IBM Power

エキスパートが語る②:SAP HANA専用設計のIBM Power10 その魅力とは

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SAP HANAをはじめとする大規模DBにおいて絶大な人気を誇るPower10プロセッサー搭載サーバー

SAP社とIBMのアライアンスは昨年50周年を迎えました。「IBM x SAP 長期パートナーシップにおける今後の展望」でご覧いただけますが、昨年は、BREAKTHROUGH with IBM for RISE with SAP プレミアム・サプライヤー・オプションの発表でさらなるグローバルでのエコシステムを強化しています。また、IBMは自社のシステムにSAP S/4HANAを採用し、最終的にはIBM Power Virtual ServerのRed Hat上に375TB以上のデータを移行することを発表しています。

IBM Powerは、2016年にSAP HANAに対応して以降、SAPのインフラ基盤として、世界中で4,000社を超えるお客様に採用されております。基幹業務に革新的な変化をもたらし、盤石な情報基盤として運用管理コストの大幅な低減を実現、長期間にわたりIBM Powerが支えています。

SAP HANAシステムにおけるIBM Powerの特徴とは?

Power10プロセッサーを搭載するサーバーは、さらに強力な基幹業務向けのシステム基盤となります。
大きく分けて、以下の5点が挙げられます。それぞれについて解説していきましょう。

  1. 圧倒的な信頼性とセキュリティー機能で運用負荷を低減
  2. スケールアップ構成での40TBのメモリー・サイズのサポート
  3. SAP HANAに最適な高パフォーマンスを実現する設計
  4. 動的にハードウェア・リソースを調整可能な仮想化ハイパーバイザー
  5. オンプレミス TDI(Tailored Data Center Integration)、Power Virtual Serverおよびハイブリッド環境を実現

1.  圧倒的な信頼性とセキュリティー機能による運用負荷の軽減

お客様の基幹業務システムが稼働する基盤として最も重要なのは、信頼性とセキュリティーです。
IBM Powerは、13年連続で最もダウンタイムが少ないインフラ(汎用機を除く)として、ITICのレポートにて公式に評価されています。
特にインメモリー・データベースであるSAP HANAに関して、耐障害性の観点からも、更新作業などの運用面でも重要な項目です。IBM Powerは耐障害性の観点で、数多くの機能を実装しています。メモリー・サブシステムでは、Chipkillや、アクティブ・メモリー・ミラーリングなどの機能を、エントリー・モデルからハイエンド・システムまで実装しています。
(以下の説明シートは、クリックしていただくと、ブラウザーの別ウィンドウに「画像」として表示されます。)

IBMのPower10プロセッサーは、暗号化専用のチップを実装しています。システムのパフォーマンスを低下させることなく、データを暗号化することができます。処理実行中データに対するハードウェア・レベルのセキュリティーである透過的メモリー暗号化により、インメモリー・データベースであるSAP HANAの実行中のデータを保護します。

2. スケールアップ構成での40TBのメモリー・サイズのサポート

IDCのホワイト・ペーパー「The Power of IBM Power for SAP HANA and SAP S/4HANA Environments」によると、SAP HANAデータベースのメモリー・サイズは、小規模企業で平均3.6TB、中規模企業では11.5TB、大規模企業では26.9TBで、平均サイズは15.5TBです。日本国内でもSAP HANAデータベースのメモリー・サイズは拡大傾向にあります。メモリー・サイズの拡大傾向に対して、SAP HANAの基盤として重視する必要があるのは「CPUの性能」です。SAP HANAのシステムは、CPUとメモリー(=データベース)が一定の割合で規定され、SAP社によって認証されています。

DBサイズ(=メモリーサイズ)を拡大するためにはCPU数も追加する必要があるため、x86アーキテクチャーの場合、スケールアウト構成を採用する必要があります。構築・運用に関して予期せぬコストとリスクが発生する可能性があります。インメモリー・データベースであるSAP HANAでは、システム選定を特に慎重にすすめる必要があります。SAP社からも、「SAP HANA Administration Guide for SAP HANA Platform 2.0 SPS 05, Aspects of Scalability – Scaling Hardware」のガイドの中でスケールアップ構成が推奨されています。

