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世の中を疑ってかかることにすごく興味があるんです(Watson IoT 村澤 賢一)
2019年02月08日
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Watson IoTチームメンバー・インタビュー #11
村澤 賢一 Watson IoT事業部長
Watson IoTチームのメンバーが、IoTとAIの過去・今・未来を中心に語るインタビューシリーズ、今回のインタビュイーはWatson IoT事業部のボス、村澤さんです。
(インタビュアー 八木橋パチ)
— いきなりですが、村澤さんって相当尖った人ですよね。良くいえば鋭い人だし、悪くいえば変わり者(笑) 。
うわ、いきなり来ますね(笑)。でもたしかにそうかな。
なんと言うか…世の中を疑ってかかることにすごく興味があるんですよ。だって、与えられたものをそのまま受け入れてしまっていたら、そこで成長や進歩が止まってしまう気がしない?
— 分かります。人類は疑うことにより成長してきたのかもしれない。
まさにそう! さすがだねパチさん(笑)。真面目な話、例えば、スマホが普及して世の中便利になったってみんな言うけど、「ちょっと待って。それって本当ですか?」と。
われわれサラリーマンをよくよく見れば、ポケットにはスマホが2台、バッグにはモバイルバッテリーとタブレット端末、さらにはPCまで入っている。これって便利さなんですかって。
— そう言われると、便利って言うけど、小さな不便をたくさん受け入れているだけなのかも。
そうでしょ。そのせいで腰痛持ちも増えてきているなんて話もあるくらいで。
他にも、電車に乗ったら全員が手元のスマホに夢中で、窓の外に広がるキレイな空や花の姿に気づきもしないとか、「それ、なんか違うんじゃない?」って思うことも少なくないですよ。
— …地下鉄なら景色見えないからしょうがないけど。
地下鉄はそうだね。まあ何が言いたいかって言うと、スマホを使うことで、「本質を探ろうとする視点」とか「疑いを持つ心」とかが鈍ってしまいそうな気がしてるってこと。
身近の小さな利便性を享受することで、その先にあるものを見つけようって意識だったり、そこから生まれるイノベーティブさだったりに曇りが生じるんじゃないかって気がして。
— そうかもしれません。便利さゆえに近視眼的な見方になるとでも言うか。
でしょう。だから私は今でもガラケーのままなんです。
もちろん、スマホで何ができるかやどんな機能があるかは、ある程度追いかけているし理解しているつもりですよ。でも自分では使わない。
会社支給のスマホも拒否してガラケーのままだし、渡されたiPadも箱に入ったまんま。
— かなり意識して徹底してますよね。何かきっかけはあったんですか?
長年コンサルタントとして、最前線で丁々発止しながらお客さまの息づかいやニーズに触れていたんだけど、2011年から組織を担う立場となり、役回りが変わったんです。
そのとき「これまで通りのやり方じゃ、自分の感覚は鈍ってしまうんじゃないか?」って思って。どうしたら自分の感覚を鈍らせずに、鋭い視点を保てるだろうかって考えて。
— おもしろいです! 一般的には、そういう場面でお客さまや社会との距離を縮めようとして「もっとスマホを活用しよう」って方向に振れる人が多そうな気がしますけど。
まあそうですよね。でもね、正しくニーズを捕まえるのって本当に難しくて、小さく満たされるとよく分からなくなっちゃうものなんじゃないかな。
古い例えだけど、Sonyのウォークマンだとか、任天堂のゲームウオッチだとか、パチさんも年代的には知ってますよね?
— ど真ん中世代です。高くて買えなくて、半額の類似品を買ってもらいました。
ああいう一世を風靡するようなものが出てくると、入手すること自体が目的化するじゃない? 自分も当時、親におねだりしてゲームウオッチを買ってもらいましたよ。あれは本当に自分が欲しかったものだったのかな?
…今、スマホなしで、どれだけスマートに、柔軟かつスピーディーに働けるかを試しているのは、ある種の思考実験のようなものだし、自分の枯渇感を満たさないためでもあるんだよね。
— 枯渇感を失うことが怖い?
まあそうかも…。でも、それってビジネス・パーソンとしては当たり前のことかなって思いませんか?
われわれ、お客さまに価値を提供できてナンボなわけじゃないですか。とがった視点からとがったインサイトやアイデアを出して、「おもしろい」とか「アハ体験」をしていただいて、価値を提供できているってことになるわけで。
— なんとなく、村澤さんの「とがり」の原点を見た気がします。
でもね、これがプライベートでは全然尖っていないんですよ(笑)。もっと多様なつながりを持って刺激的な場を味わいたいような気もするけど…。
まあでも、妻と10歳の娘と3人でのんびり過ごしているこの状態もなかなかなイイもんで、幸せなんですけどね。
— 3人でどんな風に過ごすんですか?
