IBM Sustainability Software
「第2回ベジロジサミット」レポート前編 | レタスの食べ比べとベジロジ倉庫・トラック
2024年12月12日
記事をシェアする:
「佐久地域は葉洋菜類の一大産地であり、産地の生産を守ることは日本の食を守ることです。主体的に取り組んでいきます。ただ、青果物の取り組みは特に困難な要素が多く、物流業界でも取り組みが進んでいない分野です。そんな中で、持ち前の行動力と突破力でその取り組みを進めているのが中嶋 剛登さんです。」
佐久広域連合 代表副広域連合長(長野県小諸市長)小泉 俊博氏は、昨年に引き続き開催された第2回ベジロジサミットのオープニングで、こう話されました。
「多くの方が『熱意の塊』と称する中嶋さんが提唱している『ベジロジナカジマメソッド』。私も、『中嶋さんしかいない』と期待しています。」
小泉市長も指摘するように、物流2024年問題の中でもとりわけ解決が難しいとされる青果物物流。
その問題解決に向けて足取りを進める中嶋氏の思いと「ベジロジナカジマメソッド」実装に向けての取り組みを、先日、下記前後編の記事にて紹介しました。
今回は、10月19日に開催された第2回ベジロジサミット第一部(午前: 屋外編)と第二部(午後: 屋内編)の様子をご紹介し、現場関係者の生の声を通じて現状に迫ります。
目次
前編
後編
- 生鮮度は技術で確保する時代の到来 | ベジロジシステム討論会
- 各立場における課題認識 | ベジロジシステム討論会
- 実証実験の結果と、ベジロジが生み出す物流の今後への期待
- 長野モデルとベジロジサミット2025への意気込み
● 生産者(農家)から消費者へ | 青果物物流の流れ
はじめに、青果物がどのような流通経路を通って生産者(農家)から消費者の元へと届けられているかを確認しましょう。
- 農家(生産者)によって栽培された作物は、農業協同組合(農協)をはじめとした出荷団体に集められる。
- 複数農家から出荷団体へ集められた青果物は、トラック輸送を主とする運送会社により卸売市場へ輸送される。
- 卸売市場へ集められた青果物は、卸売事業者により仲卸業者や小売業者(スーパーマーケットや八百屋など)に販売される。
生産者(農家) → 出荷団体(農協など)→ 卸売市場 → 小売業者(スーパー、八百屋) → 消費者
もちろん、すべての青果物が上記のルートを辿るわけではなく、生産者から直接小売業者や消費者へ販売されるケースも存在しています。ただし、食品業界の中でも、とりわけ上記ルートが占める割合が高いのが青果物物流です。
第2回ベジロジサミット2024でお話しを伺えたのは、農家(生産者) 、農協 (出荷団体)、卸売市場、仲買業社、運送業(トラック協会)。そして農協などに集められた青果物を鮮度を保って貯蔵するベジロジ倉庫を開発した冷却設備エンジニアリング会社と、同じく鮮度を保ったまま輸送するトラックボディー(荷台)製造会社の方がたです。
ここからは、ベジロジサミットの午前(屋外)午後(屋内)の順で、開催内容と、お話を伺った方たちの言葉を中心にお伝えします。
● レタスの食べ比べとベジロジ倉庫
「ある冷蔵庫で保管すると驚いたことに見た目、シャキシャキ感、味などの鮮度が落ちずに食べることができました。」
これは先述の小泉俊博 小諸市長の感想です。
上の写真は、サミット開催の2日前、4日前、8日前に収穫され、ベジロジ倉庫で保管されていた3箱のレタスです。どの箱が何日前のものか、見た目でお分かりになるでしょうか? (記事冒頭の市長のXへの投稿写真では日にちがわかるようになっていますが、食べ比べ終了後に箱に書き加えられました)。
サミット参加者はまず見た目の違いを確認した後、手触り感の違いを、そして最後に食べ比べて味の違いを確認しました。
筆者も参加しましたが、8日前のレタスには多少の違いを感じることができたものの、2日前と4日前の違いはまったくわからず、当てることができませんでした。
市長の書いた「ある冷蔵庫での保管」——それが、高機能鮮度維持倉庫「ベジロジ倉庫」です。
「ベジロジ倉庫」を開発した、フードテクノエンジニアリング株式会社の担当者 青山泰介さんはこう説明します。
