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アイデアミキサー・インタビュー | 河野 英太郎(作家、アイデミーCOO、他)後編

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生産性向上は幸せになるための手段 

「アイデアミキサー」第6回は、日本IBMへの入社と退社を2回繰り返したというちょっと変わった経歴をお持ちで、現在はアイデミー社の取締役COOを筆頭に、複数の肩書きで活動している河野 英太郎さんにお話を伺っています。

前編では「成功と成長」「電通とアクセンチュアとIBM」「オーソリティー(権限)とオートノミー(自律)」などについてお話しいただきました(前編はこちら)。

それでは後編のスタートです。

(インタビュアー 八木橋パチ)

河野 英太郎 | Kono Eitaro
1973年 岐阜県生まれ。東京大学文学部卒業、同水泳部主将。グロービス経営大学院(MBA)修了。
電通、アクセンチュアを経て、日本IBMに16年勤務。金融・IT・製造・通信・教育・複数社の人事制度改革やコミュニケーション改革、研修開発・実施、人材育成、組織行動改革などを推進。
現在、株式会社Eight Arrows 代表取締役、株式会社アイデミー取締役執行役員COO、グロービス経営大学院客員准教授などを務める。
■主な著書
『どうして僕たちは、あんな働き方をしていたんだろう?』(ダイヤモンド社)
『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) ※2013年ビジネス書大賞書店賞受賞。および同シリーズ。
株式会社アイデミー | https://aidemy.co.jp/
株式会社アイデミーは「先端技術を、経済実装する。」を企業理念とする、2014年創業のベンチャー企業です。
2017年に「10秒で始めるAIプログラミング学習サービスAidemy」をリリース後、約3年で登録ユーザー数10万人を突破し、日本最大級のAI学習オンラインサービスとなりました。
現在、法人向けにもサービスを展開し、AI/DXプロジェクト内製化に向け人材育成から実運用まで一気通貫で支援しています。

 

企業が一番に追いかけるべきは「お客様の成功」

河野さんにとって理想の働きかたとはどんなものでしょう? そして現在はその状況ですか?

理想の働きかたについては、僕には一貫してずっと言い続けていることがあります。それは「働きかたから意味のない我慢を無くしたい」ということ、そして「不要なストレスをゼロにしたい」ということです。

今は、かなり理想に近い働きかたができていますね。誰にも理不尽な要求をされることも、訳の分からない縛られかたをすることもなく、自律的に働くことができています。

先程紹介いただいた英語のインタビュー『Japanese Working Culture: The Good, the Bad, and the Getting Better』でも語ったことですが、これまで、自分のキャリアを通じて日本の働きかたを少しでも理想に近づけ、ホワイトワーカーの生産性向上を実現しようとしてきたつもりです。そしてそのために、自分の考えや取り組みを、手を替え品を替え伝え続けてきました。

 

— コロナ禍で人びとは「エッセンシャルワーク」の重要さを思い出しました。「ブルシット・ジョブ」という言葉にも脚光が当たりました。「不要さ」や「意味のなさ」が指すものって、個人や組織による認識の違いも大きくないですかね?

たしかに「認識の違い」と呼べる範囲内のこともあると思いますが、僕がここで指しているのはより根幹に近い部分ですね。

たとえば、「部下は上司より先にオフィスに到着するべきであり、上司より先に帰宅するべきではない」とか、「どんな理不尽であれ上が言うことには絶対服従」とか、そういうことです。

そして一方で、パチさんが言うように、組織の成長ステージや状況によってはたしかに「人によっては一見理不尽に思える」ことを強要したり、されたりしてしまうこともあるのかなとは思います。

コンフォートゾーンとストレッチゾーンとパニック(この話はインタビューの最後に)

 

試してみる。続けてみる。発信してみる。

— 「考えや取り組みをいろいろ発信してきた」と先ほど言われました。その一つが作家としての活動かと思うのですが、河野さんの場合は書きたいものが沸々と湧いてくる感じなんでしょうか?

