IBM Sustainability Software
ESG開示フレームワークの選び方と今後の動向(その2)
2023年09月11日
記事をシェアする:
この記事の概要
ESG開示フレームワークとESG格付けにおけるトレンドを理解し、脅威に適切に対峙し、自社の取り組みを誠実にレポーティングすることが重要です。
当記事「ESG開示フレームワークの選び方と今後の動向(その2)」では最近の開示フレームワークのトレンドと、今後の動向を中心に解説します(その1はこちら)。
ESG格付けツールによるAI主導の「データスクレイピング」
AIやボットを使用し、公開されているデータから企業のESGパフォーマンスを評価するケースが増えています。
ランキングサイトや製品比較サイト、ソーシャルメディアやニュース記事など、多種多様な情報源からESGデータを合成し、企業プロファイルを構築してスコアを発表するこの行為は、「データスクレイピング」と呼ばれています。
データスクレイピングによって収集されたこれらの断片的なデータは、多くの投資家にとっては意味を成さないコンテキストであったり、時に誤った情報が含まれていたりということもあります。
こうしたデータは企業のコントロール外にあるため、企業にとっては新たな脅威となっています。
しかし、詳細な情報を提供していないにもかかわらず、こうした慣行は広まり続けています。
AIによるESG評価に備えるには
AIによるESGデータスクレイピングが増加傾向にある中、企業のサステナビリティチームや投資チームは、自社が不当なESG評価を受けないよう、以下のアプローチを検討すべきでしょう。
ステップ1: 対象とすべき格付け機関を特定する。主要な機関投資家にアプローチし、利用している格付け機関を尋ねましょう。
ステップ2: 対象となる格付機関がどのようなデータを使用し、それをどのように入手しているのかを理解する。
可能であれば、格付機関に直接連絡して質問するか、インターネットを活用してできる限りの情報を入手しましょう。
ステップ3:自社が提供しているデータとその共有・提供先が、対象となる格付機関のニーズに合っているかを確認する。
以下にそのやり方のヒントを記載します。
用語や文章を的確に調整する
組織の公開情報をチェックして、AIやボットが取得する、データスクレイピングに使用されるデータが正確であるかを確認しましょう。
自社ウェブサイトはもちろん、比較サイトやブルームバーグに代表される企業情報提供まで、用語や文章の的確性を分析し、明確になるように調整します。
ソーシャルリスニング
オンラインでの会話をトラッキングし、自社について何が取り上げられているかを確認・判断し、不正確な記述があれば修正を試みましょう。たとえば、カスタマー・レビューやソーシャルメディア上のコメント、「Google ビジネス プロフィール」上の自社に対する誤った言及などが対象となります。
公開ESG情報を増やす
自社のESGパフォーマンスや取り組みについて、詳細に説明した補足資料を公開するなどして、サステナビリティ行動計画や報告書に関するより多くのデータを提供しましょう。
データの提供先として、自社ウェブサイトだけではなく、さまざまなプラットフォームやソーシャルメディアでの公開を検討しましょう。
ESG開示フレームワークのグローバルスタンダード
ESG開示フレームワークの未来は、少なくとも3つの観点から検討することができます。1. 規制の変化、2. フレームワークを中心とした産業部門間の結合、3. ESGフレームワーク間の統合です。
これら3つの視点はどれも「ESG開示フレームワークの調和」という一つの大きな方向性を示しています。
1. 規制の変化
各国や超国家的な管轄区で、さまざまな進展が見られます。
米国証券取引委員会(SEC)は2022年3月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)をモデルとしたESG開示を義務付ける提案を発表しました。
同様に、EUのサステナブルファイナンス・パッケージ(EUタクソノミーと、企業サステナビリティ報告指令(CSRD: Corporate Sustainability Reporting Directive)を含むサステナブルファイナンス開示規則(SFDR: Sustainable Finance Disclosure Regulation))は、企業のESG関連情報開示をさらに義務付ける予定となっています。
2. 産業部門間の結合
ESG開示の慣行が成熟するにつれ、各産業部門は、自分たちが望ましいと考える開示フレームワークにまとまりつつあります。
早くからこの傾向を示していたのが、不動産セクターの企業やファンドを対象に、サステナビリティ・パフォーマンスをベンチマーク評価する「GRESB(グレスビー: Global Real Estate Sustainability Benchmark)」です。
この傾向は投資業界にも見られ始めており、ブラックロック社などの資産運用会社は、自社の投資先にSASB(サステナビリティ会計基準審議会: Sustainability Accounting Standards Board)に基づく報告を推奨しています。
