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IBM研究機関との共創を、全国各地で | Think Lab Day

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2月19日から3日間、名古屋と大阪にてIBMの研究機関(IBM Research)である東京基礎研究所およびThink Labによる、お客様とパートナー様向けのイベント「Think Lab Day(同時開催: TechXchange × Think Lab)」が開催された。

東京以外でのThink Lab Day開催は、昨年春・秋の大阪・福岡開催に続くものであり、積極的に各地域での開催を進めようとしていることが窺える。今回、その狙いや背景を中心に、Think Labの山上円佳と東京基礎研究所の武田征士の2人に話を聞いた。

山上 円佳
山上 円佳 | 日本アイ・ビー・エム株式会社  研究開発 Think Lab  アドバイザリー・テクノロジー・コンサルタント
インフラエンジニアとして入社後、2017年よりディープラーニング技術を活用した技術検証、本番システム開発やAI人材育成プロジェクトを推進。現在は研究開発部門でIBMの先端テクノロジーの利活用をお客様にご検討いただく活動に従事する一方で、社内外の若手技術者コミュニティ事務局メンバーとしても活動中。

 

武田 征士
武田 征士 | 日本アイ・ビー・エム株式会社. 東京基礎研究所  プリンシパル・リサーチサイエンティスト兼マネージャー
2012年入社後、国内外のお客様やIBM Researchの海外チームとともに、Accelerated Discoveryに関するプロジェクトを数多く手掛ける。現在は、材料開発用AI基盤モデルの開発をリード。IEEE Open Software Service Awards等受賞。

 

「100打てば2〜3は当たる」から脱却するために

「まずなによりも、深く社会との接点をお持ちのお客様やパートナー様に、IBMが共創を推進している先端テクノロジーを知っていただきたいという想いを強く持っています。」

昨年までAIエンジニアとしてお客様のAIシステム開発、AI人材育成プロジェクトをリードしていた山上円佳は続ける。

参考 | AIの本番適用ブレイクスルー3つの成功要素 -たらこ×AIプロジェクトの舞台裏

 

「昨今のテクノロジー進化の一端を担うAIや量子コンピューター、半導体の微細化といった先端テクノロジーが、ビジネス課題や社会課題の解決に向けてどのように本格実装・展開されつつあるのか。そこでどのような新ビジネスやサービスが生まれているのか。

同時に、法令やセキュリティ、倫理に関係するリスクもその周辺で生まれ続けています。この両面を正しく認識し、攻めの技術と守りの技術の両面を的確にビジネスに用いていくことが重要であり、それこそが、IBMだからこそお届けできる価値だと思っています。」

 

「社会と共に未来のコンピューティングを切り開いて創っていく!——その想いを東京のThink Labを訪れてくださる方に加えて、全国にたくさんいらっしゃるお客様とパートナー様に伝えたい。そのためにはもっと多くの皆様に来ていただきやすい機会と場所を用意して、社会をより良くするためのIBMテクノロジーを一人でも多くの方にご体感いただけるようにしていかなければならないと気付きました。

今回の名古屋・大阪イベントは、2024年のそのための活動の第一弾です。」

東京エリアで実施している体感型セッションの説明をする山上。本イベントも同様に、講演とワークショップを組み合わせた共創型イベントとして、今年全国複数都市を周遊予定だ。

 

「AIテクノロジーを活用したいと考えられた際に、どういった相談相手がいれば安心して取り組めるのか——。

IBMを共創のパートナーに選んでいただくためにはまず、私たちが何者で、これまでどういったことに取り組んできたのか、今後どういった社会を目指したいと思っているのかを知っていただくことが大切です。

たとえば、ビジネスに差別化をもたらす先端テクノロジーの1つとして、昨年から生成AIが次々とビジネスに活用されています。しかしその裏では、莫大な電力消費量やコンピューティング能力不足が、新たな社会問題となっています。」

 

今後、さらに爆発的に進化していくであろうAIテクノロジーを支えるコンピューティング能力を、いかにまかなっていくのか。そのためにどういった進化が求められるのか。山上は続ける。

 

「IBM Researchは、従来型の半導体の微細化、新たなコンピューティング能力となりうる量子コンピューターの研究開発と同時に、電力消費量や二酸化炭素排出量の削減に大きく寄与する、AI処理に特化したAIハードウェアの開発を進めています。

テクノロジーの発展とコンピューティング能力の進化の両輪を揃えて漕ぎ続けていく必要があります。」

 

山上はそう語ると、IBM Researchが近年注力している「Accelerated Discovery(発見の加速化)」と社会課題解決との関係について説明した。

 

「生成AIをはじめとした先端テクノロジー活用ビジネスで社会をより良い場所にしていくには、一時『PoC疲れ』や『100打てば2〜3は当たる』と言われていた、AIのビジネス適用の状況を大きく変えていかなければならないと思います。