うーん、そういう「出したい」という内部的な欲求の部分もあるし、「求められている」と外部からの要求を感じて書く部分もあります、両方ですね。

これは経験を通じて分かったことですが、書籍って結局ニーズと供給がちゃんと合わさらないと読んでもらえないんだと思います。何十万部も売れるというありがたい経験もしましたが、まったく読んでもらえなかったという経験もしてきたんで(笑)。

 

— 何十万部は『99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ』ですね。そもそもの出版は河野さんの意思からスタートしたんですか?

意思は持っていましたよ。でも、それが強かったかと言われればそうでもなくて、偶然の積み重なりみたいなものがあったんです。

元々は、頭で考えただけのことじゃなくて、実際に行動に移したらとても上手くいったという自分の経験を、当時自分がリードしていたプロジェクトメンバー向けに、ちょっとした文章にしてメールで送っていたんです。

それがどんどん貯まっていって、あるとき「これは一冊にまとめた方がいい」って出版の話が舞い込んできたんです。

 

— なるほど。「使えるノウハウが読みたい」というニーズと、「実践の経験を伝えたい」という供給がマッチしたんですね。ちなみに、さっき言っていた「まったく読んでもらえなかった」とはどの本ですか?

パチさんそれ聞いちゃいますか(笑)。『現代語訳 学問のすすめ』ですね。僕が福澤諭吉の原著を読んで「これは絶対もっと多くの現代人が読むべき一冊だ!」と思って現代語訳にして解説を付けたんですが…。なぜかは分からないんですが、どうやらまったく今はニーズがなかったみたいです。

 

— 河野さんの「伝えたい!」っていう内発的な思いは、やっぱり「日本の働きかたを変えたい」と「成長に寄与したい」から出てくるんですよね?

その通りです。「え、僕のこの話、そんなに”役に立った”の!? そんなに喜んで貰えるの?」って経験がこれまでで少なくないんですよ。

誰でもそうだと思うんですけど、自身の価値とか経験の価値って、自分じゃよく分からないんですよね。外に向けて発信してみたら「それ、すごいですね!」って言われて、そこで初めて「そうだったのか!」ってなることが非常に多い。人間、フィードバックを貰って分かる、気づけることって本当に多いと思うんです。

 

— 「発信してみないと分からない」。すごく同意します。まずやってみること、そして経験をシェアすること。その価値って本当に高いと思います。

ただね、Amazonの僕の本のレビューを読んでもらうと、「こんなのただの飲み屋の与太話じゃないか!」って書いてあります(笑)。自分でも「そうだなー」って(笑)。

いや、でもね、飲み屋の与太話って今やすっかり出番が無くなっちゃっているじゃないですか。そもそも若者は飲み屋に行かないし、先輩の話を聞く直接機会自体もない。もちろん僕だって、嫌がる後輩を無理に飲みに連れていこうなんて思わないし。

ただ、与太話には、良いものも悪いものもあるってことです。そして与太話も文章として本になっていれば、受け手側が好きなタイミングで好きなように読むことができます。もちろん、手に取らないのだって読まないのだって自由です。

 

— 「河野さんの与太話」は、単なる思いつきじゃなくて自らが実践してきたことですしね。

はい。文章にすると「なんだよ、そんな簡単なことかよ」とか「シンプル過ぎる」とか言われちゃうこともあるんですけど、「それをやり続けたらこうなりました」という話を書いてきました。現場で実践し続けることがポイントですね。

たとえば、上司に「今、ちょっといいですか?」と言うと「後にしてくれ」って言われたり少し嫌な顔されたりしていたのが、「すいません、僕に1分ください」って言い方を変えるだけで「おう。」と即答で時間を割いてくれるようになった。

こういうのって、実際に身をもって経験すれば、あとはそれを続けていけばいいことですから。

グロービス経営大学院での授業の様子。左は対面式での英語授業。中央がオンライン授業の配信の模様で、右は実際に配信されている画面。

 

生産性向上は幸せになるための手段

— 河野さんはもう一つ、グロービス経営大学院の客員准教授もやっていますよね。こちらは与太…じゃなくて「成長支援」というかと思うのですが(笑)、具体的には何をやっているんですか?

