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生成AIと基盤モデルのビジネスにおける重要性

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生成AIがいかにビジネスを変革し始めているかを探る3部作:第1回

2022年11月のリリース以来、OpenAIのChatGPTは、生成AIが私たちの生活や働き方を劇的に変える可能性を示し、消費者と企業リーダー双方の想像力を掻き立てました。ChatGPTが社会に与える影響の大きさが明らかになるにつれ、企業や行政機関は、従業員・職員のChatGPT使用に関するポリシーを作成したり、ChatGPTへのアクセスを制限したりするなど、対応に追われています。その中でも最も用意周到な組織は、AIを組織に適用する方法を見極め、すでに到来し始めている未来に備えようとしています。最も先進的な組織では、AIを後付けするのではなく、AIを核とした重要なワークフローを再構築する方向に考えをシフトしています。

世界の生成AI市場は、2030年の評価額が80億米ドル、CAGRが34.6%と推定され、変曲点に差し掛かっています。その時点までに8,500万人以上の雇用が不足すると予想される中、経営層のリーダーやステークホルダーが期待する効率、効果、エクスペリエンスを実現するためには、AIと自動化を活用したよりインテリジェントなオペレーションを作り出す必要があります。生成AIは、従業員の業務を補強し、企業の生産性を向上させる注目せざるを得ない機会を提供します。

ただし、経営層リーダーは、生成AIのソリューションを調査するにつれ、さらに多くの疑問を抱くようになっています。自社のビジネスに最も価値をもたらすユースケースは何か?自社のニーズに最適なAIテクノロジーは何か?セキュリティーは確保されているのか?サステナビリティーは?ガバナンスは?また、AIプロジェクトの成功はどのように保証されるのか?

IBMコンサルティング、IBMテクノロジー、IBMリサーチは、基盤モデルの構築に数年間取り組んできた経験から、企業全体に責任を持ってAIを展開するためにはどのような要素が必要かについての確固たる見解を持っています。

既存の企業AIと新たな生成AIの機能の違い

こうした疑問に答えるには、まず、生成AIの根幹をなす技術を理解することから始めるとよいでしょう。その名が示すように、生成AIは既存のデータを解釈・操作しながら、画像、音楽、音声、コード、動画、文章を生成します。生成AIは新しい概念ではなく、生成AIの背景にある機械学習技術は過去10年間で進化してきました。最新のアプローチは、「Transformer」と呼ばれるニューラル・ネットワーク・アーキテクチャーに基づくものです。Transformerアーキテクチャーと教師なし学習を組み合わせることで、複数のデータ・モダリティーを扱うことができる既存のベンチマークを凌駕する大規模な基盤モデルが登場しました。

このような大規模なモデルは、より高度で複雑なモデルを開発するための出発点となるため、基盤モデルと呼ばれています。基盤モデルの上に構築することで、特定のユースケースやドメインに合わせた、より専門的で洗練されたモデルを作成できます。GPT-3、BERT、T5、DALL-Eなどの初期のモデルが、その可能性を示しています。短い指示を与えると、システムはパラメーターに基づいてエッセイ全体や複雑な画像を生成します。

大規模言語モデル(LLM)は、自然言語処理(NLP)タスク向けに大量のテキスト・データを用いて明示的に学習され、通常は1億以上のパラメーターを持っています。これらは多様なタスクの自然言語テキストの処理と生成を容易にします。各モデルにはそれぞれ長所と短所があり、どのモデルを使用するかは、特定のNLPタスクと分析されるデータの特性によって決まります。特定のジョブに適した正しいLLMを選択するには、LLMの専門知識が必要です。

BERTは、文中の単語間の双方向の関係を理解するように設計されており、主にタスク分類、質問応答、名前付きエンティティ認識などに使用されます。一方、GPTは単方向のTransformerベースのモデルであり、主に言語翻訳、要約、コンテンツ作成などのテキスト生成タスクに使用されます。T5もTransformerベースのモデルですが、BERTやGPTとは異なり、Text-to-Textアプローチを用いて学習し、言語翻訳、要約、質問応答などの様々な自然言語処理タスク向けに細かく調整することが可能です。

AI開発の加速と価値実現までの時間(Time to Value)の短縮

膨大な量のデータで事前にトレーニングされたこれらの基盤モデルは、AI開発のライフサイクルを大幅に加速し、企業は特定のユースケースに合わせた詳細な調整に集中することができるようになります。ドメインごとにカスタマイズされたNLPモデルを構築する代わりに基盤モデルを利用することで、企業が価値を生み出すまでの時間を数ヶ月から数週間に短縮することが可能です。

IBMコンサルティングの複数のお客様において、コールセンターの会話ログの要約、レビューの分析などのNLPユースケースにおいて、価値実現までの時間が最大70%短縮されていることが確認されています。

基盤モデルの責任ある展開

基盤モデルのトレーニングや維持にかかるコストを考えると、企業はユースケースに合わせて基盤モデルをどのように取り入れ、展開するかを選択する必要があります。ユースケースに特有の考慮事項や、コスト、労力、データ・プライバシー、知的財産、セキュリティーに関する決定事項があります。企業は、これらの判断材料を勘案しながら、1つまたは複数の導入オプションを使用することができます。

IBMコンサルティングは、基盤モデルがビジネスにおけるAIの採用を劇的に加速させると考えています。ラベル付けの要件が軽減されることで、企業がAIを迅速に検証し、効率的でAI駆動型の自動化やアプリケーションを構築し、より幅広いミッションクリティカルな領域にAIを導入することが、より簡単になります。IBMコンサルティングの目標は、「摩擦レス」なハイブリッドクラウド環境で、あらゆる企業に基盤モデルのパワーをもたらすことです。

これらのソリューションを評価する際に考慮すべきユースケースと潜在的なリスクの詳細については、この3部作の第2回(または第3回)へ読み進め、IBMコンサルティングのAI向けサービスのページをご覧ください。

この記事は英語版IBM Blog「What is generative AI, what are foundation models, and why do they matter?」(2023年3月8日公開)を翻訳し一部更新したものです。


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