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「当日発送」を無くせ! 青果物物流2024年問題に挑むベジロジナカジマメソッド(後編)

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信州から広がりはじめている青果物物流革命「ベジロジナカジマメソッド」。これまでの足取りと今後に迫る。

前編はこちら

中嶋 剛登(なかじま たけと) 千曲運輸株式会社 代表取締役

 

目次
前編

  • 物流2024年問題をカバーしてきた気合いと根性と超過勤務
  • 青果物物流における問題の大元にあるのは「当日発送」
  • 当日発送からの脱却を実現するベジロジナカジマメソッドとは
  • ベジロジシステム | 青果物トレーサビリティー情報を一貫管理

 

「誰がやるか」問題と、働き方改革による制約と拘束からの解放

「私も今日ここに来ていただいている皆さんと同じく、数年ではありますが若かりし頃IT業界でシステム設計や実装をやっていた人間です。そして家庭的な事情がなければ、ずっとIT畑で仕事をしていたかった。それくらいIT業界での仕事を愛していたし、テクノロジーに可能性を感じていました。

そんな私だからわかるんです。現在のネットワーク技術やクラウド技術などのコンピューティング環境であれば、ドライバーの長時間勤務をなくすだけではなく、関係者全員の作業負荷を下げることができ、さらには青果物の付加価値をより高める、青果物トレーサビリティ一貫管理システムの構築が可能だと。

ただ、『誰がやるか』という問題がありました。2種類の『誰が』ですね。」

 

中嶋社長が言う「2種類の誰か」とは、「システム品質」と「費用」という、異なる2つの観点を指している。

システム品質

青果物物流現場の商習慣の中には、無くしたり変えたりしていいものと、そうではないものがある。現場の細かいオペレーションを熟知した人間じゃなければ、有効性を十分に発揮する高品質のシステム構築は難しい。

費用

DXとトレーサビリティがもたらすメリットはサプライチェーン全体に広く行き渡るが、関係者のほとんどは「チェーン」の一部にしか関わらないため全体利益のために投資を行う動機に乏しく、また、投資金額の大きさという重荷に腰が引けてしまう。

 

「文字通り『重荷』ですよ。正直、千曲運輸という企業だけで取り組むには荷が大き過ぎる。でも、誰かがやらなきゃならないんです。だって、紙伝票の電子化1つ取ったって、しあわせになる人がたくさんいるんですから。

青果物はデータに紐づいていて、青果物の移動はこのデータと一緒じゃなければなりません。青果物の移動と同タイミングで、さまざまな場所で紙伝票の入力や検印が必要となり、それに係る人員と労働時間が発生しているんです。

そして伝票が5枚複写ということは、その1枚1枚を必要とする先が5カ所あるということです。そして現在はその伝票1枚毎に、それぞれの場所で紙からコンピューターへのデータ入力が行われています。」

 

入力作業を行う事務員も、当日発送に伴う時間制約に振り回されているという。

紙伝票の電子化がもたらす「働き方改革」は、ドライバーや運輸会社だけにとどまるものではない。

ベジロジシステムは、JAなどの集荷場(発荷主)や卸売市場(着荷主)のデータ入力事務員を、時間的制約から解放するものでもあるのだ。

 

重過ぎる荷物なら仲間と | 今後を見据えれば自ずとIBM SCIS

「重過ぎる荷物ならば、分担して取り組めばいい。仲間と一緒に行えばいいんですよ。」

全体コーディネーターとして加わり、ベジロジナカジマメソッドの社会実装を推進している炭平コンピューターシステムの押田 真は言う。

「先ほど歳谷さんが話していたトラックの位置情報だけではなく、今後システムが拡張してく中で、青果物が小売店に並び消費者の手元に届くまでに、どのような物流ルートでどのように扱われてきたか——倉庫やトラック内でどのような温度・湿度下に置かれていたのかを、細かく確認できるようにしていくこととなるでしょう。いわゆる食品トレーサビリティーです。

