IBM Power
Power10はPOWER9と何が違うのか〜概要編〜
2021-05-31
カテゴリー IBM Power
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2020年のHot Chipsカンファレンスで大きな話題となったPower10プロセッサーを搭載したサーバーが、いよいよ発表される時が近づいてきました。Power10プロセッサーでは、IBM Power Systemsの強みである高パフォーマンスや高信頼性、柔軟性や拡張性、セキュリティーとともに、今後、企業のビジネス・アプリケーションに求められるAI機能も強化されています。本記事では、Power10プロセッサーについて調査と研究をしている田中 宏幸と樋口 裕美が、Power10プロセッサーの5つの特長を簡単に説明します。
田中 宏幸
日本アイ・ビー・エム株式会社 システムズ・ラボサービス Power Systems Delivery Practice
2012年よりシステムズ・ラボサービスのコンサルタントとして、Power Systems関連のサービスを担当。現在、Power Systems Virtual Server や OpenShift for Power Systems などを利用したPower Systemsクラウドのデリバリーを推進中。また、IBM社内でPower10プロセッサーの研究会を立ち上げ、Power10システムのリリースに備えて技術面から準備中。
樋口 裕美
日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 Power Systems テクニカル・セールス
IBM Power Systemsのエンジニアとして製品技術支援、デリバリー、プリセールスなど様々な立場で25年以上活動。現在は、主に保険のお客様中心に営業活動を実施するほか、Power Systemsの最新技術をお客様に価値あるソリューションとしてお伝えするため社内外のセミナーで講師を担当。田中 宏幸と一緒にPower10プロセッサー研究会のコアメンバーとして活動中。
1.プロセッサー・コアが速い!
Power10プロセッサーは 製造プロセスが「7nm(ナノ・メートル)」のチップです。「14nm」であるPOWER9プロセッサーの半分になっており、トランジスタ数はPOWER9プロセッサーの80億に対してPower10プロセッサーでは180億と、倍以上になっています。これにより、プロセッサーの性能を向上するとともにエネルギー効率も向上しています。さらに、ソケットあたり最大コア数はPOWER9プロセッサーの12コアから3コア増えて、Power10プロセッサーでは15コアとなっており、より多くのワークロードを集約可能となります。
Power10プロセッサーでは、入出力インターフェースとしてPowerAXON 2.0が提供されます。最大1TB/sの帯域幅で、最大16ソケットのSMP(同時マルチプロセッシング)インターコネクトや、FPGAなどの外部アクセラレータに接続するためのOpenCAPIなど、マルチ・プロトコルで利用できます。
PCIeインターフェースはPCIe Gen5対応となり、POWER9プロセッサーで実装されていたPCIe Gen4の倍の帯域幅を提供します。これにより、ネットワーク通信やディスクI/O帯域幅も増え、CPU単体性能の向上だけでなく、チップからメモリー、I/Oデバイス、ノード間に至るまで、システム全体としてより高速な処理が可能なデザインとなっています。
2.メモリー・アクセスが速い!
Power10プロセッサーでは、メモリーへのインターフェースとしてOpen Memory Interface(OMI)を提供します。チップあたり16チャネル搭載し、最大1TB/sの帯域幅であるため、POWER9プロセッサーと比較して4倍以上となっています。これによって、より高速なメモリー・アクセスが可能となり、先日の記事にあるSAP HANAのようなインメモリーデータベースの環境としてのPower Systemsの優位性がさらに高まります。L1,L2,L3キャッシュもPOWER9プロセッサーと比較してそれぞれ増えており、より高速な処理に貢献しています。
また、様々なメモリー・モジュールに対応しており、既存のDDR4だけでなく、新しいDDR5、将来のGDDR DIMM、Storage Class Memory(SCM)にも対応しています。
3.ハイブリッド・クラウド時代のセキュリティー
従来より、Power Systemsは、プロセッサー、ファームウエア、OSで一貫性のあるセキュリティー機能を提供し、お客様業務のセキュリティー向上に貢献しています。一方、クラウド環境が当たり前となった今日、セキュリティーの確保には、これまでよりも多くの考慮が必要となってきました。
Power10プロセッサーでは、従来より提供されていたセキュリティー機能を更に進化させ、パフォーマンス劣化のないメモリーの暗号化や、コンテナ上で稼働するワークロードのハードウエアによる分離など、ハイブリッドクラウド環境で必要とされる機能を強化しています。Power10プロセッサーによって、お客様のDX推進をセキュリティー面からも強力にサポートします。
4.エンタープライズ・ワークロードにもAIを適用
POWER9プロセッサーでは、GPUを搭載することによってMachine Learning(ML)やDeep Learning(DL)の学習・推論処理を高速化してきました。
一方、Power10プロセッサーでは、プロセッサー内にMatrix-Multiply Assist (MMA) エンジンを搭載することで、GPUなしでML/DLに不可欠な行列演算を高速に処理できるようになりました。
これにより、AIをより広いエンタープライズ・ワークロードに適用し、さらなる業務の効率化・高度化を行えるようになります。
5.省エネルギー
データセンターで処理される情報量は年々増加しており、コンピューターが消費する電力量が課題となっています。そして、AIや5Gといったテクノロジーの普及により、さらに消費電力が増加することが懸念されています。
Power10プロセッサーのコアは、消費電力を半分に削減しながら、スループットを平均30%向上させることで、エネルギー効率を平均2.6倍向上させます(*B)。 エネルギー効率の向上により、最大30個のSMT8コアを備えたDCM (Dual Chip Module)の実装が可能になり、同レベルの消費電力を持つPOWER9プロセッサーの最大3倍のスループットを実現します。
(*B) IBM Power10 Processor, IEEE Micro ( Volume: 41, Issue: 2, March-April 2021), William Starke, Brian Thompto, Jeff Stuecheli, José Moreira / International Business Machines Corporation
本記事では、Power10プロセッサーの5つの特長を簡単に説明しました。これらの卓越した機能によって、Power10プロセッサーはお客様の業務に大きな恩恵をもたらします。次回以降の記事では、これらの特長を掘り下げて、実際の業務にどのような恩恵があるのかを紹介していきます。
<連載記事「Power10はPOWER9と何が違うのか」>
現在のIBM Power Systems
2021年5月現在、IBM Power SystemsはPOWER9プロセッサーを搭載し、スケールアウト・サーバー、スケールアップ・サーバー、そして、AIの学習や推論に最適な高速コンピューティング用サーバーを提供しています。また、企業の大規模基幹システムを担うSAP HANA環境の効率的な構築と安定稼働に貢献する認定ハードウェアも提供しております。
IBM Power Systemsが提供するスケーラビリティーはハイブリッドクラウドに最適です。また、災害対策のバックアップ環境や、開発・検証環境構築のためにIBM Power SystemsのLPAR(論理区画)をIBM Cloud経由で従量課金にて活用できるIBM Power Systems Virtual Serverもご利用いただけます。
明確なロードマップのもと、時代が必要とする機能を提供するために確実に進化を続けているIBM POWERプロセッサーとIBM Power Systemsにご期待ください。
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