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ServiceNow x IBM、テクノロジーの融合で地域の特色を活かしたDXを推進

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ServiceNowと日本IBMグループでは、両社のテクノロジーを融合させ新たな価値を提供することで、日本の地域社会をより豊かにする取り組みを戦略的に進めています。
2024年12月からは「IBM地域ServiceNow人財育成プログラム」(*1)の提供を開始し、ServiceNowをアプリケーション基盤として活用したローコード開発技術者の育成と地域DXの推進に力を入れています。
地域で不足するIT技術者の育成を通じて、地域の魅力や住民の利便性を高める地域DXをどのように加速させるのか、ServiceNow Japan合同会社 執行役員社長 鈴木正敏氏、日本アイ・ビー・エム株式会社 コンサルティング事業本部 エグゼクティブ・アーキテクト北本和弘、日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社 代表取締役社長 井上裕美が鼎談します。

 

鈴木 正敏氏
鈴木 正敏(すずき まさとし)氏
ServiceNow Japan合同会社 執行役員社長
日本オラクル株式会社を経て、SAPジャパン株式会社でバイスプレジデントとして、同社のプラットフォーム事業、金融、通信、公共、公益インダストリー部門の事業責任者を歴任。その後、株式会社シマンテックの執行役員社長を経て、2019年12月からUiPath日本法人の取締役兼最高収益責任者として、同社の日本事業全体をリードし事業成長と組織変革の両方を成功に導きました。2023年ServiceNow Japan合同会社 執行役員社長就任。

 

北本 和弘
北本 和弘(きたもと かずひろ)
日本アイ・ビー・エム株式会社 コンサルティング事業本部 アソシエイト・パートナー エグゼクティブ・アーキテクト
日本アイ・ビー・エムにてビジネスプロセスマネジメントやワークフローを中心に業務自動化のソリューションを活用したシステム構築に携わる。2021年よりServiceNowソリューション責任者としてServiceNowプラットフォームを活用したお客様の業務変革を支えるソリューション導入を推進している。

 

井上 裕美
井上 裕美(いのうえ ひろみ)
日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社 代表取締役社長
日本アイ・ビー・エム入社後、官公庁業界を中心にお客様のコンサルティング、システム開発、保守運用に携わる。官公庁業界のリーダーを経て2020年日本アイ・ビー・エムデジタルサービス代表取締役社長就任。IBM地域DXセンターの開設と拡充を通じて、地域でのDX人財創出と共創に力を入れている。
2022年日本アイ・ビー・エム取締役就任。

 
目次

  1. 豊かな社会の実現のためにServiceNowのソリューションが提供する価値とは?
  2. ServiceNow x IBMのテクノロジーの融合で更なる価値の向上を実現する
  3. IBM地域ServiceNow人財育成プログラムへの思いと地域のIT技術者への期待
  4.  

    1. 豊かな社会の実現のためにServiceNowのソリューションが提供する価値とは?

     
    IBM井上: ServiceNowと日本IBMグループは、両社のテクノロジーを融合させ、日本の地域社会をより豊かにするための取り組みを戦略的に進めています。ServiceNowにおいては、特にどのような価値を提供できるとお考えでしょうか。
     
    ServiceNow鈴木氏: ServiceNowは20年前に創業したグローバル企業で、主にデジタルワークフローや業務プロセス、データシステムをつなぐプラットフォームを企業や官公庁、地域の自治体の皆様に活用いただいています。
    業務の一連の流れをプラットフォーム上で構築することで多岐に渡る領域の業務を効率化できる点に最も価値を感じていただけるのではないかと思います。

    さまざまな企業経営者の方とお話しする中で、日本は今、経済復興のチャンスだと感じています。デフレからインフレ環境に移る中で、地政学的にも諸外国からの投資先としても、日本は非常に注目されています。
    このチャンスを活かすためには、労働生産性の低さなどの日本経済の課題を解決しなければなりません。業務効率化や生産性の向上はServiceNowの得意とするところですから、われわれのテクノロジーが社会に貢献できる大きな機会だと思っています。

