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AI活用で航空会社は顧客を取り戻す

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〜顧客データの洞察により、ますます激化するコロナ後の競争を勝ち抜く〜

この投稿は、2020/6/29に発行された“When airlines are AI-borne, customers take flight(英語)”の抄訳です。

成功している航空会社は、他社との競争に勝ち抜くため常に自社のデータを活用してきました。コロナ後の世界に於いて、そのようなデータ活用はより不可欠となりました。航空会社が、AI、データ、仮想サービスを如何に活用し、将来の課題解決やビジネス機会獲得に役立てるかについて、IBMの運輸・旅行業界向けのオファリングリーダーであるロブ・ラニアリが解説します。

 

コロナによって航空会社はどれほどAI活用を促進させることができたか?

コロナが蔓延した今、航空会社が従業員や顧客とつながる必要性はより高まりました。そして多くの航空会社は、コスト削減と顧客体験向上を目的とした顧客向けのテクノロジーに投資しました。

一方、従業員向けの社内システムは依然として10−20年前のテクノロジーを使っているのが現状です。そのような中で、航空会社は従業員体験の向上を通じて、顧客により良いサービスを提供することにも焦点を当て積極的に取り組んでいます。それにも関わらず、コロナによって顧客体験と従業員体験のギャップはより広がりました。

 

なぜか?

顧客と従業員は航空会社とデジタルにつながっているかもしれませんが、まだまだ十分ではありません。
顧客は依然として搭乗ゲートや機内といったで物理的な接点を多くもっており、そこでは様々なやりとりがなされています。ニューノーマルでは、それらの物理的な連携がは不可能になりつつあります。

なぜ航空会社は顧客とデジタルに相互連携できないのか、そして顧客と従業員を相互につなぐ体験価値をデジタルに再設計できないのか。この答えはソーシャルディスタンスへの対応にもつながると考えます。ワクチン接種が進み、パンデミックを乗り越えたら、我々は現在の対応を緩和したいと思うかもしれません。しかし、顧客とのデジタルな繋がりは全体的な顧客体験向上につながるため、コロナ後も継続されるでしょう。

 

長期的な変化を予測できているか?

顧客とのデジタルな繋がりを一度確立したら、例えば座席のアップグレードをするために物理的に搭乗ゲート周辺に並んでいた従来の手順よりも、はるかに改善されます。これはパンデミック前と比べて大きな飛躍となります。もはや顧客は、“座席変更や空席待ちのために搭乗ゲートに並んで待っていたなんて信じられない”と言うでしょう。

航空会社は、顧客が最新の情報を入手し、顧客が持ち運びできるデジタルな搭乗ゲートの構築を検討しています。これにより、顧客は搭乗前に好きな場所でやりたいことしながら待つことができ、マスクをしているのかしていないのか分からない人の後ろに並んで待つ心配はありません。これまでに比べはるかに整然とした顧客体験が可能となります。

 

コロナによって他に何が変わったか?

飛行計画やスケジュールなど、多くの既存のトレンドを変化させています。以前のシステムは、渡航ルートや渡航頻度を四半期または半年毎に変更するように構築されていました。しかし、現在は、全ての変化がリアルタイムに発生しています。そしてそれらを効果的に管理する唯一の方法はAIを活用することです。データからアルゴリズムを構築し、何万もの命令文を実行し、仮説を立て、テストを行い、アルゴリズムを再調整する、AIは、それらをほぼ瞬時に行います。

ビジネス機会は瞬時に現れることもあれば、反対に機会を損失するのも一瞬です。渡航ルートを決定するためには、乗員アサイン、機材配置、メンテナンス部品の確保など10以上の考慮事項の検討が必要となります。

新たな市場を開拓する際、従来やってきたような市場について大量のレポートを人間が目を通した上で変更の是非を判断するような方法では、今日のように市場が急速に変化している状況において機能しません。

 

航空会社はデータ活用に於いて他の業界よりも先行してきたか?

マイレージプログラムやロイヤルティプログラム、クレジットカードや過去の購入履歴など航空会社は何年も前から遡って多くの自社データを保有してきたと言えるでしょう。航空会社は、他の業界では出来ない独自の方法でこれらのデータを活用しながら、顧客を知るだけで無く、顧客の購入傾向や旅行先の傾向なども把握することが可能です。

データには大きな価値があり、航空会社はそれらのデータからより多くの洞察を引き出すためにAIに投資しています。航空会社は、航空会社と顧客の間を埋めようとするOTA(オンライン旅行社)などのデジタル仲介業者と競争する必要も出てきています。

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ユニークなデータ活用方法とは?

オンラインでのチケット購入、キオスク端末やアプリでのチェックインなど、全てのセルフサービスによって、顧客は航空会社の従業員と話す必要が無くなります。顧客が初めて遭遇する航空会社の従業員は、機内の客室乗務員かもしれません。それでもなお、航空会社はよりパーソナライズされたサービスを顧客に提供したいと考えるでしょう。

では、デジタルツールを利用して、如何にパーソナライズされたサービスを提供するのか?答えはデータです。キオスク端末やアプリケーションシステムから得られるデータを活用することで、航空会社は顧客の名前を呼んで挨拶することが可能となり、顧客の過去の体験を理解した上で、限られた時間の中で顧客に最善のサービスを提供するための方法を知ることができます。

 

データ活用でリードする航空会社は?

ルフトハンザグループは、グループ内の複数の航空会社や地域で様々な施策を実施してきました。そして単なるデータ活用だけでなく、グループ横断的な戦略的活用により、データ活用を次のレベルに引き上げました。

幾つかの航空会社の組織はこう言うでしょう“我々は多くのデータを保持しているが何をすれば良いか分からない、またはデータの価値が分からない”。組織毎にサイロ化されたデータ活用を全社レベルに引き上げるには、データとAIを中心にビジネスを把握するマネージメントシステムとガバナンスが必要になります。あるデータは営業利益に関連し、あるデータは整備のデータに見えるかも知れません。しかし、現実には全てのデータは相互に関連しています。整備の問題によりフライトがキャンセルされ、搭乗口の顧客体験に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

ルフトハンザグループは、このことを最初に認識し、全てのデータを関連づけた航空会社の一つです。ルフトハンザとIBMは、IBMガレージにおけるデザイン思考の取り組みを開始し、データ活用に関するガバナンスプロセスを構築しました。彼らは、データからの新たな洞察とインテリジェントな作業プロセスを推進するため、企業全体の活動を継続しています。

藤本 卓司

藤本 卓司
シニアマネージングコンサルタント
製造・流通事業部
グローバル・ビジネス・サービス
FUJIMO@jp.ibm.com
www.linkedin.com/in/takuji-fujimoto-833725169

旅行・運輸業界のコンサルタントとして、主に航空会社の業務変革の支援を担当。システム開発プロジェクトの経験を元に、システムの構想からデリバリーまでフルスコープのサポートを行う。航空会社の旅客業務や顧客サービスを専門領域としており、AIを活用したパーソナライズオファリングのソリューションを得意としている。

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