その立役者となりつつあるのが、基盤モデルです。従来は、各企業が大量のデータを準備して、AIに判断させたいタスクごとにモデルを作り込む必要がありました。それには莫大なコンピューティング・リソースと費用が必要で、それがAI適用の高いハードルとなっていました。

そこで、あらかじめ大量多種のデータで学習させた巨大なモデルを作って、この巨大AIモデルを『基盤』とし、少量の自社の独自データなどと掛け合わせ、個別タスクの最適化を行っていく。これが今、AIのビジネス適用を目指す1つの姿です。

結果として、従来数年間かかっていたような『発見』が、数十分の1のスピードに縮まっています。

具体的には、カーボンリサイクリングへ向けたCO2吸収ポリマー、半導体製造に欠かせない「フォトレジスト」の環境負荷を大幅低減する新素材、そして難病への新薬開発など。幅広い分野に取り組みは広がっています。」

 

とはいえ、まだ限られた一部の企業しかAI活用のメリットを享受できていないのが現状だ。

AIテクノロジーの進化を、よりよい社会のためにどのように具体的な社会実装へとつなげていくのか…。

ここからは、IBM ResearchにてAccelerated Discoveryを担当し、共創の輪を広げる活動に取り組む武田征士の話を紹介する。

 

日本各地の独自技術を持つ企業・パートナー様と共創するために

名古屋での共創型イベントにて、Accelerated Discoveryを通じた環境毒性の低いフォトレジスト用材料発見プロセスを説明する武田。

 

「Accelerated Discoveryは、AIによる文献からのデータ収集、高速なHPCシミュレーション、生成AI、ロボット・ラボ、そして基盤モデルを組み合わせることで、材料やバイオ、地理などさまざまな分野における科学的な発見を加速するというテクノロジー・ビジョンです。

このAccelerated Discoveryには『科学的発見にかかるコストと期間を10分の1以下に低減することで、早急にサステナブルな社会を実現する』というミッションがあります。

たとえば、気象災害の予測、CO2削減、次世代半導体や高効率バッテリーのための新素材発見などを実現するには、理論科学や計算科学、データ科学などを個別に研究するのではなく、1つのビジョンのもと、これらの科学技術を有機的につなぎ、相乗効果を生み出すことが必要なのです。」

 

自身が東京基礎研究所でリーダーとして率いている材料用分野へ向けたAccelerated Discoveryでは、大きな成果が出てきていると武田は言う。

 

「IT技術を駆使して材料開発を加速する『マテリアルズ・インフォマティクス』と呼ばれる一大分野があり、近年世界中の産官学が取り組んでいます。IBM Researchは、この分野の「中核を担うAI」として、巨大な基盤モデル(Foundation Model for Materials)を開発し、多くの皆様にご利用いただくことで、マテリアルズ・インフォマティクスの進展を大きく加速することを目指しています。

そこで、昨年12月IBMはMeta社と共に、AIテクノロジーの研究・開発、および導入組織の国際的なネットワーク「AI Alliance」を立ち上げました。AI Allianceは、AIを広く社会実装していくためにさまざまな課題に取り組んでいくオープンな共創組織です。

テクノロジーの発展は、共創なくして社会には浸透しないと思っています。

今後、我われの基盤モデルもこのAllianceを通じて、AI専門家から材料専門家まで幅広いメンバーの皆様とともに開発し、提供していく見込みなので、ぜひ多くの材料メーカー様にご参画いただきたいと思っています。そして、この膨大なデータで事前学習されたAI基盤モデルを、自社データでファイン・チューニングした「自社専用生成AI」の開発にお役立ていただければと考えています。」

参考 | オープンで安全な、責任あるAIの推進に向け、主要な技術開発者、研究者、AI導入者が協業する国際的なコミュニティーとして「AI Alliance」が発足

 

「日本には、各地に独自の優れた固有技術と管理技術を持つ企業様が多数いらっしゃいます。そしてまた、それら企業様と強いつながりを持ち、新たなビジネス・モデルを生みだしたいとお考えのIBMのパートナー企業の方がたも、全国各地にいらっしゃいます。

私たちIBM Researchも、ぜひ、そのつながりに加えていただけないかと考えています。

そうしたご検討をいただくためにも、Think Lab Dayをより皆さんの近くで開催したいですね。

そしてぜひ、Think Lab Dayに、皆さんのお困りごとを持ち込んでください。お困りごとにフォーカスしたセッションやディスカッションの場をご用意させていただき、皆さんとの共創の第一歩にしていければと考えています。」

 


次回、Think Lab Dayが皆さんのお近くで開催される際には、困りごとを手に訪れてみてはいかがだろう。

 

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責任あるAIの推進に向けた国際的なコミュニティー AI Alliance が発足

TEXT 八木橋パチ


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