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「未来の考古学」より〜IBM 405 会計機
2022年11月8日
カテゴリー ITコラム
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額縁に収められているのは、500年以上美しい状態で保たれる写真「プラチナプリント」。
そして、プラチナプリントで印画されているのは、「プラグボード」と呼ばれるものの一部です。この「プラグボード」という呼称は、実は正式名称ではありません。正式名称は、「コントロール・パネル」です。
Windowsをお使いの皆様にとって馴染み深いコントロール・パネルは、システムのさまざまな設定を構成する機能をまとめた画面。一方、こちらのコントロール・パネルこと、プラグボードが果たす役割は、プログラミングです。
プラチナプリントで印画されているのは、長方形に配列された「穴」と、「穴」同士をつなぐ配線。しかも、冒頭に述べたように、一部です。では、全体は、どうなっているのでしょうか。
以下の写真が、プラグボードの全体です。そして、プラチナプリントで印画されているのは、中央の部分となります。
このプラグボードにおいて、穴同士を配線することがプログラムであり、1934年発売された「IBM 405 会計機」にセットすると、配線に従って電気的な接続が行われました。
今、「IBM 405 会計機」と書きましたが、「IBM 405 英字式会計機」と呼ばれることが多いようです。そして、IBM 405 会計機は、メディアアーティスト 落合陽一氏の監修による展示「未来の考古学」(日本IBM 本社事業所内)の一角に設置されています。
「未来の考古学」そのものについては、公式サイトと、別記事を参照いただきたいのですが、「未来の考古学」において、IBM 405 会計機は、以下の写真のように展示されています。
IBM 405 会計機の上方には、3Dファントムを用いた空間映像が映し出されます。映像の中では、配線によるプログラミングで機械が動くことを喜ぶかのように、蝶がプラグボードの前で舞っています。(*日本IBMアカウントのTwitterにおける動画投稿も参照ください)
1934年発売されたIBM 405 会計機は、特定の順序に分類・整理された「パンチカード」の数字の穿孔内容を所定の様式に従って、用紙上に印刷します。
そして、数字だけでなくアルファベットも印刷できたことから、「英字式会計機」とも呼称されたのです。(「パンチカード」については、別記事を参照ください)
IBM 405 会計機は、アメリカの有力な生命保険会社のほとんどで採用されました。そして、日本でも、日本生命様と帝国生命様(現在の朝日生命様)に採用され、営業や事務処理における様々な統計の作成に使用されました。
ちなみに、1930年代は世界恐慌の真っ只中。当時のビジネスの主流は買取ではなくレンタルであり、レンタルであるがゆえにIBM 405 会計機は安定した収入をもたらしたそうです。
IBM 405 会計機は、後継機であるIBM 407 会計機とともに、日本IBMのビジネスを牽引していました。
この写真は、日本IBM 50年史に掲載されている1953年のビジネスショー(かつて開催されていた事務機器・OA機器などの展示会)の日本IBMブースの様子です。社名看板の下の小さな看板に「TYPE 405 英字式会計機」と書かれていることから、IBM 405 会計機を出展していたことがわかります。
ちなみに、この写真が撮影された1953年は、IBMの最初のコンピューターの1つで、もっとも売れた「IBM 650」が発表された年でした。その観点では、1953年は、IBM 405 会計機が「未来の考古学」になり始めた瞬間だったのかもしれません。
なぜならば、「Data Processing Machine」というカテゴリーを冠して誕生したIBM 650が、パンチカードのデータを処理する役目を新たに担い、同じく1953年に発表された事務処理用途向けコンピューターであるIBM 702とともに、コンピューター時代の到来を告げたとも言えるからです。
セミナー受講や商談などで、日本IBM本社事業所を訪れる機会がある方は、ぜひ、事前に、応対する日本IBM社員に「未来の考古学」の展示見学について相談なさってください。
筆者は、本記事で、「IBM 405 英字式会計機」ではなく、頑なに「IBM 405 会計機」と書き続けました。理由は、写真の通り、製品ラベルには「英字式」とは書かれていないからです。
関連情報
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