「組織とリーダーシップ」について、3カ月のケースワークをやっています。内容は基本的には毎回同じで、それを年に4回やっていますね。今、7年目に入ったところかな。

 

— …正直、飽きません? 同じことをそれだけ続けるの。

いや、全然飽きるってことはないですね。毎回参加者が違うので、毎回僕自身に取っての新しい学びがあります。そしてなにより、生徒の学びに貢献できることの喜びが毎回すごく大きいので。

 

— それだけ変化の大きなものってことですね。それでは残り2つ質問させてください。まず1つ目は「2035年までに社会から無くしたいものは」?

うーん。難しいなぁ。さっきも話しましたけど、「意味のない我慢」と「不要なストレス」を社会から無くしたいんです。でも、これが完全に消滅する日は永遠に来ないかもしれないって気もしているんですよね。

漸進的に減り続けていくことは間違いないでしょう。15年前と今を比べたら、圧倒的に減っていますし、これからも減らないわけはないから。だからそのスピードを速くしたいですね。パチさんは何が無くなって欲しいですか?

 

— 今日の話に関する分野で言えば「過労死」なんてものが早くこの世から消え去ってほしいです。今日にでも。

それは間違い無いですね。…でも、15年前と今を比べたら、減っているのかな? もしかしたら、コロナ禍ではエッセンシャルワーカーを中心に残業や長時間労働が増えているという話もあるし…。

仮に今、増えてしまっているのなら、一時的であって欲しいですね。そして過労死を減らすためにも、やっぱり「意味のない我慢」と「不要なストレス」を社会から減らさなきゃいけないなと思います。

 

— 最後の質問です。河野さんの人生における「会心の一撃」ってなんですか?

会心の一撃って言うのは、「ものすごく上手くいって、その後に新たな展開をもたらしたもの」という意味であっていますよね?

それであれば、やっぱり出版ですね。あの本により、その後の自分の人生が大きく動きだしましたから。そして「ホワイトカラーの生産性向上に貢献する」という僕のライフワークをくっきり鮮明なものにしてくれましたから。

 

— 「生産性向上」って、それほど大切なことですかね?

もちろん大切ですよ! 日本生産性本部が公表しているデータによると、日本における一人当たりの労働生産性は、先進国のなかで下位半分に入っています。生産性の低さは所得の低さに直結します。

参考 | 労働生産性の国際比較 | 調査研究・提言活動 | 公益財団法人日本生産性本部

 

所得や物質的な意味だけじゃなく、人が精神的にも豊かな暮らしをするためには、仕事に費やしている時間や脳のエネルギーを今よりも減らして、その分をもっと自分自身や家族、コミュニティーや社会のために使えるようになる必要がありますよね。そのためには、生産性を上げる必要があるんです。

そうすることが豊かさや幸せに近づくことにつながり、今よりも幸せな人が増えていきます。幸せな人が増えれば、きっと今よりも幸せな社会に近づけると思いませんか?

 

— 思います。「生産性向上」は「幸せになるため」の手段ってことですね。それなら納得、大賛成です。

そうです。生産性を上げるには、仕事のスピードを上げていく必要があります。そしてスピードを落とすのは「余計な摩擦」です。余計な摩擦が多いほど物事の前に進む力は削がれてしまいますから。

「意味のない我慢」と「不要なストレス」はホワイトカラーにとって最大の余計な摩擦です。余計な摩擦を社会から減らして、みんなで幸せになりましょうよ!

 

インタビュアーから一言

記事内の1枚の写真は、河野さんが「コンフォートゾーンとストレッチゾーンとパニックゾーンの話」をしてくれていたときのものです。お話を聞きながら、以前に河野さんがブログに書かれていたのを思い出したので、ぜひそちらの『コンフォートゾーンから出てみる』も読んでみてください。

そしてこちらのブログ記事もぜひ『これからについて 〜人と組織を支援する仕事を深めます〜』。

 

上の記事が書かれた頃、河野さんと私は、何人かの仲間と一緒に「Building Bridges to the Better(BB2B)」というテーマを掲げて何度かイベントなどをやっていました。今は忙しすぎて難しいようですが、アイデミーが高校生か大学生くらいにまで成長した際には、また一緒に活動したいなあって思っています。お待ちしています!!

【#BB2B】Bridge to the Betterというコミュニティのイベントに参加してみた

(取材日 2021年10月22日)

 

問い合わせ情報

当記事に関するお問い合わせやCognitive Applicationsに関するご相談は こちらのフォーム からご連絡ください。

 

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