    ただ、いざ課題解決に着手しようとしたとき、今の日本はものごとを悲観的に捉えすぎてしまう傾向があると感じています。ネガティブな先入観があるために、本来の能力や強みを存分に発揮できない状況に陥っているのではないかと思うのです。
    せっかく社会に良いニュースや経済復活の兆しがあっても、どうせうまくいかないと自分たちで可能性を潰してしまうようなことです。
    日常でも、ビジネスの話をする時に、日本のデジタルランキングが何位でGDPがこうだから・・・とつい課題から入りがちではありませんか。もちろん正しく課題を認識することは大切ですが、ネガティブな発想が先行してしまうと先に進めなくなってしまいます。
    そんな時は、見方を変えてポジティブに捉えなおすと、面白い発想が出て、日本の本来の強みをもっと発揮できるようなことにもつなげられると思うのです。
     

    IBM井上: 発想の転換が必要なのですね。確かに、ネガティブな状況や感情の中にあると、考え過ぎるあまり悪い結末を想像してしまったり、身動きが取れなくなってしまうことがあります。できない理由を挙げ始める人をよく見かけますが、そこから新たな状況が生み出されたり、好ましい方向へ進むとは思えませんね。

    日本は長く経済が停滞していたことで社会全体に閉塞感が漂っていた時期があったように思います。困難に直面したときこそ、視点を変えてみることが必要ということですね。
     
     
    ServiceNow鈴木氏: そう思います。今の日本には多くの課題がありますが、一方で、われわれは最新のテクノロジーも持っています。捉え方次第だと思うのです。例えば、日本には深刻な人口減少の課題があります。だからこそ圧倒的にAIやデジタルテクノロジーの必要性があり、それはむしろチャンスと捉えることができます。

    多くの職場でAIや最新のデジタルテクノロジーが活用されるようになれば、少ない労働力でも効率的に生産性を高めることができますから、働く人々は、その人にしかできない業務や、より付加価値を生む仕事に集中できるようになりますよね。人も企業も本来持っている力を存分に発揮することができるようになります。
    ServiceNowは、デジタルプラットフォームやAIなどのテクノロジーを使うことで、社会の中にある悲観的な思い込みやバイアスを解き放ち、日本が本来持っている能力と可能性を最大限に引き出していきたいと考えています。

     

    2. ServiceNow x IBMのテクノロジーの融合で更なる価値の向上を実現する

     
    IBM井上: さまざまなテクノロジーがある中、とりわけAIの活用については、ServiceNowでも力を入れて取り組んでいるところだと思います。両社のテクノロジーとAIの活用がどのような価値向上につながるか、お考えを聞かせていただけますか。
     
    ServiceNow鈴木氏: 昨年の後半頃から、AIの活用について頻繁に話題に上るようになりました。ただ、聞こえてくるのはいい話ばかりでなく、生成AIを企業活動に活かし切れていないような話も耳にします。つい先日もある経営者の方から、全社員にChatGPTを使用できる環境を整えたものの、実際どこまで経営に寄与するのか成果が見えない、というお話を聞きました。
    企業においてAIの価値を十分に享受するには、いかにうまくAIを業務に適用できるかが大きなポイントになります。AIを活用する場面はさまざまですが、一般には社員が個別の業務に生成AIを使用するケースと、一連の業務をまとめたワークフローや業務プロセスにAIを適用するケースの2つが考えられます。

    ServiceNowは、後者のように生成AIをデジタルワークフローに組み込むことで、業務プロセス全体にAIによるビジネス価値を生み出します
    もう社員ひとりひとりが頑張って生成AIの機能を使わなくとも、AIが組み込まれたServiceNowのプラットフォーム上で業務を行うことで自然と生成AIの価値を享受できるのです。
    プラットフォームをお客様に提供する際には、自社の生成AIだけでなく、IBMが提供するwatsonxのAIテクノロジーと連携することも可能です。ServiceNowとIBMのテクノロジーが組み合わさることで相乗効果が生まれ、お客様により大きな価値をお届けできるようになると考えています。
     

