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Turbonomic ARM – アプリケーションが必要とするITリソースを柔軟かつ継続的に最適化

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今日の企業システムは、ハイブリッド・クラウド化やコンテナ化などで複雑化が進み、ITリソース管理は非常に難しくなってきています。ダイナミックにワークロードの負荷が変化し続ける、クラウドネイティブなシステムのITリソース管理は、柔軟かつ継続的に最適なITリソースを提供し続けていくことが重要になります。最初にリソースを多めに用意してシステムを稼働させる従来のアプローチ方法もありますが、無駄なリソースを払い出している可能性も高くあります。このような背景の中、IBMは2021年6月に、アプリケーション・リソース管理(ARM)およびネットワーク・パフォーマンス管理(NPM)のソリューションを提供するTurbonomic社を買収しました。本記事では、お客様ビジネスを支えるアプリケーションが必要とするITリソースをAIを活用して柔軟かつ継続的に最適化するソリューション、”Turbonomic ARM ”の特徴と主な機能をご紹介します。

アプリケーションのリソース管理はますます複雑に

現在、お客様ビジネスを支えるアプリケーションと、それを支えるインフラ環境は複雑化してきています。マルチクラウド、オンプレミスとパブリッククラウドで分散化されたハイブリッドクラウド、コンテナ、マイクロサービス化など様々なテクノロジーの活用やDevOps、サービスリリースの頻度が高くなるなど、運用の変化によってITリソース管理の観点でも複雑化しています。特にダイナミックに環境が変化するクラウドネイティブなアプリケーションの運用管理においては従来のインフラ中心のアプローチのままでは管理が難しく、ワークロードの負荷が変化しつづける中で適切なリソースを予測することは非常に困難になっています。従来では稼働環境のリソースを多めに用意し、負荷が上振れしても耐えられるようにするアプローチを取るケースが多いですが、実際には予想したほどリソースが使用されず無駄なコストを払っているケースが多くあります。このような複雑化した運用環境において、AIを活用しミッションクリティカルなアプリケーションに必要なITリソースを継続的に提供し続けることができれば安定稼働を維持できるだけでなく、コストも最適化することができます。この課題に対するソリューションとしてIBMはTurbonomicを買収し、アプリケーション・リソース・マネージメント(ARM)ソリューションを提供できるようになりました。

アプリケーションが必要とする最適なITリソースを継続的に管理

Turbonomic ARMは、AIを用いてアプリケーションが必要とするITリソースを最適化し、アプリケーション・パフォーマンス、コンプライアンスおよびコストの継続的な管理を可能にするアプリケーション・リソース・マネジメント(ARM)ソリューションです。仮想マシンやクラウド、コンテナ環境に構築している複雑化したITリソースを柔軟かつ継続的に管理していくことが可能になります。Turbonomic ARMをお客様システムに導入することで、アプリケーション、トランザクション、仮想マシン、コンテナ、DB、ストレージ、などを1つのデータモデルに取り込み、アプリケーションからインフラまでをフルスタックで可視化します。具体的には、アプリケーション・パフォーマンス・モニタリング(APM)ツールやVMwareやAWSなどの様々なベンダーが提供するITリソースと接続し、APMツールが収集しているアプリケーション・パフォーマンスデータとインフラリソースのデータを収集し、アプリケーション・パフォーマンスのボトルネックや過剰にリソースを配分しているコンポーネントを可視化します。この可視化されたものをTurbonomic ARMでは、アプリケーション・サプライチェーンと呼んでいます。さらに、AIを活用して過不足があるリソースに対して、リソースを増やすなど、最適化するための推奨アクションを自動的に生成し、実行することができるようになります。

お客様がTurbonomic ARMを導入するメリットとして、アプリケーションが必要とするITリソースを柔軟かつ継続的に割り当て、アプリケーション・パフォーマンスを維持させることが可能になります。また、ITポリシーを守りながら自動的にワークロードを配置、サイジング、移行し、リソースの利用効率を向上させて仮想マシン・クラウドコストを削減することが可能になります。

