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IBM x UiPath、多様性と技術の掛け算で育むデジタル人財
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目次
- IBM地域UiPath人財育成プログラム開設の目的
- 業務自動化の現場にも変化、時代はRPA×AIの融合へ
- 多様性と「技術の掛け算」で育むデジタル人財
1. IBM地域UiPath人財育成プログラム 開設の目的
IBM井上: 近年、社会への普及が進んだデジタル技術の1つにロボットによる業務自動化(Robotics Process Automation、以下RPA ※1)があります。日本IBMとUiPathは、RPA技術を無料で学ぶことができる「IBM地域UiPath人財育成プログラム」を、地域でデジタル・トランスフォーメーション(DX)の習得やリスキリングをめざす個人の皆様に向けて昨年10月より提供を開始しました。現在たくさんの方が受講されています。(※2)
UiPathでは以前からRPAの教育プログラムを一般に無料提供していたり、公式のユーザーコミュニティを活発に運営されていますね。RPA技術者の育成に力を入れているところと思いますが、今回、日本IBMと一緒に地域での人財育成に取り組むことについてはどのような思いがあったのでしょうか。
UiPath南: 今まさに地域の企業や自治体においてDXが加速していますね。中でも労働力不足が進んでいる地域では、早期に業務を効率化して労働生産性を向上させる必要があります。
かつてIT化を推進していた時代は、業務フローをしっかり設計してシステムを構築することに力を注いだものですが、DX時代が到来した今、業務を現場レベルで変革するには、目の前の作業1つ1つの効率を上げるところから始めるのが効果的です。
その意味で、さまざまなタスクを自動化するRPAは、業務変革の中核を成す技術と言えます。高度なエンジニアリングの技術を必要とせず、汎用的でいろいろな人が使えるRPAは、日々のルーティンワークを自動化することで確実に業務の生産性を上げることができますから。
業務を自動化するオートメーションプロセスの開発やメンテナンスができるRPA技術者の需要は高く、現在かなり不足しています。UiPathでもRPA技術者の育成に力を入れていますが、たくさんの地域をカバーするのが難しい。そのような中でIBM地域DXセンターが全国に展開しているというお話を聞き、地域で即戦力になれるRPA技術者をIBMとUiPathで一緒に育成しようと今回のプログラムの展開を決めたんです。
IBM田端: ありがとうございます。私たちが地域での人財育成に力を入れる中で、特にUiPathとぜひ一緒にIBM地域UiPath人財育成プログラムをやらせて頂きたいと思った理由が2つあるんです。
1つ目は、日本でDXを進めようにも、とにかくデジタル人財が不足していることです。日本IBMは早い時期からUiPath社と一緒にやらせていただいていますが、世の中に自動化の波が訪れたのは今から7-8年前でしょうか。いわゆるRPAブームと呼ばれた頃です。働き方改革や生産性向上に役立つ強力なツールとして多くの企業がRPAを導入したのは記憶に新しいところです。
コロナ禍以降、オフィスに来て人が対応しなければならない業務をできる限り減らすために、再びRPA導入の動きが活発化しましたが、対応できるRPA技術者が非常に不足しています。
一般にRPAツールの多くは専門的なプログラミング知識を必要としないと言われていますが、複雑化する業務を正しく自動化しメンテナンスしていくには、RPAの専門スキルを持った技術者が必要になります。IBMとしてもRPA技術者を早急に、かつ安定的に育成したいと考え、UiPath社に協力を求めました。
2つ目の理由は、先ほど南社長のお話にもありましたが、RPAを使ってDXを推進したいというニーズが、首都圏だけでなく地域の企業や自治体で増加していることです。
RPAは1度作って終わりではなく継続的に運用していくものですから、その地域でRPAの技術者を育成するのが最もサステイナブルです。今回の育成プログラムを昨年10月にスタートさせたところ、反響が大きく、地域でのRPAへの関心の高さを改めて実感しました。プログラムを修了した皆さんがRPAの技術力を発揮して地域で活躍してくれることを願っています。
IBM井上: 地域でのDX人財の育成の必要性には私も強く共感しています。業務に適用しやすく、またテクニカルの面でも習得しやすいRPA技術者育成プログラムを一緒にやらせていただきたいと思いました。
