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【PMキャリアカフェ】プロジェクトの幸せのためにPMが取り組むこと
2024年10月09日
カテゴリー IBM Consulting
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目次
はじめに
プロジェクトの幸せのためにPMが取り組むこと
① メンバーがプロジェクトで成長を実感できる目標やしくみを作る
② 情報は可能な限りオープンにしてメンバーの視野を広げる
③ 困難な状況でも「チャレンジを楽しむマインド」をチーム全員が持つ
④ 問題が起こった時は、これからどう立ち向かうかに焦点を当てる
おわりに
はじめに
―プロジェクトマネジメントは、全ての社員が身につけるべきコア・スキル
近年、多くの企業や自治体がデジタル・トランスフォーメーション(DX)に取り組んでいます。IT関連市場規模の拡大に伴い、ITプロジェクトが増加する中、AIをはじめとした先端技術を扱うプロジェクトや複雑で難易度の高いプロジェクトも急速に増えています。
その一方でITの人材不足は年々増加し、とりわけプロジェクトを円滑に進めQCD(クオリティー、コスト、デリバリー)を適切に管理するPMの不足が深刻化しています。
前作でも述べた通り、日本IBMグループでは、プロジェクトマネジメントを「職種にかかわらず全ての社員が身につけるべきコア・スキル」と位置付け、PM職でない社員に対してもプロジェクトマネジメントのスキル習得を推進しています。
社内にはプロジェクトマネジメントを体系的に学ぶ研修コースが豊富に用意されているほか、現役のPMからさまざまなテーマでプロジェクト事例や体験談を聞く「PMキャリアカフェ」が社員主導で開催され、毎回多くの社員が参加しています。これまで開催した中から、今回はプロジェクト現場での心理的安全性やメンバーが安心して幸せに働くための取り組みを抜粋して紹介します。
プロジェクトの幸せのためにPMが取り組むこと①
“メンバーがプロジェクトで成長を実感できる目標やしくみを作る”
井上: 昨今、組織やプロジェクトでの「心理的安全性」を保つことが、チームの生産性や個人のモチベーションの向上につながるという考え方が広がっていますね。
メンバーが安心して自分の意見を述べることで、多様な意見が活発に挙がるようになったり、新しいアイデアや質の高いアウトプットが生まれやすくなる、ということだと思います。
また心理的安全性のある職場は、ひとりひとりが「幸せに働くことができる環境」と捉えることもできます。毎日の生活で大きな割合を占める働く時間が、誰にとっても幸せで充実したものであってほしいですよね。
そのように考えると、プロジェクトを心理的安全性のある場所にすることは、PMとしてとても大切な役割だと言えるのではないでしょうか。
さまざまな業界のITプロジェクトでPMを経験してきた玉置さんは、プロジェクトの心理的安全性を保つために、どのようなことに取り組んでいますか。
玉置: 私が大切にしているのは、プロジェクトメンバーや関係者とビジョンや目的を共有することです。メンバー全員が同じ目標をめざして進むことで、働くうえでチームの一体感が自然に生まれます。チームの一員であるという自覚は、個人のモチベーションの向上や、心の安心にもつながりますね。
また、これは個人的な意見ですが、プロジェクトは成功させて終わるだけではあまり面白くないと思っているんですよ。プラスアルファの成果として、プロジェクトに参画した全員が成長を実感できるプロジェクトをめざすようにしています。
どんなプロジェクトでも参画している間は苦労が多いものですが、プロジェクトをやり終えたとき「自分は成長できた」と感じられたら嬉しいですよね。もっとスキルアップしたい、成長したいという意欲が生まれるのではないでしょうか。
そのため、新しいスキルの習得や少し難しい仕事へのチャレンジなどメンバーが成長できる仕掛けを、プロジェクトの計画段階から組み込むようにしています。
筧: とても共感します。プロジェクトが佳境のとき、どのメンバーも歯を食いしばって実によくやってくれます。でも見ていると、どんなに忙しくとも、新しいことにチャレンジする要素があると、さらに頑張るパワーがチームの中に湧き起こることに気づきました。
