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IBM Sustainability Software
「第2回ベジロジサミット」レポート後編 | ベジロジシステム討論会
2024年12月17日
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ベジロジ倉庫とベジロジトラック、そしてキャベツ食べ比べを中心にご紹介した「第2回ベジロジサミット」レポート前編に続き、ここからは第二部、場所を屋内に移して開催されたベジロジシステム討論会の様子をご紹介します。
目次
前編
- 生産者(農家)から消費者へ | 青果物物流の流れ
- レタスの食べ比べとベジロジ倉庫
- ベジロジトラック(高機能冷蔵トラック)
後編
- 生鮮度は技術で確保する時代の到来 | ベジロジシステム討論会
- 各立場における課題認識 | ベジロジシステム討論会
- 実証実験の結果と、ベジロジが生み出す物流の今後への期待
- 長野モデルとベジロジサミット2025への意気込み
● 生鮮度は技術で確保する時代の到来 | ベジロジシステム討論会
午後のベジロジシステム討論会は、会場に約20名の視聴者を迎えて、ウェビナー形式でのオンライン配信が行われました。
主な議題は、ベジロジを支える3本の柱(ベジロジ倉庫、ベジロジトラック、ベジロジシステム)についての概要説明とこれまでの振り返り、そして「ベジロジが生み出す物流の今後に期待すること」。
最初に、千曲運輸株式会社 代表取締役 中嶋 剛登氏から、これまでの振り返りと討論会への期待が語られました。
・ 千曲運輸株式会社 代表取締役 中嶋 剛登 氏(ベジロジナカジマメソッド提唱者)
2018年からメソッドのイメージを固めてきたが、現状を考えると、青果物物流2024年問題の解決方法の一つとして社会実装スピードをもっと上げなければと感じている。
「鮮度は技術で確保する時代」が到来し、生産者・物流業者・卸売市場・発荷主…それぞれの立場から改めて浮き彫りになってきた課題を今日はしっかりとご共有いただき、次のステップへと確実につなげていきたい。パネリストの皆さんの率直な意見に期待している。
● 各立場における課題認識 | ベジロジシステム討論会
続いて、ベジロジシステム討論会に参加された討議参加者の現在の課題認識について、いくつかご紹介します。
なお、モデレーターを務められたのは、千曲運輸株式会社 森田 司氏です。
・ 生産者 片山農園 片山 修 氏
ここ20年で世の中の最低賃金は約700円から約1000円へと上がったが、野菜の値段は同じようには上がっておらず、農家の収入も同様。父親の代の倍ちかくの作付面積にしている自負はあるが、生産資材高騰などにより実入りはむしろ下がっているのが現状…。
この状況では、残念ながら運送会社の輸送費アップにも賛成できない。難しいのはわかっているが、価格転嫁につながる方策が必要だと思う。
・ 佐久浅間農業協同組合 営農経済部 野菜課 課長 山本 美智夫 氏
「経費節減しようにもそもそもの経費がない」という苦しい状況。片山氏がお話しされたように、輸送運賃や資材費は高騰している。そんななかで、農協に期待されている生産者の方たちへの補助も、焼け石に水レベルしか提供できていない…。
スタート資金がかかりすぎるという特性もあって、高齢化の中このままでは農業従事者は一段と減っていくのではないか。
モデレーターの森田氏からは「野菜の価格転換に加え、新しいタイプの助成金も必要なのかもしれませんね」とのコメントがありました。
・ 全国農業協同組合連合会 長野県本部 生産販売部 副部長兼 販売流通企画課長 伊藤 智康 氏
青果物のトラックは今もまだ、パレットを使わず積み下ろしに時間がかかる「直積み」をしているケースがある。産地ではパレットを進めていますが、運用には、サイズや費用面に課題を抱えているのが実情。
また、電話やFaxが今も現場の中心となっていて「データとしては分断されてつながっていない」状態。長い間やってきた手法を変えるのは簡単ではないが、DXを進めなければ。
・ 横浜丸中ホールディングス 代表取締役社長 原田 篤 氏
卸売会社も人件費の問題に直面している。
古くからあった問題ではあるが、卸売市場内でも危機感は高まっていて、「市場の外に荷下ろしの順番を待つトラックが並んで待っている」といった状態の解消は進んできている。次に目指すべきは中間物流業者としてのDX。
・ セントライ青果株式会社 執行役員 田中 祥雄氏
荷下ろし時間の短縮には取り組んでおり、産地トラックでのベタ積みからパレットへの移行は進めているものの、パレット管理の難しさに直面している。
産地からのレンタルパレットについては、第一条件としてレンタルパレット業者への返却が必須。現在、通称「雑パレット」(積替用)への載せ替えを行っているが、パレットの数量が多くなればいずれ破綻してしまう。
パレット積替えをせずに市場全体で「回す」(仲卸業者や量販店と協力しながら、商品をレンタルパレットに積んだままの状態で配送〜返却する)方法にも取り組んでいる。だが、青果物産地が独自の個別パレットを作っているケースも出てきていて、対応に苦慮している。
正直、トラックドライバーの方たち以上に、我われに負荷がかかってきている感もある。
・ 全日本トラック協会 役員待遇経営改善事業部 部長 星野 治彦 氏
トラック運送会社の「物価高倒産」「人手不足倒産」が増えている。また、改正物流法では、荷主や物流事業者が取り組むべきことが明確にされただけでなく、一定規模以上の荷主に対して「CLO(物流統括管理者)」の設置が義務付けられた。
