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ビジネスにおける持続可能性(前編) | サステナ領域と戦略策定方法
2024年01月29日
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■ ビジネスにおける持続可能性の定義
ビジネスにおける持続可能性とは、特定の市場における事業活動によって生じる環境への悪影響を削減するための企業の戦略を指します。組織のサステナビリティの実践は、通常、環境・社会・ガバナンス(ESG)指標に照らして分析されます。
地球全体の不可逆的なシステム変化に直面する中、気候変動の脅威はかつてないレベルで危険なものとなっています。環境のしきい値を超えることで、世界の複数の自然システムや社会制度が連鎖的に「臨界点」を超えてしまい、地球全体が後戻りできなくなる可能性が高まっているからです。
2015年、国連は2030年までの達成を目的とした持続可能な開発目標(SDGs)を設定しました。SDGsは、貧困、不平等、環境悪化、気候変動などの対象分野においてそれぞれの目標を設定しており、企業には、ビジネスにおける持続可能性のためのロードマップとなる目標設定と取り組みが求められています。
ビジネスにおける持続可能性の例
– 代替エネルギー源や炭素会計を活用したエネルギー管理の効率化
– 温室効果ガスの排出を削減し、水資源を保全し、廃棄物を削減するためのインフラ導入
– 循環型経済を促進し、再利用を奨励し、廃棄物を削減し、持続可能な消費を促進し、天然資源を保護するダイナミックで効率的なサプライチェーンの運営
– 外部規制や開発目標を遵守しながら、リスクを評価し回復力を向上させる持続可能な開発の実現
■ なぜビジネスにおける持続可能性が重要なのか?
私たちは予測不可能な世界でビジネスを展開しています。気候変動、天然資源の枯渇、エネルギーや食糧供給に対する需要の増大は、事業運営やサプライチェーンをかつてない形で、そしてかつてない規模で混乱させています。
民間企業や公的機関は、その機能や働きを根本から見直すことが、これまで以上に必要とされています。持続可能なビジネスへの転換を成功させるには、責任ある地球保全の実践に根ざした、新たなレベルの回復力と敏捷性が重要となるからです。
サステナビリティは倫理面と財務面の双方からビジネス上の必須事項です。以下に挙げた理由からも、あらゆるビジネスの戦略と運営の中核とすべきでしょう。
– 人びとはますます、企業の社会責任への取り組みや地球を大切にする使命感を軸に就職先を決めるようになっています。従業員や求職者の71%が、環境的に持続可能な企業ほど魅力的な雇用主であると答えています。*1
– 消費者は、環境に配慮したブランドに対しては、より多くの対価を支払うことを望んでいます。80%の消費者は、持続可能性が重要であると回答しています。*2
– 政府、投資家、従業員、そして顧客は、気候変動への対応を含んだより高レベルの説明責任を企業に求めています。
– 世界トップクラスの経済大国の多くは、環境影響に関するサステナビリティ情報開示の基準を設定済み、あるいは策定中であり、企業は温室効果ガスの排出を抑制する必要に迫られています。*3
– 環境・社会・ガバナンス(ESG)投資基準やサステナブル投資の台頭、社会的責任を自覚する投資家の増加など、市場にとってもサステナブル・ビジネスが本質的に魅力的であることが証明されています。*4
ESG資産への投資は2025年までに53兆米ドルに達する可能性があり、これは世界の資産の3分の1以上に相当します。
*1 “Sustainability at a turning point” (PDF, 190 KB) IBM Institute for Business Value, May 2021
https://www.ibm.com/downloads/cas/WLJ7LVP4
*2 “Meet the 2020 consumers driving change” (PDF, 327 KB) Research Insights, June 2020
https://www.ibm.com/thought-leadership/institute-business-value/en-us/report/consumer-2020
*3 “The future of sustainability reporting standards” (PDF, 1.6 MB) EY, June 2021
https://assets.ey.com/content/dam/ey-sites/ey-com/en_gl/topics/sustainability/ey-the-future-of-sustainability-reporting-standards-june-2021.pdf
*4 “ESG assets may hit USD 53 trillion by 2025, a third of global AUM” Bloomberg Intelligence, February 2021
https://www.bloomberg.com/professional/blog/esg-assets-may-hit-53-trillion-by-2025-a-third-of-global-aum/
私たちの地球と未来を守るために、企業は脱炭素化を推進し、環境規制要件やコンプライアンス期限を満たし、資源消費を改善しなければなりません。