私のチームでは、生成AIなど新しい技術をプロジェクトで使っていこうと試行しているところですが、残業など度外視して、みんな一生懸命このチャレンジに取り組んでいます。
意識的にチーム全体で成長できるような目標を掲げることは、メンバーのモチベーション向上に大きな効果があると思います。
井上: お二人とも、プロジェクトの過程でメンバーが成長できるような取り組みを行っているのですね。
プロジェクトメンバーが成長を実感できることで、仕事に対するモチベーションや自己効力感が向上します。さらに、「次はもっとがんばろう」「経験したことがないことにも挑戦してみよう」など、次への成長の意欲につながりますね。
こうした成長実感から生まれるポジティブな連鎖を繋げていくためにも、PMはメンバーの成長の機会をプロジェクトの中で積極的に作り出していく必要があります。
プロジェクトの幸せのためにPMが取り組むこと②
”情報は可能な限りオープンにしてメンバーの視野を広げる”
井上: 筧さんは1つのお客様のプロジェクトを長期間担当していますが、プロジェクトメンバーからの信頼を維持するために、どのようなことを意識していますか。
筧: お客様と長くお付き合いさせていただくと、PMとしていろいろな情報を受け取ったり、お客様が持っている視点や考え方を直接伺うことができます。得られた情報は、プロジェクト内で可能な限りオープンにするようにしています。
プロジェクトメンバーが何かを検討したり判断したりする際の材料のほとんどは、プロジェクト内にある情報です。最新の情報やお客様の意図がオープンになることで、視野が広がりますし、お客様にとってより良い判断が下せるようになります。成果物の品質向上の点でもプロジェクト内の信頼感の観点でも、良い効果があると思います。
井上: プロジェクトにおいて情報が積極的に共有されると、メンバーは不安や疑問を抱えることなく、自分の責任を果たすことに集中できますね。
チームとメンバーの士気を高め責任感を育むことにもつながるように思います。
また「視野を広げる」という点にも共感します。
私もかつてそうでしたが、トラブルが起こった時は、問題を解決しようと必死になるあまり、自分の視野が狭くなっていたように思います。目の前のことしか見えなくなると、一層つらくなってしまいますよね。もしあの時、「いま自分は視野が狭くなっているから、一度俯瞰して見てみよう」と考えることできていたら、肩の力が抜けて違う発想が生まれていたかもしれません。
視野を広げ、ものごとを客観的に捉えることは、どのような仕事をするうえでも役立ちます。日頃から自分の視野を広げることを意識していきたいですね。
プロジェクトの幸せのためにPMが取り組むこと③
”困難な状況でも「チャレンジを楽しむマインド」をチーム全員が持つ”
井上: 現在のビジネス環境はVUCA(ブーカ)の時代と言われ、不確実性が高く先の見えない状況が続いています。さらにコロナ禍以降、メンバーが離れた場所で作業することが当たり前になりました。そのような環境下でのプロジェクトの幸福を考えたとき、PMとしてどのような働きかけが必要でしょうか。
玉置: そうですね、メンバーの「心のあり方」がとても大切だと私は思います。私が担当しているお客様も、新型コロナウイルス感染拡大による影響を非常に大きく受けました。
当時、業界全体のビジネスがどんどん厳しくなり、プロジェクト全体が重苦しい雰囲気に包まれた時期もあったんですが、そんな中で私が思い至ったのは、「危機的状況の中だからこそ生まれる変革や成長のチャンスがあるはずだ」ということでした。
ビジネスが安定している時に成果を出すのはもちろん喜ばしいですが、困難な状況でチャレンジして成果を出せれば、さらに大きな達成感や喜びが得られるはずだと思ったんです。
そこでメンバーに、外的な環境変化はもちろんあるが、どのような状況であっても「変化は自分たちが起こすもの、困難やチャレンジを楽しむマインドを持つことが大切」と繰り返し話し、私も実践しました。
もちろん簡単なことではありませんが、この考え方がプロジェクトに浸透したことで、誰もが困難に屈せず新しい変化に果敢に挑戦したり、どんなことにも楽しみや喜びを見出しながら仕事に向き合うことができたと思います。
