IBM クラウド・ビジョン
ニッセイ情報テクノロジー様が新型コロナ禍に対応した大規模リモート開発環境をIBM Cloud上に構築中!
2021年05月10日
カテゴリー CIO|CTO向け | IBM クラウド・ビジョン | クラウド・アプリ構築
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新型コロナウイルス感染症の拡大は、オンサイトで行われてきた多くの日本企業のシステム開発プロジェクトに大きな支障を及ぼしました。デジタル経済が牽引するニューノーマル社会への移行が急ピッチで進む中、たとえ今後も新型コロナ禍が続くとしても、システム開発プロジェクトをこれ以上停滞させるわけにはいきません。日本生命保険様のシステム構築/運用を担うニッセイ情報テクノロジー様は、自社やパートナー企業の社員約1,750名が利用するオープン系システムの開発環境をリモート化することを決断。そのプラットフォームとして、事務作業で利用していたVMware HorizonによるオンプレミスVDIの設計やノウハウを生かしたスピーディーな導入/環境構築が可能なクラウド・サービス「VMware Horizon Enterprise on IBM Cloud」を採用されました。これにより、オンプレミス環境とパブリッククラウド環境によるハイブリッドなVDIが誕生します。2021年7月のサービスインに向けて作業を進めるプロジェクトのキー・パーソンに、採用の理由、同社に最適な導入を実現するための工夫を聞きました。
1.新型コロナ禍で顧客システムのオンサイト開発が困難に
2.“開発要員の安全確保”と“柔軟な働き方の実現”を目指し、リモート開発環境の検討を開始
3.プロジェクトの状況に応じて利用規模を柔軟に増減できるDaaSの活用を決定
4.オンプレミスのVDI環境の設計/運用資産をそのまま生かせるVMware Horizon Enterprise on IBM Cloudを採用
5.カスタマイズ性と集約管理の両立など、独自の工夫を凝らしてリモート開発環境を構築
6.将来の適用範囲拡大も視野に導入プロジェクトを遂行中
新型コロナ禍で顧客システムのオンサイト開発が困難に
日本生命保険相互会社(以下、日本生命)グループのIT戦略会社として1999年に誕生したニッセイ情報テクノロジー株式会社様(以下、NISSAY IT)。日本生命およびグループ各社の情報システム構築で培ったノウハウを生かし、現在は保険/共済/年金/ヘルスケアのシステム構築サービスなどをグループ内外の企業に広く提供しています。
ニッセイ情報テクノロジー 基盤ソリューション事業部
インフラ開発ブロック 上席スペシャリストの町野 貴英氏
そのNISSAY ITが現在、喫緊の課題として取り組んでいるのが「リモート開発環境の整備」だと基盤ソリューション事業部の町野 貴英氏(インフラ開発ブロック 上席スペシャリスト)は説明します。
「当社では、社員およびパートナー企業の開発要員(合計約1,750名)による日本生命様のシステム開発/運用業務を、自社拠点を中心にオンサイトで行ってきました。しかし、2020年4月から本格化した新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開発要員の感染防止のためにオンサイトでの開発をこれまでと同様に行うのが難しくなってきました」(町野氏)
“開発要員の安全確保”と“柔軟な働き方の実現”を目指し、リモート開発環境の検討を開始
同社は新型コロナ禍の長期化、今後も起こりうるパンデミックや自然災害などに備え、“開発要員の安全と業務継続の両立”およびパートナー企業も含めた“開発要員の柔軟な働き方の実現”という観点から、リモート開発環境の構築について検討と対策を開始します。
その中で、まず対象となったのがメインフレーム・システムの開発環境でした。NISSAY ITでは、メールや資料作成などのオフィス・プロダクティビティー・ツールについては以前よりVMware HorizonによるオンプレミスのVDIを利用していました。そこで、メインフレーム・システムの開発環境については2020年9月に同VDI環境を用いてリモート化が実施されます。
続いて検討の対象になったのが、Javaによるオープン系システム開発環境のリモート化でした。同社の従来のオープン系システムの開発環境は、次のようにいくつかの課題を抱えていました。
