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持続可能な未来にエネルギーを | 再エネの実例と使用例

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化石燃料からの移行を進めるために、再生可能エネルギーを求める国や企業、個人が増え続けています。

太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる世界の発電能力は、2023年には50%増加しました。

そしてドバイで開催された国連のCOP28気候変動会議では、110カ国以上が2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍にすることに合意し、クリーンエネルギーへの移行への投資額は2023年に過去最高の1兆8000億米ドルに達しました。

 

当記事では、再生可能エネルギー資源は実際にどのように利活用されているのか、そしてどのような産業や地域で再生可能エネルギーへの移行が進んでいるのかを見ていきます。

そして今後エネルギーシステムや技術が未来に向けてどのように進化していくのかをご紹介します。

 

■ 再生可能エネルギーとは?

再生可能エネルギーは、グリーンエネルギーと呼ばれることもあり、太陽、風、雨、地熱、海洋潮流などの天然資源から生成される自然由来のエネルギーを指します。

化石燃料(石油、石炭、天然ガスなどの非再生可能なエネルギー源を含む)が有限資源であるのに対し、再生可能な資源は時間の経過とともに補充され、完全に使い果たされ枯渇する危険性のない「無尽蔵」なものと考えられています。

再生可能エネルギーは、地球温暖化の原因であり気候変動の主原因と広く考えられている二酸化炭素やその他の有害な温室効果ガス(GHG)を排出する化石燃料よりも、環境への影響が少ないものです。

一般的な再生可能エネルギーの種類は以下の通りです:

 

太陽: 太陽光は、「太陽光発電」と「集光型太陽熱発電」の2つの方法で電気と熱に変換されます。

太陽エネルギーを生産する最も一般的な方法である太陽光発電(PV: Photovoltaic)は、ソーラーパネルで太陽光を集め、電気に変換します。

より大規模な用途には、集光型太陽熱発電(CSP:Concentrating Solar Power)方式があり、反射鏡で太陽光を流体で満たしたレシーバーに集め、熱エネルギーを発電に利用します。

 

風力: 風力タービンや大規模な風力発電所は、空気中の運動エネルギーである風の力を利用して発電します。風力発電には、地上に設置する陸上風力発電と海上に設置される洋上風力発電があります。

 

水力: 水力発電は、潮汐力や、水域やダムなどの水の位置エネルギーを利用して発電タービンを動かし電力を生成します。再生可能電力の60%は水力発電によるもので、世界最大の再生可能電力供給源となっています。

 

地熱: 地下のマグマの熱エネルギーから発生する熱蒸気や炭化水素蒸気を利用して発電します。また、地熱ヒートポンプ(GHP)は、家庭やオフィスの暖房、冷房、給湯に利用されています。

バイオマスは、再生可能エネルギーとみなされる場合もありますが、不完全な再生可能エネルギーとみなされることも少なからずあります。

バイオマスエネルギーとは、有機物やその副産物(木材や廃棄物などの有機物を含む)を、電気あるいはエタノールやバイオディーゼルなどのバイオ燃料へと変換することを指すものです。

しかし、バイオマスの生産は温室効果ガスを排出するものであり、また森林伐採の原因ともなります。

また、原子力も炭素排出量が少ないことから「クリーン」なエネルギー源とみなされることがありますが、ウランは有限資源であり再生可能なエネルギーではありません。

 

■ 再生可能エネルギーで世界をリードする国々

各国政府は、エネルギー消費需要を満たすため、代替エネルギーの生産と利用を拡大するための取り組みを進めています。

化石燃料への依存を減らし、エネルギー・ミックス(電源構成)を多様化することは、二酸化炭素排出量を減らして地球温暖化を抑制する国際的な取り組みに貢献することであり、生態系と生物多様性を守ることへとつながります。

また、再生可能エネルギー源は地元で入手可能かつ地政学的緊張の影響を受けにくいため、自国のエネルギー安全保障と独立性を高めようとする国々にも魅力的です。

さらに、多くの政府は、再生可能エネルギーへの投資と雇用創出が経済を改善する方法であり、大気汚染を減らすことで公衆衛生を向上させる方法であると見なしています。

以下、いくつかの特徴的な国を見ていきます:

 

アイスランド: ユニークな地熱景観で知られるアイスランドは、地熱エネルギーの利用で世界をリードしています。アイスランドの電力の85%以上は、水力発電や地熱発電など、地域の再生可能資源によるものです。

 

ポルトガル: 2050年までにカーボンニュートラルを実現することを、ヨーロッパで最初に宣言した国のひとつがポルトガルです。ポルトガルは昨年10月末から11月にかけての連続149時間、太陽光・風力・水力発電を組み合わせて同国の消費電力を再生可能エネルギーのみで供給しました。

つまり6日間以上連続で、再生可能エネルギーで発電されたエネルギーが国の消費需要を上回ったのです。

ウルグアイ: ウルグアイは風力発電と太陽光発電に大規模な投資を行い、現在では電力の98%近くを再生可能エネルギーでまかなっています。ウルグアイの迅速な脱炭素化と大規模な再生可能エネルギーへの移行は、2000年代初頭の燃料価格高騰に端を発しています。

