量子コンピューター

賞金付き量子コンテスト「Open Science Prize 2022」の発表

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今年のIBM QuantumのOpen Science Prizeの課題は、量子状態の準備です。

IBM Quantumは今年、3年目となるOpen Science Prizeを発表します。このコンテストは、量子コンピューティングの最も差し迫った課題に対するオープンソースの優れた解決策を表彰するアワードです。現在、応募を受け付けており、締め切りは、2023年の4月15日です。

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今年のチャレンジは、参加者の皆さんに、量子状態を準備するという概念に基づいた問題に取り組んでもらいます。量子状態の準備とは、例えば、全ての量子ビットが|0>のような基底状態の量子系を、既知の、しかし任意の状態に変化させることです。これは、単に量子ビットの値を設定するよりもはるかに困難なことです。量子状態の準備は、量子計算の基本的な要素ですが、実際には非常に困難な場合があります。

参加者は、変分量子固有値法(VQE)アルゴリズムを使ってカゴメ格子におけるハイゼンベルグのスピン1/2モデルの非常にフラストレーションの高い基底状態を準備します。言葉にすると一文ですが、この問題には面白い物理学がたくさん含まれています。カゴメ格子は、六角形と三角形によるテセレーションです。結晶格子は自然界に多く存在しますが、カゴメ格子は、科学者が量子的な性質を研究するために研究室でシミュレーションしているものです。格子には多くの興味深い物理学があります:格子を構成する粒子の磁気スピンは、その構造上、競合する力の影響を受け、そして全体としては巨視的に奇妙な振る舞いをします。

VQEアルゴリズムをIBM Quantum の16量子ビットのFalconプロセッサーのヘビーヘックス・デバイスに実装します。このデバイスはOpen Science Prizeで使われるデバイスの中では最も大きなもので、より多くの量子ビットを扱うには独自の課題があります。しかし、怖がらないでください。テンプレートとなるNotebookの中に、参考となる資料を用意しています。

最優秀オープンソース・ソリューションには、$3万米国ドルの賞金が、準優勝には$2万米国ドルが贈られます。参加者は5人までのチームを組むことができます。

今年3年目となるのIBM Quantum Open Science Prizeは、2020年にIBM Quantum の研究員によって量子コンピューターの差し迫った問題に対するオープンソース開発でハードウェアを意識した解決策を開発するために始められました。2020年のチャレンジは、2つの問題が参加者に提示されました:SWAPゲートのエラーの減少とIBM Quantumのハードウェアにおいてグラフ状態を準備する際の忠実度の向上でした。2021年のチャレンジは、3粒子系におけるハイゼンベルグモデルのハミルトニアンの時間的ダイナミクスをシミュレーションする問題でした。

これまでの問題は、量子コンピューターの分野全体での応用の可能性を元に選出された問題であり、今年のチャレンジも同様の指針に基づいて選ばれています。量子アルゴリズム、量子機械学習、量子誤り訂正、量子物理学研究のような量子コンピューターの応用の多くは、忠実度(フィデリティ)の高い量子状態の準備ができるかどうかに依存していています。この特定の量子状態に関する物理学は、更にとっておきの面白さのある学問です。

2023年の春に発表されるこのチャレンジのソリューションが、量子コンピューティングの最先端の技術として、またこの分野全体の発展を推進する研究成果となることを期待しています。


本記事は「IBM Quantum’s Open Science Prize returns with a quantum state preparation challenge」を抄訳したものです。

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