IBM Power
新サービスの構築とレガシーシステムの更新を両立するにはどうしたらいいのか?- IBMのテクノロジーとDXCのサービスを組み合わせるメリットとは
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1. 背景
DXC Technology(NYSE: DXC)は、2017年にHewlett Packard EnterpriseのEnterprise Services部門と、国内外で広くITサービスを展開するCSCがグローバルレベルで合併して、設立された会社です。
本稿では、DXCが豊富な実績を有する保険会社向けの契約管理システムとDXの話題を取り上げたいと思います。私自身は2011年に国内大手IT会社からDXCに転社して、主に保険・金融企業のDX推進に関するコンサルテーション及び営業支援に従事しています。
2. 企業の基幹システムにおけるDX
2018年に経済産業省がDXレポートを発表して以来、保険業界においてもDX推進は喫緊の課題となっていますが、特に「2025年の壁」問題を大きなビジネス障壁として捉えている企業が多くなっていると感じます。ただ、DXは魔法の手法ではないので、企業の本来のビジネスゴールである利益拡大と社会的責任を全うするための手段として、正確に課題を把握し、実現可能なロードマップを作っていくことがポイントとなりそうです。
DXCでは、デジタル化で先行し、成功している企業の特徴を次のように捉えています。
- 新しいテクノロジーに関する市場のトレンドと実践の状況を理解している
- デジタル化の時代において適切に市場でのポジションを築き、さらにそのポジションを維持するための戦略を持っている
- 社外のパートナーを活用するなど、「アウトサイドイン(Outside-in)」のアプローチを採っている
- デジタルテクノロジーを活用するために自社の製品やサービスのポートフォリオについて再検討している
- 脅威に素早く対応しながら、商機を捉えることができる俊敏なビジネスプロセスを築いている
- 単純な業務の遂行ではなく、生み出す価値や潜在するリスクに重点を置いている
そして、デジタル変革を成功させた組織の理想的な状態とは次のようなものであると考えています。
- 効率的に情報を共有し、幅広い部門で情報に基づく正確な判断を実行している
- すべての関係者が、いつでも、何処からでも、デバイスを選ばずに情報に簡単にアクセスすることが可能
- 自動化、ロボティクス、直線的でスムーズなプロセスのメリットを理解して活用している
- ユーザー個人の状況に合わせた利便性を提供しながら、連携を加速している
- 利用者・顧客が選択し、コントロールできる製品やサービスへとシフトしている
- 常に差別化を志向していて、革新を重要な文化の一部として受け入れている
これらの特徴や理想的な状態を鑑みたとき、DXにおいて重要なIT要素は下に記載した5つに集約されます。各企業のビジネスゴールへ向け、新しいビジネスの創造やサービス変革、及びレガシーITからの脱却による効率性の追求を目指すため、この5要素を網羅した上でそれぞれの優先順位を定め、DXを推進することが肝要だと考えています。
- アプリケーション
アジャイルなアプリケーションとデジタルの利便性を活用しながら、カスタマイズ性も改善する - クラウド
クラウドで運用することによって状況に合わせた柔軟性、迅速性とさらなる利便性を提供する - ワークプレース
コミュニケーションを活性化し、関係者の連携と協業を加速する - アナリティクス
ビジネスにとって不可欠な情報がくまなく行き届き、より正確なビジネス判断を促す - セキュリティー
ビジネス運用において増加し続ける様々なリスクを管理する
3. DXCの保険契約管理システムをIBM Power Systems Virtual Serverで運用することにより得られるメリット
保険業界では、システム規模が比較的大きい上に性能面の要求レベルも高く、また非常に長いスパンで顧客や契約情報を安全に運用管理する必要性があることから、今後もメインフレームやミッドレンジ・サーバーの継続活用を考えている企業が比較的多いのが事実です。例えばDXCが提供している契約管理パッケージ、Integral Classic(旧称Life、Polisy)の国内外の顧客企業の多くがIBM iのプラットフォームを継続して利用中です。
DXCではいくつかの顧客企業のリクエストを受け、既に東京リージョンで提供されるIBM Power Systems Virtual Server(以降、Power Virtual Server) 上にIntegral Classicをセットアップしてグローバルチームと共にテストを実施しています。(図1参照:実際に東京リージョンで動くIntegralのスクリーンショット) IBM iの製造元により提供される従量課金のサービスということで、安全性・効率性・堅牢性・敏捷性・弾力性の観点から良好なテスト結果が得られています。
