ダイバーシティー&インクルージョン

男性も女性も「介護をしながら働く」を当たり前に

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「すべての『個』が輝く働き方のできる組織づくりのために」

女性がキャリアを継続していく上で直面する、さまざまな課題を社員自らが確認し、目標を掲げ、結果に結びつく施策を提言していくために、日本IBMでは1998年に「Japan Women’s Council(※以降JWCと称する)」を発足しました。女性活躍の推進活動を実施するにあたり、このブログでは「すべての”個”が輝く働き方のできる組織づくり」を「介護」の観点からご紹介します。


槇 あずさ

著者:槇 あずさ
グローバル・ビジネス・サービス 製造・流通統括部門 インダストリープラットフォーム&ブロックチェーンチーム

入社以来、コンサルタントとして複数のプロジェクトに従事し、お客様の新規ビジネス創出を支援してきました。現在はIBMが展開しているプラットフォームビジネス推進および、顧客自身のインダストリープラットフォーム構築を支援しています。
また2019-2020期のJapan Women’s Council 第8期メンバーとしても活動し、女性がさらに輝ける環境作りに励んでいます。

今回は、父の病気をきっかけに考え始めた「働くことと介護は両立できるのか?」について等身大の思いをお話しします。

 
あなたが介護と聞いて思い浮かべる映像はどのようなものですか。思い浮かべた映像は「介護者が女性」という方が多くないでしょうか。

厚生労働省の「平成28年 国民生活基礎調査の概況」によると、主な介護者は「同居」の家族が最も多く58.7%に及びますが、「同居」の主な介護者の「性別」をみると、男性が34.0%、女性が66.0%となっており、女性が2倍ほど多い割合になっているのが現状です。

私自身、中学・高校時代に母とともに祖父母の介護を経験しましたが、介護をする環境の中で、当たり前のように「介護は女性がするもの」という雰囲気や固定概念に包まれている感覚がありました。しかし、社会人となった今、父の病気をきっかけに考えるようになった「介護」について、この当たり前に不安を覚え始めました。食べていくためには働かなければならないからです。共働き世帯が増え、もはや専業主婦が多い時代ではない今、働きながら介護するケースや、働きながら育児や子育てをしつつ介護するケースをどう乗り越えていくのか、少しずつ考えていきたいと思います。

50代から介護に向き合う人が多い現状

内閣府の「平成30年版高齢社会白書(全体版)」によると、要介護者から見た主な介護者の続柄は下図の通りであり、介護者は50代から割合が多くなっています。


出典:内閣府ホームページより

おそらく多くの30代、40代の方々はまだ先の話と考えているのではないでしょうか。実際にはその可能性が高いですが、では50代で急に両親の介護に直面した場合、自分が働きながら介護を始めているイメージが湧きますか。介護への備えはできていますか。
私は全くできていませんでしたが、父の病気をきっかけに備えを始めました。

具体的には以下の3点を実施してみましたので、ご紹介します。
(1)国の制度を確認する
(2)会社の制度を確認する
(3)自分が介護を始めることを想定した場合に、最初に実施すべきことは何かを知る

介護に関する国の制度

まずは介護に関する国の制度を確認してみました。育児・介護休業法によると、2種類の規定があります。介護休暇と介護休職です。

介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者に対して与えられる休暇です。1年度で5日間取得ができます。要介護状態にある対象家族が2人以上の場合は10日を限度として取得が可能です。

一方、介護休職とは、2週間以上の期間にわたり常時介護が必要な対象家族を介護するための休業です。対象家族1人につき通算93日に達するまで、3回を上限として分割取得が可能です。

この93日間は介護をするために使う期間というよりも、初動にあてるために用意されているものです。初動とは、「親に介護が必要になってから、介護のプロたちによる適切な介護が開始され、子どもの介護負担が最低限になるまで」を指します。具体的には、地域包括支援センターやケアマネージャーなどの専門家に相談し、ケアプランを立てる、住環境を整える(手すりやスロープの設置)、福祉用具(介護用車椅子や介護用ベッド等)をレンタル・購入する、介護サービス(デイサービスや訪問看護等)を利用するなどを行います。

