Client Engineering

こころが震えたあのとき(中村友樹) – AIエンジニア、Client Engineering事業部

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「あなたのこころが打ち震えたときのこと、教えてください。」

Client Engineering(CE)事業部でAIエンジニアとして活動中の中村 友樹さんにお話を伺いました。

中村 友樹(なかむら ともき) | 日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 クライアントエンジニアリング事業部 AI Engineer
2023年4月日本アイ・ビー・エム入社。大学院生時代は早稲田大学情報システム研究室にて自然言語処理に関する研究に従事。現在は製造業のお客様を中心にプロジェクトに参画中

 

目次


 

 

● データサイエンティストからAIエンジニアへ

 

「絵に描いたような爽やかな好青年」——思わずそんな定番表現で紹介したくなるような第一印象の中村さん。

新卒入社から約1年半。IBM社員としての現在についてまずは語っていただきました。

 

そうですね、ようやく「本格的に社員になった」って感じですかね。入社後、今年の頭くらいまでずっと、すごく「面倒を見ていただいている」ことを感じていました。ありがたかったですけど、「早く自分も一人前のIBMerとして価値提供できるようになりたい」という焦りもなくはなかったです。

でも、それが今年になって、「野に放たれた」というかいい意味で放っておかれていて、自分で状況判断し、自律的にAIエンジニアとして行動することを求められるようになりました。身が引き締まる思いで仕事をしています。

 

僕は入社時は「データサイエンティスト」という役割だったんですが、半年ほどですぐに「AIエンジニア」への役割変更がありました。生成AIが大きなうねりとなり、ビジネスや社会を変革し始めていたタイミングで、IBMとしても生成AIにより一層注力していくことを発表したタイミングですね。

個人的には正直、肩書きはあんまり気にしていないというか…。データサイエンティストもAIエンジニアも、どちらもデータを活かして最新テクノロジーで課題解決するというところに大きな違いはないですし。肩書きはまあそんなに大事ではないんじゃないかなと思っています。

…あ。でもこれって単に、僕がまだちゃんと肩書きによる違いを理解できていないだけなのかもしれません。偉そうに言ってしまいました。

 

— いや全然偉そうじゃないですよ。それでいいと思います!

 

 

● おおぉぉぉ。こんなふうに文字と数学がつながるのか!

 

— このブログシリーズでは、「心が打ち震えたとき」をテーマに皆さんにお話を伺っています。どうですか? IBMに入社して「心が震えた」ことありますか? 正直にお伝えください。

たくさんありますよ! 日々震えています! …って言ったら言い過ぎかも知れませんけれど、本当に仕事を通じて、感動することは多いです。

 

— そうですか。ではその話を…と思ったのですがその前に。仕事以外ではどうでしょう? 心震わせていますか?

一番最近だと先週末ですね。レンタカーを走らせて千葉の高州海浜公園に釣りに行ってきました。3-4時間ひたすら待ち続けた後、ガガガっと「アタリ」を感じた瞬間は心震えますね。

 

— この炎天下で3-4時間…。「投げ釣り」ってやつですか? 日よけパラソルとか準備して?

いや、パラソルはないです。大量の水分を持参して、「チョイ投げ」とも呼ばれる防波堤からの投げ釣りをしました。確かに日差しが強くてヤバかったですね。サンダルで行ったんで足がすっかりサンダル焼けしています。

狙いはキスだったんですけどその日は一匹も釣れなくて…。その代わりカワハギの仲間の「ギマ」がよく釣れました。引きが結構強いんです。

釣りは本当に楽しいですよ。この暑さになる前は、バイクに乗ってよく海釣りに行っていました。船で大島まで釣りに行ったこともあります。

今年6月の千葉県館山の坂田海岸でのキス釣りのときの写真。「この日の釣果はキス5匹。天ぷらで美味しくいただきました。」

 

この後、中村さんの愛が向かう対象についていろいろと語ってもらいましたが、話が一番盛り上がったのは、釣りでもバイクでもエスプレッソでもなく、自然言語処理の研究についてでした。

 

ちょっと硬い話になってしまうんですが、これまでで一番心が震えたのは、大学で「Word2vec」という論文に出会ったときだと思います。

僕は大学で自然言語処理の研究をしていました。あれはたしか大学2年生のときだったと思うのですが、「Word2vec」を読み、「こんなふうに文字と数学がつながるのか!」と衝撃を受けました。「おおぉぉぉ」と心が震えましたね。

そのとき「この領域をもっと突き詰めたい」と心から思ったんです。自分の進む方向性が決まった瞬間でもあり、所属ゼミを決めて、大学院まで進もうと決心した転機となりました。

 

 

● 生成AIの新たな使い方を提案して世界を広げたい

 

ここからは、仕事を通じて心が震えた経験について、中村さんに語っていただきました。

 

仕事は心が震えることばかりです。一番の醍醐味は、しっかり自分で技術を試し込み、それを活かしてお客様にご提案させていただいたときに「これはすごいね!」って驚いてもらえるときですね。感激します。

今、生成AIがそうだと思うんですけど、すごく話題にはなっているものの、実際にはまだ触ったことがない方や、その可能性をしっかり理解されていないという方も少なくないですよね。そういう方に、生成AIの新たな使い方を提案して「なるほど! これは世界が広がるね」なんてことを言っていただくと、とても嬉しいです。

