IBM Sustainability Software
ウェアラブルEXPO特別セッション『「IoB: Internet of Bodies」が働き方を変える』レポート
2020年02月21日
カテゴリー IBM Sustainability Software | イベントレポート | 技術動向・トレンド
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2月14日、東京ビッグサイトで開催された「第6回 ウェアラブルEXPO」で1,000名近い招集を集めた特別セッション『「IoB: Internet of Bodies」が働き方を変える』の一部をダイジェストでご紹介します。
日本アイ・ビー・エム 理事 Watson IoT事業部長 村澤 賢一
■ なぜヘルスケア、IoBなのか
現在、IBMのIoT部門は3つの領域に注力しています。その3つとは「製造業: スマート・ファクトリー」、「自動車業界: コネクテッド・カー」、そして本日お話しさせていただく「ヘルスケア: IoB(Internet of Bodies – 身体のインターネット)」です。
「マネタイズまでにはまだ少し時間がかかりそう」とも考えられているIoBですが、一方で、健康と医療は全人類に必要とされています。そして超々高齢化社会が進んでいるここ日本では、それに伴うさまざまな社会課題の解決が急務となっています。また憲法25条でも、国家として国民に健康な生活を営む権利と社会福祉や保障、および公衆衛生の向上が保証されているのは皆さんご存知の通りです。
おそらく、会場の中にご同意いただける方が多数いらっしゃるんじゃないかと思うのですが、人間40歳を超えるといろんなことが起こってきますよね。
私はいわゆる団塊ジュニアと呼ばれる世代なのですが、数年前からさまざまな変化が自分の身体に現れてきました。突然、食物アレルギーの症状がひどくなってしまったり、なんてことない動きでふくらはぎの筋肉が断裂しまったり…。
そんな個人的な体験も、ヘルスケア領域への注力への後押しとなりました。
■ IoBからIoH(ヒトのインターネット)へ
そもそも、私たちの多くは、健康に対する教育というものを十分に受けないままに年齢を重ねています。幼稚園や小学校の給食の時間に習った「三角食べ」と「一口30回以上咀嚼しよう」を最後に、食事や健康についてきちんと習った覚えがないなんて方もいらっしゃるかもしれません。
社会人になってからは、皆さん会社で健康診断を受けていらっしゃると思いますが、どうでしょう、診断結果を踏まえての、産業医健康指導の面談などで「もっと食事と運動に気を使いましょう」と言われ、ちゃんとそれを守れていますか? 飲みに行った帰りについ〆のラーメン…なんてことはありませんか?
人間「分かっている」と「行動する」には大きな隔たりがあるものです。そして今の世の中、行動喚起させるためのメッセージも、十分ではない気がします。
ここで、IoBともう一つ大きな概念のIoH(Internet of Human – ヒトのインターネット)の現状を見てみましょう。
IoHは、IoBによる身体のデータ収集をさらに進め、そこから医療・介護・リハビリや、ストレス・蓄積疲労などの人間の生活の質を高める活動に適応させていこうという動きです。
IoBに加えて、その解析から生まれたアルゴリズムを、認知拡大(Augmented Intelligence)や生活維持活動(ADL: Activities of Daily Living)、機械と身体の組み合わせ(Anatomy & Mechanics)に適応させ、高齢者はもちろん私たち労働者の日常生活の質や仕事のパフォーマンスを上げていくための取り組み、働きかけとなります。
労働者の周りのビジネスシーンでどのように活かし、どのように活用すれば日常生活の質や仕事のパフォーマンスを上げていけるかという取り組みを指しています。
ここでいくつか、労働者の周りの日常的なビジネスシーンに絞ってIoBとIoHを見てみましょう。
- 熱中症対策 – 工事現場や坑内作業現場などで、心電データを元にいち早く変調を察知
- 職業ドライバー – たくさんの命やモノを預かっている職業運転手の体調管理に
- ワークスペース – 働く人の生産性と生活の質を向上するより快適で集中できリラックスできる職場を
- 取締会・役員会 – 業績を大きく左右するハイ・プレッシャー環境における人体データの分析
- 乳幼児ケア(保育所) – 突発性高熱などによる多臓器不全を着衣型ウェアラブルで未然に
- バイオフィリア – 人間の自然とのつながりを求める本能(音、香り、緑視率などの五感 + α)を職場に活かす取り組み
■ 大きなポイントとなる「科学的ヘルス・リテラシ」
皆さん、ご自分の1日を頭に思い描いてください。
朝起きて身支度をしたら、スマートフォンをチェックしながら通勤し、職場にいる間は常にメールなどで入ってくる情報に追われ、帰宅後も常にスマホを手の届くところに置いておき…。こんな風にデジタルと追いかけっこをしているような生活になっていないでしょうか?
