テクノロジー・リーダーシップ

女性技術者の未来像「キャリア」がいつまでも描けない貴方へ

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曽和 信子

著者:曽和 信子

グローバル・ビジネス・サービス事業本部 執行役員、COSMOSアドバイザー
1985年システムズエンジニア職で入社。メガバンクのお客様を中心に、一貫して金融システムの構築プロジェクトに携わる。難易度の高いコンプレックス・プロジェクトのプロジェクトマネージャーとして多くのプロジェクトの成功に貢献。

3人の大学生の母であり“~Enjoy your work & life~ 仕事をする人生を楽しもう”を掲げ、女性技術者コミュニティCOSMOSのアドバイザーとして、多くの女性技術者をサポートしている。

 

最近は社内外で「キャリア」についてお話をさせていただく機会が増えました。
特に女性やワークライフバランスというサブテーマを選ばれることが多いのですが、私自身がいつからキャリアを意識するようになったのかと聞かれると、答えは「ここ10年くらいでしょうか」となります。今の私を知る人は、30年以上仕事を続けてきてのここ10年ですから「えー、20年以上もキャリアについて考えてこなかったの?」と驚かれることでしょう。そんな私がどうして「キャリア」に意識して仕事をするようになったのかを紹介します。

IBMの女性技術者コミュニティCOSMOSの活動では「日々の仕事や育児にひたすら頑張っていて、先のことなど考えられない」「今のままでいいのか、まだ先でいいのか?一歩が踏み出せない」など、たくさんの悩みを聞くことがあります。そんな女性技術者が勇気を持って、自分らしく仕事を選び人生を楽しみながら活動していく一助になればと、アドバイザーとして活動しています。

キャリアデザインその前に、子育てと仕事の両立に悩む日々

最近は学生の頃からキャリアデザインをし、仕事や会社を選ぶために時間をかけて準備する時代です。若い方々が真剣に自分の未来を考え、描くことはとても大切なことだと思います。

ただ、私の場合は仕事や会社を選ぶにあたり、一生仕事を続けられるという点は譲れなかったものの、学生気分も抜けず働くということの現実感を持つことは困難でした。
それは仕事を始めてからも続きました。譲れなかった一点の「一生仕事ができるITエンジニア」を選びましたが、優秀な先輩や同期の中でなかなか成果が出せず、目の前の仕事を片付けることに追われ、焦りとコンプレックスばかりが増していったことを思い出します。自分に向いているのか、やりたいことなのか、一生できるのか、悩む日々を過ごしました。

30代で3人の子供を出産し育児との両立に追われ、どちらも中途半端にしかできず、仕事も育児も楽しいと思えない私にとって「キャリア」は耳にしたくない言葉になっていきました。最初に書いた「キャリアについて考えてこなかった」というのは正しくなく、むしろ遠ざけていたというのが合っているかもしれません。

では、いつから私が「キャリア」を考え、描けるようになったのか?答えは、仕事が面白い、この仕事が私のやりたいことだと知った時でした。

キャリアと向き合うタイミングは人それぞれ

一番下の子が1歳になった40歳間近のことです。
あるプロジェクトが途中で大きな見直しをすることになり、プロジェクトを推進するためのPMO(Project Management Office)チームのリーダーにアサインされました。これがプロジェクトマネジメントとの出会いでした。品質とコストとスケジュールを与えられた要件と手にした資源でいかに達成するか、常に変化する環境をどうマネージするか、そして日々発生する課題に最善の解決策を見出せるか、それはとても厳しい仕事であるものの、チームとともに結果を導けたときの何物にも変えがたい喜びを得られる仕事でした。

一人前のプロジェクトマネージャーになるまでにはさらに数年を要することになりましたが、私はここから自分の「キャリア」と向き合うようになったのです。そしてプロジェクトマネージャーとしてのスキルを身につけ、実績をあげて、難しいプロジェクトに挑みたいと強く思うようになったのです。

誰にでも面白い、やりたい仕事が見つかると思います。そしてそれが見つかるタイミングは人それぞれでしょう。プロの音楽家やスポーツ選手に代表されるように、幼い頃に面白い、これがやりたいと思える仕事に出会った人は、うらやましいなと感じてしまいます。そして、その仕事で成功していればなおさらです。

とはいえ、人生100年時代。長く働く可能性があると思えば、あわてることもないでしょう。
私の亡き母は、結婚により一度会社を辞めたものの、50歳で契約社員として再就職して生き生きと働いていました。育児と仕事を両立し、むしろ働くことで自らを輝かせている姿は子供から見ても誇らしいものでした。女性やシニアの活用が話題になっていますが、私の原点となるロールモデルはすでに近くにいたのです。このように、歩みを止めなければ「キャリア」は未来へ広がっていくのだと勇気をもらうことができました。

働く人生を選んだからこそ得られる豊かな人との出会い

働く人生で得られる貴重な財産は「人」です。
これまで数え切れないほどのお客様や上司、プロジェクトの仲間と出会いました。仕事を通じてですから、厳しい、難しい関係になることも少なくありません。自分の弱いところ、ダメなところをさらけ出さねばならず、心が折れそうになることもあります。

それでも不思議なことに、それらを乗り越えてお互いの成長や成功を願う関係になれると、その絆はとても強くなります。私がこうして30年もIT業界で頑張っていられるのは、そのようなたくさんの絆に支えられ、今でも繋がっている人々と切磋琢磨しながら進んでいるからです。

さらに、仕事をしていなければ知り合うのことのない、社内外の人々にたくさん出会えます。私は、ダイバーシティの活動で出会った女性技術者たちや企業・大学の方々、イベントや教育の場を共にするグローバルのリーダーたち、社会貢献活動の一環で接する学生の皆さん、様々な出会いに恵まれました。特に自分が進むべき道を見つけられない時に、気持ちを和ませてくれるアドバイスや、前向きに切り変われるアイデアをもらうことができます。その結果、仕事も人生も楽しく、豊かになっていると感じています。

IBMの女性技術者コミュニティCOSMOSのアドバイザーとして、いつもお話しすることがあります。今そこで「キャリア」が描けずに悩んでいたり、毎日を過ごすことで精一杯だったり、でもチャンスを待っている、そんなあなたへ、焦ることはありません。
“~Enjoy your work & life~ 仕事をする人生を楽しもう”

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