自分も、まだ実現してないことを実現させられるようになりたいですね。そういう瞬間って社会がどよめくというか、「沸く」じゃないですか。僕もあれを、新たな組み合わせのアイデアにより起こしてみたいです。

 

具体的なエピソードとして語れる「震え」ですか? …まだまだ僕の役割は一部に過ぎないのですが、つい最近、とある製造業のお客様のプロジェクトを進めていく中で、「そこが今回のポイントだったとは思わなかった!」と驚愕しました。

少し詳細をお伝えすると、お客様は故障予兆モニタリングシステムの精度の低さにお悩みでした。僕の中には「精度改善といえば、手法の変更やチューニングが必要」という思い込みがあったのですが、先輩に導いてもらいながらそれとはまったく異なるアプローチで進めていったところ、故障の定義が一貫性を欠いているという事実に辿り着きました。

お客様にそれを伝え、故障定義の明確化と具体的な発生状況の洗い出し作業からプロジェクトを開始した方がよいとご提案したところ、「まさにそれこそが取り組むべきものだと思う!」と大いに喜んでいただけました。心が震えましたね。

 

 

● 「本当に課題はそこにあるのでしょうか?」 – なんでも真に受けない

 

やはり第一印象どおりの好青年。だが思っていたよりも、熱さや泥臭さも強いのも中村さんでした。

最後に、仕事をする上で大事にしていることを尋ねてみました。

 

先輩に付いてお客様とお話させていただくことが、今の自分にはとても役に立っています。だから、大事にしていることは日々学び続けることですね。本当に、先輩と一緒の活動はかなり刺激的で、学ぶところが多くて震えます。

僕には社内で特に尊敬している人が2人います。1人は、益田 亮さんというデータサイエンティストの先輩です。益田さんは特にロジカルシンキングとかクリティカルシンキングがお得意で、お客様の話をなんでも真に受けるだけではなく、「本当に課題はそこにあるのでしょうか?」と真因を追及される方です。先ほどの、故障予知の取り組みも益田さんにリードいただいたもので、先輩のその力が発揮されたからこそ結果に結びついたものだと思います。

ちょっと前には『遅考術』という本をご紹介いただいたりもしました。僕にはない、いろんな視点での考え方をお持ちで、すごく勉強になります。

 

もう1人は、同じくCE事業部でAIエンジニアをされているメルヴィンさんです。

技術者として本当にすごいんです。心から技術を愛されていて…。おそらくですが、メルヴィンさんは業務外でも、製品や技術をご自身でめちゃくちゃ触りまくっているんだと思います。

先ほどと同じ製造業のお客様との別の取り組みで、生成AIの活用イメージをお客様により深く掴んでいただけるよう、メルヴィンさんが中心となってインドチームにも参画してもらい、ダミーの設備保全統合管理データを作成してデモをご覧いただきました。

お客様からは「他のメンバーにもぜひ見せたい!」と、生成AIの活用可能性に大いに期待いただけるようになりました。心が震えましたね。

事業部の誰もが「技術のことはメルヴィンさんに聞けば間違いない」と思っています。僕も、あんなふうに頼られる人材になりたいですね。

お客様先に出張した際に撮ったもの。尊敬する2人の先輩、益田さん(左)Melvinさん(中央)と。

 

— IBM以外ではどうでしょう?

結構コロコロ変わるんですけど、みんなが知っている人で言うと落合陽一さんですね。あんなふうに、本当に自分がやりたいことを最優先にして生きたら楽しいだろうなって思いますね。

研究者であり同時にメディア人でもあり、いろんな活動を行い社会に向けて発信されていますよね。あんなふうに、社会に価値を届けることができていることってすごいなぁと思います。憧れますね。


 

最後に、中村さんの尊敬する2人の先輩AIエンジニアからのメッセージをご紹介します。

益田 亮(ますだ あきら)

実は昨年末から中村さんはすごい人だと思っていました。
他の先輩社員と会話している時に、何かのきっかけで思い出したかのように、急に中村さんのことを褒め始めるんですよね。これが3回ぐらいありました。
本人のいないところで褒められる人は本当に優秀な人だと思います。
現在一緒に取り組んでいるプロジェクトでも、やっと2年目の若手社員であることを、つい忘れてしまいます。それほど信頼感のある取り組み方をされており、とても感謝しています。

いつも中村さんは新しい気づきや学びを得たときに嬉しそうに感動していますよね。
感動から学び得たものは、いつか自身を助けてくれますので、今のうちにたくさん『感動』して、多くのことを学んでください(歳をとると感動できることが減ってきますので(笑))。
今後のご活躍に期待しています。

Melvin Tah Kok Wai(メルヴィン タ コ ワイ)

わずか2年に満たない間に、中村さんは必要な技術知識を習得するだけでなく、自分の担当範囲を超えて新しい製品の探求と理解に対する並外れた意欲を見せてきました。
新しい情報を積極的に取り入れる彼の姿勢は、常に準備万端で深い知識を持っていることを示し、まるで豊富な経験を持つベテランのような印象を与えます。
中村さんの仕事に対する倫理観と、常に期待を超える成果を上げる能力は、どのチームにとっても非常に貴重な資産です。プロジェクトに明確さとスムーズさをもたらし、同僚たちに「この案件は成功する」と確信させてくれます。

一言でまとめると、中村さんは理想的な社員の模範そのものです。迅速かつ誠実で、才能に溢れ、責任感も強い。
私の「こころが震えたあのとき」は、中村さんがチームに加わったときです。


 

TEXT 八木橋パチ

 

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