IBM Sustainability Software
Think Summit 2019レポート#6 – AIとIoTにより設備・機器データが生み出すビジネス優位性
2019年07月24日
カテゴリー IBM Sustainability Software | イベントレポート | 設備保全・高度解析
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6月18日から4日間、寺田倉庫を起点に天王洲地区で開催されたThink Summit 2019。
今回は3日目の「Summit Industry Day」からセッション「AIとIoTにより設備・機器データが生み出すビジネス優位性」の模様をお伝えします。
講演者 Watson IoT事業部 磯部 博史
■ AIとIoTがもたらす「設備管理の実行基盤」と「意思決定の最適化」
今日は40分という時間の中で「設備・機器がAIとIoTによりどのような価値を生み出すのか?」を、お伝えさせていただきます。
まずはアセット、つまり設備や機器に関して、今どのようなことが実現しているか、あるいはこれから実現しそうかということを、いくつかのキーワードと共に紹介します。
・ センサー: センサーを取り付けた設備や機器、あるいは組み込みセンサーを持っている機器は今では一般的になっていて、それを遠隔監視しているものも珍しくありません。
・ デジタル・ツイン: 仮想空間上に作られた、物理空間上に存在して動いている設備や機器の「デジタルの双子」がデジタル・ツインです。デジタル空間上では、時間軸を調整できるので、IoTセンサーで取得した過去のデータを分析することで将来何が起きるか、性能がどう変化していくかを、AIを用いて事前に知ることができます。
・ 故障予測 / 予知保全: 上記のデジタル・ツイン上でシミュレーションしたことを物理空間上に「戻す」ことにより、故障や性能低下が起きる前に対応して、運用性や設備稼働性を向上することができます。
これらの動き・状況に関して、さらに2つのキーワードを紹介します。
・ EAM(Enterprise Asset Management) – 設備管理の実行基盤
設備管理の実行基盤として設備台帳を作り、保全の計画を立てて実行し、それを記録していく取り組みやシステムのことです。
・ APM(Asset Performance Management) – 意思決定の最適化
EAMを土台として、そこにIoTとAIを適用させることで、対象設備がどういう状態であるかを診断し、今後の性能変化を予測して対象設備の修理や交換の計画、アドバイスを貰う仕組みやシステムです。
APMは電力やガス、重工業などの機械化が進んだ製造業で重視されている取り組みで、アセット・パフォーマンスの最適化により企業や組織の競争力を維持しようというものです。
約半数の企業がAPMに関する取り組みに手をつけていると言われていますが、実際にシステムの実装に至っている企業はまだ10%程度に過ぎません。
今後、保全コストをいかに最適化するか、あるいはコンプライアンスや安全性をどのように確保していくかという取り組みはさまざまな産業・業態に広がっていくと思われており、EAMとAPMに注目が集まっていくことは間違いないでしょう。
■ APM(設備管理最適化)ジャーニーのステップ
Think Summitではさまざまなセッションで「ジャーニー」という言葉が使われています。
ジャーニー、つまり旅という言葉が使われていることが示すように、AIを活用するには手順を踏んでいく必要があり、それなりに時間もかかるものです。
APM(Asset Performance Management)も同様で、IoTとAIを適用して大きなビジネス価値を生み出すまでにはAPMジャーニーとでも呼ぶべきステップがあります。
1 保全管理基盤(Manage): きちんとした設備管理の基盤となるシステムやツールを用意する
2 IoTプラットフォーム(Connect): データを計測・数値化して保存し、処理できる状態にする
3 設備診断(Health): 設備の状態をスコアリング・数値化する
4 性能予測(Predict): 性能や状態が今度どのように変化していくかを予測する
5 AI診断(Assist): 設備の保全管理をAIがアシストする
このManage 〜 Connect 〜 Health 〜 Predict 〜 Assistの一連の流れをジャーニーと呼んでいるわけですが、IBMはこの1のマネージにあたる部分のソリューションとしてMaximo EAMを、そして3、4、5を支援するソリューションとしてMaximo APMをご用意しています。