「青果物の鮮度を保つ上で大切なのは、庫内温度と湿度を1と100に限りなく近づけ、それをキープすることです。
1は庫内温度で100は庫内湿度。ただし、どちらも決してそれを超えることは許されません。庫内温度が1度を下回ると、青果物が凍ってしまい品質に大きな悪影響を与えてしまいます。そして湿度が100パーセントに達してしまうと、庫内に水滴が生じ、青果物の入ったダンボールが濡れてしまいます。そうなると青果物の搬入出や保存に大きな問題が発生します。
言葉の上では簡単に聞こえるかもしれませんが、痛みやすい葉野菜や早生果物の長期保管を可能とする「1℃で湿度99%」という限界高湿度での生鮮長期保管の実現は、業界の常識を変えるものです。」
「それでは中にお入りください。」——青山さんに誘導され、冷気が循環しているコンテナ式のベジロジ倉庫に入り、数カ所で庫内の壁を触ってみると、ヒンヤリとした手触りながら水気を感じることは一切ありませんでした。
● ベジロジトラック(高機能冷蔵トラック)
レタス試食を終えたサミット参加者は、倉庫前に停められた、ベジロジ事業の柱の1つである高機能冷蔵トラック「ベジロジトラック」の前に集合しました。
「昨今の異常気象下での夏場の中・長距離輸送においては、庫内を最適な状態に保ち続けるのは大きなチャレンジです。
この夏、12カ所のトラック荷台の異なる位置に温度センサーを配置し、2回の荷下ろし作業を含む長野県から愛知県までの輸送、約12時間の庫内温度変化を調査しました。
皆様にお配りしたお手元の紹介資料に記載したグラフでもご確認いただける通り、8月の暑い日中正午から夜10時までの輸送にも関わらず、庫内全体に冷風を回す機能と、断熱・遮熱に優れた資材や塗装に工夫を凝らした高機能冷蔵車内は、温暖化による気温上昇に影響を受けない安定した庫内温度維持を実現しています。」
ベジロジトラック開発を担当した株式会社パブコの説明担当者の話は続きます。
「もう一つお伝えしたい大きなポイントは、輸送量を減らさず、容積を確保している点です。
これは『ベジロジナカジマメソッド』の提唱者であり、千曲運輸株式会社代表の中嶋社長から『手積みよりも短時間で積み下ろし作業を終えることができるフォークリフトでの作業に適していること。そして従来と変わらない積載量を担保すること。
この2つは青果物流通関係者全員のしあわせな働き方に直結している点なので、絶対に譲れません』と強く要望いただいていました。」
後編では、第2回ベジロジサミット第二部のベジロジシステム討論会の様子をご紹介します。
TEXT 八木橋パチ
問い合わせ情報
この記事を読んだあなたへのおすすめ
日本Maximoユーザー会2024@天城ホームステッド 開催レポート
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
2024年10月15〜16日の2日間に渡り、IBM天城ホームステッドにて1年半ぶりの「日本Maximoユーザー会」が開催されました。 石油・化学企業、産業機械製造企業、エネルギー企業、エンターテインメント企 ...続きを読む
トヨタ紡織「 A-SPICE レベル3」取得活動事例 | シートシステム/車室空間開発の未来に向けて
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
「Automotive SPICE(A-SPICE)の取得を意識し、実際に検討を本格化したのは2021年です。そして昨年2023年3月にレベル2を取得し、そこから約1年半で今回のA-SPICE レベル3の取得となりました ...続きを読む
「何度でもやり直せる社会に」あいふろいでグループ代表 吉谷 愛 | PwDA+クロス9
IBM Partner Ecosystem, IBM Sustainability Software
「日本は一度ドロップアウトした人にとても厳しく、いわば『敗者復活』の機会が残念ながらとても限られています。ただそんな中で、半年程度の準備期間で再チャレンジの機会を手に入れられるのが『IT』です。 私自身、ITに救われた身 ...続きを読む