IBM Sustainability Software
IoTをスタートする際の3つのP – PoC、パイロット、プロダクション
2019年03月29日
カテゴリー IBM Sustainability Software | プラットフォーム | 技術動向・トレンド
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IoTの取り組みをスタート際には、通常3つの選択肢があります。この記事は、その3つの選択肢「概念実証(PoC)」「パイロットプロジェクト」「本番実稼働(プロダクション)」の選び方や、進め方に対してアドバイスすることを目的としています。
なお、日本では「PoC」と「パイロットプロジェクト」という言葉が混同されて用いられることも少なくありませんが、当記事においては以下の認識で用います。
- PoC(Proof of Concept、ピーオーシー、ポックとも)とは、新たな概念や理論、アイデアなどを実証し、商用化や正式サービス化し得るかの適応可能性を確認するための概念実証や検証行程のこと。主な目的は試作開発を先に進めるかの判断や、必要となる要素・仕様の確認や洗い出し。
- パイロットプロジェクトとは、機能範囲や対応範囲、ユーザー数などを制限して実行する先行的/試験的プロジェクトのこと。主な目的は全面展開へ進めるかの可否判断や、プロジェクトの有意性や見直しの判断。パイロットプログラムと呼ばれることも。
Watson IoT事業部が発足した2015年以降、IBMはたくさんのお客さまとIoTプロジェクトを実施してきました。それらのプロジェクトを通じ、私たちは新しいビジネス価値がIoTソリューションからどのように生まれ、構築され、展開されるかの共通パターンを見出してきました。
ガートナー社が2018年版のCIO調査で発表した数値によれば、IoTに投資した企業はわずか12%です。さらにその24%が短期間のプロジェクトに過ぎません。つまり、大規模なIoTプロジェクトに実際に取り組んでいる企業はまだほんの一部だということです。
多くの企業は、IoTを自社のデジタル・トランスフォーメーションに組み込むことに苦労しており、ビジネスとの連携は今も主要課題として残っています。
IoTで解くべきビジネス課題を確定させるために
この25年間のインターネットの進化を振り返ると、「開発と統合の歴史」と呼べるのではないでしょうか。
紙でやり取りされていたメモなどは電子メールとなり、相手がどこにいようと瞬く間に世界中に届くようになりました。ITシステム間も同様で、データフォーマットの違いや処理速度の違いを超えて、データがシステム間を瞬く間に流通しています。開発と統合がビジネスの効率性と生産性を向上させてたのです。
IoTの世界でも、ほんの数年前までは考えられなかったスピードで同じことが進んでいます。
センサーやデバイスには小さなコンピューティングシステムが組み込まれ、そこで計測されたデータを巨大なデータやITシステムと組み合わせることで莫大なビジネス価値を生みだしています。
とは言え、IoTの世界では、開発にも統合にもまだ多数の改善の余地が残っています。
今後はIoTのデバイス、ゲートウェイ、そしてプラットフォーム間でも、ITシステム間で行われたアプリケーション間の互換性や標準化が進み、より迅速に、かつローリスクでスタートできるようになっていくでしょう。
一方で、技術的な問題の解決が進んでも残り続けるのがビジネス面での課題です。こればかりは取り組む各社が解消していかなければなりません。
テクノロジーへの投資は生産性や効率、顧客体験を上げ、収益を上げていくでしょう。でも、その効果をどのように検証し評価するのか。その方法は確立していません。その上、デバイスやセンサーの種類や数が急増し、活用範囲も急速に拡大する中、次のような要素が評価を一層困難にしています:
- 継続発生費用: ソリューションの運用、IoTデータの保存、デバイスのメンテナンス
- データ可視性がビジネスにもたらす真の価値と影響
PoCでは「低コストで早く失敗する」ことが重要!
PoCは、概念実証というその訳語が示すように、「何が上手くいき、何がうまくいかないのか」「本当の利点/利益は何なのか」を見極めやすく、上記2要素の評価に適したものです。
何が真の価値なのかを見極めようという状況においては、何を成功と定義するかが難しいものですが、そうした状況に最適なアプローチがPoCです。「いかに低コストで、いかに早く失敗するか。それがPoCでは重要だ」という言葉が誤解を招くこともあるのですが、この言葉の真意は、条件や前提を変更しながら何度も繰り返して試せる状況を作ることが重要だということです。
自分たちの真の目的を見失わないよう、PoCの目的が自社や顧客の機会と脅威を見極め、どうすればそれに立ち向かえるかを、チームとして創造的に考えていきましょう。
IBMでは、脅威を越えてビジネス価値を生みだすための創造的な進め方を「エンタープライズデザイン思考」と呼ばれる方法論にまとめ、お客様と共に実践しています。
エンタープライズデザイン思考では、お客様の事業に関与する利害関係者を広く集め、参加者が持ち寄る多種多様な視点や経験をワークショップを通じて引き出します。そこからコンセプトを固め、ビジネスを前進させる「克服すべき本当の課題」を究明し、それを「すごい!」と思わず言ってしまうような魅力的な方法で解決し成果をもたらすことを目指します。
PoC前の技術的重要設問
PoCのスタート前には、以下のようなチェック項目を設けて状況を確認しましょう。
- 迅速にスタートできるか
- 複数のユースケースやシナリオに柔軟に対応できるか
- 規模や機能、範囲の拡張性(PoC後に続くステップを見越して)
- 安全性(絶対に見逃さないこと!)
