IBM Sustainability Software
IDCが提唱する「ニューノーマル時代のエンジニアリング」の6ステップ
2020年11月19日
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当記事は、IDCのアプリケーション・ライフサイクル管理(ALM)プログラムの専門家、メリンダ−キャロル・バルー氏による寄稿『Containerizing Smart Requirements』の抄訳です。
スマートな要求管理をコンテナで。
エンジニアリングでニューノーマルを生き抜く
IDCが提唱する「ニューノーマル時代のエンジニアリング」の6ステップ
シンプルなソフトウェア開発であれ、複雑極まりないエンジニアリング案件であれ、そのスタート地点にあるのは「要件」です。これは複数のシステムから成り立つシステム・オブ・システムズでもIoTでも変わりません。まず、要求があり、それから開発が始まります。
要件の一貫性や関連性、適応性や回復力が高ければ高いほどビジネスの俊敏性は向上し、コストの大幅削減が可能となります。
そして、潜在的な問題の特定と対処が早期であればあるほどその影響は小さく留められます。
■ 開発プロセス後半の問題発見は、修正費用を200倍かそれ以上に
私たちは現在、全世界的なパンデミックに襲われています。同時に、経済、ビジネス、資源は止まることなく変動し続けています。
それだけではありません。気候変動とそれによる激しい気象災害。新たなコンプライアンス要求。世界中の地政学的および社会的リスクの急増…もはや、無数の危機への対応は日常的なものとなっています。以前には考えもしなかった複雑性や不確実性は常にそこにあり、今後も増加を続けることでしょう。
だからこそ、これまで以上に、有効で適切な要件管理戦略が必要とされているのです。
それでは、こうした混乱にどのように立ち向かえばよいのでしょうか? 標準的な従来通りの手法にはすでに限界が見えています。今、導入すべきはアジャイルなプロセスと要件定義の自動化であり、それをさらに効果的なものとする高度な分析や機械学習、AIなどの先端テクノロジーの活用です。
そしてテクノロジー活用の取り組みの際、重要なポイントとなるのが導入環境の柔軟性です。アプリケーション展開や配置オプションに大いなる柔軟性を与えるハイブリッドクラウドやコンテナ化は、セキュリティーやプライバシー対応、適切なシステム管理、容易な遠隔コラボレーションなど、多種多様な利点をもたらします。
おそらく、この半年ほどの間に、多くのエンジニアリングチームと開発チームが、急速なリモートワークへの転換と業務のデジタル化により大きな混乱を経験したのではないでしょうか。混乱の最中、サプライチェーンの大混乱への対応に追われたチームも少なくなかったことでしょう。
また、経済の予測不可能性に起因したスタッフ削減という判断を下さなければならなかったチームも、同様に少なからず存在していることでしょう。
こうした厳しいビジネス環境においても、ソフトウェアおよびエンジニアリングチームは、チームだけではなく、組織全体そして企業全体を奮い立たせる「高い競争力を持つ製品の開発」という期待に応えなければなりません。
世界が危機と向き合っているこの期間に、私自身がお客様とご一緒させていただくことで感じていたのは、最前線で力強く組織や企業をリードするエンジニアリングチームの方たちの「強さ」でした。どんな状況であれ、生き残り戦略を確立して成功を手中にしようという不屈の精神と楽観主義。それを決して忘れない姿には、感謝と尊敬の念を抱かずにはいられませんでした。
私は、そんな世界中に散りながら日々熱意を持ち働くエンジニアリングチームである彼らを、これまで以上に技術的に支援しようと心を新たにしました。
■ 4つの「ニューノーマル時代のエンジニアリング」のポイント
「ニューノーマル」と呼ばれるこの状況においては、国際的なシステムエンジニアリング評議会であるINCOSEなどが発行する、業界標準とされる要件ガイドを、機械学習やAIと組み合わせていく要件戦略、開発エンジニアリング戦略が、大きな効果を組織にもたらします。
以下にポイントを4つ挙げます。
1. 早期にAIをINCOSEと組み合わせて活用することで、チームはすばやく不十分な要件を特定することができ、効率的に早い段階で問題対応することでプロジェクト進捗スピードを向上することができます。
2. 不明瞭であいまいで不完全な構造の要件を特定し、それらを早急に修正することができるので、チームは時間節約とコスト削減という大きな恩恵を受けることができます。また、盤石な製品基盤を築くことができるので、パンデミックからの回復状況により変化を続けるであろう市場のニーズに迅速に対応できるようになります。
