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TRP2024ボランティアリーダーふりかえり座談会(後編)
2024年06月03日
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日本IBMのLGBTQ+コミュニティーのメンバーにとって、すっかり毎年の恒例となっている東京レインボープライド(TRP)への参加。今年も、200人の社員やその家族、パートナーや友人たちがプライドパレードに参加し、出展ブースも2日間に渡って大盛況のうちに終わった。
そんな日本IBMのTRP2024への参加をリードし支えてくれた、ボランティア・リーダー3人の座談会で飛び出した「私はTRPには懐疑的で、ボランティア参加も躊躇していた」という爆弾(?)発言。息を飲む一同…はたしてその真意は?!
<もくじ>
前編
- TRPボランティアとしての関わり
- LGBTQ+アライコミュニティー参加のきっかけ
後編
1. ハッピーではないマイノリティーがたくさんいるのに…
今野: TRPって、性的マイノリティーのためのお祭りですよね。そして社会にはハッピーではないマイノリティーの方たちがたくさんいます。それなのに、「ハッピープライド!」と声を掛け合うことに、私は違和感というか偽善感のようなものを感じていたんです。
ちょっと先鋭的な意見かもしれないけれど、「それは、マジョリティーにとって都合のよいマイノリティー像を社会に広げてしまっていることではないだろうか?」って。そんな疑問を払拭できずにいたんです。
ただそれでも、LGBTフレンドリーな企業がしっかりと存在していて、社会に対して活動をしていることを示していくこと自体には、とても大きな意味があると思っていました。そんなわけで、少し迷いを感じながらも参加したのが去年の初参加でした。
それで実際に参加して感じたのは、「参加して本当に良かった」という思いでしたね。
「ハッピープライド!」と声を掛け合うことは、普段ハッピーじゃない人にとってこそ、むしろ大切な時間なんじゃないだろうか。日常の中でパートナーと堂々と手をつなぎ過ごせる時間と場所がとても限られているからこそ、みんながニコニコと受け入れる場所が存在していることが、とても重要な意味を持つんじゃないか——。そんなことを感じた経験でしたね。
湊: 僕も共感します。今回、TRP2024の一部ブースが「演出が過激過ぎるのではないか」と物議を醸しましたが、それも決して悪意を持ったものではなかったようですし。
吉田: 「TRPは商業主義に走り過ぎではないか」といった話も毎年のように議論されているようですよね。たしかに、企業によってはそう思わせてしまうところもあるのかなと、私も思います。
ただ、私は自社のことながら、IBMの参加の仕方は本当にすごいなと感心しているんです。TRP参加に伴い発生する作業のすべてを、業者さんに一切外注することなく、すべてボランティアメンバーだけで行っているじゃないですか。
プロセス的にどうしても部門としての対応が必要なところは人事部門に依頼したりはしていますが、それ以外はブースの展示パネル設置から内容決め、ポスターのデザインから印刷、配布物の検討から手配まで、本当に文字通り、すべて手作りで。
——TRPに参加している他社の友人も、「ええ!? IBMさんのこのブース一切外部に発注をかけていない? すべてボランティア?! …すご過ぎて言葉を失います…」って言ってました。先日、前職でChief Diversity Officer(CDO)をやられていた法務スペシャリストの三保さんに話をお聞きする機会があったのですが、すべてが手作りというのに本当に感心されていました。
参考 | 法務・AIリスクのスペシャリスト三保友賀が語る「ダイバーシティー」 | インサイド・PwDA+7
湊: そういえば僕も、展示ブースに来ていただいた学生さんに「ここにいらっしゃるIBMの方たちは、みなさん人事部門の方ですか?」って聞かれました。
「いや、僕はデリバリー部門だし、隣のこちらの方は技術部門の人ですね。人事の人は…あ、あそこにいますね」って答えたんですけれど、もしかしたら、他社ブースの内情をご存知で、それゆえの質問だったのかもしれませんね。