いや、たいしたことはしてないですよ。そう言えばちょっと前から娘がピアノを習い始めたんだけど、自分が音楽とか絵画とかに疎いこともあって、練習してる姿を見てると「ああ、いいなあ」って思いますね。
それから車が好きなんで、車で出かけることも多いかな。何年か前に家族でお伊勢参りに車で行ったときは、いろいろあったけど楽しかったなぁ。
— いろいろってなんですか? そういえば、村澤さんが車好きで、愛車遍歴もスゴイって耳にしましたよ。
耳ざといですね、車もドライブも好きですよ。中古ですけどこれまでドイツ車、イタリア車、イギリス車に乗ってきました。
感覚的なものなんだけど、伝わってくるものがそれぞれ違っていて、各国のモノつくりのポリシーというか、そういうものが車に反映されているような気がするんです。そういえば何年か前、家族で某国製の車で伊勢参りに行ったときには、帰りに車がチョロQみたくなっちゃったんだよね。
— チョロQってことは…バックができなくなったってこと?
そう、名古屋に向かう途中でギアがバックに入らなくなっちゃって。奥さんに「このままハンドル握っててね」って言って、よいしょよいしょって私が前から車を押して(笑)。
— 運転そのものも好きなんですよね?
そう。ドライブが与えてくれる疾走感やコントロール感も好き。
周囲から隔離されたあの感覚とか、何か一つのことに意識を集中する感じとか、自分自身を見つめ直す時間を持つ感じとか。平日の夜、たまにだけど一人でドライブに行くこともありますね。
— 車といえば、村澤さんも登場している『―自動運転時代の「安全・安心」を守る― ソフトウエア化するクルマづくりのデジタルツインにチャレンジ』というNIKKEIの記事読みましたよ。
車好きな一人として、自動運転っていう未来を明るくする技術の進化に貢献できるのは、やっぱりすごく嬉しいし誇らしいことですね。
それに、広く社会に共創がもたらす価値を伝えられる事例でもあるし。
— 2035年の村澤さんは何をしていると思います?
いやー分からないなぁ。でも娘がこのままピアノを続けていて、小さな会場でもいいからコンサートなんか開いちゃって、それを聞きに行けたら最高かな。
でも、彼女が大人になったときの社会を考えると、あんまりポジティブな気持ちではいられない。少し嫌な感じがするなとも思っていて。
— 何に嫌な感じがありますか?
多分、みんなそうなんじゃないかと思うけど、日本のグランドデザインってどうなって行くんだろう? 本物のリーダーシップを取れる人間が現れるのだろうか? っていう不安だよね。
目先の経済メリットにばかり目をやって、東名阪の三大都市だけが一時的に潤っていく。その一方で地方は衰退して、農地も減りカロリーベースでは食料自給率は30%台しかない…。
国土利用のあり方にもグランドデザインを感じないよね?
— 「おもてなし」って言って大きなイベントを引っ張ってきてるだけって感じがしてます。
そうでしょ。長期的なビジョンはあるのかな、感じられないよね。
インバウンド戦略を進めるんだって、何にフォーカスするのか。医療ツーリズムでもサブカルでもいいと思うけど、「何を強みとするのか」をもっと絞り込んで考える必要がある気がするよね。
— とは言え、文句を言ってるだけじゃしょうがないですよね。
まさにその通りで、誰が日本をリデザインするのかって言ったら、それはわれわれ市井の人だと思ってる。僕らがどうしたいか、そのために何をするのかをひとりひとりが考えて決断して行かなきゃならない。
ビジネスから変えられることもあるだろうし、すぐに変えられなくても意思を持ち続けて表明していくことにも意味はある。われわれWatson IoTのソリューションは、社会にすごく近いところにあるから、ビジネスを変えるだけじゃなくて社会課題も解決できる可能性がすごく高いし。
— 私もWatson IoTのそこに魅力を感じています。でもなんだか、2035年の村澤さんはビジネスじゃなくて政界にいそうな感じも…。
いやー、うーん、そうねぇ…あり得るかも。そういうのってタイミングとか縁とかが重要だと思うし。
まあでも繰り返しになるけど、大人になった娘が、そしてその次の世代が、幸せに暮らせる世界になっていて欲しいし、そのためにそのときどきでやれることを精一杯頑張りますよ。うん。
インタビュアーから一言
「中学の古文の授業だったかな。『君子は和して同ぜず、小人は同して和せず。(くんしはわしてどうぜず、しょうじんはどうじてわせず)』っていう孔子の言葉が、今もずっと頭に残っているんだよね」と、インタビューの最後に言われていました。なんだかその言葉に、自分の中で、村澤さんという人の在り方がピタッとすべてつながったような気がしました。
それにしても良い言葉ですね。そして論語と言えば関さんも…。早く読まなくっちゃ!
(取材日 2019年1月29日)
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