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Think Summit 2019レポート#4 – 「超高齢社会とテクノロジー」セッションレポート with 「Meet Your Second Life」
2019年07月10日
カテゴリー IBM Sustainability Software | イベントレポート
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6月18日から4日間、寺田倉庫を起点に天王洲地区で開催されたThink Summit 2019。
今回は、展示会場併設シアターで9回にわたり行われたミニセッション「超高齢社会とテクノロジー -シニアの活力を社会へ。共同研究事例」の模様をお伝えします。
また、注目の展示が多数揃っていたThink Technology & Society会場から、「Meet Your Second Life」という第二の人生を見つけるお手伝いするWatsonを活用したプロトタイプも併せて紹介します。
■ ミニセッション「超高齢社会とテクノロジー – シニアの活力を社会へ。共同研究事例」
セッション講師は、日本IBM 東京基礎研究所の高木 啓伸です。なお、下記の画像をクリックいただくと、セッション終了直後に撮影された高木 啓伸のインタビュー動画(1分37秒)もご覧いただけます。
(正しく再生されない場合はこちらよりご覧ください)
私たち東京基礎研究所が「高齢者の社会参加」の追求に一段と本腰を入れ始めたのは、東京大学の廣瀬通孝教授との10年前の議論がきっかけでした。
日本の逆ピラミッド型の年齢別人口構成図に対し、廣瀬教授が発した「逆ピラミッドをひっくり返して、元気な高齢者がひ弱な若者たちを支援すれば、ちょうど良くなるじゃないですか」という一言が私にはとても衝撃的で、いまでも強く記憶に残っています。
今回のミニセッションでは、この10年前にスタートした取り組みが現在どのような形になっているかを、いくつかのプロジェクトと併せて紹介させていただきます。
でもその前に。先ほどの「逆ピラミッドをひっくり返す」という話の前段となる情報をお伝えさせてください。
皆さんは、日本の高齢者が、諸外国と比較すると働くことへのモチベーションの高さとスキルの高さが際立っているのはご存知でしたか?
平成30年度版「高齢社会白書」によれば、日本の高齢者のうち「65歳以降も働きたい」という方は約80%、さらに「働けるうちはいつまでも」と答えた方が42%となっており、また、日本の60~65歳層の数的思考力と読解力がOECD各国の平均を大きく上回っていることも示されています。
この気力と脳力をベースに、そこに彼らの強みである「スキルと経験」が加わり、さらに若者の強みである「体力」が組み合わさったら…「スーパー労働者」が生まれますよね。
こうした「モザイク型就労者」という考えを実現するためのテクノロジーが次々と生まれ、活用されるようになったのがこの10年間ではないでしょうか。
「タイムシェアリング」「クラウドソーシング」「リモートワーク」といった新しい働き方が身近になってきているのは、場所や時間の制約を超える方法をテクノロジーが提供するようになり、それを人々が受け入れる考え方の土壌ができてきたからと言えるのではないでしょうか。
■ みんなでデイジー | GBER(ジーバー) | 人材スカウター
ここからは、この10年の間に進められてきたプログラムやプロジェクトの中から、いくつか代表的なものをお伝えさせていただきます。
みんなでデイジー – 高齢者クラウド: クラウドソーシング図書校正
「みんなでデイジー」は、視覚障害などで印刷物を読むことが困難な人のために、「DAISY(Digital Accessible Information SYstem)」という国際規格に準拠した電子書籍を作るプロジェクトです。
日本点字図書館とのコラボレーションで、簡単に言えば「クラウドソーシングでの図書校正」となります。
仕組みとして、時間と場所を選ばずにやっていただけるものだったので、家で好きな時間に社会に貢献できると高齢者の方がたが活躍してくれました。
プロジェクトは現在では国立国会図書館と日本点字図書館の共同プロジェクトとなって継続しています。
GBER(ジーバー) – 高齢者クラウド: アクティブシニアの社会参加支援プロジェクト
「GBER」を簡単に説明すると、特定の作業や何かのテーマに関する集まりを行う際にこの仕組みを使うと、おじいさんが呼ばれてやってくるというものです。