2. 本当に伝えたいことはその先にある
今野: 私も、すべてボランティアでやっているということはすごいと思うし、展示ブースの内容にも誇らしさを感じています。
今回、なぜ自分たちが企業としてTRPに参加しているのか、そして日常的にどんな活動をしていて、どんなメッセージを発信しようとしているのか——。そうしたことをきちんと伝えるための場にしようと、事前にしっかりみんなで確認した上で取り組んだじゃないですか。
すべての企業が同じようにすべきだとは言いませんけれど、私たちIBMの場合は、その参加意義やTRPにおける存在意義をちゃんと伝えたいと思っているし、伝えようと努力している会社だとご理解いただける形になっていたんじゃないかと思っています。
吉田: 準備が本格的にスタートするタイミングで、「ここで一回、そもそもの意義をみんなで見直す場を持ちましょう」ってディスカッションの場を持ちましたよね。あれは非常に重要でしたよね。
たしか、今野さんたちブースチームが最初にそれを行ったんですよね。それで、全体でもやろうって話になって。
——IBMはTRPには毎年参加しているし、普段からアライ・ラウンジ*1でコミュニティー活動の意義について毎月のようにディスカッションをしているからこそ、イベント準備にはついフワッと入ってしまったというところがあったのかもしれません。
湊: 僕たち動画制作チームも、「動画というのは手段に過ぎないのだから、それを通じて何を伝えようとするのかを改めて見つめよう」と、チーム内で話をしていたタイミングでした。
当日の様子さえ伝えれば、それはどんな動画であろうと参加していることのアピールにはなる。でも、本当に伝えたいことはその先にあるだろう」って。ただ、それを動画作成チームだけで決めてしまっていいものだろうか? と話しをしていました。
だから、あのタイミングで、多くの仲間たちとみんなで「中心にあるべきもの」に目を向け、言葉にできたのはとてもよかったですね。
編集方針も、その延長線上で決めることができました。「みんなに質問していけば、こちらが言ってもらいたいことに誘導することはできるだろうけど、それはしたくない。みんなの率直な感想の言葉だけをつなげて動画を作ろう」って。
リスクはあるんですが、そう決めたことで結果的に良いものにつながったと思っています。正直、みんなに見て欲しいたくさんの名シーンがもっといっぱいあったんです。でも泣く泣くカットしました。
3. こんなに熱い気持ちを持たれている方ならきっと
——今野さんと吉田さんはなにが一番のチャレンジでしたか?
今野: 私が一番焦ったのは、タトゥーシールの準備ですね。
私の調査不足のせいですが、デザインなども決定して、本番も近づきいざ印刷しようとしたら、会社のプリンターや近場の業者さんでは対応できないことが判明して…。
吉田: たしか、一般家庭によくあるようなインクジェット・プリンターじゃないと、反転印刷ができなかったんですよね。
今野: そうなんです。それで結局、自宅のプリンターを使って、家族にも手伝ってもらってどうにか間に合いました。
他にも、ブースチームのサブリーダーの伊集院さんや、展示パネル担当の片山さんが、私がパンクしそうと見ると手を差し伸べてくれたり。たくさんの人に助けて頂きましたね。
吉田: 私は準備活動がスタートして数日経ったところで、ボランティアの皆さんが「どんな役割が求められている? どれくらいの貢献を求められている?」と他の方たちの出方を伺い、ちょっとお見合いのようになっているのを感じたんです。
それで「じゃあ、役割分担については私の方で、それぞれの方に相談して決めさせてもらいますね」と進めさせてもらいました。
湊: それがすごく適材適所で、役割がバッチリはまった感じがありましたよね。
僕自身、初めての参加でちょっと様子を伺っていたんですが、吉田さんに「湊さん、動画チームのリーダーをやってもらえませんか?」って言っていただいて。
「ええっ!?」と最初はびっくりしたけど、「僕でよかったら喜んで」って答えました。
吉田: そうでしたね。湊さんもそうですが、今回誰にも断られることはなかったんです。みんな、とても前向きに引き受けてくれました。「声かけてくれてありがとうございます」って。
今野: 「さすが! すごい」と思って見ていました。お願いの仕方に秘訣があるんですか?
