後ケアを判断できるようにし、医療費が低下し、成果が上がることで、当社のソリューションが持つ価値を顧客に証明できて、大変満足しています。しかし本当のメリットは、当社のソリューションから得られる知見を通じて、患者が必要なサポートを得て早く健康を取り戻し、家族の元に1日も早く帰れることなのです。」(Ohad Barzilay氏談)
Profility社について
本社はマサチューセッツ州ボストン。Profility社は、医療および保険業界の顧客がケア・プランの作成にあたって最善の意思決定を行い、治療とその成果について深い知見を得られるように支援する技術プロバイダーです。同社は、プロファイリング・アルゴリズムを使用して患者ごとの最適なケア・パスを見つけ出します。数値や平均値に頼るだけの状況を脱し、パーソナライズされたケアを目指しています。
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