これを「AIとIoTによる保全ステージの進化」という視点で捉え直すと、以下のようになります。
・ 周期基準保全(TBM: Time Based Maintenance) – 壊れてから直す「事後保全」と、周期ベースや使用時間ベースで分解やチェックを行う「予防保全」のためのソリューションがMaximo Asset Managementとなります。
ここまではAIとIoTは関係がありません。
・ 信頼性中心保全(RCM: Reliability Centered Maintenance) – 複数の基準を統合して100点満点で見たときに現状が何点かを示すのが「状態基準保全」で、ここからはIoTが用いられます。
次にその数値がどのように変動していくか、あるいはどのタイミングで障害発生となるかを予知して事前対応するのが「予知保全」で、ここでAIも登場します。
そしてさらに、問題解決を直接促す処方的な情報を提供する「処方的予知保全」や、従来のデータ分析だけでは導き出せなかった高度なインサイトを提供する「卓越した知見」へと進化していきます。
ここで用いられるソリューションがMaximo APM – Health、Predict、Assistとなります。
なお、冒頭に「競争力維持のためにAPM(Asset Performance Management)の実装ができている企業は10%に過ぎない」とお伝えしましたが、その10%の企業とそれ以外を切り分けているのが「周期基準保全だけではなく信頼性中心保全へと軸足を移しているかどうかで、そこで差が現れてきているわけです。
■ AIとIoTジャーニーのデモと実践事例
ここからは、AIとIoTジャーニー(コネクテッド・アセットの旅)の実践に関するデモと事例をご覧いただきます。
視点としては以下の2種類があります。
・ パターン1 設備の透明性向上 – 設備効率の最適化を狙ったもので、「設備の最適化視点」が中心となります。
・ パターン2 作業員支援 – 遠隔支援やAIアシストなどを用いた匠の技能を継承するためのもので、設備を管理している「作業員の視点」が中心となります。
それぞれのパターンを少し詳しく見ていきましょう。
パターン1
・ デモ内容: AIとIoTを活用した設備診断 – 故障率曲線(P-Fカーブ)による故障耐性の変化と対応猶予時間の関係を適切にトラッキングして判断し、マネージしていきます。
さらに、状態基準保全(CBM)を基盤とした上で、IoTデータをAIに処理させることで、現状の機器の健康度合いを診断し、15日後や30日後の故障発生確率を予知していきます。
・ 事例: サンドビック社 – 掘削現場をデジタルツインで管理。掘削機および掘削現場のリアルタイムIoTデータを元に、トンネル内や地中深くでのトラブルを即座に把握。
さらに、採掘機、採掘プロセス、地下空間情報などのデータを継続的に集め分析することで、ダウンタイムの回避と故障予測を実現。地下鉱山採掘の安全性と生産性を共に改善。
パターン2
・ デモ内容: 作業員支援による匠の技能継承 – 複雑化する現場や人手不足により、次世代への技能継承の難易度が上がり続けている。そうした状況に対し、作業員が問題を発見した際に、手持ちのスマホで現場を動画撮影して送付するだけで、遠隔地の専門家から直接アドバイスを受けたり、あるいはAIが動画の画像や音声の診断を行い、対応ガイドの送付や初動対応アシストを実施するシステムが実装されはじめている。若手作業員がこうしたアドバイスやアシストを通じて匠の技や勘所に触れることにより、次世代の育成にも繋がっている。
また、現場の問題をカンバン方式でフロー管理し、個々の問題に対する対応すべてを一元管理することで、過去の対応実績をベースにAIが助言を与えるケースも増えている。
・ 事例: KONE社 – エレベーター/エスカレーターの保守サービスのスマート化。IoTによるデータ収集・整備、Maximo APMを活用した故障予知およびAIにより症状診断。デジタル変革を土台とした新規サービスやビジネスモデルの開拓。
私のセッションは以上となります。
短い時間で複数のデモを実施したため、よく分からない点やもっと詳しく知りたかった点がある方もいらっしゃるのではないかと思います。Watson IoT担当者による個別の説明やデモをご希望の方はCognitive Applications事業 cajp@jp.ibm.com までご連絡ください。
ありがとうございました。
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TEXT 八木橋パチ
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