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清水嘉子: 「シン・BtoB営業」と「リーダーシップ鍋理論」 | #6 Unlock
2022年06月25日
カテゴリー Client Engineering | IBM Sustainability Software | Unlock
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大きな変革のときを迎えようとしている社会・経済に対し、どのような取り組みを行ない、その先にどのような未来を描こうとしているのか−−。
日本IBMのシニアリーダーたちが率直にその想いを語るシリーズ「Unlock(アンロック)」。第6弾はNTTグループを担当する営業チームを率いる清水嘉子さんに登場いただきます。
清水嘉子(しみず よしこ) 日本アイ・ビー・エム NTT事業部 事業部長 Managing Director |
村澤 賢一 (むらさわ けんいち) 日本アイ・ビー・エム 執行役員 テクノロジー事業本部 クライアント・エンジニアリング担当 |
もくじ | 清水嘉子 Unlock
1. シン・BtoB営業 | 問われるのは「価値を創り出せるかどうか」
2. 「リーダーシップ鍋理論」と圧倒的マイノリティー体験
3. デバイスのない世界とメタバース入社式
4. コーチングと若者へのメッセージ
5. サステナビリティとウェルビーイング
1. シン・BtoB営業 | 問われるのは「価値を創り出せるかどうか」
村澤:清水さん、今日はお時間ありがとうございます。まずは現在のお仕事についてお話いただきたいんですが、清水さんは今年からNTTグループ様をご担当されていますよね。
現在のNTTグループ様をどのように捉えられていますか? そして私たちIBMがどのようにお客様のお役に立てるとお考えですか?
清水:今日はよろしくお願いします。NTTグループ様は多岐に亘る事業戦略を展開され、時に私の想像をはるかに超えるテーマに触れさせていただくこともあるお客様です。ですから、私が十分理解しきれていないところや、まだ一方的な私の片思いというところもあるかもしれません。
それを前提とさせていただいた上でお話しさせていただくと、その中核にあるのはやはりIOWN構想(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)という革新的次世代情報通信基盤です。
そしてこのIOWN構想は、NTTグループ様だけではなくそのまま日本の多くのテクノロジー企業にとっての情報通信基盤となるものだと思いますし、私たちにとってもそうだと思います。
そんな中で、私たちIBMが、そこに少しでも価値を付与できる「コ・クリエーション(共創)」のパートナーとなりたいと強く思って活動を進めているところです。
→ 参考: IOWN | NTTグループの取組み
村澤:清水さんは長年営業畑を歩んでこられたと思うのですが…どうですか? 今この時代をどう捉えられていますか?
清水:今、まさに「シン・BtoB営業」改革の真っ只中ですよね。私は法人営業について日々情報を集め、考え学んでいますが、本当に大きな転換期にいるということを身をもって感じています。そして悩んでもいます。
私は去年まで、航空業会のお客様担当営業チームをリードしていたんですが、コロナ禍という前代未聞の事態に、お客様自身の「法人営業」の在り方が大転換していくのを目の当たりにしました。大規模組織改革を行い地域活性化事業に本腰を入れていくなど、数週間前までは考えられなかったようなことが次々と起きていました。
そして私たちIBMも、大変革の真っ最中ですよね。村澤さん率いる「クライアント・エンジニアリング(CE)」はその際たるものじゃないですか? デザイナーや開発者やサイエンティストなど、これほどまでに多才な人たちが揃った大規模な共創推進組織が法人営業チーム内に組織されるなんて、ちょっと前まで考えられませんでしたよね。
→ 参考: クライアント・エンジニアリング事業紹介セミナーレポート
村澤:「シン・BtoB営業」−− なるほどたしかにそうで、本当に変わってきましたよね。
たとえば以前であれば、グローバルチームのマネージャーとのミーティングは「ビジネス・レビュー」となって「今期はどれだけの売り上げ見込みがあるのか」「足りない部分に対してどういう行動を取る予定か」という話が中心でした。
それが今では「どれだけコ・クリエーションしたのか」「価値共創のためのガレージ・セッション*を何回行ったのか」という会話に変わりましたよね。
清水:そうですね。これまでにさまざまなお客様とお話しさせていただき、改めて強く感じさせられているのが法人営業は「プランナー」へと変化したということです。
それまでの「モノやサービスを売る人」だった時代から「未来を企画する人」へと変わりましたよね。そこで問われるのは「価値を創り出せるかどうか」です。
お客様も「間違っていてもいいから、新しいアイデアを持ってきて欲しい」と変化されましたよね。「一緒にこういう価値を共創しませんか?」というアイデアを持ってこない営業には、時間を割いてくれなくなってきているんじゃないでしょうか。
2. 「リーダーシップ鍋理論」と圧倒的マイノリティー体験
村澤:清水さんが「組織作り」や「リーダーシップ」において意識されていることを教えてください。
清水:まだ、日々悩んでばかりではいますが、リーダーシップに関してはここ数年で少し考え方が変わってきました。以前は「指揮者」や、「監督兼プレイヤー」的な役回りを理想のリーダーとして捉えていましたが、今は「私は大きな鍋になった方がいいんじゃないか?」って考えています。
いろんな具材がそこに加わることで全体がさらに美味しくなる、味わいを増していく。そんなクリエイティブで美味しい料理が生まれる土台である「鍋」っていうリーダー像…ちょっと変ですかね?
