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データ分析者達の教訓 #09- 予測モデルは秀逸でも業務に実装できない場合がある

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皆さんこんにちは。山下研一です。IBM Data&AIでデータサイエンスTech Salesをしています。

このリレー連載ブログはSPSS Modelerの実際のユーザーで第一線で活躍するデータ分析者に、データ活用を進める上で忘れられない教訓をインタビュー形式で伺い、これからデータ分析に取り組む皆様に参考にしていただくことを目的にしています。

 

今回インタビューをお願いしたデータ分析者は

浜銀総研の高野様です。高野様には1999年にはイベントに登壇いただき(当時Modelerの名称はClementine)、以来さまざまなSPSSの集いに参画頂いているので、ベテランユーザーでしたらご存知の方も多いはずです。浜銀総研様はユーザーとしては勿論、私どもと一緒にお客様にソリューションを提供いただくこともある、とても重要なパートナー様でもいらっしゃいます。

 

高野 知 様 Satoru Takano

株式会社浜銀総合研究所
情報戦略コンサルティング部 執行役員

 

-日頃のデータ活用業務について教えてください

現在は、情報戦略コンサルティン部の担当役員として、データサイエンスコンサルティング業務を統括しています。

主に全国の地方銀行様や大手ノンバンク様などの金融業界で、リスク管理やマーケティングにおけるデータ活用のご支援をおこなっています。単に数理モデルを構築するだけではなく、業務への実装を前提として取り組むところに大きな特徴があります。

また最近では人事データを活用するPA(ピープルアナリティクス)の領域にも注力しています。

社内の新規事業としてデータ分析コンサルに携わるようになってからもう25年近くになり、いまの部署も立ち上げからずっと関わってきました。現在のようにビッグデータ、AI、データサイエンティストなどの言葉が日々飛び交い、あらゆる領域でデータドリブンな取り組みがおこなわれるような状況になるとは、まさに隔世の感があります。

 

-データ活用業務で味わった苦い経験を教えてください

最近注力しているPAの領域では、人事関連の多様なデータを用いて、例えば優秀な成績を上げる人財の特徴把握(ハイパフォーマー分析)、全従業員のタイプ別の人財ポートフォリオの把握といった、様々なテーマがありますが、コンプライアンス上の問題が生じそうな部署や人を浮き上がらせるようなこともできます。

実際にあるコンサルティング案件で、問題が起きそうな部署を事前に予測するモデルを構築したことがありました。特徴は比較的分かりやすく、問題発生を起こす確率をもって事前に対処すべき部署を抽出することが出来たのですが、結果的にそのモデルが実務に使われることはありませんでした。

というのも、問題をまだ起こしていない部署に対してどのようなアクションがとれるか、研修や社内監査のような対応をとるにしても、事前に犯罪者を特定しているような印象を持たれてしまうのではないか、また、こうした分析に基づき対処していると、従業員のモチベーションを大きく下げてしまうのではないかなど、様々な問題が提起されてしまったのです。

 

-その苦い経験から得られた教訓はなんでしょうか

適切なデータに対して適切な手法を用いれば有益なアウトプットは出せるものですが、実務にきちんと活用していただけるかどうかは、分析の価値とはまた異なる配慮が必要だということを、改めて認識しました。

特にPAでは「人」を扱うが故に、ネガティブな要素を取り上げる場合には、製造業における不良品チェックといったものとは異なり、より一層実務に活用するための工夫が必要だということを痛感しました。

データ分析というとどうしてもモデルの精度などを追及してしまいがちですが、今後は担当者様とのミーティングを通じて、多方面に配慮した、業務での実装に向けたアイディア出しなどにも積極的に関与していきたいと考えています。

 

-これからのデータ活用領域でのチャレンジについて教えてください

金融分野でのコンサルティング案件が非常に多いのですが、データ活用の範囲はますます広がっているので、これからもご支援の幅を広げていきたいと考えています。例えばTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に対応した情報開示に向けた物理的リスクや移行リスクの計量化など、環境関連の業務なども増えてきています。

また、PAの領域についてもさらに注力していきたいと考えています。この領域は金融に限らずどの業種でも課題を抱えておりますし、データ活用が最も遅れている、いわば最後のフロンティアといった状況ですので、積極的にチャレンジしていきたいです。

今後もデータ活用により、企業経営の意思決定をより迅速かつ確実におこなう支援をしていきたいと考えています。

 

インタビューのお礼と感想

高野様、この度は実際のプロジェクトを例にした分かりやすいお話をいただき誠にありがごとうざいました。

さて皆様、いかがでしたでしょうか?

的中率の高い予測モデルが構築され、性能が証明されていても現場で利用されないことがあるという事実。ビジネスの課題解決はデータ分析のみをフォーカスしてはならないという教訓に私自身がとても勉強になりました。確かにデータ分析プロジェクトでは当初の課題が変更されることも頻繁にありますよね。課題のアセスメントと実行可能な施策を前提に取り組まないといけないのだと改めて教えていただきました。

次回はJFEテクノリサーチの津田様に「因果を軽視した機械的な予測モデルはたちまち劣化する」を伺います。

 

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→SPSS Modelerノードリファレンス(機能解説)はこちらから

→ SPSS Modeler 逆引きストリーム集(データ加工)

 

 

山下 研一

日本アイ・ビー・エム株式会社

テクノロジー事業本部 データ・AI・オートメーション事業部
Data & AI 第一テクニカルセールス

 

 

 

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