共通のデータモデルと推奨アクションの自動生成・実行

Turbonomic ARMにITリソースを登録すると、自動的にアプリケーションと仮想マシンやクラウドのリソースを見つけて、 これまで別々だったアプリケーションのパフォーマンスとインフラのリソース利用状況の関係性を、自動的にアプリケーション・サプライチェーンという形に可視化してくれます。アプリケーション層からインフラ、仮想マシン、コンテナ、クラウド、ストレージ、いずれも共通のデータモデルとしてサプライチェーンに取り込み、共通の解析エンジンがアプリケーション・セントリックに仮想レイヤーから物理レイヤーまで、アプリケーションがどのようにリソースを使用しているかを解析し、アプリケーションが必要とする最適なITリソースを割り出します。最終的に、それを払い出す推奨アクションを自動的に生成し、ブラウザベースのダッシュボードからリソース変更のアクションを直接実行することができます。アクションは手動で必要なアクションを実行することも可能ですし、ポリシーを設定しておけば自動的に実行させることも可能になっています。

下図はTurbonomic ARMがサポートしているテクノロジー(一部)になります。アプリケーションは、IBM Observability with Instana(以下、Instana)を始めとするAPMツールや、WAS、Tomcat、weblogicのjavaアプリケーションサーバーのパフォーマンスデータを取り込むことができます。コンテナは、Openshift、Kubernetesなど、データベースは、MySQL、Microsoft SQL Serverなど、仮想化環境は、VMwareやMicrosoft Hyper-Vなど、パブリッククラウドは、AWS、Azureなど、物理サーバー、ネットワークは、Ciscoなど、ストレージはEMCなどがサポートされています。IBM製品は今後順次サポートリストに含まれてくることになっています。Turbonomic ARMは、これらのコンポーネントに対して、エージェントレスでAPI接続することでアプリケーションとインフラデータを取り込む仕様になっています。例えば、Instanaとの連携では、Instanaで生成したAPI TokenとInstanaのFQDNをTurbonomicに登録することで接続が可能になります。

【Turbonomic ARMによるITリソース最適化の事例】

ここでは、アプリケーションのパフォーマンス監視にAppDynamics、アプリケーション稼働環境にコンテナ、kubernetes、VMwareなどをオンプレミスで使っているシステムにTurbonomic ARMを適用した事例をご紹介します。下図のように、お客様システムをアプリケーションからインフラまでフルスタックのサプライチェーンがエージェントなしで自動で可視化します。例えば、AppDynamicsやKubernetesなどのデータから782のアプリケーションが66のPodで稼働していることがわかります。

下図は782のアプリケーションのうちの1つにフォーカスしたサプライチェーンになります。右側はAPMとインフラのコンポーネントから集めたレスポンスタイムやトランザクションなどのデータからITリソースが十分であるかを表示しています。緑色の表示はITリソースが正常、黄色は削減可能、赤色は不足しているため追加が必要であることを示しています。

下図では、APMツールから得られたアプリケーション・パフォーマンスデータとITリソースの使用状況からTurbonomic ARMが、javaのヒープサイズを削減する推奨アクションや仮想マシンのVMemおよびVCPUのサイズを削減するなどの推奨アクションを生成しています。このダッシュボードから手動・自動でアクションを実行することができます。Turbonomic ARMが生成したリソース変更の推奨アクションは、実行した場合にアプリケーションのパフォーマンスを落とさないことを前提に生成されています。

下図では、この事例でTurbonomic ARMを導入し、アプリケーションの性能を損なうことなく、データセンターのリソースの利用効率を上げたことを表しています。物理ホストに対して仮想ホストの密度を表しているグラフになります。CurrentはTurbonomic ARMを使わず、元々1物理ホストで24の仮想ホストを動かしていたことを表しています。これに、Turbonomic ARMでプレイスメントの自動化を行うと、1物理ホストで30仮想ホストまで増やすことはでき、さらに、Turbonomic ARMが推奨するリサイズ、リソースの最適化までを継続的に行うと、より多くの仮想ホストを、物理ホストを追加することなく、動かすことができるようになったことを表しています。

