SPSS Modeler ヒモトク
【開催レポート】SPSS Modeler秋のオンラインユーザー会2021〜データ活用のための組織と成果について考える〜
2021年11月21日
カテゴリー Data Science and AI | SPSS Modeler ヒモトク | アナリティクス | データサイエンス
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みなさまはじめまして。スマート・アナリティクス株式会社の武田です。
オンラインになってから3回目のSPSS Modeler ユーザー会が、2021年11月5日に開催されました。今回は1048名に参加いただく大盛況。しかも事後アンケートの結果、過去最高の満足度93%の高評価でした。ちなみに「大変満足(5点)」に過半数の53%が回答する極端な分布は一般的なビジネスセミナーではまずお目にかかることはできません。この大人気イベントを運営に関わったご縁からレポートせていただきます。
さて、本題の前に私の紹介を少しだけ。私は1993年にSPSS Japanに入社し、2009年のI BM統合以降を含め20うん年マーケティングやセールスを担当。その後、SPSS時代にマーケティングを担当していた弊社代表畠のもと、IBMパートナーとして今もSPSSの仕事をしています。
2021春のユーザー会レポートでも畠が触れていますが過去の「SPSS Data Mining Day」や「SPSS Open House」はスタッフの手作り感もあって、リピーターの多い自慢のイベントでした。そういった温かさや雰囲気をリモートでも思い起こさせる「SPSSオンラインユーザー会」をひとりのファンの視点で報告してみます。
プレイベント「速習SPSS Statistics」
「ModelerのみでなくStatsも触れて欲しい」というリクエストに応えプレイベントとしてSPSS Statistics(以下Stats)のセッションが用意されました。なんと当日、運営配信を行っていた畠自身がマウスとマイクを握り? Statsのデモを交えながら解説。SPSSの生い立ちから始まったときは、身内ならずとも「そこから?」と不安に思われたかもしれませんが、存外エピソードを楽しんでいるうちに、理解も深まり「Statsってこんな風に役に立つ」とお分かりいただけたのでは。メニューからやるべきことを選んで進めるStatsはModelerとは違い専門的な統計処理や表現をシンプルに進められ、検証や報告書への出力に力を発揮すると説明しました。
プレイベント「始めてみようSPSS Modeler」
プレイベントふたつめは、Stats Guildさんによる「始めてみようSPSS Modeler」。やはりこちらも「初心者でも気楽に見られるものを」という過去の参加者のリクエストに応えたセッションなのですが、、、応えすぎ!の面白さでした。この後触れる恒例の「寸劇」を凌ぐお笑い要素満載で、何度も声を出して笑ってしまいました。くせになる音声合成も、練られた分析シナリオ、わかりやすくて楽しい解説は完璧な仕上がりぶりでした。次回作はあるのでしょうか!?あることを切に願います。
「SPSSという名前で可愛がってください」
三浦 美穂
日本アイ・ビー・エム株式会社
専務執行役員テクノロジー事業本部長
オープニングアドレスにはIBM専務執行役員でソフトウェアを含む製品部門のリーダーである三浦さんが登壇しました。冒頭、IBMはData & AI に力を入れて、SPSSはその主力であると強調。そして「IBMは個別のソフトウェアを統合するのが得意だが、多くのファンがサポートするSPSSは今後も独立してロードマップを予定している」とのことでした。ユーザー会ではこういったマネジメントからの製品ブランドへの信頼の言葉が聞けて毎回安心します。「これからもSPSSという名前で可愛がってください」とファンあってのSPSSだと確認し合うような、そんなメッセージで締め括られました。
顧客分析の教科書と今後問われる要素
清水 聰
慶應義塾大学
商学部 教授
特別講演に登壇いただいたのは、慶應義塾大学商学部教授の清水先生です。清水先生は、消費者行動の著名な研究者でありながら、難解な話をビジネスパーソンにも分かり易く説明することで知られています。20年来SPSSをひいきにされ、セミナーや勉強会でお馴染みのユーザーも多いはずです。顧客分析から有意義な結果を得るには、基本のステップと作法が必要で、それを無視してツールの機能に任せても徒労に終わる。また、ついModelerで高度なことをやりたくなるが、それは現場に伝わらない。単純な基準をあえて採用し優良顧客を定義して丁寧に集計を繰り返して観察しないと施策に繋がらないと語られました。さらに顧客分析を段階に分け、具体例を示しながらSPSS Modelerがどのような分類や予測に結びつくかを解説いただきました。
そして、企業から一方的に一部の優良顧客とコミュニケーションする時代は終わり、S N Sによって顧客間で影響を与え合う今、ライフタイムバリューの捉え方を見直すべきだと教えてくださいました。クチコミは制御不能と思われがちだが、情報感度が高い顧客を発信履歴から見つけて囲い込むのが肝要だと述べられました。
レスキューナウ様の停電予測の自動化検証
朝倉 一昌
株式会社 レスキューナウ
代表取締締役社長
林 啓一郎
株式会社A I T
開発事業本部 ソリューション戦略第2部 次長