荷主もトラック事業者もこれまでの考え方を根本から改めなきゃならない時期にきていることを改めて感じている。
・ 九州トラック協会会長 (松浦通運株式会社 社長) 馬渡 雅敏 氏
トラック物流の3大費用は人件費、燃料費、車両費だが、どれも高くなっている。
いかに時間短縮を実現し残業を少なくできるか。時間外労働が月60時間を超えると、残業割増賃金率に則り5割増しの賃金を支払わなければならないが、それを荷主に求めることもできないのが現状。また、高速道路料金の請求すらも受け入れてもらえないことも。
九州は日本の農産物の約2割を受け持っている地域だが、このままでは関東地方への出荷などはできなくなるのでは…と危惧している。
● 実証実験の結果と、ベジロジが生み出す物流の今後への期待
討論会終盤のテーマ「ベジロジが生み出す物流の今後に期待すること」の前に、ベジロジシステムを開発した株式会社インテックの歳谷 秀明氏から、ベジロジシステムの概要とこれまでに行われた実証実験の結果として以下が紹介されました。
「ベジロジシステムの中核は、青果物物流データ(運送会社・車番、産地、等階級、数量、出荷通知書明細など)を電子化し、これまで紙伝票でやり取りしていた荷物の受け渡しを、スマートフォンで行うサービス基盤です。
ドライバーと荷受け担当者の作業量・時間の削減に加え、JAなどの集荷場(発荷主)や卸売市場(着荷主)のデータ入力事務作業量も大幅に縮小することができます。
さらに、青果物トレーサビリティ情報を一貫管理することで、個々の青果物の価値を高めることにつながります。そして、トラックに加えてパレットがどこにどんな状態であるかもわかるようになれば、さらに多くの価値を生み出すことでしょう。
なお、実証実験の結果を簡単にお伝えすると、ドライバーと荷受け担当者の作業時間は着実に減少し、トータルで約18%の時間短縮が実現しました。」
以下は、下記の実証実験時に聞かれた関係者の言葉として紹介されたものです。
・ 集荷場(JA愛知みなみ) での積み込みからセントライ青果(市場)への配達・納入
「イレギュラー発生時も、トレーサビリティ画面ですぐに問題発生タイミングを検索できるので大変便利。現状ではトレーサビリティの確認に数日かかっているので、伝票を追いかけるのとは大きな違いがある」
・ 集荷場(JA佐久浅間)での積み込みからセントライ青果(市場)への配達・納入
「想定通りの時間短縮を実現できた。慣れの問題もあるので、今後、削減効率はもっと上がるのではないかと思われる」
これらの実験内容と実証結果を聞いた討論会参加者に、モデレータの森田氏から以下の問いかけがありました。
「現場の声を聞きながらボトムアップ型に磨き上げてきたのがベジロジシステムです。実証実験にご参加いただいた企業の方がたからは、今後も全力でのサポートいただけるとお話いただいており、代表の中嶋とは常々『これからも地元の皆さんに応援してもらいながら進めていきたい』と話しています。
皆さんからの率直な感想やご意見をもとにベジロジシステムをさらに成長させていきますので、良い点も悪い点も含め、積極的に感想をお聞かせください。」
以下、会場での発言をランダムに紹介します。
・ すごいシステムで驚いている。これが浸透して「明日の集荷予定を早く決めてほしい」という農家へのリクエストが少なくなって欲しい。
・ 中小業者が多いトラック事業者にとって、DXの良い入り口。
・ 理想の姿に到達するまでは時間がかかるかだろうが、今、途切れ途切れになっているところを一つでもつなげていくために、一緒にやっていきたい。
・ 伝票、集金・回収、パレット、それらの回転を早くしてくれるもので、あらゆる面で効率化が期待できる。
・ 地域や場面によっては似たものもあるが、どれも接続性が弱いので、ベジロジシステムのように一気通貫で使えるDXツールの登場を期待していた。
・ トレーサビリティは、「もうちょっと値段が高くてもいいかな」という消費者の心境変化につながるきっかけかもしれないと期待している。
● 長野モデルとベジロジサミット2025への意気込み
これらの発言を受けて、株式会社インテック 専務執行役員 飯沼 正満氏から、「インテックはITベンダーとして『お客様と共創する』ことに重きを置いている。
道具をよくするのも使いこなしていくのも『人』なので、関係者一人ひとりと一緒に分散するデータを一つの目的をもってつなぎ『三方よし」としていきたい』とのコメントがありました。
そしてサミットのまとめとして、モデレーターの森田氏から「ここで、このメンバーで、長野モデルを作りあげたい。ファーストペンギンとなって、青果物物流改革を広げていきましょう!」という未来に向けたメッセージが発せられました。
最後に、ベジロジサミット発起人の中嶋氏に、ベジロジサミット2024の振り返りと、2025への意気込みを聞いてみました。
昨年のサミットではこれからの事業予定を紹介しましたが、今回のサミットではその有効性を実体験できるところまで漕ぎつけることができました。
国内企業はこれから「人がいなくなる」「時間の制約を受ける」という、大きな課題に対峙していかなければなりません。そんな中、業務フローの見直しやシステム開発への取り組みが、各方面で進められております。本メソッドは、皆様のお取り組みをさらに効果的なものとするソリューションの一つであると自負しております。
これからも「生産者から小売までのサプライチェーンに携わるすべての人を幸せにしたい」という大きな目標の実現に向けて頑張っていきますので、応援してください!
TEXT 八木橋パチ
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