こうした食品の安心・安全を守り、青果物商品のブランドづくりや価値向上に多数の導入事例を持っており、米国やヨーロッパでの導入も増え続けているのがIBMの食品ブロックチェーン・プラットフォームIBM Food Trust (IFT)であり、IFTは現在、統合サプライチェーン管理ソリューションIBM Supply Chain Intelligence(SCIS)のトレーサビリティ・ソリューションTransparent Supplyの1プラットフォームとして提供されています。

私はこれまでの経験でIBMの担当者から世界の食品ブロックチェーンについて話を聞いていましたから、ベジロジナカジマメソッドの将来性を考えれば、SCISがうってつけなのは明らかでしたね。」

(写真左) 押田 真(おしだ まこと) 炭平コンピューターシステム株式会社 ITソリューション部 課長

 

「日本ではまだ食品全般のトレーサビリティーの義務や法律が整備されていませんが、海外ではすでに動き始めています。アメリカでは、2026年1月には食品トレーサビリティー規則が政府により施行され記録保存が義務化されます。

日本国内の食料自給率の問題など食を取り巻く課題は多数ありますが、国内での需要と供給のバランスが適切に取れず、廃棄されてしまう青果物が発生し続けているのも事実です。いずれは青果物の海外輸出なども広がっていくでしょう。視野には入れていますよ。

私もIT畑出身ですから、海外の規則やビジネス動向に強く、食品会社との太いパイプを持つテクノロジー企業と言えばIBMだということは百も承知です。」

中嶋社長はそう話すと、さらに、ベジロジナカジマメソッドの今後についても語ってくれた。

 

より多くの人のしあわせに | ナカジマメソッドの未来展望

実は、今回の記事で紹介したのは、ベジロジナカジマメソッドが関係者にもたらすメリットの一部に過ぎない。

「青果物物流業界では、パレットのトレーサビリティーも大きな課題となっているんです。」現在、青果物物流においては、「雑パレ」と呼ばれている所有者不明の木製パレットが多数使われているが、木屑問題などの衛生面や廃棄処理費などから、今後いかに持続可能なプラスチックパレットに転換し循環させていくかが問われている。

「青果物のトレーサビリティーシステムはパレットにも展開していけますし、むしろ同時に進めることが効率面からも有効ではないでしょうか。」

 

中嶋社長は続ける。

「あまり先のことばかり言ってもなんですが、ナカジマメソッドの中核となる温度・湿度管理の優位性を考えれば、青果物以外の物流にも大きな変革をもたらすのではないかと思っています。すでにいくつか、検討は始めているんです。」

——カルロスと仲間たちの挑戦は続く。

取材に立ち会った全員で記念写真を

 


企業情報

千曲運輸株式会社(長野県小諸市)

設立1968年。青果物をはじめとする運送事業を軸に、貨物運送のプロフェッショナル集団として次世代物流の構築を目指している。スローガンは「プロとして」「基本の継続」。

代表の中嶋剛登は(公社)長野県トラック協会 理事、小諸商工会議所 副会頭、青果物物流DX推進協議会 会長を兼務。

https://chikuma-tr.jp/

 

株式会社インテック(富山県富山市)

設立1964年(前身である富山計算センター創立)。日本を代表する独立系システムインテグレーター。公共・行政、金融・証券・生損保、製造・流通、医療・ヘルスケア、メディアなど、幅広い分野の顧客にシステムやサービスを構築・提供している。

https://www.intec.co.jp/

 

炭平コンピューターシステム株式会社(長野県長野市)

設立1989年。長野県に本社を置く唯一のIBMビジネス・パートナーとして、コンサルティングから設計・構築・運用保守をワンストップで提供し、地域・社会への貢献を大切にしている。スローガンは「Thank & Think(感謝と思考)」。

https://www.scsc.co.jp/

 


TEXT 八木橋パチ

 

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