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オンプレ・クラウド混在「こんなはずでは…」のストレージ戦略、シンプルさを取り戻せ

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当記事は、Web「ビジネス+IT」に掲載されたものです。(初回掲載 : 2021年8月)

 

デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みの中核にあるのが「データ活用」だ。企業には、さまざまなデータを蓄積・分析し、ビジネス変革につながる価値を見いだすことが求められている。しかし現実には、データ分析以前に、爆発的に増大するデータの保存・管理に手を焼いているのが多くの企業の実態ではないだろうか。そこで重要になるのがストレージ戦略だ。ここでは、DXの推進に不可欠なシンプルなデータ管理を実現するストレージ戦略を解説する。

 

ハイブリッドクラウド環境のストレージが抱える課題

「データ活用」が現在の企業にとって重要であることは、誰も否定しないだろう。ただし、同時に企業を悩ませているのがデータの増大だ。爆発的に増えるデータを蓄積し、「どこでも」「簡単に」「迅速に」活用できるデータ基盤をどうやって構築するかは、多くの企業が直面している課題である。

その解決策の1つがクラウドだ。資産を保有することなく、低コストですぐに利用を開始できるクラウドは、増大するデータの保存場所として非常に適している。ところが、実際に使い始めると「こんなはずではなかった」ことが起き始める。

1つはコストだ。当初は安かったのに、データの増大とともにクラウドのコストがオンプレミスを上回るケースは少なくない。クラウドのストレージは1ボリュームの最大容量が決まっていたり、使用の有無にかかわらず課金されたりするのがその理由だ。

このため、企業は状況や目的に応じてオンプレミスとクラウドを使い分けることになる。しかし、データの置き場所が分散すると、今度はオンプレミスとクラウド、もしくはクラウドとクラウドの連携が必要になる。

さらに、運用管理も複雑になる。クラウドのストレージでは、オンプレミスでは当たり前にできていた重複排除や圧縮、ストレージの階層化、差分コピーやスナップショット等は簡単には実行できない。管理者は、オンプレミスとクラウドそれぞれに適したやり方で、ストレージを管理せざるを得ないのだ。

このように、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド環境では、データ活用を支えるストレージは複雑化する。この問題を解決し、ストレージ環境をシンプルにするには、どうしたら良いのだろうか。

ストレージ仮想化で実現するハイブリッドクラウドに最適なストレージ環境

ハイブリッド環境におけるストレージの課題を解決するために、IBMが開発したテクノロジーが「IBM Spectrum Virtualize for Public Cloud(SV4PC)」だ。

これは、クラウドで稼働するストレージ仮想化ソフトウェアであり、仮想化技術によってクラウド上のストレージをオンプレミスと同様に扱えるようにする

具体的には、クラウド上の複数のストレージをプール化し、性能・容量をムダなく利用可能にする。さらに、データの重複排除・圧縮、シンプロビジョニングなど、オンプレミスのストレージでは当たり前に利用できる機能をクラウドでも利用できるようにする。

SV4PCは、現在、IBM CloudとAmazon Web Servicesで利用可能で、Microsoft Azureにも対応予定だ。SV4PCについて、日本アイ・ビー・エム テクノロジー事業本部 ストレージ・テクニカル・セールス 奥田 章は次のように説明する。

「もともとSV4PCは、IBM Spectrum Virtualizeというオンプレミスのストレージ仮想化技術から生まれたソフトウェアです。Spectrum Virtualizeにより、IBMはもちろん他ベンダーも含めた500以上のストレージを仮想化できます。クラウドにSV4PCを導入することによって、オンプレミスとクラウドのストレージを同じ仮想化技術で統合することができるのです」(奥田)

SV4PCによって、重複排除や圧縮等によってクラウドのストレージを有効活用できるようになり、コストが増大する問題を解決できる。さらに、オンプレミスとクラウド間、クラウドとクラウド間のデータ連携も容易になる。しかも、オンプレミス/クラウドのすべてのストレージを、同じプラットフォームで統一的に運用管理できるようになるのである。

(図1)SV4PCによりハイブリッドクラウド環境のストレージの課題を解決できる

ハイパフォーマンスで省スペース(1U)、大容量(1.7PB)を実現したIBM FlashSystem 5200

SV4PCで実現できるのは、オンプレミスとクラウドのストレージを自由に組み合わせられる世界だ。つまり、オンプレミス/クラウドを意識することなく、本当に必要なストレージを自由に選べるようになる。

