SPSS Modeler ヒモトク
【開催レポート】1163名がライブで参加!オンラインユーザーイベント「SPSS春のユーザー会2021」、マツダ、東京ガス、HONDA各社がSPSSの活用事例を熱く語る!
2021年06月21日
カテゴリー Data Science and AI | SPSS Modeler ヒモトク | アナリティクス | データサイエンス
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みなさまはじめまして。スマート・アナリティクス株式会社の畠です。
今回の「ヒモトク」ブログでは、去る2021年5月21日にオンラインにて開催されたSPSS春のユーザー会「IBM SPSS Modelerユーザー会2021」当日の様子を、昔からのSPSSユーザー&ファン、かつイベント運営・配信にも携わりました私からお届けいたします。先回からオンライン開催となり、2回目の開催となった当イベント。今回はさらにパワーアップし、事前予約800名弱、当日もライブ配信ものべ1163名のお客様が視聴し、盛会のうちに終了いたしました。
さて、イベントレポートをなぜ畠が?という方もいらっしゃることでしょう。そこで自己紹介を少々。現在、スマート・アナリティクスの代表をしておりますが、大学院時代にアルバイトをしていたSPSS社にそのまま社員として入社。2010年にIBMに買収された後も2015年まで10年以上にわたりSPSSのプロモーションや広報、イベント・セミナーなどマーケティング全般を担当していました。
SPSSのイベントといえば、読者の皆さんの中にもデータマイニングイベント「SPSS Data Mining Day」やユーザーカンファレンス「SPSS Open House(後にSPSS Directions)」などのイベントにご参加いただいた方もいらっしゃることでしょう(懐かしいですね)。 SPSS時代(ビフォアーIBM)には年に2回ほど、1000名を超えるお客様が参加する大規模イベントやセミナーを開催し、多くのお客様講演セッションや著名なアカデミアの先生方の基調講演、ユーザー同士の交流会など、ユーザー目線でのイベント・セミナーを開催しておりました。100名足らずの所帯であったSPSS社にとっては、社員総出で取り組む必要があるお祭り騒ぎともいえるイベントで、多くのお客様にもご支持をいただいたイベント・セミナーであったと感じております。
しかしながら、2010年にIBM社がSPSS社を買収された後、SPSS単体でのイベント・セミナーの機会は減少の一途を辿り、残念ながら非常に限定的な開催となっておりました。IBM社がWatsonに注力するようになった2015年くらいから「SPSSはWatsonに統合されるのか?」という不安を多くのユーザーのみなさんが抱えるようになります。私自身、当時はすでにIBM社を離れていましたが、SPSSの将来が少し不安になったのを記憶しています。データ分析の世界でもAIブームが沸き起こり、PythonやRなどが爆発的に普及(していた感がありました)。SPSSが市場から消えるのでは?と一時期は危惧していましたが、IBM社にも熱い想いをもってSPSSブランドを支え続けてくれた諸先輩方と皆様のようなSPSSファンの方のおかげで2019年11月、SPSS単独のユーザーイベントが再開となりました。再開第1回目は、ビジネスパートナーとして参加させていただきましたが、あのIBM本社の箱崎2Fのイベント会場に入った際には、こんなにもSPSS(特にModeler)のファンがいらっしゃるんだ!と感銘を受けました。
SPSS担当テクニカルメンバーのみなさんとパートナー各社の完全な手作りでしたが、それがかえって温かみのある評判のイベントになりました。
箱崎本社のセミナールームが300名満席で立ち見になると、その光景にかつてのユーザーイベントを思い出し胸が熱くなりました。
ユーザー会復活の2回目からは、Mr.Clementine(現:Modeler)でもあるIBMの西牧さん、そして京田さんなどにお声がけいただき、事務局・マーケターとしてイベントに参画させていただきました。
前回、第2回目で、初のオンライン開催となった2020年秋の開催でも800名以上の方が視聴。全国から気軽に参加できる点がとても好評でした。参加者へのお礼のメールに添付されたWordのアンケートに「こんな運用(手書き)は今時ではない」と苦言を述べられながらも「イベントは素晴らしかった」「グローバルのSPSS責任者がSPSSとCADSに継続投資をするというメッセージを見て安心した」と嬉しいフィードバックを数多くいただきました。そうして、2021年はオンラインで春と秋、それぞれ「テクノロジー視点」と「組織とマネタイズを考える」のテーマで2度の開催が決定。この度の春の会の実施になったのです。
さて、前置きがながくなりましたが、ここからは当日の講演についてご紹介していきましょう。