クラウドコストの算出

Turbonomic ARMでは、AWSやAzureなどのパブリッククラウドを登録してリソース管理を行うことができます。その際に、クラウドリソースを追加・削減するアクションを実行した場合のクラウド・コストの増減を算出する機能を下図のように提供しています。リソースを追加する場合、どれくらいのクラウドのコストが追加でかかるか、もしくはリソースを削減するアクションを実行する場合、どれくらいコスト削減できるかを提示してくれます。アクション実行、リサイズを検討する際に参考になります。また、現状のクラウド・コストをTurbonomic ARMのダッシュボードから参照することが可能です。パブリッククラウドのアカウント毎、サービス毎にクラウド・コストを参照することが可能で、RI(リザーブドインスタンス)の利用率なども時系列で参照することが可能です。

オンプレからクラウドへの移行検討の支援

Turbonomic ARMには、オンプレの環境からクラウド移行や仮想マシンを追加をした場合に必要になるリソースがどれくらいになるか、コストがどれくらいになるかを算出するプラン機能があります。例えば、今オンプレミス環境で動かしているVMwareの仮想化環境をAWS、Azureにそのままのサイズで持っていくとしたらどれくらいのクラウド・コストがかかるかや、もしくは、Turbonomic ARMで最適化した場合はどのくらいのクラウド・コストになるかなどを提示してくれる機能になります。Turbonomicは移行自体の作業はしませんが、移行計画の検討の際に使える機能になります。

Instanaとの連携

Instanaは、ゴールデンシグナルの値などアプリケーション・パフォーマンスのモニタリングや、サービスの依存関係の可視化、障害検知などの機能を提供する、2020年11月にIBMが買収したAPMソリューションです。Instanaで収集したお客様システムのアプリケーションのパフォーマンスデータをTurbonomic ARMに連携することで、Turbonomic ARMがInstanaのデータと仮想化環境やクラウドのITリソースの利用状況から、リアルタイムでアプリケーションが必要とするITリソースを可視化・分析し、自動的に推奨アクションを提示します。IBMが提供する2つのソリューション、InstanaとTurbonomic ARMを組み合わせることでAIを活用したオブザーバビリティーと動的なリソース管理が行えるようになります。

 

まとめ

本記事では、AIを活用してお客様ビジネスを支えるアプリケーションが必要とする最適なITリソースを柔軟かつ継続的に管理していくことを可能にするTurbonomic ARMについてご紹介しました。Turbonomic ARMは、アプリケーション、クラウド、コンテナ、インフラのデータを共通のデータモデルに取り込んで、アプリケーションがどのようにリソースを使用しているかを解析し、推奨するアクションを自動的に生成して実行させることができます。Turbonomic ARMを導入することで、お客様は最適なITリソースを継続的に割り当て、アプリケーション性能の最適化やインフラ/クラウド・コストの削減に繋げることが可能になります。また、ポリシーを常に遵守しながら、自動的にワークロードを配置、サイジング、移行させることでコンプライアンスの強化を図ることにも繋がります。Turbonomic ARMは、オンプレのVMware、パブリッククラウドのAWS、Azure、コンテナを使っているシステムなどを得意としていますのでぜひご検討ください。

 

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【著者情報】

太田 充紀
日本アイ・ビー・エム
テクノロジー事業本部
データ・AI・オートメーション事業部
Automation 第一テクニカル・セールス

WebSphere製品などのSMEとして様々な業界のWebシステムのデリバリーを経験。現在はテクニカルセールスとしてAIOpsの分野を中心に、企業の運用高度化・自動化を支援。


 

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