IBM Sustainability Software
Watson IoTの基盤はスマーター・プラネットなんです(Watson IoT 磯部 博史)
2019年01月21日
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Watson IoTチームメンバー・インタビュー #6
磯部 博史 リード・ソリューション・アーキテクト
IoTやAIが持つ可能性とそれがもたらすであろう未来について、Watson IoTチームのメンバーに個人的な視点を交えて話していただくインタビューシリーズ、今回は磯部さんに登場いただきます。
(インタビュアー 八木橋パチ)
— こんにちは。いきなりですが、磯部さんがWatson IoTチームに加われた経緯を教えていただけますか。
そうですね。うーんと、チームに加わったというよりも、気づいていたらWatson IoTチームのメンバーになっていたって言う方が実態に近い気がします。
というのも、私はここ10年ほど、部署こそ変わりつつも、ソフトウェアのアーキテクトという仕事をやってきているんです。
そして、仕事の中心となる「ソフトウェア技術が描き出す社会の変化を、社内外の人たちに伝える」という役割はずーっと変わっていないんですよ。
— 伝える相手は、社外だけじゃなくて社内もなんですね。
はい。理由は、ソフトウェアの世界って変化がものすごく激しいからなんです。
そんな中で、チームのメンバーや関係者にそれぞれの技術や製品の本質をちゃんと伝えていくことって重要で、それが上手くできていないと、彼らから話を聞く社外の方にはますます伝わりづらくなってしまいますから。
— たしかにそうですね。ところで、磯部さんにとってWatson IoTのおもしろさってなんですかね?
やっぱり変化の激しさと幅の広さだと思います。私は常に新しいものに触れていたいし、社会の潮流を追っていたいんです。
AI(拡張知能)もIoTも、著しい進化を続けている分野だし、あらゆる業種や職種に広く関わるテクノロジーですよね。アカデミックな要素もビジネスの要素も両方を強く持っているし、体温を持つ人間と非物質的なソフトウェアやクラウド技術という両面性もある。
そういう幅広さがある中でさまざまな経験ができて、その上アーキテクトとしての興味だけじゃなくて個人的な興味までをも満たしてくれる。とーってもいい仕事だなって思ってるんです。
— この10年間の変化の激しさを分かりやすく表しているものとか、象徴的なものって、何かありますかね?
そうですね。私に取っては2008年にIBMが提唱した「Smarter Planet(スマーター・プラネット)」っていうビジョンが、変化の激しさを象徴している気がしています。
当時は技術やインフラが追いつけていなくて、すぐに実現することができなかった。でも、そのビジョンにどんどん肉薄してきたのがこの10年じゃないですかね。
— スマーター・プラネット! 久しぶりに耳にしました。懐かしいな、好きだったなー。今となっては知らない人も多そうな気が…。
発表当時はちょっと分かりづらいとか、イメージしづらいなんて声もありましたが、振り返って見れば、あそこからいろんな流れが生まれているんですよ。現在のWatson IoTの母というか基盤のような存在ですね。
パチさんは覚えてますか? 重要となる「3つのI(アイ、愛)」?
— なんでしたっけそれ…。まったく思い出せません。
機能化(Instrumentation)、相互接続(Interconnectedness)、インテリジェンス(Intelligence)の3つの頭文字ですね。
最近よく使われている言葉に言い換えると、「デバイスからデータを収集して、さまざまなモノと相互接続して、知性を与えてより良い答えを導き出す」ですね。
— なんだかそれって…Watson IoTそのものじゃないですか?
でしょ。だから「Watson IoTの基盤」って言ったんです。
通信環境が向上してデバイスの質や入手性も上がりました。そこにIoT技術でリアルタイム性が加わり、Watsonに代表されるAIも活かされるようになりました。
そこで導き出されたものを街やビルだとか、エネルギーや工場だとかといった、社会的な課題やビジネス上のチャレンジに適用するのがWatson IoTなんですよ。
— 改めて身の回りを見直すと、社会的な環境が揃ってきたのを感じますね。では、人の心はどうですかね? 時代に追いついてますか?