IBMとして初の7nm世代となるPower10プロセッサーは、8スレッドSMT(Simultaneous Multi Threading)を最大で15コア搭載しています。コアあたりの処理能力は、Power9プロセッサーと比較して約1.3倍のパフォーマンス向上を実現しています。

  • コア性能向上 30%/コア
  • 最大240コア(16ソケット)、仮想CPU 1920(SMT8)
  • 最大64TB OMIメモリー(ソケットあたり409GB/s)
  • PCI Gen5 スロットを32個実装圧倒的なIO拡張性を実現

Power10はPower9と比較して、4倍以上のメモリー帯域幅と4倍の相互接続帯域幅を備えています。CPUコア性能を必要とするお客様にとって、Power10は最適なソリューションとなります。Power10は、既存のDDR4と新しいDDR5メモリーDIMMをサポート、さらに将来のGDDR DIMMのサポートも予定されています。CPUコアの性能向上によって対応できるメモリー・サイズが拡大されるため、Power10サーバーであれば、SAP HANAシステムの拡張性に余裕がでます。

さらにPower10プロセッサーは、SAP HANAの高速化を実現する機能を実装しています。

  • コアあたり8個SIMDエンジンで約4倍のパフォーマンスを実現(IBM社内比較)
  • コアあたり4つのMMA(Matrix Math Acceleration) による機械学習推論性能向上
  • メイン・メモリー暗号化と専用プロセッサーの搭載によるオーバーヘッド無しのセキュリティー機能

現在、Power10プロセッサーを搭載するサーバーでは、単一のスケールアップ構成で40TBのメモリーサイズのHANA DBの認証を取得しております(システム搭載可能最大容量は64TB)。

3. SAP HANAに最適な、高いパフォーマンスを実現する設計

Power10プロセッサーは、圧倒的なCPUコア処理能力と高密度・高速なメモリー・アーキテクチャーによりSAPアプリケーションが必要とするCPU資源を最小化することが可能です。

SAP SDベンチマーク(SAPS)では、旧型のCPUであるPower9プロセッサーを搭載したサーバーが、発表から4年経過した現在でもNo.1の地位を守っています。また、Power10は最新のx86サーバーのコア性能に対して約3倍の処理性能を実現しています。代表的なパブリッククラウド事業者が最新のx86アーキテクチャー 448コアで達成したSAPSレコードをIBM Power Virtual Server(E980)では192コア、Power10 E1080では、120コア(3.7倍のパフォーマンス)で叩き出しています。

高いCPU性能を実現することは、物理CPU数・サーバー台数の大幅な削減を実現し、TCOの飛躍的な改善が可能となります。実際のお客様事例としてCENIBRA社のケースでは、一般的なx86アーキテクチャーのサーバーに比較して1/5のリソースで運用されています。

結果として、IBM Powerは、脱炭素を促進する持続可能なIT基盤と言えます。

Power10プロセッサーは、従来のPower に比べ、最大2倍のスケーラビリティーを備えながらCO2 排出量は半分程度です。ハイエンドのPower E1080は、コアあたり最大30%のパフォーマンスと、ソケットおよびシステムレベルでの50%を超えるスループットを実現し、必要な消費電力の1/3を節約します。

大規模ユーザーであるBosch社は、SAPシステムをIBM Power10サーバーに移行することにより、データセンターの電力使用量を20%削減して、なおかつ同じSAPワークロードでパフォーマンスが最大75%向上しました。

4. 動的にハードウェア・リソースを調整可能な仮想化ハイパーバイザーとSAP HANA専用機能:仮想化不揮発性メモリー(Virtual Persistent Memory)

IBM Powerは、PowerVMという仮想化ハイパーバイザーを採用しています。仮想化環境が一般的なインフラになる以前から製品化され実装されています。IBM PowerVMの最大の特徴は、長期に渡りIBM i・AIXのサポートを継続しつつ、Linux(SUSE・Red Hat・OpenShift)をVirtual MachineとしてサポートOSを拡張している点です。既存のIBM iやAIXでSAP ECC・HANAをご利用されているお客様のSAP HANA化の移行に関わる負荷を軽減します。

