オートメーション
急激なトラフィック増に対して、安心をお届けするマルチCDNサービス | Jストリーム×IBM
2024年09月13日
カテゴリー IBM Partner Ecosystem | オートメーション | 顧客体験の最適化
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「インターネットアクセスの需要増における対応策のデファクト・スタンダードを目指す」
そう語るのは、株式会社Jストリームの碓井将仁氏と桃井健太氏です。
株式会社Jストリームは数多くのITサービス事業者にマルチCDNサービスを提供しており、その制御エンジンとしてIBM NS1 Connect(以下、IBM NS1またはNS1)を採用しています。
IBMがNS1を買収後、2024年3月に世界初のIBM NS1組み込みサービスの提供を開始しました。
目次
- 株式会社Jストリームについて教えてください
- IBM NS1を採用したキッカケとは
- マルチCDNサービスに必須の技術的要素とは
- IBM NS1がマルチCDNサービスにもたらしたメリットとは
- マルチCDNサービスに対するユーザーの反応は
- 今後のIBMへの期待と取り組みについて
碓井 将仁 | 株式会社Jストリーム プラットフォーム本部 プロダクト推進部長
Jストリームに新卒で入社後、Webエンジニアを経て自社サービスの導入・伴走支援を担当。大手放送局やエンタープライズへの動画配信プラットフォームの導入を数多く手がける。現在はプリセールス部門を統括し、組織を牽引している。
桃井 健太 | 株式会社Jストリーム プラットフォーム本部 プロダクト推進部 シニアマネージャー
15年以上、インフラエンジニアとして活動しJストリームに入社後、セールスエンジニアに転身。入社後は、自社CDNサービスであるCDNextやマルチCDNサービスの導入支援に従事。
ー 株式会社Jストリームについて教えてください
(宮崎)
今日はいくつか質問をさせていただこうと思います。まずはこの場を与えていただきまして、ありがとうございます。ぜひ色々とコミュニケーションさせてください。
まずは御社のビジネスについて、IBMに関係ある部分もない部分も含めて、教えていただければと思います。
(碓井氏)
まず弊社の紹介からですが、弊社は1997年に日本初の動画配信サービス会社として設立しております。取引先の実績としましては、業種業界問わず多岐に渡っていまして、メディアのお客様、エンタープライズのお客様を含めて、大体年間1200社くらいのお客様との取引をさせていただいております。
特に強みとしているところが動画配信で、これが事業の中軸になるのですが、国内屈指の大規模配信の設備を、自社で構築していることを強みとしており、最先端の案件を数多く手掛けています。
また、動画配信だけではなくその周辺のコンテンツの制作やウェブサイトの構築運用など、周辺のサービスも幅広く対応しておりますので、お客様のビジネス課題に対してワンストップでご提供できることを強みとしている会社です。
(宮崎)
結構幅広いですね、大変勉強になりました。勝手に昔のイメージで思い込んでもっとテクノロジーに寄っている感じだと思っていました。
ー IBM NS1を採用したキッカケは何だったのでしょうか
(宮崎)
次の質問に移らせてください。
御社の様々なビジネスがある中で、CDNのビジネスがあると思いますが、そこで抱えていた課題ですね。どんなビジネス的な課題、技術的な課題があって、IBM NS1を使うきっかけになったか教えていただきたいと思います。
(碓井氏)
最初にCDNの役割についてですが、インターネット上のコンテンツを、高速かつ効率的に配信するためのテクノロジー、サービスとなります。
CDNを使うことによって、自社サーバー、オリジンサーバーとも呼ばれていますが、このサーバーの負荷軽減や可用性の向上、ウェブサイト等のコンテンツ配信サービスのユーザーエクスペリエンスの向上に一役買うようなサービスで、すでに広く普及しています。
