量子コンピューティング

量子コンピューティングの現在と未来

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量子コンピューティングは、物理学(量子力学)と情報学を組み合わせた「Qubit : 量子ビット」により情報を表現し、処理を行う、まったく新しいタイプのコンピューティングです。

古典ビットは0と1のどちらかの状態をとりますが、量子ビットは0か1の重ね合わせの状態をとります。複数通りの可能性を並列に調べられるという特徴から、古典コンピューティングが苦手とする問題の一部を、高速に処理できると期待されています。中でも、有効な適用分野として、量子化学や金融、サプライチェーンなどの最適化問題、機械学習などが挙げられています。

しかし、量子コンピューティングはまだ黎明期に位置付けられており、量子コンピューティングに期待されるビジネス価値を発揮するには、数多くの課題を乗り越えていく必要があります。IBMでは、本格的な量子優位(Quantum Advantages)の時代に向けて取り組んでいます。

量子コンピューティングの進化

IBMは、今日のノイズのある小規模デバイスから、大規模で高度な量子システムへと量子コンピューターを進化させるための開発ロードマップを公開していますが、2023年は量子優位の時代に向けた大きな変曲点になると期待されています。

2023年に投入予定のIBM Quantum Condorプロセッサーは、より長い量子回路の実行に必要なエラー訂正が可能な1,121量子ビットのプロセッサーとなる予定で、量子優位性を探求するのに十分な複雑さを備えていると期待されています。

さらにその先の量子コンピューターを探究するために、IBMは100万量子ビットのシステムを想定した希釈冷凍機の開発を進めています。この希釈冷凍機は、高さ3メートル、幅1.8メートルほどの大規模なもので、商用提供されているどのような希釈冷凍機よりも大きなものとなります。

今年6月には、IBMと東京大学が2019年12月に発表した「Japan–IBM Quantum Partnership 」に基づき、IBMとして日本で初めての量子システム・テストベッドを東京大学に設置しました。同センターでは、日本の産学の優れた技術を集結し、量子システム・テストベッドを用いて様々なハードウェアや部品の組み合わせによる実験を行うことで、世界を牽引する将来の量子コンピューターの技術開発を進めていきます。

ハードウェアの開発と並んで重要なのは、ハードウェアの可能性を最大限に引き出すソフトウェアの進化です。従来のコンピューティングが今日の高度なクラウドベースのサービスに至るまでの50年の進化とオープンソースのアプローチを取り入れることで、量子アプリケーション開発環境の整備と、量子コンピューティングと従来のコンピューティングの統合を加速させます。

量子コンピューティング・エコシステム

世界的なグローバル企業や学術機関、新興企業、国立研究機関が参画するIBM Quantum Networkの中核に位置するのがIBM Quantum Hubで、量子コンピューティングの教育、研究、開発、および実装を行うとともに、共同研究者に IBM 量子テクノロジーへのオンライン・アクセスを提供します。

日本においては、2018年に日本初のIBM Quantum Network Hub at Keio Universityが設立されたことを契機に、エコシステムの醸成が活発化していきました。

また、IBMは、東京大学が2020年7月に、量子コンピューターの社会実装を世界に先駆けて実現することを目的に設立した量子イノベーションイニシアティブ協議会(QII協議会)を支援しています。東京大学、慶應義塾大学に加え、産業界をリードする国内企業11社が参加しています。そして、今年7月には日本初のゲート型商用量子コンピューターの設置、今年8月には同協議会メンバーの活動を促進する国内2例目のIBM Quantum Hubが設立されました。

IBM、そしてIBM Quantum Hubを通じて、オンライン教材の提供、ハッカソン・イベント、量子プログラミング・コンテスト、量子サマー・スクールなどが活発に行われています。

量子コンピューターの活用

近い将来やってくる量子優位の時代に向けて、量子コンピューターをビジネスにどうやって活用できるかを探究する企業が世界中で増え続けています。これまで、論文や著名雑誌への掲載という形で、実機を使った研究成果が世に出てきています。また、具体的なユースケースを見つける企業も出てきています。

産業界で活躍するITエンジニアやAIエンジニア、データサイエンティスト、あるいは量子コンピューターを学んでいる方々の中には、まだ量子コンピューターのビジネス活用について、アイデアや実感が湧かない方も多くいらっしゃるかもしれません。そうした方々にお勧めなのが、産業応用の問題をテーマとして開催される量子プログラミング・コンテストQuantum Challenge Fall 2021です。

金融、量子化学・物理、量子機械学習、最適化と、近い将来に量子コンピューターの適用が期待されている重要な産業応用分野を具体的に学びながらプログラミング問題に挑戦するコンテストとなっており、「実際に何に使えるのか?」という問いに対する答えのヒントが見つかるかもしれません。

参考情報


まだまだ黎明期の量子コンピューティングですが、量子ハードウェアおよび量子ソフトウェアとも著しい進化を続けています。近い未来に量子コンピューターならではのビジネス価値が発揮できるよう、IBMは産官学連携、コミュニティ活動を通じて取り組んでいきます。

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