 

■ 再生可能エネルギーによる未来のスマートシティ

市町村をはじめとした地域社会も、環境への影響を評価し、エネルギー計画にグリーンエネルギーを取り入れています。電力コストを相殺し、より高い信頼性を提供するために、再生可能エネルギーを地域プログラムに利用しているのです。

分散型エネルギーシステム、マイクログリッド、スマートグリッドを通じて、地域社会は電力調達の選択肢の多様化と、より効率的な電力使用を目指したシステムの構築・管理を推進しています。

これらのシステムは、自然災害やサイバー攻撃など、地域の電力供給に支障をきたすような事態が発生した場合にとりわけ役立ちます。

 

ビルの新規着工にエネルギー効率の高いグリーンビルの義務付けや、古いビルに再生可能エネルギーの導入による近代化を促す奨励金を出すなどの取り組みを行なっている都市も少なからずあります。

また、太陽光発電の街灯を設置したり、電動スクールバスやその他公用車のEV化を進めたりすることで、自然エネルギーの自治体インフラへの組み込みを進めている市区町村もあります。

 

■ ビジネスにおける再生可能エネルギーの活用

企業や組織がより持続可能な電力源である再生可能エネルギーを調達するには、いろいろな方法があります。大規模で直接的な方法としては、自家発電設備に投資し、太陽光パネルや風力タービンを設置することでしょう。

より一般的な方法は、多くの電力会社から販売されている、再生可能エネルギー源から発電されたグリーン電力を購入することです。あるいは、電力購入契約(PPA)、つまり太陽光発電所や風力発電所などの再生可能エネルギー発電事業者と企業・組織間で、長期電力購入契約を結ぶ方法もあります。

これらは企業にとってはコスト削減となり、グリーン電力供給者にとっては経済的安定性をもたらします。

企業・組織は、以下をはじめとしたさまざまな用途に再生可能エネルギーを利用できます:

 

操業のための電力: 製造業では、風力エネルギーや太陽光発電が工場や倉庫の運営・管理に用いられています。農業分野では、太陽光発電による灌漑システムなどの技術革新が化石燃料への依存を減らし、運営コスト削減に役立てられています。

近年注目されているのがテクノロジー業界です。AIをはじめとした情報技術の利用が拡大し、データセンターのエネルギー大量消費が注目される中、デジタル分野に携わる企業や大手データセンター事業者は、環境への影響を抑えるために再生可能エネルギーを利用しています。

 

エネルギー効率最適化: エネルギー使用を最適化し、二酸化炭素排出量をさらに削減するためのテクノロジーへの投資も進んでいます。スマートグリッドとIoTデバイスを統合し、より適切なエネルギー使用と管理に取り組む企業が増えています。

 

持続可能なサプライチェーンの構築: とりわけ大企業は、自社事業だけでなくサプライチェーンに目を向けることで、スコープ3排出量に大きな影響を与えることができます。

世界では、部品、材料を提供するサプライヤーに対して、再生可能エネルギーの使用やエネルギー効率の高い手法の採用を求める動きが加速しています。

 

コンプライアンスとレポーティング: 再生可能エネルギーの利用は、企業が環境報告義務要件を満たし、気候変動との闘いにおける地域および国際的な目標への貢献に役立ちます。

 

ブランド価値向上: 環境に配慮した製品を提供し、持続可能性を優先する企業を支持する消費者はますます増え続けています。こうした取り組みを推進することで、企業は業界のリーダーとしての地位を確立し、環境意識の高い顧客を引き付けることができます。

 

新たな収益源の創出: 再生可能エネルギーの発電量が消費量を上回った企業は、固定価格買取制度(FIT)やネットメータリング制度を利用して、余剰分を売電することができます。また、発電した電力に対して再生可能エネルギー電力証書(REC)を得ることもできます。

さらに、エネルギー供給に付随する設備や技術、サービスを包括ソリューションとして企業に提供する「エネルギー・アズ・ア・サービス(EaaS)」モデルを採用する企業も増えており、併せてEaaS提供側のビジネス機会も増えています。

 

■ 再生可能エネルギーが織りなす未来展望

今後、再生可能エネルギー貯蔵とグリッド統合の技術革新は、グリーン電力の活用に多くの新しい扉を開くでしょう。そしてAIと機械学習は、エネルギー利用の最適化を一層支援していきます。

国、企業、地域社会、そしてもちろん個人も、再生可能エネルギーを組織や事業運営に、そして日常生活に組み込んでいくことを進めています。そしてその活動は持続可能性とイノベーションの結合をより強め、持続可能な未来への道をより確かなものへと変えています。

あなたの組織の未来への足取りはいかがですか? より大きな一歩で業界を、そして社会をリードしてみてはいかがでしょうか。

 

IBMは、サステナブルで強靭なインフラとインテリジェントなオペレーションから、戦略や持続可能なサプライチェーン構築から気象リスク管理、エネルギーやGHG排出量の低減とESGレポーティングまで、あらゆる局面における持続可能性の向上を支援いたします。

 


当記事は『Renewable energy in action: Examples and use cases for fueling the future』を日本の読者向けに編集したものです。

 

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