私は社外で講演する機会が多いんですけど、ここ1-2年で日本も急速に変わってきたなと思っています。社会的な環境の変化に人の認知も追いついてきて、調和してきているのかなって感じています。
ここ数年でSDGs(Sustainable Development Goals: 2030年までの達成を目指す、国連が掲げる持続可能な開発目標)に代表される社会課題への取り組みもすごく高まっていますよね。
— ここ最近で、磯部さんがすごく楽しかった仕事を教えてください。
ミツフジ様とのコラボレーションはスピード感も一体感もすごくって楽しかったです。
良いサービスをデザインしようという際に使われるフレームワークに、「カスタマージャーニー」とか「クライアントジャーニー」と呼ばれるものがあるじゃないですか? お客さまと一緒に、サービスを巡る感情的な変化を探る旅路に出るっていう。まさに、それを感じるものでした。
— すごく興味深いです。もう少し詳しく教えてもらえますか?
まず、スピード感がすごかったです。まさにアジャイル開発の醍醐味を味わうことができました。「一度打ち合わせしましょう」と最初に話をした2カ月後にはプロトタイプの大々的な発表会をし、さらにその2カ月後には大掛かりな契約を結び、そこからすぐにプレスリリースとして今後の計画などが発表されました。
ジェットコースター並みの慌ただしさで相当バタバタしてはいましたが、同時にとってもスペクタルな旅を一緒にさせていただいたような気分でした。
参考: ミツフジ、ウェアラブルIoT hamonにグローバル展開の強化でIBMのWatson IoTソリューションとIBM Cloudを採用
— ステキなジャーニーだったんですね。逆に、失敗ジャーニーもありますか?
まあ失敗と言っちゃうとアレですが…。実際の実験を始める前、いわば「旅に出る」前に「いや、これはやめておきましょう」ってなることは正直少なくはなかったです。
とは言え、それも昔の話で、今は原因が分かっているので同じ失敗はぐっと減っていますけどね。
— ズバリ、失敗の原因は?
私は大学時代からずっとソフトウェアしかやってこなかったのですが、失敗の原因は私がハードウェアのことをあまりにも知らなすぎたからですね。
ソフトウェアだとアジャイル開発で進めることができますが、ハードウェアって、ソフトウェアのように短期間で急激に改良・進化させるのは物質的な制約があって難しいということを、恥ずかしながら勉強させていただきました。
— 「来週までにデバイスの改良版を500個用意して」って言われても、たしかにそう簡単じゃないですよね。あ、でもいずれ3Dプリンターがオフィスにゴロゴロあるような時代が来れば変わりますかね?
どうですかね。それでも当面は難しいんじゃないかなって思います。
ハードウェアの形状は3Dプリンティングですぐに作れても、データを取得してデジタルに変換して通信回路に乗せて送る、さらに安全面の規格にも対応させるっていうのは、また少し違う話かなと。
ハードとソフトの境目とか半導体技術にまで関わってくる話なので、ある程度の施設規模が必要となります。それを考えるとと、そこはまだ相当の期間変わらないのかなって思います。
— それでは最後の質問です。磯部さんが「IoTにこれを解決して欲しい」と強く思っている分野ってありますか?
やっぱり日本が直面している社会課題を解決して欲しいですよね。高齢化、過疎化、健康問題…。
AIやIoTが病気を根本から撲滅するのは難しいかもしれません。でも、ウェアラブル技術がこのまま発展していけば、身体的な観点からのアドバイスだけじゃなくて、メンタルな観点からのサポートもできるようになっていくと思うんですよ。
— 心身に関する詳細なデータがこれまでにないボリュームで集まれば、たしかにもっといろんな発見につながりそうですよね。
私はConnected Life(繋がった生活)がQuality of Life(生活の質)の向上の鍵になるだろうって思っているんです。
まだ本人も気づいていなかったり表面化していないような、そんな問題を発見するのがIoTに代表されるセンシング技術。その問題や困りごとの解決方法を見つけたり、対応方法の質を高めていくのがWatsonに代表されるAI。
Watson IoTには、QoLのゲームチェンジャーになって欲しいんです。
インタビュアーから一言
アウトドアが大好きで、毎年、本栖湖にキャンプに行くという磯部さん。
「2035年くらいには、IBMオフィスに出社するのは特別なときだけで、普段は大自然の中で仕事したいですね。気分転換にサッカーボールを蹴ったりしながら」とも言われていました。
それから、実は数年前「新しい働きかたの実験の一つ」として、3泊4日でキャンプ場で仕事をしてみたこともあるそうです。
…あれ。この話、みんなには内緒って磯部さん言ってたかも(笑)
(取材日 2018年12月20日)
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