とりわけナレッジワーカーの方は、「Always ON!!」とでも呼ぶべき「常にオンの状態」を求められている感覚が強いのではないでしょうか。
そんな慌ただしい日々に取り残されないよう、意識的にか無意識的にか、どこか少しハイで「軽躁(けいそう)」とでも呼べるような状態に自分を置き、どうにか乗り切っている人たちが多いのが現代社会のようにも私には思えます。
でも、この状態は持続的ではないですよね。ナレッジワーカーに対するある調査によれば、慢性的なストレスからバーンアウトとも呼ばれる「燃え尽き症候群」寸前だと答えた回答者のは80%を超えているそうです。
そろそろ、働き方改革の真っ只中にいる私たち日本のビジネスマンも、仕事にまつわる3大要素である「健康」「生産性」「ワーク・エンゲージメント」を見直す時期に来ているのではないでしょうか。
そこで大きなポイントとなるのが「科学的ヘルス・リテラシ」です。企業や社会のアプローチに任せるだけではなく、個々の職業人として自分のパフォーマンスを管理しようという意識を持ち、そのために科学的な観点から生体関連データを利活用していこうとするタイミングが今この時だと私は思っています。
■ 私たちは「仕事のための仕事」に60%を費やしている
ここで先ほど挙げた「健康」「生産性」「ワーク・エンゲージメント」の中から、生産性に関する興味深いデータをいくつか紹介させていただき、私たちの働き方について考察してみたいと思います。
まず、生産性という言葉が意味するのは、分母が「投入した時間」で、分子が「創出した付加価値」となります。
まず、分母の「投入した時間」に注目してみましょう。
諸説ありますが、私たち日本のナレッジワーカーはざっと年間2,100時間ほど働いています。これが分母となる時間ですね。では、その時間の中で、実際に分子となる価値を創出するための時間というのはどれくらいあるのでしょうか?
調査の結果分かったのは、私たちが仕事に費やしている時間の実に60%が「仕事のための仕事」だということです。「仕事のための仕事」とは、自身の専門スキルを用いたり戦略計画を練ったりする仕事ではなく、タスクについての話し合いや優先順位の管理、文書を探したりといった非専門的な作業です。実に労働時間の60%が、付加価値創出のため以外に費やされているのです。
さらに残念なことに、私たち日本人はこの「仕事のための仕事」の時間を実態よりも短く捉えていて、実際の半分以下である28%程度と認知しています。…これではいくら時間があっても足りないと感じるのも無理ないですよね。
さらに言えば、自身の専門スキルを用いた労働時間も、実際にどれだけの集中力を持って取り組んでいるでしょうか? 表面的にはその作業に取り組んでいても、脳は違うことにその力を費やしているかもしれません。
こうして考えると、分母となる「投入した時間」であるとか、そもそも人間に適した労働時間というものが一体どれくらいなのかというところまでいずれは考えていく必要があるのではないでしょうか。
■ まとめ
さてここで、働き方について、そして今日のセッションをまとめてみたいと思います。
私たちの働き方にいろいろな問題があるのは分かってきています。しかしそれを未来に向けてアップデートするには、十分な生体関連データが揃っていないのが実情ではないでしょうか。
ただし、現在はテクノロジーの進化により、データを取るためのウェアラブル・ツールやそれを分析するアルゴリズムはかなり整っています。
データ取得と分析を進めていくことで、以下が可能となるでしょう。
- 健康 – プロフェッショナル・ワーカーのためのヘルス・ケア・ソリューション/サービスの提供
- 生産性 – 真の働き方/生産性改革支援ソリューション/サービスの提供
- ワーク・エンゲージメント – やりがいと働きやすさ向上を支援する、人にやさしい環境制御ソリューション/サービスの提供
ただ、これらのサービスやソリューションを提供するには、多くの方々との協業が不可欠です。
私たちIBMは、IoTやIoBで取得したデータを分析してアルゴリズムを生み出したり、クラウド上でご利用いただけるソフトウェアにまとめ上げることは大得意です。
しかし実際にこれらのサービスをエンドユーザーであるプロフェッショナル・ワーカーの方々に届けるには、データを取るためのウェアラブル機器の製造・販売会社さまや、職場となるビルを管理されているプロパティマネジメント業界の皆さま、そしてわれわれの健康管理を支えてくれる衣食住医療業界の皆様とのコラボレーションが必要となります。
今日はいろいろな観点から「IoBとIoH」、そして未来を見据えた私たち労働者の科学的ヘルス・リテラシと働き方についてお話させていただきました。
何か一つでも皆さまの琴線に触れるものがありましたら幸いです。そして未来の働き方を私たちIBMと一緒に変えていこうじゃないかと思われる企業や組織の方がいらっしゃいましたら、ぜひお声かけいただきますようお願いいたします。
本日はありがとうございました。
問い合わせ情報
お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 cajp@jp.ibm.com にご連絡ください。
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(TEXT: 八木橋パチ)
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