コンテンツは、オンラインでRPA技術を学ぶ「UiPath Academy」に加え、日本IBMのRPA専門家による活用事例の紹介や相談セッションなどもあり、即戦力の育成を意識した内容となっています。
2. 業務自動化の現場にも変化、時代はRPA×AIの融合へ
IBM井上: コロナ禍の間にUターン、Iターンなど働く場所を問わずにリモートで働く柔軟な環境が普及しました。コロナ時代が終わった後も、リモートで働く環境は変わらず、IBM地域DXセンターは地域を中心に拡大しています。地域を舞台に、現場での業務自動化はどのように変化していると考えますか。
UiPath南: 近頃は地域DXが成功している事例をよく耳にするようになりましたが、 一方でDXが難航しているケースも少なくありません。DXに着手するにあたり、はじめに大規模なデータベースを作るなどシステムの再構築から始めたような場合です。IT的な作り込みが先行し、システム間を繋ぐプロセスが不十分のまま進んでしまうと、個別の業務は効率化できでも、全体では期待したほど生産性が上がらないことが多いのです。
データベースを作ったりシステムをクラウドに搭載するだけではDXは進まないものです。本質的なDXは、業務を可視化して課題を探り、何をどれだけ効率化することで全体の労働生産性が向上するか正確に分析するところから始めるべきだと私は思いますね。業務効率化の観点では、やはりロボットによる自動化が高い効果を発揮します。
しかし全国的に不足しているRPA技術者を確保、育成するには多くのコストと時間がかかりますから、地域の企業や自治体だけではなかなか難しいところがあります。
そうした状況の中、技術とノウハウを有するUiPathと日本IBMが協力して地域にRPA技術者を育成するのは、ある意味、社会使命だと受け止めています。
今回のIBM地域UiPath人財育成プログラムは、需要が高いRPA技術を未経験の方でも効率よく習得できる好適の機会ですから、ぜひ多くの方に活用していただきたいです。RPAの裾野が地域に広がり、業務変革にRPAが当たり前のように使われて地域全体の生産性が向上することは、UiPathの願いでもあるのです。
IBM井上: 生産性の向上という観点では、身近な作業を効率化するツールとしてもRPAを活用している人が弊社の中でも増えています。RPAを活用するということは、手作業が自動化されるだけでなく、ヒューマンエラーがなくなり高品質を担保することができます。
弊社ではKAIZENOVATION(カイゼノベーション:改善のイノベーションの意)という年に1度の大会があり、目の前の業務を技術を使って改善し変革することに多くの社員がチャレンジしています。IBM地域DXセンターにおいても、地域で働くたくさんの技術者がこの大会に挑戦していますので、同じようにIBM地域UiPath人財育成プログラムに参加した皆さんにも、こうした好奇心溢れる技術者マインドを身につけて頂けたら嬉しいですね。
近年では生成AIなど新しい技術が活用される場面が増えていますが、AIの発展は自動化の技術においてどのような変化をもたらすでしょうか。
UiPath南: 生成AIは驚くほど急速に発展していますね。業務の自動化にもAIを取り入れるのが主流になっていくと思います。
企業の業務には「非定型」と「定型」のものがありますが、これだけAIが人間に近い存在になってくると、型通りには行かない非定型業務にもAIが柔軟に対応し、同時に効率化も図るようになっていくと思います。
定型業務についても、企業内の複数の業務を繋ぐ役割などでAIが力を発揮する機会が増えるのではないでしょうか。構造化された定型業務はそれぞれ独立して機能していることが多いので、そもそもプロセスが繋がっていなかったり、データ連携が難しかったりします。その間にAIを入れてプロセスを連続させることで、全体の生産性が飛躍的に向上するようなことも見込めるでしょう。AIを活用した業務変革はますます活発になっていくと思いますね。
UiPathにおいても、AIとRPAの融合を図った製品や機能が普及し始めています。海外の製造業のお客様の例ですが、UiPathのプラットフォーム上でRPAとOpen AIを融合させて業務プロセスを大幅に効率化し、設計からサプライチェーンまでのプロセスをEnd to Endで変革に成功したケースもあります。
UiPathは製品プラットフォーム自体にもAIを搭載していますが、これから日本でも、RPAとAIを融合させて使うやり方が一般的になっていくと思います。
3. 多様性と「技術の掛け算」で育むデジタル人財