    IBM北本: AIを使うという意識をせずにAIが業務遂行をサポートしているという状態は、ServiceNowのIT Service Management(ITSM)などの製品は既にその状態にあるのだと思います。まだ先の話、というわけではなく現実のものとなっている印象ですね。

    またServiceNowとIBMのテクノロジーの融合の観点で見てみると、業務プロセス全体にAIを適用する際に、ServiceNowのプラットフォームがお客様の固有の業務の間をつなぎ、業務に応じた基盤モデルを活用したwatsonxのテクノロジーがより専門性の高い業務の遂行を支える、といった形での活用が考えられます。
    両社のテクノロジーをシームレスに連携することによって、お客様がAI活用を意識することなしに業務を円滑に遂行することができている、それが当たり前の姿になるのだと思います。

     

    3. IBM地域ServiceNow人財育成プログラムへの思いと地域のIT技術者への期待

     
    IBM井上: 先ごろ発表したIBM地域ServiceNow人財育成プログラムでは、広島を中心にServiceNowのローコード開発や生成 AI のスキル習得のオンライン研修コースを無償で提供しています。地域でこのような最新のITスキルを学ぶ方々への期待をお聞かせいただけますか。
     
    ServiceNow鈴木氏: そうですね、先ほど述べましたように、日本はこれからチャンスを掴んで経済的に活気づいていくときです。首都圏だけでなく日本中の地域においても経済的な競争力を高めていく必要があると思っています。
    経済成長とデジタル技術は切っても切れない関係ですから、デジタル技術やデータを活用できる技術者がいま地域で非常に必要とされています。IBM地域ServiceNow人財育成プログラムで学んだ皆さんには、IT技術者として地域の職場でデジタル技術を率先して活用し、DX推進の担い手になっていただきたいですね。
     
    今回プログラムを展開した広島は日本の中核都市の1つであり、地域DXが積極的に進められている地です。そうした環境でServiceNowのローコード開発や生成AIについて学んだ技術者が活躍するようになれば、地域全体の業務効率化と労働生産性の向上に着実につながっていくものと期待しています。
     

    IBM北本: 地域においては、都市部以上にIT技術者が求められていると常々感じています。技術者不足のボトルネックを少しでも解消するために、今回のIBM地域ServiceNow人財育成プログラムではローコード開発に着目しました。
    ローコード開発では、プログラミングの経験があまりない人でもローコード開発プラットフォームを活用することで十分にシステム開発が可能ですから、経験やレベルに関わらずIT技術者の裾野を広げることができます。
    また、新たなサービスやシステムを提供するまでの期間が短くなることで、地域企業や自治体などで迅速にサービス向上につなげられるのも魅力です。
    初めてITを学ぶ方に馴染みやすいだけでなく、既にIT技術者として従事している方にとっても、ローコード開発スキルをDX推進の1つの道具として習得することで、活躍の場がさらに広がると思います。これから多くの皆さんにこのプログラムを有効活用してもらい、地域でのDX推進に役立ててもらえると嬉しいです。
     

    IBM井上: 地域社会を豊かにするためには、やはり地域のDXを盛り上げていく必要がありますね。これからの地域DXはどのように加速させることができるとお考えでしょうか。
     

    ServiceNow鈴木氏: 地域DXの加速にはポイントが2つあると思います。
    1つ目は、自治体の能力の向上です。高齢化が進む地域においては行政サービスの充実や向上がとても重要です。しかし残念ながら、一部の行政機関では組織の縦割りや紙文化が残っていたりしますよね。1つの手続きのためにいくつもの窓口を回ったり、1日で完結せずに何度も役所に足を運ぶことになったりと非効率なことが今も起こっています。サービスの受益者たる市民からすると、なかなか満足する状況にはないのではないでしょうか。
     
    こうした課題は、デジタルテクノロジーを使うことで解決できます。例えば、デジタルワークフローを活用すれば分断された業務を整流化し、介在している紙をデジタル化することができます。
    多岐にわたる行政手続のデジタル化や業務の効率化を進めることで、住民の利便性や行政サービスは大きく向上するはずです。サービスの提供を受ける市民にとっては、エクスペリエンスが向上し、便利さや暮らしやすさを実感できるようになると思います。