弊社でも独自に構築した国産のCDNを提供しておりまして、業界業種問わず多くのお客様にご利用いただいております。CDNは広く普及していますが、近年のコンテンツ配信の傾向として、 いくつか特徴が見られるようになってきております。
まず、動画配信やゲームコンテンツなどに代表されるような、 大容量のデータを配信するサービスが5年10年前から比べて急激に伸びております。 世の中のインターネット・トラフィックは非常に増えてきているという事実がございます。
さらに、広告キャンペーンやプロモーション、SNSやニュースサイトで頻繁に情報が発信、拡散される事も多くなった事で、Webサイトに急激かつ突発的なアクセスが日常的に発生するようになりました。これらを単一のCDNで受けきる事に不安を持たれるお客様もおり、Webサイトの遅延やアクセス不可がビジネス機会の逸失やブランドのイメージダウンを招きかねない点が課題であったため、解決に向けたソリューションの提供を検討しました。
検討のポイントとしては2点あり、1つ目は大規模なアクセスにも耐えられる可用性、2つ目はCDNパフォーマンスを計測し、最適な通信経路でコンテンツを選択するインテリジェンスを搭載できることです。この2つの機能を兼ね備えているDNSサービスを探した結果、NS1を採用することになりました。
(宮崎)
碓井様ありがとうございます。ビジネス的な課題に加えて経緯がとてもよく理解できました。
ー マルチCDNサービスに必須の技術的要素とは
(宮崎)
次に採用の決め手になった技術的な観点も伺いたいと思います。桃井様、いかがでしょうか。
(桃井氏)
一番はNS1の実績に着目しました。海外商材であり、もちろん海外の大きな企業、新聞など情報を扱っているような企業で採用があり、且つ我々日本の企業で著名なところもすでに使い始めていたというのがありました。
次に技術的に重要なのがDNSのベース、名前解決でCDNが使えるというところですね。対照的にHTTPベースで切り替えるCDNだと、我々のお客様側で既存システムの改修が必要になってくるというのがあります。DNSベースの場合、ドメインの情報は毎回準備する上でコントロールしやすいため、DNSベースでマルチCDNが実現できることが大きなポイントの1つだと考えました。元々のサービスにおいてもDNSベースであったため、そこから引き継ぐという意味でも、DNSベースで制御できると都合が良かったという理由もあります。
あとはCDNのスコアですね、各CDNが今どの国でどのくらいのパフォーマンスが出ているかを計測して、そのデータを活用して出し分けができることです。これができないと、お客様が求めている品質やパフォーマンスを実現できないので、ここが決め手の部分かなと思います。
(江田)
今、CDNがどのような状況かを計測しているという話がありましたが、IBM NS1ではPulsarのデータを使ってCDNの状況を計測する機能が実装されています。御社のサービスでは、さらなるバリューを出すために、独自のメトリックを使われているという話があったと思います。
(桃井氏)
そうですね。Pulsarに関して言えば、データが2つあって、1つ目はコミュニティデータというものがあります。これは、NS1を使っているお客様全体から、特に大手のCDNに対して、IBM NS1が取得して、パフォーマンスの指標を提供しているものですね。 2つ目は、プライベートデータと呼ばれるもので、我々がJavaScriptのタグを埋めて、自ら計測していく形ですね。
前者だと、グローバルに有名な大手企業のCDNサービスの計測データは含まれていますが、国産のCDNである弊社サービスのCDNはどうしてもそこには入っていません。要するに、自分達で計測するしかないわけですが、IBM NS1には自分達で計測する仕組みが備わっています。これは我々がサービスを提供する上で必要な部分だと思います。
あと、実は意外とコミュニティデータというか、規模が大きいデータだと、 実際にそのサイトに見に来ているユーザーの状況と本当にマッチしているのかが正直わからない部分が多いので、自分達で計測する、つまりユーザーがアクセスした度に計測したデータの方が信頼度が高いだろうと考えています。そのため、我々は基本的に自分達で計測するプライベートデータを活用しており、より良いCDNの出し分けという部分に繋がっていると思います。