コロナ禍が明けた今、プロジェクトではお客様と一緒に10年後、15年後のありたい姿や進むべき方向性を議論しながらロードマップを描いています。
ビジネス環境がかつてないほど複雑に変化している時代ですから、お客様のビジョンを実現する道筋を立てるのは容易ではありませんが、私を含め全員が非常に熱心に取り組んでいます。これも先ほど述べた「変化は自分たちが起こすもの、困難やチャレンジを楽しむ」というマインドが定着したことで、自分たちならできるという手応えと自信を持つことができたからだと思いますね。
井上: コロナ禍のあいだ、プロジェクトの皆さんにも大きな負担がかかっていたと思います。そのような状況下で、リーダーが率先して「チャレンジを楽しむマインド」で何事にもポジティブに取り組んでいる姿を見せたことで、メンバーの皆さんが、よし一緒にやっていこう、と前向きな気持ちになれたかもしれませんね。困難に直面したとき、PMが「心のあり方」を示し自ら実践してみせることは、メンバーに勇気を与えチームを強くするように思います。
プロジェクトの幸せのためにPMが取り組むこと④
”問題が起こった時は、これからどう立ち向かうかに焦点を当てる”
井上: かつてチームが対面で働いていた頃は気兼ねなく何でも話せていたのに、リモートワークが浸透した今は、チャットやメールなどのツールで相手の邪魔にならないよう遠慮がちに伝えることが増えたように思います。プロジェクト内のコミュニケーションで工夫していることはありますか。
筧: 私のプロジェクトにはもともと複数の拠点があったので、早くからリモート開発が定着していたんですが、それでもやはり、全員が一拠点にいる場合と同じようにはいきません。離れた場所で起こっていることを正確に把握するのは本当に難しい。またリモート環境で顔が見えない分、悪い情報ほど言い出しにくい雰囲気も生まれがちだと感じています。
一般に、人は相手に対して悪い情報を伝えることを避けようとする傾向があるそうですが、物理的に離れた環境では一層話すのをためらってしまうことが多いかもしれません。
そのような中では、言いにくいことであっても話しやすい雰囲気を、PMが意識的に作り出さなければならないと思っています。
特に私が気をつけているのは、何か問題が起こった場合には、なぜそうなったのかと追求するのではなく、これからどのように問題に立ち向かうかに焦点を当て、解決策を一緒に考えることです。
同じ失敗を繰り返さないために、原因は明確にしますが、それはあくまで次に繋げるためであって、責めるためではないことも当事者にしっかりと伝えます。
こうしたコミュニケーションを積み重ねた結果、問題が起こっても解決の手助けがある(なんとかなる)、それなら自分で抱え込まないで早く報告したほうがいい、という意識がプロジェクト内に広がったように思います。
自分自身を振り返ってみても、問題が起こった時に自分だけで頑張ろうとして、かえって状況を悪化させてしまったことがありました。その経験から、今は早い段階で「自分でできること/できないこと」を判別して、できないと思った時には躊躇せず上位マネジメントに相談するようにしています。
おわりに
ここまで、現場のPMがプロジェクトの心理的安全性を保つために実践している例を述べてきました。プロジェクトの心理的安全性というと堅苦しく聞こえますが、「メンバーが安心して幸せに働けるようにするには?」と考えてみると、PMとしてできることがたくさんあるように思います。
ここで紹介した4つの取り組みの例は、すぐに始められることばかりです。
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① メンバーがプロジェクトで成長を実感できる目標やしくみを作る
② 情報は可能な限りオープンにしてメンバーの視野を広げる
③ 困難な状況でも「チャレンジを楽しむマインド」をチーム全員が持つ
④ 問題が起こった時は、これからどう立ち向かうかに焦点を当てる
これらが皆さんのプロジェクトの心理的安全性を保つヒントになれば幸いです。
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