    2つ目は、地域に根ざした企業の能力の向上です。
    とかく新しいテクノロジーは、東京などの都市部で始まり、地域に行き渡るのにはタイムラグが発生しています。本来デジタルテクノロジーは地理的・時間的な制約を極小化できるはずなのに、実際にはそうはいかない。地域にIT技術者が不足しているため、新しいデジタルテクノロジーの導入や定着がどうしても遅れてしまうのです。
    もし地域にIT技術者が増えて、都市部と同じスピード感で新しいテクノロジーを職場に取り入れられるようになれば、業務改善が進み、ビジネス課題の解決スピードが上がります。地域の企業が元気になれば、新たな事業創出や雇用の機会が生まれ、地域全体の経済が成長する好循環が生まれるのではないでしょうか。
     

    IBM井上: 確かにそうですね。デジタル技術を使った業務効率化や生産性の向上は、自治体においても地域の企業においても、さまざまな課題の解決につながります。結果として、自治体の場合は地域住民の利便性向上や職員の方々の業務の負担軽減になり、そこに住む人々の暮らしがより豊かになりますね。
    企業の場合には新たなビジネスや雇用機会の創出が実現できると思います。

    地域社会を豊かにするDXを加速させるには、組織や職場でデジタル技術に精通した人材をいかに育成、確保できるかが鍵となりますが、IT技術者を育成するには多くのコストと時間がかかることもあり、地域の中だけで考えていてはなかなか進まないのが現状です。

    そうした背景があって、今回ServiceNowとIBMがIBM地域ServiceNow人財育成プログラムの無償提供を開始したわけですが、講座がe-Learning中心ということもあって、広島だけでなく国内外のいろいろな地域からたくさんの方が受講しています。
    業務改善につながるIT技術や生成AIのスキルを身につけて、自分の住む地域で活躍したい、いま働いている職場をより良くしたい、という目標を持って学んでいる方が多く、こちらも身の引き締まる思いです。

    鈴木様は、地域に対してどのような思いを持っていらっしゃいますか。思い入れのある地域などがあればお聞かせください。
     
     
    ServiceNow鈴木氏: 私は故郷が静岡県沼津市です。今も両親が住んでいます。私が幼少期を過ごした頃から街並みはだいぶ変化していますが、大きな漁港があって、海産物がとても美味しいことは昔も今も変わりません。

    港のあたりはすっかり近代化されて、観光客も地元の人も集う場としてとても発展しています。

    そこで思うのは、地域の強みを活かして行くというのが、これから非常に重要になってくるのではないか、ということです。なんでも首都圏や都会に近づけるということではなくて、その土地が持つ特色や風土、カルチャーを大切にしながら地域が発展して行くと、日本の国力が全体として上がっていくと思うのです。
     
     
    IBM井上: そうですね、日本のどの地域にも特徴があり、素晴らしい魅力に溢れています。

    デジタル技術は社会課題の解決やビジネス創生に寄与することはもちろんですが、各地域が持っている魅力を引き出し、向上させ、日本中につないでいく力を持っていると思います。
    ServiceNowとIBMは両社のテクノロジーと強みを融合させ相乗効果を発揮しながら、AIをはじめとする最新のテクノロジーで地域が抱える社会課題の解決やビジネスの創生に引き続き取り組んでいきます。

    また、地域に不足するIT技術者を育成し、その土地の特色と魅力を活かした、より豊かな地域社会づくりのご支援にも力を入れていきたいと思います。
     
     
     
     
    脚注
    *1: IBM Newsroom 「ServiceNowをアプリケーション基盤として活用したローコード開発の技術者を育成し、地域ビジネスの活性化を推進する「IBM地域ServiceNow人財育成プログラム」を提供開始」


    日本アイ・ビー・エムデジタルサービス(IJDS)採用情報

 
 


ijds author
文・写真:加藤 智子 
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス(IJDS)事業企画推進 ラーニング&ナレッジ担当

 

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