PowerVMは、ファームウェア・レベルで実装することにより、x86アーキテクチャーの仮想化環境では、無視できない課題であるハードウェアへのオーバーヘッドを最小限にし、システムを再起動することなく各業務に割当てられるシステム・リソースを動的に調整することが可能です。また、開発・検証など新しくVMをデプロイすることが必要な場合でも、システム稼働状態のまま、未起動のコアを活性化させVMをデプロイすることが可能です。SAP HANAの運用に関して必要とされる検証作業に関しても柔軟に対応することが可能です。

仮想化不揮発性メモリー(Virtual Persistent Memory)は、LinuxOSおよびSAP HANAをメイン・メモリーの特殊なアドレス空間で処理することで、前述の更新作業で最も時間がかかるSAP HANA用のVMの再起動の時間を、vPMEMを実装しない構成に比較して、約17倍短縮します。

  • SAP HANAのシステムで必要となる更新作業
    • Linux OSの更新・パッチ適用
    • SAP HANAの更新・SPS・FPSなどの更新適用に関するテスト
    • アプリケーション・テスト環境のデプロイ

x86のOptaneのように特別なメモリー製品やスロット、システムデザインを必要とせずメイン・メモリーの設定で実装可能です。

PowerVMは、セキュリティー脆弱性も圧倒的に少ない仮想化ハイパー・バイザーです。仮想化不揮発性メモリーと組み合わせることで、SAP HANAシステムに必要とされる柔軟なシステム運用を安心安全な仮想化基盤でサポートします。

5. オンプレミス TDI(Tailored Data Center Integration)、Power Virtual Serverおよびハイブリッド環境を実現

IBMでは、オンプレミスのシステム向けに、CPUおよびメモリーの利用時間に応じた分単位での課金による新しい従量課金体系を提供しています。新機能として、複数台のサーバーで、当機能と従量課金体系が適用できます。また、Globalで展開する、時間単位の課金モデルで提供されるPower Virtual Serverを併用することで、SAP HANAシステムに関わるインフラストラクチャー・コストが最適化できます。Power Virtual Serverでは、SAP HANA認証のインスタンスをGlobalで提供しており、RISE with SAPでも選択いただくことが可能です。

現在のIBM Power

2023年1月現在、IBM PowerはPower10プロセッサーを搭載し、スケールアウト・サーバースケールアップ・サーバー、そして、AIの学習や推論に最適な高速コンピューティング用サーバーを提供しています。また、企業の大規模基幹システムを担うSAP HANA環境の効率的な構築と安定稼働に貢献する認定ハードウェアも提供しております。IBM Powerが提供するスケーラビリティーは、ハイブリッドクラウドに最適です。また、災害対策のバックアップ環境や、開発・検証環境構築のためにIBM PowerのLPAR(Logical Partitioning、論理区画)をIBM Cloud経由で従量課金にて活用できるIBM Power Virtual Serverもご利用いただけます。

明確なロードマップのもと、時代が必要とする機能を提供するために確実に進化を続けているIBM Powerにご期待ください。


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よろず相談室


熊谷 真実

熊谷 真実
日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部
IBM Power事業部

1991年に日本IBMにAIXのSEとして入社。AS/400の営業として首都圏で営業活動、その後は、x86サーバー専任営業として20年以上勤務。SAPに関しては、2000年頃にx86サーバーで数多くのユーザー企業に販売・導入を実施。2014年からIBM Powerの営業活動を再開、2021年からSAP HANAの担当となり、Power10で日本中のSAPユーザー企業に安定と心の安らぎをお届けしたいと願っている。

石上 誠一郎

石上 誠一郎
日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部
IBM Powerアドバイザリー・テクニカル・スペシャリスト

1990年に日本IBMにIBM i (AS/400)のSEとして入社。パートナー様を技術支援する活動を実施。その後はJDEdwards (現在オラクル)などのIBM i 上で稼働するERPパッケージのインフラ・サポートを実施。SAPは2010年頃から日本IBMのSAPコンピテンシー・センターのBASISメンバーとしてプリセールス活動を実施。現在はIBM PowerとSAP HANAを中心としたテクニカル・セールスとして活動中。


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