「製品への愛」とSPSSユーザー会
伊藤 昇
日本アイ・ビー・エム株式会社
専務執行役員テクノロジー事業本部長
IBMの製品部門のトップである伊藤氏がオープニングアドレスを飾り「Hybrid CloudとAIにフォーカスするIBMにとってSPSSは極めて重要なソフトウェアです」と力強くメッセージしました。エピソードとして、最近、グローバルエグゼクティブのジム・ホワイトハーストさんから「製品を愛しているか」と問われ、動揺したそうです。これまで製品やソリューションをお客様に応じてカスタムメイドしてきたIBM社にとって、自社テクノロジーへの愛着について語られることはあまりなかったそうですが、グローバルのエグゼクティブ自ら、自社製品を愛し、お客様に提案をすべしというメッセージを受けたとのこと、とりわけSPSSはIBMの数ある製品の中でも熱烈にユーザーから愛されており、IBMとしてとても重要なポジションにあるということを語り締めくくりました。
マツダ様はSPSSとCADSで社内情報共有を加速
山口 幸司
マツダ株式会社
品質本部 市場品質部
3つのユーザー事例セッションのトップバターはマツダ株式会社の山口様です。
「BI無し!分析結果のダッシュボードをSPSS + Pythonスクリプトで生成する」というタイトルをみた瞬間は、SPSS事例なのか正直疑問でしたが、それは思い違いだと開始数分で気づきました。
山口様は爆発的に増えるコネクティッドカーの情報をいち早く現場に適切に届ける仕組としてSPSSの自動化機能に目をつけたと説明。データ分析ツールとしてのSPSS本来の用途も当然利用していると前置きをしながら、現場にタイムリーに、かつ正確な情報を、コストや現場のスキルを考慮した上で届ける取り組みを試行されたとのこと。
全社データ活用の時代にあって極めて有効なのだと納得しました。
これまで数多くのSPSSユーザー事例講演の中で、ここまで具体的に解説されたケースは滅多ありません。Tech-dayと銘打った春の回らしい内容でした。
私自身、現在、多くのBIツールなども扱っており、データ分析の結果をいかに現場が利用できるようにするべきかについて、課題解決すべく邁進しているわけですが、SPSS ModelerとCADSを利用して、HTMLベースで出力を吐き出す(画像も含め)という点、まさに現場の方がすぐに使いたい時に、必要な情報がすぐに手に入るという素晴らしいお話を伺いできました。
抜粋版スライドはこちらからご覧いただけます。
IBMセッション①SPSS Modelerロードマップ
京田 雅弘
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 データ・AI・オートメーション事業部
Data & AI 第一テクニカルセールス
マツダ様の素晴らしい講演の後、2番手としてSPSSを含むデータサイエンスソフトウェアのテクニカル・セールスマネージャーである京田さんが、Modelerのロードマップを紹介。次期バージョンでは「自動化」にフォーカスする予定があり、CADSのスケジューリング機能が強化される見込みだそうです。なお、この機能改善は日本のユーザーの要望が起点となっているとのこと。(素晴らしいですね!)これからも日本のユーザーの声が反映されるように開発に届けてゆきたいと語りました。また、ご自身がBIツールCognos出身で可視化のエキスパートでもあるため、マツダ様がSPSSでダッシュボードを構築した事例を受け、どのようにデータを適切にステークホルダーに届けるのか留意点を含めて整理されました。
抜粋版スライドはこちらからご覧いただけます。
東京ガス様のデータ分析のあゆみと気象データ活用事例
笹谷 俊徳
東京ガス株式会社
デジタルイノベーション本部
デジタルイノベーション戦略部 データ活用統括G
ユーザー事例セッションのふたつ目は東京ガスの笹谷様からの講演です。私自身、IBMのマーケター時代にもお世話になりました古くからのユーザー様です。ご紹介写真は同行した北米のIBMイベントで私が撮影したものです。
笹谷様からは、「エネルギー会社におけるデータ分析の業務実装に向けた歩みと気象データ活用事例」と題し、東京ガス様のデータ活用の歴史と、その一つの事例である気象データ活用をご紹介いただきました。
笹谷様はデータ分析や数理技術を活用し、業務改革や事業の意思決定支援に関わってこられたそうです。東京ガス様のようなエネルギー企業は、燃料やインフラ設備から顧客接点まで幅広く、多種多様なデータが存在し、さまざまなデータ利活用に取り組まれてこられたとのこと。中でも気象データは、需要や設備の異常を捉える重要な資源であるそうです。天気そのものはコントロールできなくても誤差を織り込んだ予報から最大限可能な打ち手が可能なのだと説明いただきました。
