IBM Power
IBM i やAIXの災対をIBM Power Virtual Serverで実現
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地震や台風などの大規模な自然災害が多発している昨今、その対策を考慮した業務継続の仕組みづくりがあらためて求められています。オンプレミスで利用している各種ツールや運用スキルをクラウド上で生かしつつ、必要最小限のコスト負担で安全かつ確実な災害対策を実現する新たなソリューションを紹介します。
三ヶ尻 裕貴子
日本アイ・ビー・エム株式会社 システム事業本部 Hybrid Cloud事業推進担当部長
長年にわたりIBM Power Systems一筋に携わり、そのテクノロジーの変遷や進化と向き合ってきたエキスパート。現在も最新技術動向をいち早くキャッチし、お客様への提案活動や社内でのスキル強化をリードしている。
災害対策の悩みを解消する新しいソリューション
IBMのPower Systemsは、30年以上にわたってお客様の基幹システムのインフラとして採用されており、IBM AIXのUNIXオペレーティング・システム市場においての実績とIBM iのインテグレーションサーバとしての安心感とともに、その信頼性と高速性、長期ロードマップなどにおいても多くのお客様から高い評価をいただいています。
一方で近年、お客様からさまざまな場面で寄せられるようになったのが、「自然災害などで被災したときの素早い復旧はどうしたらよいか」という声です。データセンター内でIBM Power Systemsを冗長化したHA(高可用性)構成を組んでシステムを運用しているものの、データセンター自体が損壊するような激甚災害が発生したときに、データを守ることができず、事業継続にも影響が及ぶことを危惧したものです。
特に今般のコロナ禍においてシステムの運用管理者がリモートワークに移行しているお客様も多く、いざというときにデータセンターに駆け付けることが困難になっていることも、不安を高める要因となっています。
こうした背景から、遠隔地にリカバリーサイトを設置した災害対策をインフラ面でも運用面でも検討するお客様が増えています。
しかし、昨今のシステムインフラは複数のベンダーによる複数のシステムが複数の拠点に分散しており、災害対策拠点をさらに追加することで、その分、管理や監視の工数が増大してしまいます。
また、最近はクラウドをリカバリーサイトとして活用するケースも増えていますが、オンプレミスと同じアーキテクチャーや動作環境を備えた基盤をクラウド上に構築できるとは限らず、データのバックアップはできたとしても、システムを復旧するまでに多大な手間と時間を費やしてしまうことも想定されています。当然のことながら、復旧の間は業務が停止したままになるため、企業のビジネス損失が拡大するとともにビジネスの継続性という観点での信頼も損なわれてしまいます。
こうしたお客様のお悩みを解消すべく、IBM Cloudが提供するIBM Power Systems Virtual Serverを災害対策機として活用することが可能となりました。
まず、オンプレミスの本番機と同じアーキテクチャーをもった災害対策機をIBM Power Systems Virtual Server で構築するとともに、データをクラウド・ストレージにコピーしておきます。また、有事にサービス環境を立ち上げるために必要な定義情報をコード化してIBM Cloudに保管しておき、平常時にはデータ同期や情報管理のために必要な最低限のサーバーのみを稼働させておきます。
そして、本番機が被災した際には、システム定義情報のコードを利用して災害対策用の業務サーバーをIBM Power Systems Virtual Server上に自動作成して復旧することができます。
これにより平常時には運用コストを最小限に抑えつつ、万が一の災害発生時に迅速に業務継続を図ることが可能となります。
IBM Cloud経由で利用できるLPAR環境で災害対策機を運用
一見するとIBM Power Systems Virtual Serverを利用した災害対策は、従来からある他社クラウドを利用した災害対策と同じに思えるかもしれません。
しかし、実際には、基盤の仕組みそのものが大きく異なります。クラウドを利用した一般的な災害対策では、1台の仮想化サーバー上に複数の企業の災害対策機が相乗りした形での運用を行っています。
こうしたマルチテナントの基盤上では他社システムが処理負荷の重いタスクを実行した場合、その影響を受けてパフォーマンスが低下してしまうおそれがあります。また、厳密な意味でのセキュリティーを担保することもできません。
これに対して、IBM Power Systems Virtual Serverは、IBM Power SystemsのLPAR(論理パーティション)をIBM Cloud経由で利用可能としたものです。
LPARとはメインフレーム時代から継承・発展してきた仮想化技術で、コンピューター資源を論理的に分割することで、ほぼ占有に近い区画を提供します。仮想マシン(VM)方式を採用した仮想化サーバーと比べて圧倒的に独立性が高く、その結果として信頼性や性能にも優れています。
お客様にとってみれば、オンプレミスで運用しているのと同じIBM Power SystemsのLPARが“たまたま”クラウド経由で動いているだけのことであり、アーキテクチャーの違いに悩まされることはありません。
このためAIXについてはIBM Cloudのカタログから選択し、プリインストールで提供するものを利用するほか、お客様環境から LPARのイメージやバックアップされた定義ずみのオペレーティングシステムを持ち込むことも可能となっています。また、IBM Power Systems Virtual Server上に構築された環境はお客様による管理となり、オンプレミスで利用している各種ツールやソフトウェアはそのまま活用でき、運用スキルをそのままご利用いただけます。
その上でクラウドならではのメリットも享受できるのです。例えばカタログからCPUやメモリー、ストレージを自由に選択することが可能です。IBM Cloudで提供されているサービスの活用も可能です。さらに、オープンソース由来の最新構成管理技術であるAnsible / Terraformを活用して設定作業をコード化しておくことで、非常時に誰でもワンクリックで災害対策機を立ち上げるという新たな利便性の向上を図ることができます。
この仕組みを用いることで、平常時は災害対策機をコールド・スタンバイさせておくことも可能となるのです。加えて災害対策機を立ち上げた場合も、使用するシステム・リソース量に応じた時間単位の課金で済むなど、IBM Power Systems Virtual Serverは運用コストを大幅に抑え、必要な時に必要なシステムを使える災害対策を実現します。
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