デジタル変革(DX)

自動車販売の未来:販売店とメーカーが連携して顧客と対話する

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※この記事はIBM Institute for Business Valueのホワイトペーパー“The expanding auto ecosystem”ブログ(英語)の抄訳です。

多くの消費者が車を買う際に、まず自動車メーカーのウェブサイトや比較サイトなどで商品情報を調べ、販売店に来店する際には、既にどの車種を買うか決めています。メーカーはWebサイトに来訪した見込み客から、さらに詳しい情報提供依頼や試乗の希望を受けて、販売店へ送客をします。その後、見込み客のフォローは各販売店に任されていることが多いでしょう。

車の販売プロセスはブランド体験の最初の入り口です。販売店ごとに対応のばらつきがある状況で良いのでしょうか。一部の高級車ブランドでは、販売店の返答時間、送客結果を追跡し管理する仕組みを作っています。このような顧客の購入体験を一定のプロセスで管理し向上させる仕組みを持たないメーカーはブランド体験の一貫性を保つことが難しくなるかもしれません。

IBMが実施した「2030年自動車業界の未来展望」調査では、75%の自動車産業エグゼクティブが、現在の販売店の役割の販売店は減っていくだろうと回答しており、同時に75%が販売店はモビリティをサポートする重要な拠点となるだろう、と回答しています。販売店の役割は大きく変わり、メーカーと販売店の関係も進化していく必要がありそうです。

車販売の最初の段階、メーカーから販売店への見込み客送客の観点からは、以下のように考えてみてください。自動車メーカーの側から見て、「送客した見込み客に対して、いかに早く販売店に対応してもらえるだろうか」という方向性のほかに3つの観点を付け加えます。

  1. 私たちにとっての「顧客」とは誰だろうか?
  2. 「顧客」に対してどんな商品やサービスを提供できるだろうか?
  3. 顧客に取ってより大きな価値を提供するために、誰がどんなアプローチをするべきだろうか?

現在、見込み客への対応は、「新車または中古車を買おうと決めた消費者」がメーカーのWebサイトで意思表示した「試乗リクエスト」を「販売店へ」送客する、という流れがあるとすると、今後はもっと幅広い状況が想像できると思います。例えば「電気自動車の充電を利用したい消費者」のリクエストを「チャットボット経由で」「販売店へ」送客、「車のデジタル機能の追加を希望する消費者」が「メーカーのコールセンターと」会話し「オンラインで支払いし、商品は無線ネットワーク経由のダウンロードで届ける」などです。

商品が多岐にわたるだけでなく、対応チャネルも対応する窓口も複数になることがわかります。モビリティの形や所有形態が多様化すると、新車、中古車販売とアフターサービスにとどまらず、これまでにない多様な商品やサービスを、複数の購買チャネル、対応窓口を通して顧客に届ける必要があるわけです。

これまでの自動車業界では、顧客情報はメーカーのものか、販売店のものか、という議論がありました。そのため、特定の顧客に対してメーカー側で対応した履歴、販売店で対応した履歴が共有されることが少なく、顧客に不便な状況も多く発生していました。顧客に対する一貫した対話ができることを優先し、今後更に複雑化する商品、サービスとチャネル間をスムーズに連携するには、どんな仕組みが必要になるでしょうか。

現状複数の異なる会社、部門にまたがる異なるフォーマットの情報を連携するなんて、とてもコストがかかりすぎる、という声も聞かれます。しかし、ある自動車会社のエグゼクティブは、「見込み客のコンバージョン率を0.1%あげると1億円の売り上げ貢献になる」とコメントしています。ここは投資効果が十分に高い領域だと考えられます。

IBMでは、このようなお客様の課題に対して、統合されたC R Mソリューション、クラウドプラットフォームをご提供しています。顧客との最初のタッチポイントから販売までの対話をスムーズに進めるための仕組み作りを多くの自動車メーカーのお客様と共創しています。

Customers

鈴木 のり子

鈴木 のり子
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
IBM Institute for Business Value
Global Research Leader, Automotive, Aerospace & Defense

IBM Institute for Business Value の自動車業界のリサー チ・リーダー。IBM の自動車業界におけるオピニオン・ リーダーシップのコンテンツ策定と、戦略的なビジネス・イン サイトの提言にグローバルの責任を持つ。20 年以上にわたって、世界の自 動車業界大手企業と、事業戦略やビジネスモデル・イノベー ションの分野で協業している。

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