「例えば、開発端末としてPCを使いますが、システムによって利用する技術やソフトウェアのバージョンが異なるため、開発対象のシステムごとに端末を用意しなければなりません。その結果、1人で5台、6台の端末を机の上に配置し、開発するシステムによって使い分ける開発要員もいました。PCを利用しているため、チェックアウトしたソースコードなどのデータがローカル環境に一時的に残る恐れがあり、端末の紛失時のデータ漏洩リスクも危惧されました」(町野氏)
さらに、多数の開発端末の調達コスト、OS/開発用ツールのアップデートや端末管理の負担、端末の故障による開発データの消失リスクなど、物理端末に伴う課題が山積していました。
プロジェクトの状況に応じて利用規模を柔軟に増減できるDaaSの活用を決定
オープン系リモート開発環境の実現手段について検討を重ねたNISSAY ITは、VDI環境をクラウド・サービスとして提供するDaaS(Desktop as a Service)の活用を決めます。
仮想的にデスクトップを実現するDaaSなら、開発対象のシステムに応じてデスクトップを簡単に切り替えられるため、物理端末への投資を従来よりも抑えられます。開発用デスクトップのテンプレートを用意することで、開発環境の標準化を進めやすくなることもメリットです。DaaSを経由してニッセイNWにアクセスする接続構成でセキュリティーを高められるほか、物理端末にまつわる前述の課題も解消できます。
ニッセイ情報テクノロジー クラウドサービス事業部
ITソリューション開発ブロック スペシャリストの山下 美千代氏
また、リモート開発環境の設計/構築を担うクラウドサービス事業部の山下 美千代氏(ITソリューション開発ブロック スペシャリスト)は、既存の開発環境を移行しやすいこともDaaSの大きな魅力だと話します。
「物理端末で使っていた開発環境をそのまま持っていければ移行がスムーズに進みますが、DaaSならばそれが可能です」(山下氏)
加えて、コスト面でもDaaSは魅力的でした。
「開発用のVDI環境をオンプレミスに自前で持つことも検討しましたが、試算した初期コストはDaaSと変わりませんでした。それなら、プロジェクトの状況に応じて利用規模を柔軟に拡大/縮小できるDaaSのほうがメリットが大きいと当社の経営層も判断し、DaaSに決めたのです」(町野氏)
オンプレミスのVDI環境の設計/運用資産をそのまま生かせるVMware Horizon Enterprise on IBM Cloudを採用
DaaSの活用を決定したNISSAY ITは、実際に利用するDaaSソリューションの選定に入ります。熟慮の末に同社が採用を決めたのが、IBM Cloudのベアメタル環境でVMware Horizonをサービスとして提供する「VMware Horizon Enterprise on IBM Cloud」でした。採用の理由を町野氏は次のように説明します。
「今日、世の中にはさまざまなDaaSソリューションがありますが、当社はオンプレミスの事務作業用VDI環境としてすでにVMware Horizonを利用しており、その環境や設定を可能な限り流用して早急にリモート開発環境を立ち上げることを目標の1つとしていました。そこで、オンプレミスの設計や運用のノウハウを踏襲でき、なおかつ自社で保有しているVMware Horizonのライセンスを持ち込めるDaaSソリューションを探し、VMware Horizon Enterprise on IBM Cloudに決めました」(町野氏)
ベアメタルは専有環境であるためセキュリティーが高く、IBM Cloudはベアメタルの提供実績やVMwareの稼働実績が豊富であること、導入に際してはIBMから強力な支援が得られることも決め手になったと山下氏は話します。
「今回のリモート化対象は日本生命様向けの開発環境であり、お客様のガバナンスやセキュリティーなどの規定に準拠しながらオンプレミスのシステム本体とスムーズにつなげることも大きなテーマです。これに関しては、日本生命様および当社と長い付き合いのあるIBMから、それぞれのシステム環境や事情を踏まえた提案をもらって一緒に考えていくことでスムーズに進められるとの期待がありました」(山下氏)
カスタマイズ性と集約管理の両立など、独自の工夫を凝らしてリモート開発環境を構築
ニッセイ情報テクノロジー クラウドサービス事業部
ITソリューション開発ブロック スペシャリストの新居 直人氏
2020年10月にVMware Horizon Enterprise on IBM Cloudの採用を決めたNISSAY ITは早速、同月より導入作業を開始します。クラウドサービス事業部の新居 直人氏(ITソリューション開発ブロック スペシャリスト)は、今回のプロジェクトで最も苦労しているのは「個々の開発要員(以下、ユーザー)によるカスタマイズの裁量と集約管理のバランスを取ること」だと話します。