3. テクノロジーを組み合わせた機能を使用することで、経験の浅いエンジニアは自身が作成した要件文書を自らチェックして修正することができ、上級エンジニアはより複雑で本質的な要求に集中することができます。
4. クラウドからオンプレミス、コンテナまで、さまざまなプラットフォーム上で自動化された要件管理とスマート分析ソリューションを組み合わせて利用できるため、分散アクセスやプライバシー対応、リスク管理などに柔軟に対応できます。
■ IDCが提唱する「ニューノーマル時代のエンジニアリング」の6ステップ
多くの組織が、異なるサーバー間でのエンジニアリング・ソフトウェア・モジュールのリンクや調整、環境管理に苦戦し、効果的な展開をできずにいます。
コンテナによる実装は、包括的な開発管理ソリューションの採用および展開を進めようという企業にとって福音となるものです。なぜなら、コンテナはこれらの複雑さを低減させるものであり、スタッフ削減などのリソース制約に対処せねばならない組織に、とりわけ重要な効率向上をもたらすからです。
そうした要求に答えるのが、2020年9月22日より製品出荷がスタートした、Red Hat OpenShift上で実行できるIBM Engineering Requirements Quality Assistant(RQA)です。
IBMのWatson AI を搭載しているRQAは、DOORS Nextと組み合わせて使用することができ、要件文書の品質をINCOSEの要件作成ガイドに則り評価しランク付けします。一貫性や構造など問題のある箇所を指摘し、該当箇所の対処方法に関するアドバイスを表示します。
RQAはIBMにとって最初のOpenShift コンテナ上に展開されたエンジニアリング製品であり、プライベートクラウド上での使用への変更を完了した最初のエンジニアリング製品となりました。
このRQAのOpenShiftへの進化は非常に大きな意味を持っています。なぜならこれまで、顧客は要求文書に対してWatson AIを活用するために、文書をパブリッククラウドに送らなければならなかったからです。これは、知的財産やプライバシーなどに懸念を持つ一部の顧客にとって、大きな問題となっていました。
今回のOpenShift対応でこの問題は解消し、顧客は安心してRQAを自身のデータセンターに展開し、Watson AIの大きな恩恵を受けられるようになりました。
IDCは、これから進めるべきこととして以下の6ステップをお勧めしています。
1. 現在の困難な時期にこそ、開発ツール、要件、およびプロセスの再評価を実施し、効果的で適応力の高い戦略に焦点を合わせられるよう、優先順位を付け重点領域を確定する。
2. より複雑性を高めていく要求に対応できるよう、現在用いている機械学習やAI機能が今後さらに高度化していくテクノロジーを活用できるようになっているかを評価し、INCOSEなどの業界ガイドと組み合わせたインテリジェントな分析が活用できることを確認する。
3. 現在の測定手法を分析し、単なる状態把握ではなく、根本原因の特定と次に取るべき対処方法が明確となる測定基準を策定する。
4. メンテナンスや整備に労力を取られることのないツールやソリューションの評価と導入を進める。具体的には、スマートアナリティクスやアジャイルプロセス、ハイブリッドクラウドやコンテナなど、柔軟で包括的なエンジニアリング・ライフサイクルアプローチを実現するプロセスや基盤を支援するツールの採用を進める。
5. 自身、チーム、そして要件を、予測不可能な「ニューノーマル」に俊敏に対応できる柔軟な状態へと変化させる。そのために、バリューチェーンのエンドツーエンドの可視性を高め、入力データの関連性およびモデルの前提と出力の評価を進める。
6. AIと機械学習を効果的に組み込む。そのためのツール、トレーニング、専門知識、標準設定、ガイドラインを用いて、信頼感の醸成と順応性の向上を力強く後追しする。
少々時間がかかったものの、こうしてIBMとRedHatの製品が組み合わされて利用可能となったことは、とても意義深く、喜ばしいことです。
今後、順次進められていくであろうIBM ELMソリューションのOpenShift コンテナ上での展開に期待しています。
問い合わせ情報
お問い合わせやご相談は、Cognitive Applications事業 cajp@jp.ibm.com にご連絡ください。
IBM Engineering Requirements Quality Assistant
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