おじいさんやおばあさんがやってくるから「ジーバー」ではなく、呼べば車がやってくる配車アプリ「uber(ウーバー)」をもじって付けられたなんて話もあるようです。名付け親はプロジェクトに参加していた東大生だそうです。
GBERの大きな特徴の一つは、高齢者それぞれと地域活動を「興味空間」と呼ばれる仕組みでマッチングし、それが自動的にアップデートされていく仕組みです。
GBERでは最初に自分の好みや興味分野を登録するのですが、その後実際に参加した集まりや断った申し出を反映してアップデートされていくので、プロファイルが実際の行動に即したものへと育っていくという言い方もできるでしょう。
すでに実証実験が4年目に入っている千葉県の柏市では一定の成果を出しており、より広い地域での社会実装も始まっています。また、より多くの自治体や企業が利用できるようにオープンソース化を進め、実際にソフトウェアやマッチングのアルゴリズムを使う企業も現れてきています。
人材スカウター – 高齢者クラウド: ハイスキルなシニア人材のマッチング支援技術
「人材スカウター」はGBERよりも求人要件がより細かくビジネス寄りになる、高度な知識やスキルを持つシニア人材のためのマッチング支援技術です。
ジョブマッチングのプロが持つ暗黙知をシステム化することを試みています。
例えば、求人要項にはいろいろな言葉が書かれていますが、優秀なマッチング・コンサルタントは要項に書かれた言葉の中から本当に重要なキーワードを抜き出し、それらに重み付けをしたり、不要な単語を削除したりして、要項に見合う人材を見つけ出していいます。
こうした「キーワードの抜き出し」や「不要な単語の削除」「それぞれの重み付け」などをする能力を、⾃然⾔語処理技術を用いて高度化しさらに精度を高めていこうというのが人材スカウターの取り組みで、現在は民間企業と実証実験を進めています。
高齢者の方々の「困っている人を助けたい」「世の中をもっと良い場所にしたい」という想いや価値観は強く、彼らのそうした意思を活用できないのは社会にとって大きな損失と言えるでしょう。
「超高齢社会」という日本の特徴は一見ハンデと思われますが、これを上手に強みに変えることができれば、日本は世界のロールモデルになるのではないでしょうか。
今回、隣のThink Technology & Societyの会場では、「Meet Your Second Life」という第二の人生をインタラクティブに見つけるお手伝いするAIシステムを展示しています。
ぜひお時間を見つけて、そちらにも足を運んでいただければと思います。本日はありがとうございました。
■ Meet Your Second Life – 質問に答えて「第二の人生」を
ここからは、上記セッションの最後に紹介された「Meet Your Second Life」を紹介します。
Watsonからのスキルや性格、趣味などについての質問にマイクを使って答えて会話をしていると、あなたにピッタリのセカンドキャリアとしての適職を診断・提案してくれるシステムのプロトタイプです。
1人あたり約3〜5分で「第二の人生」を提案してもらえます。
(上記画像をクリックすると紹介動画をご覧いただけます(正しく再生されない場合はこちらよりご覧ください))。
高齢者の方がたに使っていただきやすいよう、質問に口頭で答えればいいという音声をテキストに変換する技術を使った分かりやすいインターフェースで、誰でも迷うことなくすぐに使うことができ、社会参加の可能性の提示につながっているのが特徴です。
これまでのスキルや性格、趣味に合わせつつも、ちょっとだけ想像を超えた「意外な適職」が提案されるので、ほとんどの体験者が「ええー!」や「わーっ」という声を挙げていたのが印象的でした。
なお、現場でアンケートをしてみたところ、提案された職種に対して「ぜひやってみたいと思う」と「やってみたい」と答えていただいた方の合計は、全体の約2/3でした。
なお、現在は45歳から69歳約3000名のデータを元にしていますが、今後、高度な分析に十分な量の年齢別や職業別のデータソースが確保できれば、社内の職種転換や新入社員の配属先決定支援などにも活用することができそうです。
今後、さらに開発を進めていくとのことでしたので、皆さんも機会を見つけた際にはぜひお試しください。
関連ページ: 最先端のIoTヘルスがもたらす、新たな人と医療との関係
関連記事: Think Summit 2019レポート#3 – 「社会とともに – IBMのSDGsへの取り組み」セッション・レポート
TEXT BY 八木橋パチ
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