吉田: 秘訣というほどではなくて、ボランティア申し込みの際に書いていただいていたコメントを見てお声掛けしていました。「こんなに熱い気持ちを持たれている方ならきっと…」って(笑)。
それから、「たしかこの人、こういう活動も以前していなかったかな?」って、ちょっと知っている人を中心にお願いをしていましたね。
——なるほど。他にもフロート作成チームやパレード参加者向けの事前講習会チーム、パレード中に参みんなで踊るツバメダンス・レッスンチームなどなど、多くのポランティア・チームが率先して活躍してくれましたよね。
そしてリーダーの割り振り以外にも、コミュニケーションツールの設定や準備など、吉田さんの「縁の下の力持ち」の発揮が今年の大成功の大きな要因だったんではないでしょうか。おかげで滞りなく進んだ場面がいろいろとありました。
4. TRPでの体験が次へのアクションに
——最後に、来年のTRPに向けての希望や目標などがあればお聞かせください。
湊: 話に出ていたように、今年は準備段階の最初に「お見合い」のような、いわば「機会損失」の期間があったので、あれを失くせたらいいですね。最初からみんなの気持ちをより早く集結させるための取り組みを用意できるといいかなと思います。
そうすればきっと、さらにみんなのパワーやパッション、そして個性が活きる、もっと素晴らしいものにできると思うので。
今野: 私は今年、IBM出展ブースのボランティア・ガイドを作成したんですが、来年はボランティアのみんなが安心してもっと自発的に行動できるように、活動指針なども明文化して記載しておきたいなと思っています。
これはIBMブースの話ではないですけど、「ブース担当者から『そこのお姉さん』と性別を決めつけられて声をかけられた。そういう性的マイノリティーが傷つくミスジェンダリング(本人が自認するジェンダーと異なる扱いをすること)が、TRP会場で起きて欲しくなかった」というような声もTRP事務局に届いていたと聞いています。
来年はそういう悲しい事象が起きないといいですね。
吉田: 私の目標は、レインボー・パレードに参加した人すべてがアライ宣言*2をすること。これに尽きます。
TRPをきっかけに、LGBTQ+アライの活動の真意を学び、周囲の人たちにも伝えてアライを増やしていって欲しいです。みんなの日常で実践してもらいたいですよね。
私自身もまだまだ学んでいる身ではあるけれど、会社を一歩出ると、今も無理解があちこちに広がったままですよね。
湊: そういう意味では、僕もTRPでの体験を、次へのアクションへとつながるターニングポイントになるものにしていきたいです。
だってどうしたって、もっとアライを増やしていかなきゃならないと思うから。社会のあちこちで見られるマイクロアグレッションや、「あれはまあしょうがないか…」という諦めによる無言の賛同が減らせるように。
無関心層が無関心のままでいられないような、知る機会・感じる機会へとしていきたいです。
今野: 今、私は仕事を失う心配や社会的な迫害を恐れずに過ごせる、いわば「社会的強者」なのかもしれません。でも、自分のことだけではなく、私は「ちゃんと生きる」という心持ちや視座をなくしたくありません。
大学生の頃の自分が「ずっと大事にしていきたい」と思っていた、社会に対する視座を失うことなく活動をこれからも続けていきたいです。
毎年6月は「Pride Month(プライド月間)」として、LGBTQ+アライ関連の権利啓発イベントが世界各地で多数開開催されます。
1つでもいいので、皆さんもぜひ、新たな気づきが得られそうなイベントに参加してみてください。そしてすでにアライの自覚をお持ちの方は、アライシップを発揮していきましょう。
*1 「アライ・ラウンジ」は、日本IBMや関連企業の社員が集まりLGBTQ関連のさまざまなトピックについて自由に語り合うランチ・ミーティング。原則、毎月第一金曜に開催。
*2 「アライ宣言」とは、当事者たちに共感し支援することを宣言する日本IBM社内の取り組み。現在はLGBTQ+の他、PwDA+を対象とした宣言も存在している。
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