他にも、介護保険など制度やサービスはたくさん用意されています。ぜひ一度国の制度を確認されることをお勧めします。

日本IBMの介護への取り組み

次に会社の制度を調べてみました。日本IBMでは、介護休暇や介護休職の制度を設けています。また在宅勤務の取り組み 「e-ワーク制度」も充実しています。さらに、人事主催の介護セミナーも定期開催されています。介護セミナーは被保険者および被扶養者の方は無料で受けられるうえ、e-learningでも受講が可能です。このように制度やセミナーは用意されていますが、利用が進んでいるのかというとまだまだ発展途上といえそうです。というのも、介護を理解するための知識習得が進んでいない為です。

社員が急に介護に向き合うことになるということは、企業は想定していない介護休業や介護離職によるビジネスリスクを抱えていることを示唆します。そのため、企業として社員への啓蒙活動を熱心に行う必要があり、介護を社員一人ひとりの問題とするのではなく、企業として介護に備えていく覚悟が必要であると考えます。

また、介護の話題が自然に出たり、介護している仲間を当たり前のようにサポートしたりするというカルチャーがまだ十分に育まれていない点を実感しています。介護は男女問わず誰もがいずれ直面します。子育て同様、介護も経験者に「ちょっと相談」できるという雰囲気を企業内に醸成していく必要があるでしょう。

介護の準備で一番大切なのは「親」を知ること

自分が介護を始めることを想定した場合に、初動完了までにどのくらい会社を休む必要があるか期間を把握することが大切です。先に見たように国の制度では93日間なら介護休職を取得することが可能ですが、一般的には初動完了までに93日間以上かかる人が多いと言われています。

では、初動にかかる期間を減らすにはどうしたら良いのでしょうか。

介護の専門家に伺ったところ、この期間を減らすには「介護の知識を得る」ことと「親のことを知る」ことが重要であると学びました。親の年齢などの基礎情報に加えて、介護に関する知識と自分の親のことをどれだけ理解しているか(主治医、既往症、交友関係、財産状況など)で、この期間を短縮できると教えていただきました。

そこで私は「親のことを知る」ために、両親と一緒に彼らの「自分史」を作成しました。私は両親とよく話すので彼らをよく理解していると思っていました。しかし、「自分史」を作る過程で、両親について知らないこと、理解していなかったことの多さに驚きました。自分史作りでは両親の幼少期からの写真を見ながら整理するのですが、幼少時代の話などは初めて聞くことも多く、改めて両親の価値観や人柄に触れることができました。

両親の介護が必要となった際は、両親の価値観を大切にし、ケアプランを作成することができれば良いと考えています。そこで、まずは介護準備の一環として、ご両親ときちんと時間をとって会話することをお勧めします。

これからの介護サービスに求められること

介護生活を想像してみると、予約だらけの実態に気づきます。まず、介護が必要な親のために訪問介護とデイサービスを予約し、次に配食サービス会社に配食を予約し、続いて通院の予約をし、さらには通院のためのタクシーを予約します。そしてオムツなど日用品の購入・配送も予約しますし、月に1回はショートステイを予約します。それぞれのサービスが独立して提供されている場合は、複数のサービスから良いと思うサービスを選択し、サービス事業者に問い合わせをし、個人情報(氏名、住所、電話、場合によっては病状や服薬情報、アレルギー情報など)を伝え、予約をし、支払いを行う必要があります。想像するだけで面倒でフラストレーションが溜まることでしょう。

一つの解として、このような小規模多機能サービスを連携させ、アプリで予約や支払を行え、かつ要介護度やケアプランに応じたサービス提供ができる、という介護プラットフォームを構築していくことができるかもしれません。介護保険、親の年金、子供の給与、を加味して無理なく支払える範囲でのサブスクリプションサービスにしてもらえるのも良いと思いました。

最後に女性が担い手になりがちな介護ですが、実は男性の介護者も平成3年から平成28年で2.4倍と増加傾向にあり、女性だけではなく、男性も直面する課題といえます。JWCの活動は、女性が直面しやすい課題を解決することで、結果的に男性も含めたすべての人が働きやすくなる、過ごしやすくなる会社や社会を創ることを目指しています。

これからも「介護をしながら働く」が当たり前にできる社会を創るために、尽力していきたいと思います。当記事が、皆さんにとって近い将来を直視いただく、または周りで介護をしながら働いている人にサポートの手を差し伸べていただくきっかけになれば幸いです。

参考ページ

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