IBM井上: AIとRPAの融合が見込まれているように、これからの時代は1つのテクニカルスキルだけでなく、プラスアルファでAIをはじめとしたさまざまな技術を習得していくことが求められますね。今後どのようなスキルや資質が必要になるでしょうか。
IBM田端: RPAを学ぶ上で大切なのは、目の前の業務の効率化だけでなく、そこから全社的な生産性の拡大や、ビジネスプロセス、組織の変革に繋げるにはどうすれば良いかを考えられるようになることです。そのためには、ご自身のバックグラウンドやめざす方向性に合わせて、RPAスキルの次はAIやプロセスマイニングなど、関連するところから学んでいくのがよいと思います。
UiPath南: RPAによる業務自動化はファーストステップで、これからはもう一歩進んで、技術の掛け算で生産性を向上させていくことが、社会的な命題になってくると思います。前述のAIとRPAの融合もそうですね。これからRPAスキルを習得する皆さんは、追加でさまざまなデジタル技術を学んで、それらをうまく組み合わせて活用していく力を育んで欲しいと思います。技術と技術を掛け合わせて活用することで、業務の現場の課題や効率化に、これまでにない解決策を見出すことができるようになるかもしれません。
IBM田端: そうですね、技術の掛け合わせは、今後ますます必要になってくると思います。私のチームの場合だと、RPA、生成AI、ワークフローなどを扱ったコンサルティングサービスを行っていますが、この技術はこの製品のために使う、のように狭い発想をしてしまうと、お客様のトランスフォーメーション(変革)の実現まで行きつかないのです。視野を広げて、「あの技術とこの技術を掛け合わせてみたら何か新しいことができるかもしれない」と想像するところから変革の芽が生まれるんです。
こうした「技術の掛け算」から新しいアイディアが湧き上がってくる感覚を多くの技術社員に経験してもらうため、私のチームでは、1人が担当する製品は1つに絞らないようにしています。複数の技術を扱うことで、他の専門領域や多くのステークホルダーと交わる機会が確実に増えますから、自分にはない新たな視点や発想を得ることができます。こうした多様性を前向きに受け入れる姿勢も、技術者にとって不可欠な要素だと思います。
IBM井上: 技術においても、人にとっても、多様性はとても大切ですね。性別、年齢、地域、専門領域など、さまざまな属性の人々の多様な視点から生まれるイノベーションは、デジタル変革には欠かせないものです。日本国内に展開を続けているIBM地域DXセンターでも社員の多様性が進んでいます。
UiPath南: 技術者の成長を考える上でも多様性は大切にしたいですね。IT業界のここ数年の傾向として「ユーザーコミュニティ」が技術者同士の情報交換やスキルアップの中核の場となっています。弊社にも公式ユーザーコミュニティ UiPath Friends(UiPathフレンズ)があります。
UiPathを使って下さっているユーザーの皆さんが、勉強会やイベントを通じて共に学びを深め共有し合う、いわば「草の根的な」UiPath技術者の育成コミュニティです。
企業ユーザーもいれば個人で参加してくださっている方もいます。さまざまな業種、スキルレベルの人たちが集まり活発にコミュニケーションすることで技術者として成長していく、まさに多様性が活かされる場でもあるんです。
私としては、こうした技術者の育成コミュニティを地域でも発展させたいと考えています。1人で学ぶのも良いですが、コミュニティを通じてネットワークを広げ、その地域に根ざしたDXを推進できる人財になって欲しいと思いますね。
IBM井上: 地域においてゼロからDXスキルを身につけることができ、その後も技術者コミュニティで成長できるのは素晴らしいことですね。技術者のコミュニティと言えば、田端と私も女性技術者による全社横断的なコミュニティ(※3)をリードしています。私にとっては技術やイノベーションの刺激を得られる場であり、技術者がつながることで新たなシナジー効果も生まれる有意義な活動です。地域にも技術者コミュニティがたくさんできて欲しいですね。
ここまで述べてきたように、全国的にDX人財不足が続いており、こと地域においては喫緊の課題となっています。UiPathとIBMは、両社のパートナーシップをもとに、今後も業務効率化や生産性向上などDX推進の中核を担う技術者を育成することで地域DXをご支援し、地域のステークホルダーの皆様と共に豊かな地域の実現に向けて取り組んで参ります。
脚注
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