村澤:鍋! いや、ちっとも変じゃないです。新しいですね! 「リーダーシップ鍋理論」、いいですね〜!
清水:それから、ダイバーシティー&インクルージョン(D&I)を突き詰めたいなとは思っていますね。
私は10年来のJWC*メンバーで、ここ二期は連続でサブリーダーを務めさせていただいているんですが、でも、どこまで本当にD&Iを日々の業務に埋め込むことができているかと考えると、まだまだ心許ないところもあるなと思っています。
それで、2019年からは男性社員にもJWCに参加していただいていて、より多様な視点を取り込んで、もっとD&Iの重要性を広く訴えていこうとしているんですけど、やっぱり最初は、圧倒的多数が女性という集団の中でのコミュニケーションに、男性社員は戸惑いを感じるみたいです。
でも、この「圧倒的マイノリティー体験」は双方にとってとても貴重なものになっていると思うんです。そしてこの体験からの気づきや洞察がJWCの大きな、そして良質な資産になっているなと感じています。
D&Iって言いますけど、相手が「居心地悪い」と感じていたら、それはイングルージョンになっていないってことですもんね。
*JWC(Japan Women’s Council) | 1998年に日本IBM社内に設立された、女性がキャリアを継続していくうえで直面するさまざまな課題を検討していくための諮問委員会。現在10期目を迎えている。
→ 参考: 女性の活躍を支援する取り組み
村澤:D&Iですが、私も昨年からPwDA+(ピープル・ウィズ・ダイバース・アビリティー)という、障害のある社員と彼らを理解・支援するアライ(Ally)社員が一緒に活動をするコミュニティのスポンサーをやらせていただいているんです。
それらの点においては、日本IBMは日本社会においては先駆けてさまざまな取り組みを展開している会社だと思いますが、必ずしもそれがあらゆる場面に染み込んでいるかといえば、そんなことはないですよね。
彼らにどんどん活躍してもらって、認知多様性が企業を、そして社会をリードする源泉になるといいですよね。
清水:本当にその通りですね。PwDA+のメンバーは、仕事や社内タスクの中でも、私では気づけないような視点からのディスカッション・テーマをもたらしてくれることも多くて、本当に頼りになるんです。
この間も、何気ない行動にひそむマイクロアグレッション*について話をしてくれました。
*マイクロアグレッション | 「小さな攻撃性」を意味し、無意識の差別や偏見、無理解から、人の心に影を落とすような言動や行動をしてしまうこと。「微細な攻撃」とも訳される。
3. デバイスのない世界とメタバース入社式
村澤:冒頭にNTTグループ様のIOWN構想についてお話しいただきましたが、それ以外で注目されている技術動向、あるいは気になっている社会動向などはありますか?
清水:少し関連する話となりますが、「デバイスのない世界」、いわゆる「デバイスレス」が気になっています。最近、携帯電話ショップの閉店が話題になりましたが、実際「デジタルとの架け橋」だった店舗窓口がなくなっていくと、多くのシニアの方たちがとてもお困りになると思うんです。
年配の方や何らかの制約をお持ちの方、そして新しいテクノロジーに疎い方たちでも安心して暮らせる日常づくりは大切だと思います。今はちょっと…スマホ偏重社会になり過ぎなんじゃないかって気がしています。
村澤:おっしゃる通りですね。電車に乗っていてもみんな手元ばかりを見ていて、窓の外にキレイな桜が満開になっていても気がつきもしない…なんてシーンも目にします。
清水:はい。それから、やっぱりメタバースも気になっています。先ほどまるで他人事のように「新しいテクノロジーに疎い方たち」って話しましたが、これに関してはまさに私がそうで…。ゲームなどを一切やらないこともあって、VRとかメタバースとか全然使いこなせなくって。
今年のメタバース入社式でも、恥ずかしながら私だけみんなと同じ動きができなかったんです…。
村澤:私も「え、ジャンプ?! どうやるの?」「集合って…どうやってそっちに向かえばいいの??」ってなりました。やっぱりこうした新技術については若い世代の方が浸透や馴染みが早いですね。
4. コーチングと若者へのメッセージ
村澤:若い世代と言えば、一部においてはミレニアルズやZ世代は「失敗を恐れる」そして「コスパ意識が高い」という特徴を持っているとも言われています。
このUnlockシリーズでは毎回彼らへのメッセージやアドバイスをいただいているんですが、清水さんはどんなメッセージを彼らに送られますか?