「今回は7つのシステムの開発環境をリモート化の対象にしていますが、それらの中でもさらに細かく領域が分かれており、対象の開発業務や手法は多岐にわたります。これまでは、ベースとなる開発環境と物理端末を私たちが用意し、それを対象システムごとにユーザーがある程度カスタマイズして使っていました。仮想化環境でも同様に一定のカスタマイズが行えるようにしますが、一方で集約環境として共通化やルール化が必要な部分が発生します。この“カスタマイズ性と共通化/集約化の両立”が目下苦労しているテーマの1つです」(新居氏)
また、リモート開発環境の設計を固めるうえで、新居氏らはパートナー企業も含めたユーザーの利用実態をヒアリングした結果を踏まえ、仮想化環境の実現方式を1つ1つ検討しています。
開発環境の提供リードタイムを短縮する工夫も凝らしています。物理端末では、新たな開発環境を提供する際に端末手配からキッティング(環境構築/設定)、提供までに多くのリードタイムがかかっていました。キッティングに関してはツールによってある程度の自動化を図っていたものの、人手で作業する部分もあり、作業負担も大きかったといいます。
「その環境を仮想化するにあたり、IBMの支援を受けてプログラムの配信ツールを新たに導入し、キッティングに関しては完全自動化を目標に構築を進めています。これらを実現することで、7つのシステムを対象にした多岐にわたる開発環境の提供リードタイムを大幅に短縮し、より柔軟な環境提供が可能になると見込んでいます」(新居氏)
加えて、DaaSでは同時接続数や利用ユーザー数が料金に大きく影響するため、それらをどう抑制するかも大きなテーマです。
「DaaS利用のコストを削減するため、VMwareやOSの機能で一定時間の操作がない場合は切断したり、デスクトップ配信ツールで利用統計を取ったりして、無駄な接続を減らすよう運用ルールを整えています」(町野氏)
将来の適用範囲拡大も視野に導入プロジェクトを遂行中
このように、NISSAY ITではさまざまな工夫も盛り込みながら、2021年7月のサービスインを目指して導入作業を進めています。
「サービスイン後は、オンサイトで開発作業を行うスタイルから、リモート中心のスタイルへと徐々に移行していくでしょう。それが今回のようなパンデミックへの対応や柔軟な働き方の実現に確実につながっていくのだと思います」(町野氏)
また、将来的にはニアショア開発のプロジェクトや日本生命以外の顧客のプロジェクトへの横展開も検討していきたいと町野氏は話します。
なお現在、構成管理やテストなどの環境はオンプレミスにRational製品で構成していますが、「これをクラウドベースの環境に移行することも検討しています。開発するアプリケーションについても、コンテナなどクラウドネイティブ技術の活用を進めるための検討を始めるところです」と山下氏は話します。
「ダイレクトチャネルを担うアプリケーションについてはコンテナの活用が適していると考え、検討を始めました。それらのアプリケーションも今回のリモート開発環境で作っていくことになるため、コンテナ環境とリモート開発環境をどう連携させるかなどをIBMとともに考えていくことになるでしょう」(山下氏)
そして、今回のリモート開発環境構築プロジェクトが持つ意義を、プロジェクトを統括する基盤ソリューション事業部 事業部長の松島 英樹氏は次のように説明します。
ニッセイ情報テクノロジー 基盤ソリューション事業部
事業部長の松島 英樹氏
「ニューノーマル時代を見据えた今回の取り組みでは、パンデミックや自然災害時でも開発業務が継続可能な環境整備を進めており、これが『NISSAY ITならいつでも安心して仕事を任せられる』とお客様からさらなる信頼をいただくことにつながります。また、開発要員がオンサイトに集まることなく安心/安全に開発を行える環境が提供されることはパートナー企業から見ても魅力的であり、業界全体で人手不足が見込まれる中、パートナー企業からの支援を得やすくなると考えています」(松島氏)
こうしてサービスイン後の展開もにらみながら粛々とプロジェクトを進めるNISSAY IT。ニューノーマル時代における同社の価値創造を支える大規模リモート開発環境が、間もなく完成します。
大阪拠点の山下氏(写真右)、新居氏
東京拠点の松島氏(写真右)、町野氏
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