そして、適切に持続可能なビジネスへと転換している企業は、新たなビジネスモデルを取り入れることで顧客を獲得し、ブランド・ロイヤルティを高め、コスト削減の新たな機会を発見しています。
■ 企業のサステナビリティ領域
以下は、収益性と回復性の高い計画を前進させるための5つの重点分野です。
– 気候リスク管理とESG報告
この10年間で自然災害の影響は過去最大となりました。企業は、気候変動により引き起こされる異常気象の影響を、拡張性と再現性のある方法で事業運営に織り込まなければなりません。
独自データ、サードパーティ・データ、地理空間データ、気象データ、IoTデータなど、複数のデータ・ソースを高度なアナリティクスで統合するソリューションを用いることで、企業は混乱に備えることができます。
深刻な気象現象を予測・計画し、事業継続性を確保しビジネスの未来をたしかなものとしましょう。そのためにも、ESG規制へのコンプライアンスとレポーティングの運用コストと複雑さを軽減させる必要があります。
– 回復性の高いインフラとインテリジェントなオペレーション
気候変動や環境悪化、セキュリティ、プライバシー、資源管理など、あらゆるビジネスが抱えている課題に対し、企業はインフラが回復力を念頭に置いて設計・管理されていることを確認する必要があります。
インテリジェントな資産管理、モニタリング、予知保全を活用することで、企業は資産の寿命を延ばし、ダウンタイムとメンテナンスコストを削減し、保守、修理、運用(MRO)在庫を最適化し、CO2排出量を削減し、廃棄物を削減することができます。
これにより、ESG目標と達成と収益性の両立を実現することができます。
– 持続可能なサプライチェーンと循環性
消費者は購入する商品のトレーサビリティに関心を持つようになっており、サプライチェーンのリーダーたちは廃棄物を極力減らすためのサーキュラーエコノミーへの投資に注目しています。
ブロックチェーン・ソリューションは、サプライチェーンのトレーサビリティを向上させ、最新の在庫状況やパフォーマンスに関する洞察を提供することで信頼性と透明性を高め、廃棄物削減とサービス提供コスト低減を実現します。
高度なAIを活用し、原材料から消費地までのルートや配送方法、フルフィルメントの最適化を行うことで、複雑なスコープ3の物流関連排出量を最小限に抑えることができます。
– 電化、エネルギー、排出削減
大規模にクリーンな電化を実現するには、企業個々の取り組みだけではなく、リーダーたちが新たに結集する必要があります。GHG排出量ネットゼロ経済における電気システムの運用方法と役割を見直す必要があるからです。
エネルギーと公益事業のためのインテリジェントな資産管理ソリューションを用いて、送電網の効率性、安全性、信頼性、回復力を強化し、脱炭素化への転換を推進していく必要があります。
また、重要資産の最大効率での稼働、機器の運用改善、スマートメーターの導入によるリソース使用状況のより詳細な把握や分析——これらを通じてコストを削減し、自動化によるサービス強化を行なっていきます。
– サステナビリティ戦略
企業には、持続可能性をビジネス基盤に組み込み、大規模な運用に適用するために必要な洞察に基づく戦略が必要です。
この戦略の策定と実践により、業務効率を高め、規制要件を遵守し、イノベーションの機会を明らかにし、競争上の優位性を生み出しながら顧客体験を向上させ、サステナビリティ目標を達成することができる、新たなビジネスモデルとプラットフォームの確立が可能となります。
■ サステナビリティ戦略の策定方法
持続可能性戦略を成功させる鍵は、差別化要因と環境要因を組み合わせ、市場の要求とのバランスを取ることにあります。
早くから企業の持続可能性に取り組んできたリーダーたちは、AI、IoTデータ、ブロックチェーン、ハイブリッド・クラウドなどのデジタル技術を応用し、サステナビリティを大規模に運用可能なものとしてきました。
そして多くの企業がその過程において効率性を向上させる機会を発見し、同時に、よりやる気と意欲のある従業員や、より満足度と忠実度の高い顧客を生み出しています
サステナビリティ戦略策定の第一段階は、ステークホルダーが事業の将来像について明確かつ合意したビジョンを持つようにすることです。この第一段階に至るためには、共創のための意見交換などに外部からの支援が必要かもしれません。
IBM Garage for Sustainabilityの専門家と活動することで、最大の課題と機会を特定し、重要なアクションに優先順位を付け、ビジネスとサステナビリティーの観点でイニシアチブの価値を定量化して成果を測定し、数カ月ではなく数週間で成果を実現できるよう支援します。
サステナビリティ戦略策定の第二段階では、持続可能なビジョンを組織全域で実施するための期限付きフレームワーク・アプローチを採用します。
役割、責任、説明責任を明確にした環境マネジメントシステムにすべてを文書化します。
サステナビリティ戦略策定の第三段階では、具体的で測定可能な結果を生み出し、価値を示すことができる具体的な取り組みをスタートさせます。
ビジネスにおける持続可能性の価値を実証し提示することで、賛同者を増やし、勢いをつけ、取り組み規模やスピードを拡大します。
当記事は『What is sustainability in business?』を日本の読者向けに編集したものです。
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