IBM Z
メインフレーム55年 そして未来へ – 第2回 IBM Z が生き残った理由
2019-04-15
カテゴリー IBM Z
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IBM Zの起源であるシステム/360(= IBM System/360、以下、S/360)が発表された1964年4月7日から、今年で55周年を迎えました。変化の激しいIT業界において、類を見ない長さでお客様に支持されてきたコンピューター、IBM Z。その歴史はコンピューターの歴史そのものと言えます。
IBM Zの歴史から学ぶ教訓と今後を語るシリーズ、第2回。なぜIBM Zが55年間生き残り、現在も重要な役割を担い、そして、これからも活用されようとしているのか。IBM Z の最前線のエンジニアとして現在も活躍する、IBMの技術理事(Distinguished Engineer)川口一政が、その理由に迫ります。
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- 第1回 IBM Z の歴史
- 第2回 IBM Z が55年間 生き残った理由
- 第3回 今も圧倒的な IBM Z の優位性
- 第4回 IBM Z へのこれからの期待
何故IBM Zは55年も生き残れたのでしょうか?
この55年間に多くのITベンダー、アーキテクチャー、サーバー製品が生まれ、そして消えて行きました。変化の激しいIT業界において、何故IBM Zは55年も生き残れたのでしょうか?私は大きく次の3つの要因があったと考えています。
(1) S/360の設計方針が画期的で優れていた
S/360の設計方針の優れた点は、まずアーキテクチャーを定義し、インターフェースを明確にして仕様を公開し、標準化を推進した事です。これによりS/360の仕様は、コンピューターの業界標準となりました。外部から見た動作を変えずに内部を変更することを可能にし、機能単位で組合わせて構成する、モジュール化を初めて実現しました。これらのアプローチは、今のオープンソースの設計方針にも通じる考え方であり、それを55年前に取り入れたことに驚かされます。
当時のS/360が作り、今も有効な業界標準は次のようなものがあります。
- 8ビットで1バイトを構成
- バイト単位のアドレス指定
- 32ビットで1 ワードを構成
- 2の補数による整数演算
- セグメント方式とページング方式によるメモリー管理
(2)市場の変化に応じてS/360を継続発展させた
変化の激しいIT業界において、その市場動向やお客様の要件変化に合わせて、S/360をS/370, S/370-XA, ESA/370, ESA/390, S/390そしてz/Architectureと変化させました。開発方針としてはTime to Marketを優先し、将来の優れた技術よりも、今の技術で早くお客様へ製品提供することを優先しました。そして少しずつ改善した機能を市場へ提供し続けました。これによりお客様の信頼を得ることができました。
(3) お客様のプログラム資産を保護して互換性を維持した
S/360ではファミリー内の機種間互換性と、周辺装置との互換性を達成しました。S/360以後では(以前の機種からの)上位互換性を維持して、開発を続けています。S/360はCISC(Complex Instruction Set Computer)による、143種類の命令セットからスタートしました。その後、機能拡張に伴い命令セットは増え続け、2018年のz14 ZR1で1,200を超えました。しかし、この55年間で削除した命令は1つもありません。つまりS/360当時作成したプログラムは、現在のz/Architectureでも稼動します。このお客様プログラム保護は重要な方針であり、今もお客様がIBM Zを使用し続ける理由の一つです。
このように互換性を維持しながら、優れたS/360を変化に対応して継続発展させた結果、55年経った今もミッション・クリティカルな業務に利用され続けています。今後、IBM Zとは異なる新しいアーキテクチャーが普及しない限り、今後もIBM Zは互換性を維持したまま変化を続け、お客様に利用され続けるでしょう。
優れた設計方針をベースに、変化に対応しながらも過去との互換性を保つことで55年間市場をリードし続けた IBM Z。第3回では、現在も持ち続ける圧倒的な強みについて語ります。
関連リンク
- IBM Z のテクノロジー変遷(PDF, 473KB) – 「PROVISION – メインフレーム50年」(2014年)内の記事。
- 時代が求めるものとIBMメインフレーム – 2017年の記事。IBM Z、および、その前身のメインフレームが常に時代の求める要求に応じて進化し、時代に新たな価値をもたらした流れを、メインフレーム・サーバーが重要な役割を果たした2017年公開の2本の映画「ドリーム(原題 : Hidden Figures)」「劇場版ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」を通して紹介します。
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