(江田)
ありがとうございます。基本は御紹介いただいたからというきっかけだというお話でしたが、その中でカスタマイズとして御社のCDNのユーザーデータを計測できるというところが、決め手になったと理解しました。
(桃井氏)
そうですね。先ほど言った通り、DNSベースであることと、計測ができることは必須でしたので、この点がしっかりできるというところで選定していますね。ちょうど僕が入社をした時に、NS1を採用するかしないかという判断のタイミングでしたので、僕が実際に検証をしていたのですけど、最初は本当に何も分からないながらでNS1のサポートとも色々やり取りをさせていただきました。
プライベートデータを取るときに、あまりにアクセスが少ないとデータが全然入ってくれなくて、頑張って一人でネットワーク環境の設定をやっていても全然入ってくれなくて、どうしたらいいのですかとNS1に聞いて、こういう状況じゃないとなかなかデータが生まれないね、みたいな密接なやり取りをしていました。
(宮崎)
そこでNS1のエンジニアとのやり取りがあったんですね。
(桃井氏)
だいぶしました(笑)。
あれができない、これができないという質問にどうしたら解決できるのかたくさんアドバイスいただきました。
弊社は海外商材をいくつか扱っていますが、その中でもNS1は非常にやり取りしやすいパートナーです。 英語での問い合わせだとコミュニケーションの難しさがあり、1回のやり取りで回答が届くまで3日かかることがよくありますが、NS1は対応品質が高く、回答も時間帯を合わせればすぐに届くので非常に助かっています。今もIBMのケースを作成してサポートに問い合わせしていますが、買収後も変わらず対応が良くて安心しています。
ー IBM NS1がマルチCDNサービスにもたらしたメリットとは
(宮崎)
では次の質問です。
IBM NS1が御社マルチCDNサービスにもたらしたメリットを教えてください。
コンセプトを実現できたっていうのが一番大きいのかなというふうに思うんですけど。
(桃井氏)
我々が動画配信でCDNを提供しましょうとした場合、例えば世界的なスポーツイベントでの動画配信、ライブ配信をやりますよっていう話になった時に、弊社のCDNだけだと帯域の問題があって、実際想定している帯域はさばけないだろうと。やっぱりこのマルチCDNがあるからこそ、そういう案件も受けて構築してお渡しできることが大きなメリットですね。我々の能力以上のことが提供できるというように考えたのです。
(江田)
サービス開発の当初の狙いは高可用性・耐障害性のニーズに応えることでしたが、帯域を増やすみたいなユースケースでも使えることが分かり、ビジネスの幅が広がったということでしょうか。
(碓井氏)
そうですね。
本当に世界的なイベントや国内有数のスポーツイベントとかでもお使い頂けるようになったのは、まさにマルチCDNのお陰です。
ー マルチCDNサービスに対するユーザーの反応は
(宮崎)
マルチCDNサービスができてから、様々な事業者様やその先の視聴者様の声が聞こえることもあったかと思いますが、可能な範囲で共有いただくことは可能でしょうか。
(桃井氏)
この手のサービスでは用意していてもあえて公表しない場合が多いです(笑)。
ただ中にはやっぱりマルチCDNがあるから、途切れない配信ができるとか、そういう評価をいただいているというのはありますね。
ある案件ではマルチCDNではない冗長化として、普段は弊社CDN、障害時はお客様設備のオリジンサーバーに直接曲げるようにレコードを出し分けることをやっています。
弊社はマルチCDNサービスを謳って提供していますが、IBM NS1のマネージドDNSには フィルター・チェーンという柔軟なルールが設定できる機能があり、お客様の要件に合わせた構成を取ることが出来ています。このお客様では、とにかく可用性が求められるシステムでサービスが停止すると事業に大変な影響を及ぼすため、マルチCDNサービスを採用いただいています。問題があった時には自動的に切り替わって配信が継続できるので、お客様だけでなく運用会社の方からも、サービスが安定していて安心していますとお声を頂いています。
