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IBMデジタルツイン・テクノロジーを使用して最も大きな港から最もスマートな港に変わろうとしているロッテルダム港の取り組み

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デジタルツインのテスト・シナリオは運用改善に役立ちます

プロセスの中には、別のアプローチを試して失敗の危険を冒すことができないほど複雑なものがあります。 他にも、運用する上で非常に重要であるがゆえに、オフラインにして革新的な方法をテストするようなことはあえてしないプロセスもあります。 そして物理過程の多くは、人間が新しいものを試すためにそれらを中断できないような力で移動します。 古いたとえですが、走っている列車の車輪を変えるのは難しいのです。 しかも新しい設計で何十もの貴重なメリットを得られるかもしれない場合には、それがフラストレーションになる可能性があります。 最近、ロッテルダム港はデジタルツインを拡張して、テストに関わるこの問題を克服しました。

Quick Bytes Liveの視聴者がその詳細を確認できるように、Axians社のルイス・テル・フールド(Louis ter Voorde)氏と話をしました。 彼は変革プロジェクトと所属組織がテスト・シナリオを使用して運用を改善する上でデジタルツイン・テクノロジーがどのように役立ったかについて教えてくれました。

デジタルツインとは

デジタルツインは、物理的なオブジェクトまたはシステムをそのライフサイクル全体で表した仮想表現です。 デジタル・ツールとリアルタイム・データを使用して製品やプロセスをコンピューター上で作成、テスト、構築、監視し、設計と運用の間のフィードバック・ループをクローズします。 運用を危険にさらすことなく変革を促進する巧妙なアプローチです。 それは、ヨーロッパ最大級の最も混雑している港であるロッテルダム港が積極的に活用しているものの1つです。 このプロジェクトは、ロッテルダム港当局、Axians社、Cisco社、IBM®をはじめとする多くの企業や組織が参加した協調的な取り組みでした。

600年以上にもわたる変革

ロッテルダム港は敷地面積が41平方マイルを超えます。 40万人近くを雇用し、毎年3万隻近くの船舶が入出港しています。 西暦1360年にオランダ、イングランド、ドイツ間の海上交通サービスの提供を開始した歴史ある港です。 それほど古くから利用されているにもかかわらず、2017年に開かれた世界経済フォーラムでロッテルダム港のインフラストラクチャーは世界で最も優れたものとして評価されました。

革新的なリーダーシップと優れた存在でありたいという思いのあるロッテルダム港は、何世紀にもわたって改修と改造を重ねて、中世の小型帆船から今日の大型コンテナ船まであらゆる船舶の寄港に対応してきました。 現在、ロッテルダム港当局は世界中の1,000を超える港との海上交通を調整し、4億6,900万トン以上の総取扱量を誇ります。 この規模の施設を改造することは大変なことです。

ロッテルダム港を世界最高の港にするという目標を達成するために、同港のリーダーたちは独創的で協調的なアプローチを取りました。 改革計画の策定にはさまざまな政府機関が参加しました。 Port Vision 2030には、企業がグローバル・ハブ内およびヨーロッパの産業クラスター内で最適に操業できるようにするために対策が必要な場所が定められています。 この計画では、計画の成功に欠かせない10の成功要因を定義して測定します。

IoTテクノロジーを活用して、ロッテルダム港は壮大な変革を進めています。 同港は2030年までに世界初のデジタル・ポートになり、そして世界で最もスマートな港になることを表明しています。

ロッテルダム港は、港とサプライチェーンの効率化を図るためにデジタル化に取り組んでいます。

—ロッテルダム港、ポール・スミッツ(Paul Smits)氏

 

ロッテルダム港はどう変わろうとしているのか

IoTと人工知能(AI)をとても上手に活用しています。 そして、海運会社、テクノロジー企業、サプライチェーン内のその他企業が参画する世界規模のエコシステムが協力してくれています。 広大なドック施設の至る場所に設置されたセンサーで気温、風速、(相対)湿度、水の濁度と塩分濃度、および水流と水位、潮の干満と潮流についてリアルタイム・データを継続的に収集しています。 この港は「デジタル・イルカ」、スマートな岸壁、センサーを装備したブイなども導入しています。

この変換のさらにユニークで革新的な側面は、センサーを詰め込んだ試験目的の物理コンテナ「コンテナ42(Container 42)」です。 この高度な調査ツールは、世界中の提携施設を海上移動しながら地球物理学的な数値を収集し、 データを送り返します。ツールから送り返されたデータは拡大する情報プールに統合されます。


ロッテルダム港のコンテナ42は世界を移動して調査結果を収集

人工知能を使用して収集されたデータをすべて分析することで、係留して出港する最適なタイミングをより正確に予測することができます。 これは待機時間の短縮とコストの削減につながります。 例えば、船舶が航行を続けるためには、港の最も奥まった場所で積み荷の一部を最初に荷揚げしなければならないとします。 港に設置されたデジタルツインを使用すれば、そこで荷揚げする必要のある積み荷の数を正確に計算できるため、 その船舶はより多くの積み荷を載せて短時間で最終目的地に向けて出港できます。

もちろん水深と喫水の測定値が信頼できるものであることは、安全の面でも商業的にも大変重要です。 100%の精度で運用を可視化するデジタル・ダッシュボードを使用すると、海運会社と同港は停泊時間を最大1時間短縮できるため、海運会社は約8万米ドルを節約でき、同港で入出港する1日の船舶数を増やすことができます。

組織に大きな変化を生む:デジタルツイン・テクノロジー

情報にリアルタイムでアクセスできれば、ロッテルダム港当局は可視性と海の状態をさらに正確に予測できます。 そうなると燃料消費率の低下、費用対効果の高い有料荷重(1船あたり)の促進、および貨物の安全な到着の確保が可能になります。 全体として大きな違いが生まれます。

ぜひ、それによってもたらされる変化について皆さんも考えてみてください。

IoTとAIソリューションおよびデジタルツイン・テクノロジーについて、詳しくはWebページをご覧ください。


この投稿は2019年8月29日に米国IBM Blogに掲載された記事 (英語) を抄訳し、一部編集したものです。

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