3. ESGフレームワーク間の統合
このような変化の結果として、ESGフレームワークは2つの方向に変化しています。
1つは国際財務報告基準(IFRS: International Financial Reporting Standards)やGRI(Global Reporting Initiative)に見られるように、開示フレームワークがより専門的になっていく方向。もう1つは、国際統合報告評議会(IIRC: International Integrated Reporting Council)やSASBに見られるように、ESGフレームワークが統合されていく方向です。
ESG開示の変化にどう備えるか
ESG開示に関する規制やスタンダードに関する新たなアナウンスメントが数カ月ごとに発表され、漸進的な変化が続く中、企業はどのようにESGフレームワークが直面する避けられない変化に備えればよいのでしょうか。
データを正しく入手する
重要なのは、正確で監査可能なデータ基盤を持つことです。ESG開示の変更が実施された際に正しいデータを用いることができなければ、プロセス変更や過去のエラーを避けるのは非常に難しいことになるでしょう。
ESG開示規制やスタンダードの変化、および法制度の変更に伴う新たなフレームワークの要件に直ぐに対応する、適宜更新されるソリューションが必要です。
監査可能なデータ記録と正確なGHG排出量計算を備えた、ESG開示ソフトウェアやESG専用ソリューションが大きな助けとなります。
適切なステークホルダーとの関係構築
規制の変更、ESGフレームワークが変更・更新されれば、必要となる詳細データも変更され、新たなステークホルダーにも目を向けるべきときがやってきます。
サステナビリティ・リーダーは、現在のステークホルダー・グループだけでなく、さらに視野を広げておく必要があります。
ESGフレームワーク専用ソフトウェア | IBM Envizi
どのESGフレームワークを選択するにしても、専用ソフトウェアはレポート作成プロセスに大いに役立つでしょう。
IBM Enviziのようなエンタープライズ向けESG専用ソフトウェアを用いることで、信頼性の高いデータ取得が自動化され、単一システムに統合されるので、社内やグループ会社の各部署・チームとのコラボレーションと、ESGレポートの草案、作成、発行を容易にかつスピーディーに行うことができます。
IBM Enviziは、複数のチームやステークホルダーにまたがる大量の必須データの収集とレビューの管理を合理化し、ESG指標数値の取得、組織のGHG排出量の計算、業界規制やベストプラクティスに準拠した監査可能なレポート作成を支援します。
さらに、IBM Envizi の「ESGレポーティング・フレームワーク」モジュールは、SASB、GRI、国連SDGs、TCFDなどの主要な報告フレームワークに対応しており、また、前年の回答の再利用や、別フレームワークへの回答を異なるフレームワークに流用することも可能です。
ESG開示報告書作成の複雑なプロセスにおいて、時間、費用、労力に対して問題意識をお持ちの組織には、IBM Enviziの導入検討を強くお勧めします。
また、指標数値の取得とレポーティングだけではなく、ESG目標やイニシアチブの設定、パフォーマンス改善成果の的確な追跡を実施したい企業には、必須の支援ツールとなるでしょう。
当記事は『What are ESG frameworks?』を日本の読者向けに編集したものです。
製品・サービス
問い合わせ情報
この記事を読んだあなたへのおすすめ
「第2回ベジロジサミット」レポート後編 | ベジロジシステム討論会
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
ベジロジ倉庫とベジロジトラック、そしてキャベツ食べ比べを中心にご紹介した「第2回ベジロジサミット」レポート前編に続き、ここからは第二部、場所を屋内に移して開催されたベジロジシステム討論会の様子をご紹介します。 目次 前編 ...続きを読む
「第2回ベジロジサミット」レポート前編 | レタスの食べ比べとベジロジ倉庫・トラック
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
「佐久地域は葉洋菜類の一大産地であり、産地の生産を守ることは日本の食を守ることです。主体的に取り組んでいきます。ただ、青果物の取り組みは特に困難な要素が多く、物流業界でも取り組みが進んでいない分野です。そんな中で、持ち前 ...続きを読む
日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
2024年10月15〜16日の2日間に渡り、IBM天城ホームステッドにて1年半ぶりの「日本Maximoユーザー会」が開催されました。 石油・化学企業、産業機械製造企業、エネルギー企業、エンターテインメント企 ...続きを読む