ご自身達の危機管理情報センターをバックに登壇されたのはレスキューナウの朝倉様と、プロジェクトをサポートされたAITの林様です。レスキューナウ様では日頃から危機管理情報を気象データや道路交通情報と合わせて収集、一元的に管理しクライアントに配信するサービスを手がけておられます。今回紹介された事例は、国内の停電の日時と規模を予測する取り組みです。具体的には3年分の対象地域の降雨量・降雪量・風速などの気象データ(TWC)から特徴量を作成し予測モデルを構築、SPSS CADSで自動化、配信する仕組みを作られました。CADSの自動化にはPythonによるデータ収集やDriverless AIのスコア結果も連携するJOBがあることやCADS Deployment Portal機能によって特定地域の必要な情報のスコアリングがWebブラウザのみで完結している例をデモンストレーションいただきました。気象データから停電を予測するだけでも凄い!にもかかわらず、業務実装のイメージまで示していただきとても参考なりました。
寸劇「テレビ通販きょうだ」
2021年春に寸劇「詰将棋」の高評価に気を良くして作成された2作目。
宣伝動画はまだイベント案内サイトからご覧いただけますので、是非ご覧ください。京田さんの名演技や、SPSSの技術メンバーの役者ぶりにも磨きがかかって引き込まれてしまいます。よく見ると素晴らしい機能を、しれっと紹介していて「これでいいのか?」と逆に心配をしてしまいます。それはさておき、この手作り感とホスピタリティにSPSSらしさを感じ、ほっとします。
JR東日本流:分析人材の作り方
渋谷 直正
東日本旅客鉄道株式会社
MaaS・Suica推進本部
データマーケティング部門 担当部長
渋谷様は、現在J R東日本が保有するSuicaの利用履歴(個人情報は使用していない)をマーケティングに活用することに取り組まれているとのこと。その中で分析人材の拡張や育成を試みており、特にデータを利用できるビジネスパーソンの充実を目指しているのだそうです。そして、業務課題を紐解いてデータで解決できる人材を増やすことが企業の競争力を高めると主張されました。このシチズンデータサイエンティストなる人材が、専門家に予測分析を要求、施策適用の誘導を目指すのだとも。数学やプログラミングは専門家には重要な素養だが、広く組織内のデータを用いて現場の経験を価値に変換できるビジネスパーソンを拡張させる取り組みをしているとのことでした。
現在DX推進やデータ活用人材育成に関わられる方へのアドバイスとして、組織にどういう人が存在するのかを見極め、それぞれどのレベルまで成長させるのかを設定すると良いと教えてくださいました。
データドリブンなモノづくりを支えるSPSSの利活用
齊藤 隆雄
日本ガイシ株式会社
DX推進統括部 製造DX推進部長
日本情報通信パートナーセッションでは、日本ガイシの齊藤様が話されました。日本ガイシは自動車部品や半導体・ケーブルに必要なセラミックスを提供することで知られていますが、企業変革の推力としてDXが位置付けられ齊藤様は製造DX推進をリード。データサイエンス専門のチームを組織して、全社人材育成をされているのだそうです。
具体的なデータ活用の事例として設備から得られるIoTデータを用いて、時間稼働率や性能稼働率を上げるためのトラブルの要因分析を示されました。ここではSPSS Modelerの決定木で切り口を見つけてB Iで見せる化しているそうです。実際には、設備のデータは時間を頼りに紐付けをしないと適切な分析ができないなどのテクニックが要求され、意味のある予測をするには設備そのものの知識が必要なのだそうです。そういったあるべき素養を見極めながら、いくつかのレベルに応じてデータドリブンなモノづくりを支えるDX人材の育成を推進されているそうです。
組織と成果を考えるパネルディスカッション
すでに講演された渋谷様と齊藤様にSPSSテクニカルセールス6名を加えたメンバーでのパネルディスカッションは講演を振り返る形式で始まりました。
印象的だったのは渋谷様からの「ツールは大切だが問題を解決するのはモチベーション」という発言でした。数学やプログラミングは障壁になるので、まずは分析の持つ面白さを、ビジネスパーソンと共有するのが良いというアドバイスです。また成果に関しては齊藤様から、業務担当者との信頼関係を築いて初めて施策に活きるので、分析メンバーも現場に何度も足を運ぶことが大切だとコメントがありました。現場が施策を受け入れない限り、成果はないということなのだと再認識しました。そして、本論そのものではありませんでしたが嬉しいニュースは、Modeler書籍の第2弾が来春5月のユーザー会にあわせて刊行されるとのこと。パネルディスカッションを聴きながらコミュニティの持つパワーが、またSPSSというブランドに還流されていることを実感しました。
クロージングアドレス
塩塚 英己
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 データ・AI・オートメーション事業部長
バイスプレジデント
クロージングの挨拶は、データ・A I・オートメーション事業の責任者である塩塚さんから「身が引き締まる」という言葉で始まりました。塩塚さんは、現職に着任されて2ヶ月、イベントを通じ多くのユーザー様・パートナー様に支えられていると実感されたとのこと。このSPSSのコミュニティをみんなで育んでゆこうといった思いが伝わってきました。そして、次回5月に予定されているユーザーイベントで再会したいと述べられ締めくくられました。
SPSSの旅をユーザーの皆様と一緒に
冒頭にもありましたが、ユーザー様とSPSSのイベントの歴史は古く、長く続けられてきました。しばらくそれがかなわない時期もありましたが、今また形を変え開催することができましたのも、ひとえにユーザーの皆様のおかげです。あらためて感謝を申し上げます。SPSSの旅は、まだまだ続きます。これからもサポートをいただければ幸いです。
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武田 千夏
スマート・アナリティクス株式会社
ソリューション営業部 部長
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