総じて、冗長化には安心感がよく言われていることだと思います。
(宮崎)
ありがとうございます。碓井様はいかがでしょうか。
(碓井氏)
そうですね、先ほどお話したような国内有数のOTTのサービスですとか、スポーツイベントで幅広く利用していただいており、安心して任せられる点を評価して頂いていると思います。
またCDNだけの提供でなく、先ほどお話ししたようなコンテンツを配信するプラットフォームの提供やコンテンツ制作なども含めて提供できるカバレッジの広さも好評頂いており、当社に仕事を依頼して良かったというお声もたくさんいただいております。
(宮崎)
ありがとうございます。
ー 今後のIBMへの期待と取り組みについて
(宮崎)
今後、御社のビジネス拡大に向けて、IBM NS1や弊社に対するご期待やご要望があればコメントいただきたいです。
(碓井氏)
私もまだIBMのサービス・ソリューションをちゃんと把握しきれていませんが、 なんとなくIBMというと、AI関連、Watsonとか、AIの発祥の頃から先駆者としていらっしゃると思っています。
当社はAIの活用に向けて試行錯誤している最中ですので、ノウハウやナレッジを持っているパートナーと一緒に新たなソリューションを生み出すことで、これまでにない価値提供ができるかもしれないと思っています。ぜひIBMさんと考えていきたいですね。
(桃井氏)
我々はネットワーク商材を扱うことが多いですので、その中でもし我々が扱えるような面白い商材があれば教えていただいて、検討していけるのもいいのかなと思っています。
あとNS1に関しては、これからマルチCDNという枠だけじゃなくて、先ほどのお話した例のように、こういう使い方もできるよというところで訴求できるといいのかなと考えているところですね。
(宮崎)
ありがとうございます。
ご期待に添えるようIBM NS1やWatsonのような最先端の技術をこれからも御社にご提供して、御社と社会が潤うビジネスを提供できるように弊社も精進して参ります。
最後に一言お願いします。
(碓井氏)
このマルチCDNサービスをさらに普及拡大していきたいですね。
まだまだ市場認知が低く、大手の配信事業者だけに必要なソリューションだろうという印象があると思います。
ただ世の中のインターネットのトラフィック量やアクセス数の増加にあわせて対策が必要になる事業やサービスも増えているはずなので、マルチCDNサービスの有用性や効果をもっと発信したいと思います。
(宮崎)
そこは一緒に啓蒙させてください、ぜひよろしくお願いします。
(桃井氏)
やっぱり、中小の配信事業者向けの周知を進めたいですね。
まずはサービスを継続するためにDNS上で切り替えてちゃんとやっていけるようにしましょうよというところを訴求できると、そこからまたマルチCDNという形で広がってくるのかなと思います。
あとできることであれば、ゲームも今パッチ配信するために大きなトラフィックが出るとかありますから、それもしっかりマルチCDNというものを理解してもらって、それでその中にしっかり入れていくということがやっていけるといいなと思っております。
(宮崎)
今は放送業者に寄っていますが、通常のエンタープライズにも需要がありそうですね。
最後の一言も受けていただいて、大変充実したディスカッションになりました。今後とも今仰っていただいたような、今の延長線上で市場開拓をもっと広げていきたいですし、新しいテクノロジーの活用もできたらと思います。
本日は様々な観点で貴社ビジネスや弊社製品の活用法についてコミュニケーションができて大変感謝致します。お忙しい中インタビューの機会をいただき誠にありがとうございました。
インタビュー・執筆:宮崎 陽平、江田 幸弘(日本アイ・ビー・エム株式会社 データ・AI・オートメーション事業部)
撮影:鈴木 智也(日本アイ・ビー・エム株式会社 データ・AI・オートメーション事業部)
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