- 低コストのエントリーポイント
- 将来必要となるコスト(PoC後に続く展開を見越して)
パイロットプロジェクトで、厳しい条件下で鍛え上げる
PoCでの反復的な検証を終えたあなたは、IoTがビジネスにもたらすメリットの規模感や全体的なコスト感、そして何が鍵となる技術課などを理解していることでしょう。ここからは通常、社内のビジネス部門と技術部門がコラボレーションし、 ビジネスケースに沿いながらIoTソリューションの開発をビジネス面と技術面の両方から検証していくステップへと進んでいきます。
多くの場合、ここで実施されるのがパイロットプロジェクトです。PoCから生まれたIoTソリューションが、テスト用環境ではなく本物の現場 — 実際のユーザーや資産、不確実性の高いインフラ(ネットワークや電力)という厳しい条件下でもビジネスとして成立するかを確認するためです。
パイロットプロジェクトで重要なのはスコープの設定です。PoCでの経験を基に、検証/測定が可能なビジネスケースを策定しましょう。
多くの企業が、対象範囲を一つの工場や工場内ユニットに限定したり、特定のグループや顧客、あるいは特定のアセットに絞り込んでパイロットを実施することで、リスクを制限します。
パイロットプロジェクトにおける重要設問
パイロットプロジェクトの実施前、実施中には、以下のようなチェック項目を設けて実際の状況と照らし合わせるようにしましょう。
- PoCで特定されたビジネス価値が発揮されますか/されていますか?
- ソリューションは長期間にわたり安定稼働するものですか/していますか?
- 非機能要件も考慮に入っていますか?
- デバイスは「現実世界」でも正しく動作する/している?
- デバイスの設置と保守方法は?
- ソリューションは実際にどんな影響をユーザー(従業員であれ顧客であれパートナーであれ)に与えますか/与えていますか? – これはコンセプトの再検討にも役立ちます。
- ソリューションの管理に予期せぬコストが発生していませんか?
- プライバシーの問題など、IoTの実施を困難とするものはありませんか/発生していませんか?
通常、パイロットプロジェクトは数カ月続けます。その間に明らかになる予想外のこともあるかもしれません。プロジェクト中はデータを収集し、進捗状況を評価し、ソリューションに磨きをかけていきましょう。
最後の難関! 3つめのP「プロダクション」へ
ビジネスケースが明確になり、技術的な意味合いも完全に理解されたところで、IoTソリューションを本番実稼働(プロダクション)フェーズへと移行させます。多くの場合、プロダクションへの移行は段階を経ながら行います。ただし、時間をかけ過ぎてしまい、利益の最大化という最終的な目標を妨げないように注意しましょう。
パイロットが上手く行われていれば、IoTソリューションは安定稼働しビジネス価値をもたらすでしょう。つまり、エンジニアの時間が無駄になったり、必要なかった予備部品にコストをかけてしまったりということが大幅に削減されるはずです。あるいは、作業改善や運用省力化による費用削減だけでなく、新しい価値の創造/提供による収益増加をも実現しているかもしれません。
PoCやパイロットプロジェクトの価値は – とりわけ、パイロット段階で「接続デバイス増加」や「ソリューション拡張」に時間や労力を費やしていれば –プロダクションで発揮されます。ここまで進んでいれば、あなたはきっと下記のようなプロジェクトを進めたいと思っていることでしょう:
- ソリューションの費用コントロールを進化・発展させる
- 最高レベルのセキュリティ基準の維持・拡大
- 拡張IT資産としてのIoTソリューションの資産・構成管理
- ヘルプデスクによるサポートのサービスレベルの維持・向上
IoT成功ジャーニーを再び!
これまでの道のりで身に付けた経験やインサイトを、当初のコンセプトに再度あてがってみましょう。そして新たにIoTを適用できる範囲を検討してみましょう。
きっと、新たに乗り出すべき機会や脅威のエリアが見えてくることでしょう。
ここまでの進め方にご納得いただけたなら、PoC、パイロット、プロダクション – いずれであってもぜひ私たちWatson IoT事業部と一緒にIoTジャーニーを歩みませんか?
IBM Watson IoT Platformは、多くのお客さまとの経験を基に、IoTプロジェクトに必要とされる機能のほぼすべてを組み込んだクラウドベースのサービスです。必要な部分を必要なだけ使えるas-a-service(アズ・ア・サービス)として提供しているので、すぐに使い始めることができ管理と拡張も容易です。また、セキュリティと拡張性はプラットフォームが担保しているのでご安心ください。
分析や高度な機械学習の導入、既存アプリケーションとの統合や独自アプリケーションの構築も簡単です。そして気になる料金ですが、IBM Watson IoT Platformは、1台のセンサー・デバイスあたり月額70円からご用意しています。
ご関心をお持ちいただけたら、お気軽にCognitive Applications事業 cajp@jp.ibm.com までご連絡ください。
関連ソリューション: IBM Watson IoT Platform
関連記事: 本番志向!Watson IoT を活用してPoC貧乏からの脱出
当記事は、The 3 Ps of customer engagements: getting started with IoTを抄訳し、日本向けにリライトしたものです。
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