清水:私には小学生の息子が2人いるんですが、ラグビーとバスケットボールをやっていて、毎日たっぷり練習して帰ってきます。そして試合となれば勝ったり負けたり。スポーツですから、常に勝てるわけじゃない、当たり前ですよね。
でもそれじゃあ、負けたからって「練習時間」を無駄だった、「コスパ悪い」と捉えるべきかって言ったら、絶対そんなわけないじゃないですか。シュートが入るのだって、いいタックルができるのだって、練習しているからですよね。
息子たちが負けたり失敗したりして落ち込んでいるときには、そうやって「でも、そこで得ているものだってあるんじゃない?」って、偉そうにコーチングしていますが、自分にとっての学びの方が大きいです。
村澤:清水さんは名コーチですね! ご自身もコーチングを受けたりはされているんですか?
清水:先日初めて社外の本格的なコーチングを受けました。5カ月間のオンライン・1on1で、これがすごく良かったんです。
これまでIBM社内でずっとコーチングやメンタリングを受けてきましたが、弱気なことや前向きじゃないことはやっぱり言えずにいたんです…正直、「鎧」を脱げずにいましたが、社外のコーチには「本当の自分」をさらけ出すことができました。「私、本当はxxxが辛くて…」って初めて話すことができて、とても感動しました。
村澤:そうだったんですね。それこそが本当のコーチングですね。そうやって「本当の自分」が出せるような環境づくりにも、先ほどのD&Iの取り組みなどが果たす役割は大きいのかもしれませんね。
それでは、IBMの若手社員や中途入社社員へのメッセージもいただけますか?
清水:新たにIBMに加わった社員には「まずチーム全員と喋ってみたら?」って伝えたいですね。それから、部門外であっても役職が上であっても興味を惹かれた人がいたら、どんどん1on1での会話をリクエストすることをお勧めしたいです。
だって、同じチームや部門だけの「閉じたコミュニケーション」だけになってしまうと、見えなくなってしまうものもあると思うし、辛くなっちゃう場面だってあると思うんです。
それに、IBMの魅力はおもしろい人がたくさんいることだと思うんです。だから、どんどん新たな出会いを味わって欲しいですね。
村澤:そうですよね。特に中途入社の方に多いようなんですが「え、そんな上司を飛び越えるようなことしていいんですか?」や「役職が上の人に失礼にあたらないでしょうか?」と考える方も少なくないようです。まったく気にする必要ないですよね。
清水:「若手や中途入社社員のそうしうた申し出を断る人はIBMにはいないから、相手の役職とか所属とかそんなの気にせず、シニアリーダーでも社長の山口さんでも、どんどん1on1を申し込んでみなさいよ」って伝えたいですね。
5. サステナビリティとウェルビーイング
村澤:清水さん、今日はいろいろとお話しいただきありがとうございました。未来に向けてたくさんの示唆をいただきました。そして清水さんが、これから一層グレートリーダーへの道を邁進されるんだろうなと強く感じました。
清水:とんでもないです。私の方こそ考えが整理できました。正直に言えば、私自身も、自信を持てないことも多いです。…でもしっかりと考えた上で腹を決めたのであれば、「間違っているかもしれないけれど、考え抜いて決断した自分の努力は本物だ」と、自分自身を認めてあげるようにしているんです。
JWCでもときどきこういった話をするんですけど、それが失敗であっても負けであっても、自分の取り組みの価値を見直して、言語化したりポジティブな捉え直しをしたりすることで、一気にそれまでの悩みを解消して、ブレークスルーしていく人って少なくないんですよね。
私も、息子たちと同じように、これからもどんどん負けたり、失敗したりすると思います。でも自分の努力やチャレンジをきちんと認めて、自分で自分を「ヨシヨシ」って褒めて、前に向かう原動力にしていくことが大切だと思うし、私自身がそういう力をもっと身につけていかなくちゃって思っています。
今日は本当にありがとうございました。
サステナビリティとウェルビーイング。この2つはこれからの未来づくりに −− そして社会づくりと組織作りにも重要な役割を果たすことでしょう。清水さんとの対話は、複数の観点から改めて強くそれを実感させてくれるものでした。
そして私も、清水さんの「リーダーシップ鍋理論」に倣い、美味しい料理が次々と生まれるでっかい寸胴鍋になれるよう、一層精進したいと思います。(村澤)
TEXT 八木橋パチ
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