また2000年代、2010年代、2020年以降のデータ活用の変化を要求される要素を含め整理していただきました。データ分析に求められる資質が多様化し、個人ではなくチームプレイへと移行し分析結果の持続的な業務実装と維持が重要だと述べられました。
抜粋版スライドはこちらからご覧いただけます。
本田技研工業様が願うユーザー交流の姿と具体的な提言
小川 努
本田技研工業株式会社
デジタル改革統括部 バリュークリエーション部
吉武 雅二
本田技研工業株式会社
デジタル改革統括部 バリュークリエーション部
中川 賢人
日本アイ・ビー・エム株式会社
GBS Advanced Analyticics CoC
ユーザー事例セッションの最後は本田技研工業様。お客様の声などの(定性データ)を的確に解釈し有効に役立てるには数値データ(定量データ)と組み合わせる必要があると判断され、すでに保有されていた自然言語解析ツールIBM Watson Explore(WEX)とSPSSの連携を検討していました。その中で、目をつけられたのが外部プログラムを呼び出しSPSS Modelerで利用するための「カスタムノードビルダー」機能でした。GUIで利用者が簡単にWEXの情報をSPSS Modelerで展開することができるために、例えば「ディーラーへのC S評価は顧客のコメントの中のどの要素によって決定されるのか」をモデリングすることが可能に。またテキストデータの学習とアノテーションを効率化させることにも役立てられているそうです。
カスタムノードの開発手順を紹介、PythonやR連携のための拡張ノードとの比較や使い分けも示していただきました。
その上で、今後SPSSの利便性を高めることはユーザー共通の願いだと強調されました。ユーザーが開発したパーツをコードを秘匿したままで、共有や配布できるとさらにユーザー起点でコミュニティを活性化できると提言をいただきました。
これまで本田技研工業様がIBMの開発チームに機能改善要望をした内容がこちらにまとめられています。voteに協力いただき、日本発信で新機能拡張のムードを盛り上げていければ有り難いとコメントを頂戴しました。
抜粋版スライドはこちらからご覧いただけます。
寸劇「Modeler詰将棋対局」がまさかの高評価
さて、ここまでお客様の活用事例セッションについてご紹介してきましたが、そのほかにもSPSSテクニカルセールスの面々による、お楽しみセッションもござました。SPSSヒモトクブログでは、2020年は「推しノード」、2021年は毎回、例題が提示され次号で解説される「Modelerデータ加工Tips詰将棋ブログ」が連載されています。
なんとSPSSテクニカルセールスの面々が、SPSSユーザーコミュニティを盛り上げるためこのTips詰将棋ブログの実写化!にチャレンジしました。
SPSS技術者4名(河田さん、山下さん、牧野さん、斉藤さん)が全力で寸劇に取り組む様子は「少しはしゃぎすぎでは」とお叱りを受けるかと覚悟していました。しかし終了後のアンケートには「面白かった!」「素晴らしい内容だった」のコメントのオンパレードになりました。(西牧氏談)。
事前の宣伝動画も用意する周到ぶり(西牧氏自作)。こちらもぜひご覧ください。
なお、今回の例題と解説はこちら。なかなか面白い例題で、2人の技術者の技も光っていました。玄人好みのニーズにお応えする春のTech-dayらしい内容でした。
ユーザーコミュニティを通じ、SPSSの価値向上を
執行役員テクノロジー事業テクニカルセールス担当の大久保さんがクロージングの際にも語られていましたが、このイベントでは「愛」といったワードが何度も使われました。SPSSユーザー会という正式な団体は存在しておりませんが、業種によっては情報交換会も開催されています。ユーザーが集い、相互に刺激を与え合うコミュニティが醸成され繋がりを持てると個を超えた力が発揮できるのではないかと感じました。
1968年に誕生したSPSS、すでに誕生から半世紀を超えるロングセラーソフトウェアです。ソフトウェアの寿命としては、かなり最古参レベルのソフトウェアですが、今回のイベントを通じて、 SPSS Modelerを含めたSPSS製品には、皆様のようなまだまだ熱いユーザーの方が多くいらっしゃること、またIBM社員も製品愛をもって皆様に対応していること、SPSSの製品自体もこれからも深化し、進化していくことを実感できるイベントだったかと思います。
今から秋のイベント、そしてこれからのSPSSのユーザーコミュニティの発展が楽しみですね。コロナウィルスで孤独になりがちな分析者の皆さんを、このようなイベントやコミュニティの力で勇気づけ、高めあう世界を皆様と作って行けたらと願っております。
畠 慎一郎
スマート・アナリティクス株式会社
代表取締役
スマート・アナリティクス
著書に「SPSS超入門」「武器としてのデータ分析力」「文系ビジネスパーソンのためのデータ分析入門」
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