IBM Storage
エンタープライズ・ストレージの開発戦略
2020-02-29
カテゴリー IBM Storage
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ストレージ米国開発拠点ツアー・レポートの最終回となる第4弾は、3日目にツーソンで行われたストレージ関連のセッションから「エンタープライズ・ストレージの開発戦略」、「DS8000最新動向」、「仮想テープ・ソリューション最新動向」の3つのセッションのサマリーをお伝えします。
メインフレームを強化するDS8000とTS7700のシナジー
現在、エンタープライズ・ストレージとしては、DS8000、TS7700、物理テープ・ドライブおよびSpectrum ScaleをベースとしたElastic Storage Server (ESS)などがありますが、最初のセッションでは、メインフレーム向けストレージであるDS8000とTS7700のシナジーについて語られました。
2019年9月にはIBM z15とDS8900Fが発表されました。DS8000は世界の金融機関トップ100社の85社で採用され、IBM ZのNo.1エンタープライズ・ストレージ・ソリューションとして位置付けられています。Micah Robison(Vice President, Enterprise Storage Developments)は「レジリエンシー(回復力・耐障害性)の向上のために、IBM Zとストレージの統合に力を入れていています」と語ります。
近年、競合他社が追随してきていますが、IBMとしての強みは独自のアーキテクチャーや技術の開発、テスト、生産まで一貫して行っていることです。Micah Robisonは、DS8000が世界のトップ銀行20行中18行の基幹システムに使われていることや99.9999%の可用性(連続稼働ソリューションのHyper Swapと組み合わせることで実現)、RPO3秒のリカバリー、4サイトのレプリケーションなどの優位点を挙げました。
Micah RobisonはDS8000がフォーカスしている付加価値として、最大500世代のコピーを可能にしたCyber Resilience、20マイクロ秒以下の遅延による超低レスポンス、追加のコピーがあっても容量を有効に使える効率性、ヨーロッパの規制などに対応できるレプリケーションとマルチサイトのトポロジーなど挙げました。
「さらに2019年11月に出荷されたTS7700 R5.0ではDS8000とTS7700のオブジェクト・オフロードが提供されました」とMicah Robisonは語ります。Transparent Cloud Tiering機能によりこれまでの約2倍の速度でデータのコピーが可能となり、パブリック・クラウドよりも10倍程度速くなります。これにより、Z MIPSの削減やクラウド・アーキテクチャーへの柔軟性を提供することができます。
シンプルな製品ラインナップでTCOも削減できるDS8900F
2019年11月に出荷を開始したDS8900Fは、4年ほど提供されてきたDS8880の後継製品です。汎用ラックモデルと専用ラックモデルがあり、POWER9アーキテクチャーを採用し、計算ノードとして追加のハードウェアとソフトウェアが組み込まれています。従来のようにHDDやハイブリッド構成は提供されずに、オールフラッシュのみの製品ラインナップになっていることが特徴です。
これについてBrian Rinaldi(DS8000, Storage Subsystem Architecture, Master Inventor)は「エンタープライズ・ストレージの市場はオールフラッシュに向かっています。今後トランザクションのワークロードが増加し、スピードが求められることから、DS8900Fはオールフラッシュとして提供します。一方、低コストであることが求められるニアライン・タイプのストレージとしてはTS7700があります」と市場でのTS7700との住み分けを説明しました。
DS8900Fでは、ラック・マウント型のソリューションのためのフレキシビリティー・クラスと基幹業務を全て統合するためのアジリティー・クラスの2種類のモデルが提供されます。前者では標準ラックと汎用ラックの選択が可能で、比較的小規模なスペースに設置可能です。また、後者ではパフォーマンスやキャッシュサイズによって、2種類の構成が可能になっています。いずれも新しいラックを採用し、従来より高さと設置面積を削減しました。
DS8900Fの特徴の1つが、これまであったUPSを無くしたことです。「UPSは高価で、使用しているバッテリーの材質によって、出荷や廃棄に制限があります。そこでUPSの代わりにIntelligent Power Distribution Unit(PDU)を採用しました」とBrian Rinaldiは語ります。PDUでは電源が各コンポーネントに分配され、電源断の場合には、NVDIMM上でDRAMからNAND型不揮発性メモリーにデータを書き出すことでデータを保護します。データセンターの電源断の場合には、DRAM上のデータをNAND型不揮発性メモリーであるNVDIMMに書き出すことで、データを保護します。UPSを使用しなくなったことで、ラックのスペースも削減することができました。
また、レスポンスタイムの短縮も大きな要素です。DS8900Fは従来よりIOPSが高く、レスポンスタイムも9~19%短縮されています。Brian Rinaldiは「ストレージのレスポンスタイムが短いことでアプリケーションが速く動くだけでなく、ストレージの数も抑えられてTCOの削減にもつながります」と話しました。
クラウド対応の機能が追加され進化する仮想テープ・ソリューション
IBM Z向けの仮想テープ・ソリューションであるTS7700仮想テープ・サーバーでも最新リリースR5.0の提供が2019年11月から開始されました。Ralph T Beeston(TS7700 Lead Architect, Senior Engineer, Master Inventor)は「IBM Zに接続して、同一グリッド内で最大8クラスター構成の仮想テープ・ライブラリーを提供することができます。グリッド内のクラスターはどこからでもお互いアクセスが可能です」とその特徴を語ります。
8クラスター構成であれば、世界中のさまざまなロケーションにまたがってデータを保存でき、IBM Zはグリッド内のいずれかのクラスターから全てのデータにアクセスすることができます。また、プライマリーストレージとしてクラスターに保存したデータを物理テープやクラウド上のストレージへ書き出すこともできます。また、DS8000のTransparent Cloud Tiering 機能のクラウド・ターゲットとなったことで、DS8000のオフロード先として利用することができるようになりました。
この新しいTS7700 R.5では、新しいコントローラーのTS7770モデルVEDと新しいキャッシュ・サブシステムのTS7770モデルCSB/XSBが出荷されます。「このTS7770は2世代前のコントローラーと同一グリッド内で共存でき、グリットへのTS7770の追加や旧システムとの入れ替えが可能になっています」(Ralph T Beeston)。
新しいコントローラーであるTS7770モデルVEDはPOWER9プラットフォームを採用し、従来のモデルVEC同様に最大64GBメモリーをサポートします。また、VECと同様に16Gb FICONアダプターを採用し、クラスター間の接続用のグリッド・ネットワーク・インターフェースのポートとキャッシュ・サブシステムおよび物理テープ・ドライブへの接続用のファイバーチャネルのポートが用意されています。
また、新しいキャッシュ・サブシステム のTS7770モデルCSB/XSBは、Storwize V5030プラットフォームを採用し、筐体ごとにDRAID6によるディスク・アレイが構成され、筐体ペアあたり157TBの容量を提供します。ベースフレームでは最大789TBのキャッシュ容量ですが、拡張フレームを追加することで、最大2.3PBまで拡張することができます。また、従来モデル同様に暗号化をサポートしています。
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