そこでIBMが用意しているのが、ハイパフォーマンスでコンテナに対応した超高速ストレージ「IBM FlashSystem」(以下、FlashSystem)である。すでにエンタープライズ向けの「FlashSystem 9200」、ミッドレンジの「FlashSystem 7200」が発売されているが、そこにエントリーモデルの「FlashSystem 5200」が加わった。

(図2)IBM FlashSystemファミリー

FlashSystem 5200の特長について、日本アイ・ビー・エム テクノロジー事業本部 ストレージ・オファリング・マネージャー 住吉 徹は次のように説明する。

「高さは1Uで“ビザの箱”のような省スペースが特長です。12個のスロットが用意され、SSDや後述するFCM、ストレージ・クラス・メモリなどの種類の異なるストレージを混在して搭載することが可能です。物理容量は約460TB(テラバイト)で、データ圧縮により最大容量は1.7PB(ペタバイト)を実現しています。さらに、応答時間は70マイクロ秒未満で1.5M IOPSを実現し、4台をスケールアウトすることで6.0M IOPSまで拡張できます」(住吉)

FlashSystem 5200のハイパフォーマンスの理由の1つが、フラッシュ・メモリによるストレージに最適化された新しいインターフェース NVMeである。FlashSystem 5200はドライブ/ホスト両方がNVMeに対応し、高速なデータ転送を実現している。また、より高速なIBM独自のFlashCore Module(FCM)を搭載することもできる。

「フラッシュメモリはReadが高速でWriteが遅いため、パフォーマンスを上げるには、Writeの処理を高速化するのがポイントになります。FCMでは、一般的なNANDメモリより100倍高速なMRAM(マグネティックランダムアクセスメモリ)を利用してWriteを高速化しています。さらにFCMでは、パフォーマンスに影響しないハードウェアによるデータ圧縮・暗号化にも対応しています」(住吉)

(図3)FlashCore ModuleはIBM独自のハードウェアによるデータ圧縮、暗号化機能を搭載している

OpenShiftに対応し、Ansibleによる運用自動化も可能

FlashSystem 5200は、もちろん前述のSpectrum Virtualizeに対応している。現在、Spectrum Virtualizeが対応しているストレージは、IBMを含めて500モデル以上である。つまり、FlashSystem 5200を含めた複数のストレージを仮想化し、1つのストレージプールとして管理できる

「通常、システムには専用のストレージが用意されます。このため、1つのストレージ容量が不足しても、他のストレージからリソースを割り当てることはできません。しかし、Spectrum Virtualizeを使えばそれが可能になり、ストレージを有効活用できるようになります」(住吉)

さらに、データ移行もシンプルになる。FlashSystem 5200に新しいストレージと古いストレージを接続すれば、無停止でデータを移行できる。バックエンドで実行されるため、アプリケーションに影響はない。また、データ移行後は、古いストレージをそのままバックアップ用に再利用することも可能だ。

FlashSystem 5200は、レッドハットが提供する商用コンテナプラットフォームである「OpenShift」にも対応している。具体的には、コンテナのストレージ操作を標準化する「CSI(Container Storage Interface)」のドライバーが提供されている。

「コンテナ対応のストレージとしては、レッドハットが開発したOpenShiftに最適化されたRed Hat OpenShift Container Storage(OCS)があります。ただし、性能・可用性・拡張性などの面で足りない場合は、FlashSystem 5200をバックエンドで使ったり、CSI経由でコンテナから直接FlashSystem 5200を使ったりすることも可能です」(住吉)

 

(図4)FlashSystem 5200はOpenShiftにも対応する

また、クラウドにSV4PCを導入するこことで、オンプレミスとクラウドのストレージをまとめて活用することもできるし、インフラ構築やメンテナンスを自動化する「Ansible Automation Platform」にも対応しているので、ストレージの運用管理を自動化することも可能だ。

Spectrum VirtualizeとSV4PCは、ハイブリッドクラウド/マルチクラウドのストレージ環境をシンプルにし、ストレージリソースとコストを最適化する土台を実現する。そして、その土台の上で最高のパフォーマンスを発揮するストレージがFlashSystem 5200だ。いずれも、IBMが開発した最先端のストレージテクノロジーの成果である。ぜひ、その価値に注目していただきたい。


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