なお、IBMでは2020年前半の東京リージョンでのIBM i向けのPower Virtual Serverのサービスの開始に続き、大阪リージョンでも同様のサービスを開始しており、本格的な運用サービスに必要なクラウド環境は既に揃っています。
ここでは、IBMのテクノロジーとDXCのサービスを組み合わせることによるメリットについても触れたいと思います。
DXCではInnovationとModernizationの2軸から、「2025年の壁」問題への対応を含めたDXへの取り組みを推進中です。(図2参照:DXCの保険ソリューション戦略) Innovationとは最新技術を使った新サービスの構築のことで、Modernizationとは主にレガシーシステムの更新を意味します。保険業界にとってこの二つはどちらも重要テーマなので、両者を有機的に結びつけながらITのロードマップを作ることが必要になります。
そして、IBMのテクノロジーとDXCアプリケーションサービスとの組み合わせは顧客企業がメリットを享受する上でベストコンビネーションの一つであると考えています。その理由は3つあります。
1つ目は、IBMでは新しいビジネスの創造やサービス変革に必要となるAIやIoTなど最先端技術を迅速かつ柔軟に導入することが可能な種々の機能が充実していますが、加えてメインフレームやIBM Powerなどのアセットもハイブリッド・クラウド環境で安全・堅牢に長いスパンで利用できることが特徴となっていますので、新技術導入とレガシーの更新を並行してやっていかなければならない保険システムとの相性が比較的良いと言えることです。
2つ目は保険会社が運用面で2社のサービスから次のメリットを享受できることです。
運用サービスのイメージは図3 (DXCとIBM を組み合わせるメリット)のようになります。IaaS層をIBM Cloud経由で利用し、アプリケーションやインフラのマネージドサービスをDXCが提供します。IBMのテクノロジーとDXCのアプリケーションサービス及び運用サービスには次のような統合効果があります。
1. 運用作業、管理フローの簡素化、IT部様負荷の軽減(守り)
IBMのテクノロジーの利用により、DXCによる統合運用が可能(お客様のインフラに関する運用からの解放)
- 現行貴社業務の整理、文書化・標準化
- 他社ベンダーとの作業の整理、文書化、標準化、再定義
- SLA、SLO及び、定義されたWBSに基づいた運用
2. DXCの運用サービスにより、障害対応が迅速化
- 障害対応の標準化・文書化
- お客様を経由した情報収集、指示、報告をDXCに集中化
- 24/365監視と密接した技術チームによる迅速な対応
3. Integral Classicアプリケーション、インフラに対する統一されたご提案(攻め)
- 保険業務革新提案と併せたインフラ・テクノロジー強化への提案
- 作業依頼型から積極的な情報提供、ご提案型へのパートナー・リレーション
3つ目はDXCの保険契約管理ソリューションは、図4(DXCのデジタル保険プラットフォーム)のようなデジタル対応へ向けたコンセプトに沿った構成となっており、IBM i版のソリューションもデジタル化が容易になっていることです。例えば、IBM i上の契約管理システムのコアビジネスロジックをREST Full APIで解放して、フロントエンドの販売支援システムと連携したり、AIなど分析基盤で必要になるデータを必要なタイミングで柔軟に取り出したりといったことも可能なので、クラウド上に展開されている様々な新テクノロジーとの連携が促進されます。
以上がIBM&DXCが保険会社にとってベストコンビネーションの一つであると考える理由となります。
4. 結びにかえて
最後にIBM iで稼働するDXCの契約管理システムであるIntegral Classicの今後の開発ロードマップも参考情報として図5(DXC Integral Classicロードマップ)としてご案内します。進行中のAPIのモダナイズに加え、2021年から2023年にかけてUI/UX、ワークフロー、AI-仮想エージェント、機械学習連携などを順次リリースして行く予定です。2032年までロードマップが提示されているIBM iの安全性・効率性・堅牢性・敏捷性・弾力性と、DXCの業界アプリケーション・ナレッジ及びサービスを組み合わせて活用することにより、保険会社のDX推進の一助としていただければ幸いです。
弊社のサービスにご興味をお持ちの方は、下記フォームよりお問い合わせください。
https://dxc.com/jp/ja/contact-us
著者
久島 真 DXCテクノロジー、保険事業部、プリンシパルソリューションコンサルタント
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